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2015/01/04

世田谷一家殺害事件再考その130(世田谷事件・喪失と再生の物語)

この悲しみの意味を知ることができるなら―世田谷事件・喪失と再生の物語

この事件を調べている人ならこの本の事は一度は聞いた事があると思います。
この事件の被害者の宮澤泰子さんの実姉で、事件当時、隣家に滞在していた入江杏さんの本です。

簡単に内容を紹介するとサブタイトルの通り、前半が事件で妹を亡くした時の経緯が入江さんの主観で書かれています。
そして後半が事件後、入江さん一家が立ち直るまでの経緯が入江さんの主観で書かれています。

主観で書かれていると書きましたが、事件の経緯については、捜査本部の聞き取りの内容のメモを元にしており、時間経過による記憶の改変の可能性はほぼ無いと考えて良いでしょう。

この事件の報道で沢山の情報がでていますが、私が思うにこれらの情報の内、3割程度の情報は誤報か誤報ではないが、間違ったニュアンスで報道されている情報だと考えています。
個別の情報は間違っていないが、他の情報との関係が伝えられていない為、受け取る側が情報と情報の関連を間違った推測で関連付けてしまっているような場合もありますね。

なので、この事件の情報をランク付けするなら
あ)警視庁のHPに掲載されている情報は確度Sランク、まず、間違いないでしょう。

い)関係者や付近住民の一次情報、確度ランクA、かなり信頼性が高い情報、入江さんのこの本はこれに該当

う)その他の報道情報、確度ランクB、誤報や誤認を含んでいる可能性が疑われます。

え)その他の噂等、確度ランクC、基本的に根拠が無い物で信用できない物がほとんどでしょうね。

入江さんのこの本は事件の資料としての価値は上述したように、Aランクです。
なので、この事件を調べようとか、推理しようとか思う人には一読をおすすめします。
この本の信憑性を疑う人もいるかもしれませんが、入江さんは、捜査関係者と犯人以外で現場に入った4人の人間の内の一人で、さらに、事件当時、隣家に滞在した被害者の実姉です。

つまり、捜査上の秘密を知る人物なので、当然、捜査本部から堅く口止めされているはずです。
その為、出版前に捜査本部が内容のチェックを行っていると私は考えています。
うっかり、捜査上の秘密を暴露されると困りますからね。
実際には、それに該当するような箇所も幾つかあると思うのですが・・・

あるいは、出版前に確認はされてなくても、出版後には確認しているでしょう。
事情聴取の内容と記載内容に齟齬は無かったと言う事でしょうね。

それでは、私が気づいた事件についての情報は最後にして、私の感想を書くと
この本は、多分、誰かに読んでもらう為に書いた物では無いと思います。後書きで入江さん本人も書いてますが、これは入江さん自身が悲しみを克服する為に書いた治療方法の一つなのだろうと私は解釈しています。

この為、自分の感情とか考え方などを自分の言葉で説明しているのですが、外国生活が長かったせいか、英語の言葉で説明しているのが特色でしょうね。
その他にも、いろいろと、引用や下敷きにして説明しています。

正直なところ、この本を興味をもって読める人と言うのはかなり限られると思います。
A)世田谷事件の資料として読む人
B)犯罪被害者や遺族の事を知りたいと思う人や支援したいと思う人
C)同じ犯罪被害者遺族の方
このぐらいかなと思います。

さて、それでは、内容について私が気づいた点を列挙しておきます。
詳細は本を購入して自分で確認してください。
1)事件通報時刻が午前10時50分頃(時刻情報は一度検証したいところですね)

2)入江さん宅にも車があった。(駐車場所が気になる)

3)宮澤さん一家の移転が遅れていたのは、礼君の事を考えての事だった。

4)午後6時半には宮澤さんの車は家に無かった。

5)みきおさんの趣味が写真

6)入江さん夫婦は耳栓をして寝るのが習慣

7)みきおさんは12月は仕事でずっと遅かった。

8)通報からパトカー到着まで10分足らず。救急車はそれより早く到着?

9)宮澤さん一家は経済的には楽ではなかった。

10)宮澤さん宅の設計はみきおさんだった。

11)1階にはPCが2台あった。

12)ライカのカメラのコレクションがあった。

13)現場は寒かった。

14)第一発見者の祖母は10分たらずの間に遺体全部を確認した。

15)ロフトの天井は低かった。

16)みきおさんは帰路にタクシーを使う事も多かった。

17)事情聴取で使われたのはポラロイドカメラで撮影された遺留品の写真だった。

18)元塾生が密葬に訪ねてきた(以前事件簿で記事にした元塾生の日記の裏付けがとれた)

