大阪市中央区東心斎橋通り魔男女殺人事件その6(一審死刑判決)
男女2人が刺殺された通り魔事件で、殺人罪などに問われた無職男性被告(40)の裁判員裁判の判決が6月26日、大阪地裁であり、裁判長は求刑通り死刑を言い渡したとの事。
判決によると、被告は12年6月10日午後1時頃、大阪市中央区東心斎橋の路上で、音楽プロデューサー男性(当時42歳)と、スナック経営女性(同66歳)を包丁で刺して殺害するなどした。
公判で被告は、「頭の中から『刺せ』と声が聞こえた」などと述べ、刑事責任能力の程度が争点になっていた。
検察側は「幻聴の影響は乏しかった」として完全責任能力があったと主張。
弁護側は「以前に使っていた覚醒剤の影響で、(法律上、刑が減軽される)心神耗弱状態だった可能性を否定できない」と訴え、死刑を回避するよう求めていた。
裁判長は「無差別殺人は極めて残虐で、死刑を回避する理由が見いだせない」として、被告に求刑通り死刑を言い渡したとの事。
裁判長は判決理由で、被告には犯行当時、覚醒剤使用の後遺症による幻聴があったことは認めながらも、犯行への影響は限定的で、完全責任能力があったと判断したとの事。
検察側はこれまでの公判で、幻聴の影響は乏しく、完全責任能力があったと主張。「殺人の中でも悪質で残虐性が高く結果も重大」として死刑を求刑したとの事。
一方、弁護側は「覚醒剤の後遺症による幻聴に強く影響されている」とし、犯行当時は刑が軽減される心神耗弱状態だったと反論。突発的な犯行で計画性はなく、無期懲役でも社会復帰の可能性はゼロに近いとして死刑回避を求めたとの事。
一審判決は「死刑」ですね。
どんな事情があったにせよ、まったく無関係の罪の無い人を2人も殺害しては、死刑はやむを得ないと思います。
ただね、こんな風になってしまう人って、この人だけでは無いと思うんですよね。
非行、暴走族、暴力団、覚醒剤、服役と絵に描いたような転落人生です。
この非行、暴走族、暴力団の流れは本人の甘えと言えば、甘えでしょうね。
ただ、この後の覚醒剤については、本人だけを責められないと思います。
覚醒剤を使ってしまった事は本人の甘えでしょう、でも、そこから立ち直るには、本人だけの力では、なかなか立ち直れないのが現実ですよね。
アルコール依存症、ギャンブル依存症も厳しいですが、とりわけ覚醒剤の依存症は強烈です。
この被告も覚醒剤で2度服役してます。
しかし、、2度目に刑務所を出所した直後に自ら薬物依存者の支援施設に入所してます。
なので、なんとか断ち切りたいと言う思いは強かったのだと思います。
ですが、短期間で「自分に合わない」と退所してますね。
このあたりで何か、自暴自棄に向かうような何かがあったのかな?
その一方で、周囲の人間は支援や援助しようと動いています。
元上司は現金20万円を振り込んでますし、親族も薬物依存者向けリハビリ施設の家族会に入り、支えになろうと準備していた。
そして、大阪の友人を頼って大阪に行って歓迎されるのに、なぜか、そこでも、仕事の世話をしてもらえないと、仕事の話もしてないのに、自分で完結してしまって、この事件を起こしている。
結局のところ、事件へ向かう理由がはっきりしません。
覚醒剤を止められないと言う、不安感などあったのかな?
あるいは、関係妄想などがあったのか?
