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2015/07/30

山口県周南市連続5人殺人事件その7(一審死刑判決)

殺人と非現住建造物等放火の罪に問われた無職男性被告(65)の裁判員裁判の判決が7月28日、山口地裁であった。
裁判長は「強固な殺意による残忍な犯行。被害者は5人と結果は極めて重大で、遺族の処罰感情は峻烈(しゅんれつ)だ。どの被害者にも落ち度はなく、極刑は免れない」と述べ、求刑通り死刑を言い渡したとの事。
弁護側は即日控訴したとの事

被告は「(5人のうち)4人の足と腰は殴ったが、頭は殴っていない。火はつけていない」と起訴内容をすべて否認し、無罪を主張していた。

弁護側も決定的な証拠は皆無とし、被告が事件当時、妄想性障害の影響で心神喪失か耗弱の状態だったと訴えていたとの事。

裁判長は、被告が逮捕当初は殺害と放火を認めていたとし、「被害者に対する強い怒りの感情を抱いていた」と動機を指摘。
事件当時は妄想性障害があったものの、「犯行は被告の性格によるもので、犯罪と認識し、道徳や倫理など社会のルールに合わない行為であることも十分認識していた」と完全責任能力を認定した。

その上で、「身勝手な犯行で地域に与えた影響も大きく罪責は重大。極刑は免れない」と結論付けたとの事。

判決によると、被告は両親が死亡した04年頃から、近隣住民から挑発や嫌がらせをされているという思い込みを抱き、報復を考えた。13年7月21日夜から22日早朝にかけ、同市金峰(みたけ)で、同じ集落の近隣住民5人をあらかじめ用意した手製の木製棒(長さ約56センチ、重さ約600グラム)で殴るなどして殺害し、住宅2棟に放火し、全焼させた。

被告は公判で、全ての起訴事実を否認したが、判決は、被害者1人の自宅のマットに付着していたDNA型の一部が被告の型と一致したことなどから「常識に照らして犯人と認めるのに十分」と指摘したとの事。

さらに、「妄想性障害」と診断した精神鑑定結果を採用した上で、妄想は被害者への報復という動機の形成に影響したものの、「どのような方法で報復をするかは、被告の元来の人格に基づいて選択したこと」と述べ、完全責任能力があったと結論づけたとの事。

判決はまず、被告が事件を実行したかどうかを検討したとの事。
「凶器とみられる木の棒に被告の指紋がついていた。現場は農山村地域で、被告がたたいた直後に、第三者が殺害する可能性は考えられない。死亡後に出火しており、失火の可能性もない」と指摘したとの事。

そのうえで、捜査段階の検察官調書について「『後頭部に近い部位をたたいた』と動作を交えて説明しており信用性がある」と評価して、「被告が殺害、放火したと認められる」と結論づけたとの事。

「被告には5人を殺害する動機があり、その他の人物が犯行を行ったとは考えられない」として、起訴事実を認定した。

続いて、当時の刑事責任能力の有無を判断したとの事。
両親が他界した2004年ごろから、近隣住民がうわさや挑発、嫌がらせをしていると思い込み、こうした誤った妄想が一定期間以上続く「妄想性障害」を発症しているとの鑑定結果を採用した。
「この妄想が動機を形成する過程に影響はしたが、殺人や放火を選択したのは被告の性格によるもので、妄想の影響ではない」として完全責任能力を認めたとの事。

最後に死刑を選択した理由を説明した。
「被害者の口の中に木の棒を入れて圧迫するなど、凄惨さ、執拗さが際立っている」と厳しく批判したとの事。
「どの被害者にも殺害されるような落ち度がなく、被告に前科がないことなどを考慮しても極刑は免れない」としたとの事。

こんなところですね。
ポイントを整理すると
1)物的証拠
凶器とみられる木の棒に被告の指紋がついていた。現場は農山村地域で、被告がたたいた直後に、第三者が殺害する可能性は考えられない。死亡後に出火しており、失火の可能性もない」
被害者1人の自宅のマットに付着していたDNA型の一部が被告の型と一致したことなどから「常識に照らして犯人と認めるのに十分」と指摘。