19)泰子さんは事件前に公園に常夜灯の設置を求めていた。

20)入江さんは事件後にトラブルになるような事は無かったか調べていた。

21)入江さんはアートフラワーの教室も開いていた。

22)宮澤さん一家は礼君を連れての外泊や外出、外食を積極的に行っているように見える。

他にも幾つかありますが、詳細は別途記事にしたいと思います。

今、私はこの本をもっと早く読むべきだったと後悔しています。
この本が出版された事は知っていたのですが、多分、事件情報は捜査上の秘密として口止めされていて、それほど記述されていないと、勝手に思い込んでいました。

この本の情報を元に幾つかの点について再度、考えなおしてみる予定です。

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コメント

askaさん私は入江さんの本と週刊朝日MOOKの「真犯人に告ぐ!未解決事件ファイル」を推理の軸にしています。他に参考になる本があったら教えて下さい。

投稿: フリフリ | 2015/01/06 07:42

フリフリさん、おはようございます。

直接、この事件の資料になるような本は他には無さそうですね。この事件で出ている他の本は、既出の情報をまとめて独自の推理をしている程度だと思います。

私は直接参考にならないけど、殺人事件全体を考える参考としては、色々ありますね。

一番参考になるのが、過去の事件のドキュメントやルポで入手しやすい物では、新潮45のシリーズとか、黒い報告書なんか参考になるでしょう。
古いので手に入るか微妙ですが、「殺人全書」も参考になると思います。

次が検視官、監察医の事例を紹介した本
現場の状況から死因などを考える参考になります。

最後に警察官が捜査についた書いた本
現場の刑事が書いた本と課長以上が書いた本で内容が変わるので、両方読んだ方が良いと思います。

報道された情報を考える上で参考になります。
どうして報道されないのか?とかね。
そして、警察がどんな捜査をしているのか?とかも参考になりますね。

他には、メンタル系の本ですね。
事件に関係しているというよりは、犯人の心の動きを考える時の参考になります。

具体的な本は
http://disktopaska.txt-nifty.com/aska/cat4198965/index.html
こちらを見てもらえば、出ていると思います。

投稿: ASKA | 2015/01/10 10:44

入江さんの本を再読したのですが、犯人の遺留品と思わるものにブルーのポーチ風小バッグがあります。発見時のみきおさんはベルト着用ですし礼くんもトレーナーにズボンと就寝服とは思えません。
脱線しますが匿名掲示板で聞き込みを受けた人の話ではワッチキャップもあるそうです。

投稿: 事件解決を望む者 | 2015/01/13 21:55

気になる箇所があります。泰子さんのお母様が宮澤家に内線電話を入れた時間です。
『この悲しみ~』では10時半をまわっていたと記述されていますが、『悲しみを生きる力に』では10時をまわった頃と記述されています。

投稿: 事件解決を望む者 | 2015/02/04 20:31

おはようございます。

もともと、時間ははっきりしてなかったようですから、多少変化しても不思議では無いと思いますね。

多分、警察への通報時間から逆算して修正したんじゃないかと思いますね。
あるいは、警察発表に時間を合わせた可能性もありますね。

投稿: ASKA | 2015/02/05 07:06

他にも気になる点があります。
『この悲しみ~』では入江さんはみきおさんの遺体を越えて階段を数段登ったと記述していますが、『悲しみを生きる力に』ではそうしなかったようです。時間に関しては誤認が有り得ると思いますが遺体を乗り越えるという強烈な出来事は忘れないと思います。

投稿: 事件解決を望む者 | 2015/02/05 12:16

先月初めてこの本を読みました。遺体発見時の生々しい様子、警察の事情聴取など思ったより詳しく書かれていて私も驚きました。そして入江さんが何よりも書きたかった、事件以前の宮澤さん一家の生き生きと幸せそうな様子、一生懸命生きてきたこと、あの家を愛していたことも鮮やかに描かれていました。妹達が一生懸命生きていたあの家がただ禍々しい惨劇のイメージだけで人々に記憶されるのは辛すぎる、、と言う入江さんの気持ち、読者に十分伝わったと思います。
犯罪被害者の遺族の方が誰でも入江さんのように表現力 文章力があるわけではないでしょうから、入江さんがこの本を書いた意義は大きいと思います。

投稿: まーぷる | 2015/02/18 20:46

犯人を考察する上で、私たちは誤った物の見方をしていたと思います。
改めて犯人像を練り上げると、犯人自身も何かしらの発達障害を持ち、それが原因で被害者宅と関係する塾を辞めた人物ではないかというものです。
もしも、旦那さんへの恨みからの犯行ならば、一家の中で酷い殺され方をされたのが、奥さんと長女ちゃんというのは不自然です。
明確な殺意が奥さんに向けられている中で、奥さんが長女ちゃんを助けているのを目の当たりにすれば、犯人があのような残虐行為に出たのも不自然ではありません。
逆に長男くんに対しては、犯人自身が殺意の中に憐れみの感情を抱いていたので、他の3人とは方法が違っていたのだと思います。

投稿: Y子 | 2015/05/26 00:47

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