やはり、この事件を防ぐタイミングとしては、出所後の時期しかなかったと思うけど・・・
実際には多くの人が支援や援助をしていたり、しようとしているわけで、それを受け入れられない被告人自身に問題があったように思いますね。
薬物依存者の支援施設を退所してしまったのが、一番の間違いだったかな。
しかし、支援施設を責めるわけでは無いんですよ。
アルコール依存症の断酒会なども、入会すれば、誰でも助かると言うわけではなく、入会しても断酒できない人はいますからね。
だから、退所してしまった理由は単純な物では無いと思います。
死刑判決はやむを得ないと思いますが、次にこんな事件が起きないように、関係各所はこの事件がなぜ起きたのか?検証する必要があると思います。
最後に亡くなったお二人のご冥福をお祈りします。
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コメント
読解力不足のためか、記事内の弁護側の主張「無期懲役でも社会復帰の可能性はゼロに近い」から「死刑回避」というのが理解できないです。
医療を受けさせ無罪放免を狙ったのでしょうか。
依存症でも性格でも本人に治す気がなければ治らないものです。
周囲がいい人ばかりだったからこそ、自分が惨めで窮屈で、だけど察してくれと甘えて…。
まるで親に八つ当たりする思春期です。
教師、警察官、近所の人、保護司、精神科医、カウンセラーetc
こういう職業でも、親代わりになって徹底的に付き合いながら育て直してくれる「他人」は本当に稀です。事件に巻き込まれたり変人扱いされたりする危険がありますから。
となると、施設入所にある程度だけでも強制的にいなくてはならない期間があるといいのでしょうか。ただ、治す気もない人がいると周囲への影響が怖いし…。
理想通りでない自分と現実を受け入れるのが必要なのでしょうね。
少年院や刑務所にまでいたらないけれど再犯の恐れがある場合は、そういう教育プログラムを受ける、という刑罰があると少しはマシ…になるかもしれません。
投稿: つれづれ | 2015/06/27 01:20
死刑にせず無期懲役にしても、社会に戻らないから、再度一般人に危害をおそれるおそれはない。
だから死刑にせず、無期懲役にしてください。
という意味でしょうね。おそらく。
投稿: FA | 2015/06/30 15:36
" 無差別殺人の精神分析" と言う本を読みました。著者は精神科医。無差別大量殺人の加害者の心の闇を解き明かそうという本です。私としては、大変参考になりましたので、皆様にもおすすめします。 動機を社会全体に対する復讐と特定の集団に対する復讐とに分け、前者に秋葉原事件、池袋通り魔、下関通り魔を、後者に池田小事件、コロンバイン高校、ヴァージニア工科大学を取り上げています。池袋通り魔だけは犯行時、統合失調症を発症していた可能性が高いが、他の加害者にはそれは見られないとのこと。そして加害者達に共通の特徴は強い自己愛、欲求不満、他責的傾向。自己愛が傷つくコトを極度におそれる。対象喪失、つまり失恋や離婚、失業や受験失敗を受け入れるコトが出来なくて拡大自殺である無差別大量殺人に繋がってしまう。
因みに今この自己愛が肥大した人が増えていて、事件を起こさない大多数は新型鬱病を発症しているそうです。
投稿: まーぷる | 2016/01/31 21:10
二審判決は無期懲役です。
平成24年6月、通行人の男女2人を無差別に刺殺したとして殺人罪などに問われ、1審大阪地裁の裁判員裁判で求刑通り死刑を言い渡された無職、男性被告(41)の控訴審判決公判が3月9日、大阪高裁で開かれた。
裁判長は「犯行の計画性は低く、精神障害の影響も否定できない。死刑がやむを得ないとはいえない」と述べ、1審の死刑判決を破棄、無期懲役を言い渡したとの事。
裁判員裁判の死刑判決が高裁で破棄されたのは4例目。犠牲者が複数の事件では2例目となるとの事。
判決理由で裁判長は、被告に覚醒剤中毒の後遺症による精神障害があったと認定したが「考えを支配し、無批判に犯行を行わせるほどの影響力はなかった」として1審同様に完全責任能力を認定したとの事。
その一方で、凶器を購入したのが犯行直前だったことなど計画性が低かった点を、被告に有利な事情として重視したとの事。
将来への強い不安から自暴自棄になったという動機面についても、1審が「自己中心的」と批判したのに対し、「被告なりに更生しようとしており、くむべき点がまったくないとは言い切れない」としたとの事。
また、「精神障害の症状も看過できず、幻聴が犯行に及ぼした影響も否定できない」として刑を科する上で考慮すべきだと指摘したとの事。
「死刑が究極の刑罰で真にやむを得ない場合に限って許されるという基本原則を適用すると、死刑の選択は躊躇せざるを得ない」と結論づけたとの事。
27年6月の1審判決は「無差別殺人の実現に向けた強固な殺意があり、刑事責任は極めて重大」と死刑が相当だとしていた。
弁護側は控訴審で「被告は犯行時、心神耗弱の状態にあった」と改めて死刑回避を訴えていたとの事。
こんなところですね。
一審の死刑判決を破棄して、無期懲役となりました。
