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2010/02/01

怪しいPTSD 偽りの記憶事件

怪しいPTSD―偽りの記憶事件 (中公文庫)
衝動買いした本だけど、この本も当たりだったな。
私自身の無知を知る良い機会になった。
私は欧米で1980年後半から90年代に「偽りの記憶」と呼ばれる幼児期の性的虐待の記憶を元に父親を訴える事件が流行したって事自体を知らなかった。

人間は弱い生き物で記憶すら誰かに操作されてしまう事があるって事だね。
そして、その結果現実に不幸になってしまう家族が大勢いた。

私はこの本を読む前にアダルトチルドレン関連の本も何冊か読んだ。
アダルトチルドレンに興味があったのでは無く、薬物依存症やギャンブル依存症などに興味があって読んでいくうちにアダルトチルドレンの本も読む事になったと言う所かな。

アダルトチルドレンについては、「そんな物もあるかな」程度にしか考えていなかったし、その治療方法についても、依存症の方法を応用している程度にしか考えていなかった。

学問的に多少問題があったとしても、治療が上手くできるのであれば、それも良いかな?と思っていた。

だけど、この怪しいPTSD―偽りの記憶事件 (中公文庫)を読むと少し、心配になってくる。

どちらが正しいのか?は専門家に任せるとして
私としては、世の中にはそんな2種類の見方があると言う事は覚えておく事にしよう。

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コメント

「心理学化する社会」 斉藤環著 河出文庫

上記をお勧めします。是非お読みください。

著者は「精神医学者」であり、メディアでもしばしばコメントを行っていますが、事件報道等における「過剰な心理学化」への警告を発しています。
ラカン派精神分析を応用する筆者ですので、ポストモダニズムをはじめとする現代思想の知識がほんのちょっと必要なのですが…

この本も指摘しているのですが、「こころ」を対象とした学問分野というものが、一体どうなっているのか?ということは意外と知られていないものです。実は…

1)精神医学
長い伝統をもち、精神のトラブルに対して、生理学的な局面からの臨床を行ってきた領域。現在では後に述べる臨床心理学や、心理学より発展した精神分析を応用した方法も用いるが、他分野とことなるのは「投薬」による治療であること。

2)心理学
19世紀のヴントに始まる、「心理の科学」。心理を「科学的に研究」するだが、基本的にその対象は「人間一般の心理」であって、異常心理の研究は、実は裾野の部分である。フロイト、ユング、ラカンなどはここに属するが、彼らの理論は人間一般の心理の研究であると同時に「精神分析」という技術としても発展した。

3)神経科学
神経系一般の科学で、神経医学や神経生理学などを含む。「こころ」との兼ね合いで言えば、精神医学の臨床を実現するための基礎研究と言っえる。伝統的に「脳を科学的に研究」してきた領域はここ。

4)臨床心理学
「心理学」の研究のうち、精神分析などを臨床に生かしたもの。ただし、日本やアメリカで「カウンセリング」と呼んでいるもののほとんどはロジャーズ式の来談者中心療法であり、これは20世紀中葉以降の「若い科学」。

5)脳科学
ここ数年盛んだが、これは学問上の分野?
FMRIなどの技術革新によって、「これまで脳の観察などできなかった人々」が脳の観察を始め、それぞれの科学的見地からの発言を行っている、というのが実態。
具体的には、教育学、運動生理学、認知心理学などの分野の研究者が「脳」について発言する場合、マスコミがこれを「脳科学者」と紹介するわけである。(「脳科学学科」という学門はありません。)
それらの発言には、人間の行動と脳の関係について従来見られなかった斬新な切り口がある一方、長年、脳の研究を行ってきた神経科学分野から見れば「単なる仮説」に過ぎないものが多い。

「右脳・左脳、ゲーム脳…脳科学の『神話』ご注意」(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20100122-OYT1T00980.htm
(神経科学学会による啓発↑)

これ以外にも脳外科なんか関連がありますが、一般には1)~5)までが混同されて語られているのが実情だと思います。
今日の社会では、特に4)や5)が脚光を浴びるようになりましたし、犯罪報道などでしばしばこの手の「コメンテーター」が活躍する世の中になりました。
やがて、それらは犯罪捜査などにも応用されそうな勢い(すでにTVドラマの中ではそうですね)ですが、私個人は、心理に対する4)や5)の理解の仕方に疑問を感じています。

最初に挙げた本は、そうしたもやもやした疑問を見事に説明してくれた本でした。

投稿: 迷探偵にゃんこ | 2010/02/07 20:24

にゃんこさんありがとうございます。
早速、アマゾンで注文しました。

私の場合は書店で気になった本を適当に購入して読んでいるだけなので系統的に読めてないんですよね。

投稿: ASKA | 2010/02/07 21:36

もう少しこの件について書かせてください(ってかいつもの連投ですが。)

