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2017/03/24

栃木県宇都宮市糖尿病男児除霊死亡事件その2(一審判決)

難病が治せる「龍神」を名乗り、1型糖尿病だった宇都宮市の小学2年の男児=当時(7)=のインスリン投与を中止させて衰弱死させたとして、殺人罪に問われた栃木県下野市、建設業、男性被告(62)の裁判員裁判の判決公判が3月24日、宇都宮地裁で開かれ、裁判長は懲役14年6月(求刑懲役15年)の判決を言い渡したとの事。

 

起訴状によると、男児の両親から相談を受け、インスリンを投与しないと死亡する可能性があると知りながら、平成27年4月7日ごろから男児の両親にメールや口頭で投与中止を指示し、同27日に死亡させたとしている。

 

検察側は「被告はインスリンを投与しないと死亡する危険性を認識していたのは明らか」とした上で、両親から計422万円を受け取ったことなどを挙げ、「両親の不安をあおって忠実に従わせようとした行為は悪質」と指摘していたとの事。

 

これに対し、弁護側は「被告は治療が正しいと信じていた」と殺意を否認し、「被告は(インスリンを投与する)医者の指導に従うかどうかは両親の自由と伝えていた」と無罪を主張していたとの事。

 

被告は初公判で、裁判長に向かって「八百長」などと言い、退廷を命じられ、「裁判員と傍聴人だけが大衆理論を持っている」などと検察側と弁護側の被告人質問を拒否。母親への証人尋問では、被告自ら質問したいと希望する場面もあった。

 

被告は27年11月、殺人容疑で逮捕された後、鑑定留置を経て、昨年6月に起訴された。男児の両親は保護責任者遺棄致死容疑で書類送検され、起訴猶予処分となっている。

 

裁判長は
「独自治療を引き受けた当時から、男児にインスリンを投与しなければ死亡する危険性があることを認識していた。」
「難病治療をしてきたという権威を守り、金銭を得るためで、非難の程度は重く反省の態度を示していない」
「『インスリンは毒である』などと言い投与の中止を両親に指示した」
「被告は主導的な立場にあり、犯行態様は残酷で悪質性は高い」
「インスリンを投与しないと死亡する危険性が高いと認識しながら、両親に指示して投与させなかった」
「冷静な判断ができない状態の母親を意のままに動くよう強いていた」
「徐々に弱って死んでいった男児の肉体的苦痛は相当で、残酷というほかない」
と指摘したとの事。

 

公判で弁護側は「被告は男児を助けようと思っており、殺意はなく、男児が死亡することを予見できる医学的知識を持っていなかった」として無罪を主張していた。

 

こんなところですね。
責任能力が認められて、更にインスリン治療をしなければ男児が死亡する事を知っていたと認定されましたね。
その上で、被告の目的を「権威を守り、金銭を得る為」と断じました。

 

ほぼ、検察側の主張を全面的に認めた結果なんでしょうね。
求刑懲役15年にたいして、6ヶ月分を割り引いて、判決は懲役14年6ヶ月ですから、やはり「悪質」と言う判断でしょうね。

 

判決はほぼ予想通りでしたが、通常なら求刑から判決は2割ぐらい割り引かれるのが、ほぼ割引なしの判決ですから、予想よりも重かったぐらいですね。
とは言え、お金の為に将来のある7歳の子供を見殺しと言うよりは、治療を中断させる事で間接的に死亡させていて、より、積極的な犯行ですから、無期懲役ぐらいでも良いかも?と思われる事件です。

 

この手の事件では、「現代医学で治療できない」とか絶望的な状況で「藁を掴む」ような心境で、非科学的な方法に頼り、それが悪用されて事件になる事が多いと思います。

 

その意味では、今回の事件はインスリン治療さえしていれば、生命の危機といった危険な状況では無いのに、ご両親、特に母親がこの龍神の治療に頼るように追い込まれてしまったのには、何かメンタルの問題が別にあったのかもしれませんね。責任感が強い方だったのかな?
判決では「冷静な判断ができない状態の母親を意のままに動くよう強いていた」と指摘してますから、何か洗脳的な手法があったのかもしれません。

 

父親の方は途中で被告の高圧的な態度に嫌気して、距離を置いているようです。

 

迷信や神秘を信じるか?と言うあたりは、育った環境や受けた教育などによって、人それぞれだと思います。
なので信じやすい人は信じてしまうんでしょうね。

 

ではどうやって、この事件を防ぐのか?と言うあたりが簡単なようで難しいですね。
「そんなの迷信だよ」とか「非科学的だよ」と言っても、当時の母親の耳に言葉は入らないと思うわけです。
なぜなら、母親は信じたいのだから、信じる事により、子供も「自分」も救われる。だから、言葉で単純に説得する事は難しいだろうと思います。

