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2017/08/19

埼玉県東松山市16歳集団暴行死事件その2(18歳少年一審判決)

昨年8月、吉見町中曽根のアルバイト少年=当時(16)=の遺体が発見され、傷害致死の疑いで家裁送致された5人の少年のうち2人が傷害致死罪で起訴された事件で、東松山市の無職少年(18)の裁判員裁判の初公判が6月26日、さいたま地裁で開かれた。

 

起訴状などによると、少年は昨年8月22日午前2時50分ごろから4時45分ごろまでの間、ほかの少年らと共謀し、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて意識混濁の状態に陥らせて川に沈め、溺死させたとされるとの事。

 

捜査関係者によると、被害者は事件前、少年らから遊びに誘われた際、東松山市内いたものの「大宮にいる」と断り、連絡にも応答しなかったという。この「うそ」が少年らの怒りを買い、集団暴行に発展したとみられる。少年の遺体は23日午前8時ごろ、全裸で下半身と上半身の左側が砂利に埋まった状態で発見されたとの事。検察側の証拠調べによると、被害者が少年ら5人と行動を共にするようになったのは事件のわずか5日前だったとの事。

 

18歳の少年について、さいたま家裁は昨年10月12日、「年長で最も発言力が強く、5人の中で主導的な立場だった」などとして検察官送致。さいたま地検は同21日に、傷害致死罪で起訴していたとの事。

 

事件を巡っては、少年5人がいずれも不登校気味で、高校中退者も含まれていたとの事。

 

初公判で少年は「間違いありません」と起訴内容を認め、弁護側は「少年院での教育が更生に必要」と保護処分が相当と主張したとの事。

 

冒頭陳述で検察側は「被告の役割は主導的であり、暴行態様は執拗(しつよう)、強烈で、死亡結果を発生させる危険性が高い悪質な行為」と強調。犯行動機について「被害者がうそを言って被告との接触を避けたことに立腹した。酌むべき事情はない」と述べたとの事。
犯行は少年院を仮退院した後の保護観察期間中だったとして、「保護処分の有効性が高いとは言えない」と刑事処分が相当としたとの事。

 

弁護側は「被告は主導的な役割を果たしておらず、死も予想していなかった。ほかの少年の暴行も止められなかった」と主張したとの事。
少年の成育歴を「複雑で安心を求められず、自分を受け入れてくれる不良仲間と行動を共にする中で、不良の価値観が身に付いてしまった」と説明し、少年院での教育の有効性を主張したとの事。

 

事件では、15~18歳の少年5人が傷害致死の疑いでさいたま家裁に送致された。主導的立場とされた18歳少年と、積極的に関与したとされた別の無職少年(17)が検察官送致(逆送)後に傷害致死罪で起訴された。当時中学3年生だったほかの3人は、初等・中等(第1種)少年院送致の保護処分となったとの事。

 

証人出廷した別の少年(16)=少年院送致=はグループ内での被害者の立場を「初めは対等に見えたが、日常的に暴力を振るわれるようになったり、万引をさせられるようになった」と証言。
被害者は「(起訴された)少年2人から暴力を振るわれるのが嫌だから、(少年の)家に行きたくない」とこぼしていたという。被害者が「うそ」をついた理由については「(起訴された)少年2人から物のように扱われているのが嫌だったのでは」と述べたとの事。

 

検察側によると、被害者への暴行は昨年8月22日午前2時50分ごろから午前4時45分ごろまで、河川敷などで続いたとされる。泳げなかった被害者は、起訴された別の少年(17)に何度も顔を水に沈められたり、5人から一人ずつ殴る蹴るの暴行を受けたという。その間、被害者は「やめてください」と大声や、うなり声を上げていたとの事。

 

証人出廷した少年は「救急車を呼ぼうと提案したが、(起訴された)少年2人に『警察にばれるから駄目』と言われて呼べなかった」と証言したとの事。
最後は意識がなくなった状態のまま、川に再び沈められ、そのまま裸のまま河川敷に放置されたとの事。

 