3年前ですが、こんな事件もありました。
会津若松母親殺害事件
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BC%9A%E6%B4%A5%E8%8B%A5%E6%9D%BE%E6%AF%8D%E8%A6%AA%E6%AE%BA%E5%AE%B3%E4%BA%8B%E4%BB%B6

酒鬼薔薇事件や、幼女連続殺害事件などが「心理学的」に理解される一方、上記の事件は報道後、ほぼマスコミが「沈黙」せざるを得なかった事件といえます。

また、母親を殺害した少年が犯行後インターネットカフェで「ビースティー・ボーイズ」を聞いていた、という話は何かこの出来事の核心部分を突く様でいて、多くのマスメディアの人々を「肩透かし」にあわせたのでした。

コロンバイン高校銃乱射事件の犯人たちがマリリン・マンソンの信奉者であったという「情報」は、マスメディアの「心理学化」によって、特定のアンダーグラウンドメディア批判を惹起する「物語」になりました。

重大な犯罪の発生に対してマスメディアは、「問題の原因を解明する(少なくともその手がかりを提供する)」という立場を「見かけ上」とっていますが、実際には事件を「わかりやすい物語にして処理」しているのに過ぎないのではないか?

1週目 警察の発表を詳細に
2週目 会社や学校の人々の印象から
3週目 生い立ち、家族との関係から
いつもこの手順を繰り返していないか?TV局よ。

マスメディアとて利潤の追求をしているという当たり前すぎる前提を置けば、「大衆に事件を消費させている」と言い換え得ることです。

何人もの新聞記者やニュースのアンカーマンたちが、事件後「初めて聴いたビースティー・ボーイズの音楽」にがっかりとさせられことでしょう。それらは、彼らの期待する「悪魔的な音楽」や「虚構の世界の残虐」とは180度逆の、明るく粗暴なバカ騒ぎという見かけ(PVの多くはモンティパイソン風コメディー)を装い、LA風ストリートカルチャーをベースにほんのりとしたシニシズムを調味料に加えた「きわめてオシャレな白人ヒップホップ」だったからです。(ちなみに彼らは、中国のチベット侵攻を批判し、チベットの自治拡大を訴えた「チベタンフリーダムコンサート」の提唱者でもあります。)

しかし、私は会津若松母親殺害事件の犯人の少年にこそ、「心理学」は徹底した分析を行うべきであり、その背景に、今の社会に生きる人々の何らかの問題が潜んでいると直感的に思うのです。
この事件に対する「熱くない報道」から、この少年と母の暮らしが、どのようなものであったか、進学校に進みながら孤立していた彼の学校生活がどのようになったのか、知る由もないのですが、(おそらく最も)愛していた母の殺害後、ビースティー・ボーイズを(おそらく大音量で)聴いた彼の心情を、なんとなく推し量れるような気がするのです。いや、そういうことをもっとよく考えないといけないと感じるのです。(でも、どうしても言語化できない…)

殺人というのはどこから見ても、「忌まわしい犯罪」であるのですが、それを行う、あるいは行わざるを得なかった心理的な経緯については、我々は、せめて、見て、少しくらいはどうしてか考える義務程度はあるのでは…
とろこが、現実には起きた事件のうち「説明しやすい素材」だけが選ばれ、「大衆に受け入れ易い言説」をお約束どおり言ってくれるコメンテーターが「分析」という「商品」を提供し、人々はそれを「消費」してゆく。熱が冷めれば人々は、日常に戻ってゆく。
過ぎ去った事件に対して人々は「ああ、そんな『異常な事件』があった。でもそれは『異常な人間』がやることであって、その『異常』は専門家が説明しているじゃないか。オレの日常には関係がないんだよ。」と思えばよい…そうした態度は、どこまで言っても「オレ」や、この社会の内部の異常性から目をそらす行為を助長させるだけではないのでしょうか。

私には、賢かった犯人の少年が、そうしたことまで見越した上で、何か、非常にわかりにくい「警告」を、私たちに対して発している…そんな気がするのです。

投稿: 迷探偵にゃんこ | 2010/02/07 22:02

ASKAさんこんばんは

気に入っていただければ幸いです。
最初のコメントも2番目のコメントも、いわゆる「ネタバレ」ではありませんので、安心してお読みください。

投稿: 迷探偵にゃんこ | 2010/02/07 22:37

そうすると、必ず居るのが、
子供の被害を毎回のように妄想記憶だろうという洗脳色目。
幼少期の記憶は、夢でキープされる場合があるので、
より記憶が事実とは限らない可能性を考えなければならないが、
だからと言って、丸で全てが記憶違いかもと変な目で見る純粋な人だらけになるのも怖い。
最先端脳波測定では、具体的事実の記憶か夢や妄想かはある程度判るらしいので、
そちらの証明側の開発にも期待したいです。

投稿: | 2010/02/17 09:32

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