 

その意味では、母親や子供の心の負担を減らす方向での親子同時にカウンセリングが有効だったのかな?と思いますね。
子供が1型糖尿病になるのは原因不明であって、母親が原因じゃ無いとか、1型糖尿病でも立派に社会で活躍している人は沢山いるとか・・・
このあたりは、専門家にお任せするしかありませんね。

 

この事件では、父親も一緒に龍神治療を信じてしまったので、母親にブレーキを掛ける人間がいなかったのだと思いますが・・・
親類などには、この龍神治療の話はしなかったのかな?
お正月やお盆、ゴールデンウィークなど、親類に会うような機会があれば、話題になってもおかしくないと思います。

 

そうすれば、多分、常識的な意見を言う親族の一人や二人はいたでしょう。
親類に看護士など医療関係の人間がいれば、尚更、批判する意見もあったと思いますが・・・

 

現代医学にもセカンドオピニオンなどあるので、この龍神治療についても、信頼できる親類や友人などに相談していたら、少しは冷静になれたのだろうか?
それは難しいかもしれません。のめり込んでしまった後では、批判の言葉は耳に入らないかもしれませんね。

 

その意味では、子供が1型糖尿病と判明した時に、両親に対してのメンタルケアが有効だろうと思いますし、これ以外に方法が思いつきませんね。
この時期なら、医師やカウンセラーの言葉は耳に入ったはずで、そうすれば、龍神治療にすがるような事はなかったのではないかな?

 

このあたり、担当する医師にも何らかのガイドラインや手引きなどあると良いかもしれませんね。

 

亡くなった男児のご冥福をお祈りします。

参考リンク
栃木県宇都宮市糖尿病男児除霊死亡事件(繰り返される悲劇)

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コメント

「1型糖尿病」と検索しましたら「日本IDDMネットワーク」というNPO(1995年発足)のHPが上位にありました。そのサイト内で全国に患者会や家族会が存在すること、自己免疫性疾患であり遺伝や感染は否定されていることがわかります。
わざわざ遺伝や感染について書いてあるということは、親のせいとか伝染するとかいう誤解が根強いのでしょう。もしかしたら母親や男児が親戚やご近所さんなどにそういった心ない言葉をかけられていた可能性もあります。
また、患児を対象としたサマーキャンプもあり、これは同じ疾患の同世代と交流することで結構な心の支えになるそうです。こういった案内は1型糖尿病を診る病院ならパンフレットやチラシくらいは届いているはずなので、相談しやすい医療関係者に相談してみるとよかったかもしれません。

なお、1型糖尿病の著名人としては
国内では岩田稔さん(野球選手)、杉山新さん(元サッカー選手)、大村詠一さん(エアロビック元世界チャンピオン)、岡田果純さん(砂漠マラソン敢行)
海外ではスコット・バープランクさん(ゴルフ選手)、ニコール・ジョンソンさん(モデル)、ビル・ガリクソンさん(元野球選手)、アール・L・バディ・カーライルさん(元野球選手)、ジェイソン・ジョンソンさん(野球選手)、クリス・フリーマンさん(クロスカントリー選手)、ゲーリー・ホールJr.さん(水泳選手)、チャーリー・キンボールさん(カーレーサー)
などがいるそうです。
海外の方が多いのは、公表にためらいがないのが一因と考えられます。
また、使用する薬剤や体調管理の面で持病が知られやすかったり、製薬会社がスポンサーについたり、自らが広告塔になって理解を深めようとしたりすることが多いために上記のように知られている1型糖尿病の人物はほとんどがスポーツ選手です。岩田選手もこの事件を契機に本を執筆したりと、より積極的な活動をしているようです。

こういった情報はインターネット検索で出てきますが、信憑性が両親にとってどうだったか?という所ですね。
人は信じたいものを信じますから、「一生向き合う」のを前提としている患者会・家族会や同じ疾患の著名人より、「根治させる」と謳う被告の方が良かったのでしょうか?
ですがそれって、両親ともに「持病がある我が子」に向き合う覚悟がなかったのかな・・と勘繰ってしまいます。

