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2015/06/24

絶歌 神戸連続児童殺傷事件 元少年A

絶歌


神戸連続児童殺傷事件 元少年A

この本については、賛否両論ありますね。
遺族感情からすれば、こんな本を書くことは許されない事でしょうし、この本を読んでコメントを書くと言う事もしない方が良いのかもしれないとも思います。

ただ、このASKAの事件簿はその記事の内容の殆どが殺人事件であり、件の神戸連続児童殺傷事件の少年Aと同様に少年の起こした殺人事件についても、沢山の記事を書いています。
その上、この神戸連続児童殺傷事件を日本で起きた数少ない快楽殺人事件として、何度も紹介していたりします。

そういった意味では、あまり意識した事は無いのですが、ASKAの事件簿は殺人事件の専門サイトのようになっています。
なので、このASKAの事件簿でこの本「絶歌」に対して書くコメントは他の一般サイトが書く事とは少し、意味合いが違うのかな?と思う訳です。

むしろASKAの事件簿としては、読んでコメントを書くべきだろうと思いました。

それでは、本題に入りましょう。
まず、この「絶歌」を読んだ感想ですが、どうも事件を起こした事への言い訳のように見えます。
2部構成の第一部は事件を起こした事への言い訳に見えますし、第二部はこの本を書くことへの言い訳に見えます。

ただ、最後まで読むと、言い訳だけでは無いと言う事にも気づきます。

まず、「言い訳」に感じる理由ですが、それは、文章の書き方に問題あるように思います。
文章の中に沢山の引用がちりばめられているし、難しい言葉を使った部分もあります。
一見して小説のような書き方にも見える部分がある。

それらが、「借り物の言葉」に見えてしまう為に「言い訳」に見えてしまうのだろうと思います。
しかし、この書き方は本人の性格による物なのだろうと言う事は、本を最後まで読むと理解できると思います。

Aは「凝り性」で気に入った事に対して、マニアックなまでに入れ込む事が多いようです。この本を書くにあたり、今まで自分が読んだ本の知識を総動員し、さらに、自分の考えを補足、補強するような文章をあちこちから探して、この本を書いたのでしょう。

その結果がこの本の構成になっているのだと思います。

文章の表面だけみると「美化」しているように見えるのも同じ理由だと思います。

そのあたりを踏まえて、内容だけを見るとやはり、後悔と言う言葉が本全体のベースにあると思います。

第一部は事件当時の記憶や幼少期の記憶を書いています。
Aにとって自分に都合の良い事だけを書く事もできたでしょうが、人間として否定されかねないような事も正直に書いていると思います。
私の知らない事実も書かれていて、一般人が知らないような事も書いているのは、ありのままを書こうとする真摯な態度のように見えます。

(意外かもしれませんが、私はこの事件については、報道された内容、Wikiを斜め読みした程度の知識しかありません)

しかし、その一方でこの文章には「毒」があります。およそ弱い毒ですが、子供には影響があるかもしれませんので、未成年者はこの第一部は読まない方が良いかもしれませんね。

第二部は少年院を退院後の生活について書いています。
退院後にこんな生活をしていましたと言う事、その間に社会や事件について感じたことを書いています。
事件についてどう向き合うべきか、自分はどうあるべきかと言うところへたどり着くまでが書かれている感じです。
ただ、この本を書く理由の部分や、「どうして人を殺してはいけないのか?」の回答については、ちょっと微妙ですね。

事件について「向き合う」事はできている。その結果、反省もしているのだけど・・・
本文の中では「人を殺してはいけない理由」が結局、自分自身の不利益としか回答を見つけられない点で、まだ「十分に事件と向き合えていない」と言う印象でした。
しかし、最後の被害者遺族へ向けての文章の中ではちゃんと答えにたどり着いているので、このあたりのギャップは少し違和感のあるところですね。

そして、この本を書くことの理由が自己救済とあり、結局は自分の視点から抜けきらないのか?と言うのも疑問のあるところです。

そして、最後に自分がこれから生きていく事の宣言をするわけなのですが、「自分が生きてきた事の証を残す」的な部分はどうなんだろう?と思います。
これは、これからのAの生き方を見ていくしかないのだろうと思います。