と言う事で、被告の犯行と認定しています。指紋、DNAの一部、動機があるので、「常識に照らして犯人と認めるのに十分」と言うのも不自然とは思えないですね。

2)自白供述
被告が逮捕当初は殺害と放火を認めていた。捜査段階の検察官調書について「『後頭部に近い部位をたたいた』と動作を交えて説明しており信用性がある」と言う事で逮捕当初の自供に信用性があると判断しています。

否認したのは、逮捕後時間が経過してからなんですよね。その点では無意識の記憶の改竄があったのかもしれませんね。
その理由が極刑を避けたい為なのか?それとも、自分自身がそんな事をするはずが無いと言う思い込みや願望なのかは分かりません。

3)刑事責任能力
両親が他界した2004年ごろから、近隣住民がうわさや挑発、嫌がらせをしていると思い込み、こうした誤った妄想が一定期間以上続く「妄想性障害」を発症しているとの鑑定結果を採用した。
「この妄想が動機を形成する過程に影響はしたが、殺人や放火を選択したのは被告の性格によるもので、妄想の影響ではない」として完全責任能力を認めたとの事。

ここ、すごく重要なポイントだと思うのですが・・・当時報道されていた、嫌がらせとか、トラブルと言うのは、実は被告人の一方的な思い込みだったと言う事なの?

実際に関係妄想状態で近隣トラブルを起こす人と言うのは居ますね。
それで、全てが妄想で、その妄想の結果、5人を殺害する事件を起こしてしまったと言う事なんですか?

もし、そうであれば、この事件を防ぐ方法が少し変わってきます。
つまり、被害者側は何もしていないので、被害者側がトラブルを意識するのが難しいですよね。
被害者側からすれば「変わり者」と関わり合いたくないと言う事になるかもしれません。

しかし、そうして距離を取っても、結局、被告側が恨みや怒りを募らせてしまうわけですよね。
なので、この事件を防ぐ方法としては、「妄想性障害」を治療する以外に方法がありません。

しかし、一人暮らしの被告に自分自身の異変を自覚しろと言うのは難しいと思います。
肉親や親しい友人がいて、被告の異変に気づいて、被告を説得して精神科やメンタルクリニックを受診させないと、治療に結びつきませんよね。

あるいは、周辺住民が警察などに通報すると言うのもあるかもしれませんが・・・保護入院させるほど、異常な状態でもないから、これも無理でしょうね。

悲しいけど、この事件を防ぐ方法が思いつきません。
年老いた両親の面倒を見るために田舎に戻る事が悪い事とは思えないですが・・・
その時に地域に溶け込めずに孤立した事が最大の原因だったと言う事なのかな?
近くに話し相手になるような同年代の人物とか、離れていても、頻繁にメールでもできる友人でもいれば、この事件は起きなかったかもしれませんね。

そう考えると、年をとってから友達や知人のいない土地に移り住むと言うのは難しいかもしれませんね。

4)量刑
5人を殺害してますから、特別な事情でもなければ、死刑は当確でしょう。
2人だったら、無期懲役の可能性もあったかもしれません。しかし、犯行が凄惨で執拗と言う事なので、それでも死刑となったかもしれませんけどね。

しかし、平成の八墓村と言われた、この事件は特殊な事件ではないかもしれませんね。
田舎でなくても、孤立した人間が関係妄想とか妄想性障害になったりすると、暴発する可能性がありそうですね。

なので、私が思いつく唯一の対策は「健康診断と一緒にメンタルチェックも行う」と言う方法ぐらいですね。
年に1度の健康診断は全国的に行われているはずなので、その中で体の健康だけでなく、心の健康もチェックすると言う事です。
実際にはコストの問題もあるし、実現には効率的に低コストで行う方法を考えないといけませんね。