投稿: つれづれ | 2017/03/31 18:56

上記で覚悟云々と書きましたが、以下は私見です。
「お母さんのせい」というのはどんな疾患にも遺伝要因と環境要因が関わっているので、1型糖尿病は自己免疫疾患ですが完全に誤りとは言えません。
しかし親の遺伝が出るのは疾患だけでなく身体的特徴もそうです。もっと背が高かったら、もっと足が速かったら、もっと格好良かったらetcと思春期くらいまでは遺伝的な要素を恨んだり羨んだりするのは誰しも経験があると思います。成長するにつれ、コンプレックスながらそれも自分として受け入れたり、対策をしたりして克服していこうとします。
それを親のせいと恨むのは子供らしい発想ですが、それをぶつけられた親はどんな対応が必要でしょう?親も同じコンプレックスを抱えていると引け目を感じるかもしれませんが、対応方法を教えたり肯定的な返答をしたりするのが一般的で、いきなり神頼みだけするのは少し変ですよね。

彼(男児)が他の子と違うことを否定的に感じ「注射をしたくない」と訴えたのは、「病気を根治させたい」というよりも「自分が他の子より劣っているのではないか?」という不安があったためなのではないでしょうか?
それなら、少し早いですが成長のチャンスでもあったんです。
不満と不安をぶつけられた母親は咄嗟には対応できなかったかもしれませんが、それを聞いた父親は彼にどういう言葉をかけたのでしょう?「お母さんのせいじゃない」「注射のことでいじめられたのか?」「お父さんとお母さんはお前に意地悪をしたいんじゃなくて、生きていてほしいから注射をしようと言っている」なんて言えていたら・・なんて後からなら何とでも言えますが。

投稿: つれづれ | 2017/04/01 01:57

つれづれさんへ、いつもフォローありがとうございます。

やはり、この事件は防げたのではないかと思うと、悔しいです。

ポイントは子供と両親の両方に対する、ケアなんでしょうね。

病院によって、初めての出産時に両親に講習会みたいな事をしている病院もあるようですから、このあたりで親になる為の心構え的な話をしても良いかもしれませんね。大きな病院でないとなかなかできないかもしれませんが・・・

投稿: ASKA | 2017/04/01 09:18

控訴審の報道を見逃してました。

***控訴審判決(2018年4月26日)***
控訴審判決公判が26日、東京高裁で開かれた。裁判長は一審判決を支持し、被告の控訴を棄却したとのこと。

弁護側は「(被告は)インスリンを投与しないと死亡する危険性を認識していなかった」などとして、無罪を主張していたとのこと。

裁判長は「母親はインスリンを打ち続けなければ(男児は)生きられないと被告に伝えたと証言している。被告が死亡の危険性を認識していたことは明らか」とし、未必の故意があったと認定したとのこと。

別の報道では
裁判長は「母親は、投与を続けなければ生きられないと被告に伝えたと証言している。未必の殺意を認めた1審の判断に誤りはない」と述べたとのこと。

***上告審判決(2020年8月24日)***
最高裁第2小法廷は24日付の決定で「未必的な殺意で(男児の)母親を道具として利用した」と判断、被告側の上告を棄却したとのこと。

決定は「母親はわらにもすがる思いで、難病治療を標ぼうする被告に治療を依頼した」と指摘。「被告は母親を介して両親に執拗に不投与を働き掛けた。母親は、投与という期待された作為ができない精神状態に陥っていた」と述べたとのこと。

別の報道では
「死の現実的な危険を認識していた」と述べ、死んでもやむを得ないという「未必の殺意」があったと認定したとのこと。

被告は医学に頼らずに「難病を治せる」と標榜し、母親に「インスリンは毒」「従わなければ助からない」としつこく働きかけて投与をやめさせたと指摘。「命を救うには従うしかない」と思い込んだ母親を「道具として利用」し、治療法に半信半疑だった父親も母親を通じて同調させたと指摘し、殺害行為に当たると判断したとのこと。

弁護側は「インスリンを打たないと決めたのは両親で、治療費を受け取った被告が死をやむを得ないと考えるはずがない」と無罪を主張していたとのこと。

こんなところですね。
一審判決を支持と言う事で、一審での認定内容と大きく変わる点は無いようです。
懲役14年6月が確定します。

人の弱みや願望に付け込もうとする人間はどこにでもいます。
家族の病気を治したいと言う思いを悪用させないように、周囲の人間が、それとなく見守る。
生命の危険や、法外な報酬を要求されるようなら、本人や本人に近い人へのアドバイスや警察へ相談する。
「家族の病気を治したい」と言う思いは、人類の普遍的な気持ちなので、どこででも起こりえるんですよね。
いつ自分の周囲で起きてもおかしくないです。

みんなが、そんな気持ちを持ち続ける事ができれば、この手の事件も防ぐ事ができると思うんですよね。

亡くなった男児のご冥福をお祈りします。

投稿: ASKA | 2020/08/28 00:59

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