第2回公判は6月28日。
弁護側の証人として、少年と家族の情状鑑定を行った臨床心理士の男性大学教授と、少年の祖母が出廷。臨床心理士の男性は、少年の複雑な家庭環境が非行や事件の背景にあることを説明し、「家族の環境が改善され、母や祖母が積極的に被告の更生のために努力しようとする姿勢が見える」と少年院送致の保護処分を支持したとの事。

 

臨床心理士の男性は、少年の両親が離婚し、母が家にいない時期も長く、祖母中心に育てられたことで「母とのコミュニケーション不足があった。中途半端な養育だった」と指摘したとの事。
「非行集団に居場所を求め、依存心を満たしていた」との事。

 

傷害致死事件については「少年事件では見えや恐怖心が介在し、暴力がエスカレートすることがある」と心理的な影響を挙げたとの事。
その上で「被告には母との関係を是正したい思いがある。家族の受け入れが立ち直りへの大きな要素」と述べたとの事。

 

続いて出廷した少年の祖母は、自らと少年の母との関係がよくなかったことを認め、「(少年の)母は正社員になり、私との気持ちのすれ違いもなくなってきた。やっと生活できるようになった」と家族関係が改善されてきたと話したとの事。
被害者の遺族に対しては「どんな言葉でも言い尽くせず、ご冥福を祈らせてもらうしかない。孫と生涯をかけて謝罪させていただきたい」と話したとの事。

 

検察側の証拠調べでは、事件で少年院送致された少年の弟(15)の供述調書が読まれ、被害者の遺体が発見された後、少年らが集まって「家で寝ていたことにしよう」と口裏合わせをしていたことが述べられたとの事。
また、少年とともに積極的に関与したとされる別の無職少年(17)=傷害致死罪で起訴=が、意識混濁の状態にある被害者を見て「こうなったら殺すしかない」と話したとの事。

 

弁護側によると、幼少期には父親が母親に暴力を振るう姿を目の当たりにした。家族に安心を求められず、自分を受け入れてくれる仲間と行動を共にするようになったとの事。

 

第3回公判は6月29日
被告人質問で少年は「友人だと思っていたのにうそをつかれ、強い悲しさや悔しさが出てしまった」と事件の動機を述べたとの事。

 

被告人質問で弁護側に暴力を加えた理由を問われると、「最初はうそをついた理由を問いただそうとしただけで暴力を振るおうとは思っていなかった。被害者が理由を答えなかったので暴力を振るった」と話したとの事。
うそが暴力につながった点は「不良仲間、暴力団関係者が周囲にいて、暴力が問題解決の方法だと思っていた」と話したとの事。

 

検察側は被害者は少年5人に暴行され意識を失った後、起訴された別の少年(17)に河川敷の上流に引きずられ、放置されたと説明していた。
検察側にその際の心境を問われると、「もしかしたら殺してしまうのではないかという予想はあった」と供述したとの事。
救急車を呼ぶことに反対した点については「警察沙汰になるのが怖く、現実逃避してしまった。僕が否定しなければ呼んでいたと思う」と話したとの事。

 

事件について「大切な命を死なせてしまい申し訳ない。事件の重大さを考え、自分が本気で変われなければ、最低な人間になってしまうという恐怖がある」と陳述。被害者代理人弁護士が、少年が遺族に対し、「私は被害者に助けられたと思っている」などと記した謝罪文の意味を問うと、「被害者が亡くなってしまったのは申し訳ない。ただ、自分が変われるチャンスをもらえたという気持ちがある。被害者もそれを望んでいると思う」と述べたとの事。

 

被害者参加制度を利用した被害者の兄は家族を代表して出廷。
「弟は兄として慕ってくれ、かわいい弟だった。これから私の人生に弟はずっといると思っていた」と時折声を詰まらせ、「犯人には少しも反省を感じられず、少年院に行っても意味がない。16歳の命を奪われた弟のために、犯人を重く処罰してほしい」と訴えたとの事。

 

論告求刑公判は7月3日
検察側は「被告の指示が集団暴行へとエスカレートさせた」と少年の役割を重視して懲役6年以上~10年以下の不定期刑を求刑したとの事。
弁護側は「育て直しと家庭環境の改善が必要」と保護処分が相当と主張し、結審したとの事。