亡くなった5名の方のご冥福をお祈りします。

参考リンク
山口県周南市連続5人殺人事件その6(続報)
精神科ER 緊急救命室

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コメント

健康診断に精神面も加える、いいかもしれませんね
あれは医師診察もチェックシートに基づいてやってますから、「キチガイ扱いするのか!」などという御仁にも「これを聞くように決まってるんですよー」という具合にできる
ただし、異常が出ても受診するかどうかは本人次第になるわけですし、そもそも健康診断に参加しない人も結構いるわけなので、その辺りの制度作りも加えるとなると大変になってきそうです

投稿: つれづれ | 2015/08/01 00:16

>近隣住民がうわさや挑発、嫌がらせをしていると思い込み、こうした誤った妄想が一定期間以上続く「妄想性障害」を発症しているとの鑑定結果を採用した。

これさぁ……近隣住民が被疑者に嫌がらせしてたのを否定してんだよねぇ……。

俺思うけど嫌がらせはあったと思う……でなければ放火殺人なんかやらないって。

それはさておいて40超えて田舎暮らしは絶対に無理だよねぇ……田舎って他所から来た奴を排除するし。

投稿: 大高忠敬 | 2015/08/06 22:48

つれづれさん、大高さん、おはようございます。

つれづれさんへ
そうですね、無料でも、受診しない人がいますから、受診率を上げる方法も考える必要がありそうですね。

大高さんへ
これは、けっこう難しいですね。
関係妄想状態になると、身の回りの出来事が全て、自分に向けられた悪意の結果と思い込んでしまいます。

周囲の誰かの会話が自分の悪口に聞こえてしまったりします。
なので、この状態になった後は、もう全てが自分への嫌がらせと思ってしまったとしても、不思議では無いのですが・・・

この事件で報道された情報は、全てがこの妄想状態になった後の情報とは限らないと思うんですよね。

いずれにせよ、この妄想状態になるまでには、相当期間に渡り強いストレス状態だったと思います。
そのストレスの原因が何だったのか?そのあたりが知りたいですね。

投稿: ASKA | 2015/08/07 07:02

大高さんの嫌がらせにも通じるかもしれませんが、健康診断をやってること自体を知らない人も多そうですね。
自治会という名のご近所ネットワークから弾き出されてしまうと、回覧板が回ってこないなどの弊害がありますから。

以下、ストレスに関する妄想です。
前記事にあった、40代の若い男手ということで地域の様々な力仕事にかり出されていた、というのは容易に想像できます。
そしてそれは嫌がらせではないのです。地域の人にとってそれは当たり前のことであり、悪意などないのですから(高い所の物を取るのに背が高い人が近くにいればその人に頼むのと似た感覚かと思われます)。
被告が地域に溶け込む目的もあり頼まれ事を果たしても、その労働に見合う感謝や対価は得られなかったのでしょう。当然のことだから。むしろ慣れないことをやった結果に対してダメ出しされることも多かったと思われます。
ダメ出しの言葉で「草刈りもまともにやれないなら草刈り機でやれ。金ならあるだろう」となるわけです。でも言った本人にタカろうという考えはない。
うんざりした被告が全ての力仕事を引き受けることは出来ないと断れば、老人にできないことをやらせようとするその行為こそ悪意ある嫌がらせである、と地域の人の間ではなるわけで。
結果、地域の人との交流を減らした被告に対し、地域の人の間で噂が流れるのです。
「あそこの家の倅は○○もろくに出来ない」「老人に力仕事押しつけてる」「ひきこもって何考えてるんだかわからない」などなど。
これも地域の人にとっては事実を元にした井戸端会議であり、悪口などではない。挑発のつもりもない。
被告側と地域の人側とで価値観が徹底的に違ったわけです。
しかしいくら悪意がないとしても、こんなことを1人に対して大人数でされたら、結構なストレスがかかります。
今回は裁判員裁判ですが、地域が変わる高裁や最高裁になると嫌がらせについての判断が変わってきそうな気もします。

被告が両親の死後、どこかに引越できていたら、と思います。もうその時点でストレスも感じていたでしょうから。
あるいは老人世帯への声かけを行政が月に一度くらいでやってたら、話し相手として少しはガス抜きになったかな。
少しでも地域外との接触があれば、結果は違ったかもしれませんね。

投稿: つれづれ | 2015/08/07 23:54

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