まー死亡したのが2名なので、死刑と無期懲役のボーダーライン上ですから、どちらの判決になってもおかしくはありませんね。
減刑の要素としては
1)計画性が低かった。
2)動機についても「被告なりに更生しようとしており、くむべき点がまったくないとは言い切れない」
3)「精神障害の症状も看過できず、幻聴が犯行に及ぼした影響も否定できない」
それぞれ、そうなんだろうけど・・・私としては2)の「被告なりに更生しようとしており、くむべき点がまったくないとは言い切れない」の評価は分かれるかな?と思いますね。
確かに、被告は自分で薬物依存者の支援施設に入っているけど・・・それを自分で退所してしまうし、他にも支援しようとする家族や知人がいるのに、なぜか、この事件を起こしてしまった点をどう評価するか?なんですよね。
自分の誤解によって自分自身を絶望に追い込んで、自己中心的に自暴自棄になっての犯行と言うのが、一審の判断だったんですよね。
今回は、その自暴自棄になった理由が「精神障害の症状も看過できず、幻聴が犯行に及ぼした影響も否定できない」と言う事で減刑される事になったようですね。
多分、遺族の意向を汲んで検察が控訴するでしょうから、最高裁での最終の判断になりそうですね。
続報を待ちましょう。
投稿: ASKA | 2017/03/09 20:10
最高裁判決は控訴棄却で二審判決の無期懲役が確定です。
最高裁第1小法廷は12月2日、検察、弁護側双方の上告を棄却した。2審判決が確定するとのこと。
第1小法廷は、今回の事件について、場当たり的で衝動的な犯行だったことがうかがえると指摘。「無差別殺人遂行の意思が極めて強固だったとは認められず、生命軽視の度合いも甚だしく顕著だったとはいえない」としたとのこと。
また、死刑が究極の刑罰であり、その適用は慎重に行わなければならないという観点と公平性の観点を踏まえ、犯情を総合的に評価した結果、死刑を回避した2審判決については「著しく正義に反すると認められない」と判断したとのこと。
こんなところですね。
結局は二審判決の無期懲役と言う事になりました。
難しい判断とは思うのですが、遺族、被害者寄りに考えれば、身勝手な理由で罪の無い人間を二人も殺害しているわけで、死刑と言うのは納得できるところだと思うんですよね。
一審の裁判員裁判では死刑となっています。
で控訴審では一転、無期懲役となりました。
被告に覚醒剤中毒の後遺症による精神障害があったと認定したが「考えを支配し、無批判に犯行を行わせるほどの影響力はなかった」として1審同様に完全責任能力を認定した。
一方で「精神障害の症状も看過できず、幻聴が犯行に及ぼした影響も否定できない」としてます。
で減刑の決め手は「被告なりに更生しようとしており、くむべき点がまったくないとは言い切れない」と言うあたりですね。
もう一つの「計画性が無い」と言うのは、まー誰が見てもそうかな?と思う部分ではあるけれど、幻聴の件は本人にしかわからない事なんですよね。
そして、以前の言動では「幻聴は無い」と申告していたりします。
もう一つの更生の件も、入るには入ったが、短期間で退所していて、更生の意欲がどの程度だったのか?と言うのも、はっきりしませんね。
疑わしきは被告の有利にと言う、推定無罪の原則と言えばそれまでなんですが・・・
でも、そんな事は一審の時も考慮された事なんじゃないのかな?と言うのが素朴な疑問だったりします。
結局、裁判員裁判って必要なの?と言うところに行きつきますよね?
投稿: ASKA | 2019/12/03 20:53
個人的に言えばASKAさんの言う通り
過去の判例に基づけば2人殺害では
ボーダーライン上なので
無期でも死刑でもおかしくない
確率でいうと計画性が認められない限りは
無期の方が可能性は高いでしょう
ただその中で一審では裁判員裁判の影響を汲んで
死刑判決が出たと
ただまあ、結局二審で無期になったのは
過去の判例をひっくり返すような
故意の悪質性が認められなかったって事なんでしょうね
私は個人的にはもう形だけの裁判員制度なんて
時間の無駄だからいらないと思います。
今回の判決は納得がいかない人も多いと思いますが
結局のところ良くも悪くも
判例主義というのはブレないので
杓子定規だとか叩かれますが
それはそれでよいと思うんです
民意(と言う名の感情論)が過去の判例を
毎回覆すような事になっては
弁護士や検察がプロの裁判官ではなく
司法の素人である裁判員を
悪く言えば「どれだけ扇動できるか」で
コロコロ判決が変わってしまうと
いうリスクもあるわけで…
裁判員制度という枠で影響をどうこうというより
飲酒運転の厳罰化や少年犯罪の対象年齢引き上げなど
実際に民意で変わった実績があるのだから
司法をまず変える努力を我々はするべきなんじゃないのかなあと思いました。
例えば薬物使用や精神疾患からの犯罪は
現状、心神喪失で無罪(実際は司法上無罪なだけで無罪放免ではないですが)になりがちですが
保護者や配偶者などの賠償責任を問えるようにするとか…悲しい話ですがそれくらいの義務を課して
親族が本気で薬物中毒者や精神疾患者の管理や
回復に意欲的に勤めるようにしないと
こういう事件は後を絶たないかもしれませんね
投稿: あああ | 2019/12/07 00:23