その他に気付いた点として、この事件が起きた理由なのですが、幼少期の回想部分を拾っていくと、小学校の低学年の頃から、Aは暴力的です。およそ、無抵抗の相手に暴力を振るっています。
一つ下の弟に対しても、暴力やプラモデルを壊すなどの嫌がらせを日常的に行っていて、弟が「Aはどうして自分の事が嫌いなの?」聞くほどです。二つ下の弟に対しても、エアガンで撃ったりしてます。
さらに、事件当時には日常的にタバコも吸うような状態で、問題行動が目立ちます。

両親や周囲の人間はこのAの問題行動については、どう考えていたのだろうか?と・・・
事件の原因は性的興奮に結びついたサディスティックなメンタルの部分だと思われるのだけど、もし、この問題行動に対して何らかのケアを行っていたら、もしかしたら、ここまでメンタルの問題は悪化する事はなく、事件は起きなかったのではないか?と考えたりしてしまいます。

それからこの本、自体についてですが、事件が起きたのが1997年、この本を書き始めたのが多分、2013年頃だと思います。(溶接工を辞めてから自分の物語を書きたいと思うようになったと本文中で記載があります)
なので、事件から16年を過ぎてから書き始めた事になります。
本文中でも、記憶の断片をつなぎ合わせて、と書いています。

人間の記憶はいい加減な物で、無意識に改竄されたりする事があります。
さらに、出版にあたり、出版社側の要望などもあったかもしれません。

特に、事件当時、Aがどう考えていたのか?どう感じていたのか?は本人にしか分からない事です。
なので、この本に書かれている事が全て正しいか?と言う部分はわからないんですよね。
文章の書き方の問題もありますが、無意識の美化や脚色などの疑いは残ります。

そのあたりは、読んだ人間が自分で考えたり、感じるしかないと思います。

最後に、贖罪とは何なのか?と言う疑問の答えはA自身が自分で見つけるしかないと思います。
ただ、一つ心配なのは、Aが極端に人とのコミュニケーションを避けている事です。
それで、果たして正しい答えにたどり着けるのか?が心配ですね。
(実際には事件の後遺症で対人恐怖症的な部分もあるかと思います)
結局、独りよがりな、自己満足になってしまわないか?と言うのが気になります。

それから、余談ですが、この本についてTVのワイドショーなどでも、取り上げているのを見ましたが、コメンテーターの人って実際に本は読まないでコメントしてるの?と思いました。

参考リンク
反省させると犯罪者になります
あなたの中の異常心理
少年犯罪の深層・・・家裁調査官の視点から
怪しいPTSD 偽りの記憶事件
悪魔のささやき
少女たちの迷走-児童自立支援施設からの出発
心理学化する社会

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コメント

あとゴーストライターが書いた可能性も捨てきれません。「沢山の引用がちりばめられている}のが引っかかります。文章は素人とプロが書いたそれには明確な差が出る、と思っています。

投稿: アナベル・加トー少佐 | 2015/06/25 20:18

怖いもの見たさもあるかもしれません、一方じゃ「売名行為」や「自分は不幸な世界に生きた」というような
「かまって行為」もあるかもしれません
複雑なのは、犯罪者が書いた本は、後に映画化されたものや、それに美化されたものもある(例 仁義なき戦い)ただ当の本人が、「俺は惨めだった」と言う内容で
締めくくっている、この「元少年」はどう締めくくりたいのか、
「僕はかわいそうな中で生まれた」
という中で書いたならば、「被害者のことを考えろ」と言いたい
もうひとつ、この事件が発生したときに「子供がこんな
残酷なことをするわけない」とコメントした、著名な詩人の「感想」を聞きたいけどね

投稿: 荒木 | 2015/06/26 11:50

アナベル・加トー少佐さん、荒木さん、こんばんは

アナベルさんへ>
確かに、第一部と第二部で少し文章の書き方が違うような気もします。第二部の方が引用や比喩などが控えめになっているような気がします。
ただ・・・もし、ゴーストライターだとしたら、あまり上手じゃないかなとも思いますね。

荒木さんへ>
お金の流れを見ないとなんともいえないですが、Aは人間関係で仕事を辞めてます。能力の問題ではなく、普通のコミュニケーションができないとか、家庭的な雰囲気になじめないと言うような事で結果的に仕事を辞めてます。

この為、会社勤めなど、対人関係が必要な仕事はできないと考えて、文章で生活しようと考えているかもしれません。ただ、その方法として、この本を書いてしまったのなら批判されるべきでしょうね。

どうも、支援者というか、周囲に相談できる人間がいなくて、独善的な判断しかできないのかもしれませんね。

投稿: ASKA | 2015/06/26 22:34

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