精神科ER 緊急救命室
いつもと同じで本屋さんで何か面白そうな本が無いか?と本棚を探していたところ偶然見つけた本がこれ
精神科ER――緊急救命室 (集英社文庫)
著者は備瀬哲弘さん、精神科医で東京都立府中病院で精神科ER勤務時代のエピソードをまとめた物ですね。
全体としては著者の自伝的小説と言うか日記と言うか、体験を元にした文章なのでそんな印象になると思いますが、地味に読みやすいです。
患者さんに分かりやすく物事を説明する事が仕事の精神科医の為か?あるいは私が勝手に状況を想像する能力が高いのか?分かりませんが、その場に自分も一緒に立ち会っているかのように読み進める事ができました。(ちょっと不思議な感覚です)
内容としては特に目新しい症状などは無いですが、各症状では発症した理由が書かれていてその点は良いと思いました。
つまり、診察->治療->原因の解説 と言う感じでどうしてそんな症状になってしまったのか?が分かりやすく書かれています。
もちろん、原因不明の場合もあるのでその時は原因不明と書いてますし、そのあたりは好感が持てます。
ただ、症状の解説が半分で残り半分は著者がどうして精神科医になったのか?と府中病院に赴任するいきさつなどが書かれています。(このあたりが自伝的です)
ちなみに、目次は
プロローグ アメージング・グレイス
ファイル1 すまき
ファイル2 ER的日常
ファイル3 さとうきび畑
ファイル4 狂気か、正気か、病気か、性格か
ファイル5 まとわりつく白衣
ファイル6 「ちょ、ちょ、ちょっとおかしいです」
ファイル7 何も知らない、何もできない精神科
ファイル8 生きるためのリストカット
ファイル9 3番からのコール
ファイル10 ある日、突然に
ファイル11 ビジネスマン、うつ病
ファイル12 未来はないのか?
ファイル13 抜け落ちていく記憶
ファイル14 ありふれた病・アルコール依存症
ファイル15 異国で働くプレッシャー
ファイル16 猫屋敷
ファイル17 止まらない暴力
エピローグ 最後の当直
メンタルの本なんだけど、事件の事を毎日追っている私として事件関係のトピックは強く印象に残りました。
ファイル4は精神科医の仕事の危険性を教えてくれます。
ファイル5は児童虐待の話です。
ファイル7を読んで私も、精神病についての配慮が足りないなと気付かされました。
ファイル10は誰でも精神病になる可能性がある事を再度認識させられました。
ファイル12は事件と精神病について考えさせられました。
ファイル14はアルコール依存症の話です。私も比較的アルコール依存症の知識はあるものと思っていましたが、「連続飲酒発作」と言う言葉を始めて見た気がします。まだまだ勉強が足りないなと自覚しました。
ファイル15は異国で働く事のプレッシャーについてです。日本人が日本に居ても思いつめたらこんな症状が出てもおかしくないので、職場を見渡して同じような人がいないか?注意するようにしたいです。
ファイル16は近隣トラブルの原因の一つがメンタルの問題にあるのかも?と言う事に気付かされました。
ファイル17は引きこもり、家庭内暴力の話なのですが、結局原因が分からないけど解決したと言う症例です。もともと精神病ではない印象ですが、引きこもりを考える上で「ああ、そうか!」と1枚目からウロコが落ちました。
ファイル18自殺や心中事件に直接繋がる内容です。なぜ自殺するのか?心中するのか?それにどう対処するのか?その答えの一つがここにあると思います。
それから、ECTの有効性についても書かれているのが印象的です。
ECTについては以前読んだ救急精神病棟でも詳しく解説されていますが、精神病治療の古く悪いイメージの代名詞のような感じですね。
でも、現在では60年も続く確立された治療法です。治療効果があり副作用も殆どないなど
きわめて優秀な治療方で、事故も1万人に1人と言う確率でそれほど、リスクの高い治療方法ではないようですね。
著者の人柄もあるのでしょうが、文章が地味にすっと入ってくる印象で読みやすいです。
これから、精神科医を目指す人、精神病に興味のある人、ASKAの事件簿を興味を持って読んでいる人にお勧めですね。
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