 

検察側は論告で、「被告の役割は主導的であり、1時間以上も無抵抗の被害者に一方的に執ようかつ強烈な暴行を加え、刑事責任は極めて重大」と指摘。
被害者の「うそ」が犯行の発端となった点は「暴力肯定的な考えに基づくもので、正当化する理由になり得ない。犯行前から被告から暴力を受けるなどした被害者が、接触を避けたいという一心でうそをついたもので何ら非はない」と述べたとの事。

 

弁護側が保護処分を求めていることに対し、「少年院仮退院後の保護観察期間中に犯行を起こしており、法律や社会のルールを守る意識が欠けている」と刑事処分が相当としたとの事。

 

弁護側は犯行の背景を「複雑な家庭環境の中で十分な養育を受けておらず、問題解決の手段として暴力が身に付いていた。他者への依存性が強く、仲間のうそに過敏に反応してしまった」と説明したとの事。
傷害致死罪で起訴された別の少年(17)が被害者の顔を水に沈めたとされる暴行に触れ、「友人の気分を害することを言えないという他者への依存の強さから、暴行を止められなかった」と指摘したとの事。

 

少年は犯行当時、保護観察期間中で、事件は少年院仮退院から約5カ月後だった。弁護側は少年が更生できなかった原因を自覚しているとして、「被告の育て直し、家庭環境の改善が必要で、少年院での教育が不可欠」と主張したとの事。

 

最終意見陳述で少年は「被害者の心情を聞いて、僕がまだ全然考えられていなかったと反省した。検察側や弁護側が何を言おうと、自分自身が変わらないといけない。これから僕なりの償いを考えて行動していきたい」と述べたとの事。

 

判決は7月11日
裁判長は懲役6年以上9年以下(求刑・懲役6年以上10年以下)の不定期刑を言い渡したとの事。

 

判決によると、少年は昨年8月22日午前2時50分ごろから同4時45分ごろまでの間、ほかの少年らと共謀し、被害者に対し殴る蹴るの暴行を加えて意識混濁の状態にして川に沈め、溺死させたとの事。

 

裁判長は判決で「最も発言力のある被告人が共犯者に対して暴行せざるを得ない状況を作り出した。暴行は制裁目的で、被告人の意向に沿って行われた」と指弾。被害者に対し、多人数で2時間弱にわたって暴行を加えた態様を「執ようかつ苛烈で、被害者が死亡する危険性が高い悪質なもの」と述べたとの事。

 

弁護側は少年が複雑な家庭環境で育ったことを踏まえ、「更生のためには少年院での育て直しが必要」と保護処分を主張していた。判決は「被告人としては精一杯ともとれる反省の言葉を述べている」としたものの、「主導的立場」だとして少年の役割を重視。
過去に少年院で矯正教育を受けていた点なども踏まえ、「他人の生命を奪ったという事案の重大性に見合った刑事処分を受けさせる方が更生に資する」と結論づけたとの事。

 

判決後、当時、被害者と交際していた女性(17)は「自分が命を奪ったということを忘れず、一生十字架を背負っていってほしい」裁判では少年の成育歴が明らかになったが、「それを理由にするのは違う。善悪の判断ぐらいつくはず」と話したとの事。

 

18歳少年の判決を受け、被害者の兄が7月11日、コメントを出した。
検察官の求刑自体軽いと思っていたのに、それを下回る判決で、しかも、判決の中で、全く弟の無念さにも、遺族感情にも触れられておらず、被害者が軽んじられた気がしました。裁判官・裁判員に弟の命を奪われた無念さが伝わらなかったようで、大変悔しいです。とコメントしたとの事。

 

こんなところですね。
なんだかねー、時と場所を変えて、川崎事件が再現されているような錯覚を覚えました。
川崎事件の主犯格の19歳少年(当時18歳)の一審判決は懲役9年以上13年以下の不定期刑(求刑・懲役10年以上15年以下)でした。
今回の判決が懲役6年以上9年以下で3割ぐらい軽い刑になってますね。今回の事件で主犯の年齢が18歳(当時17歳)と言うあたりが影響したのかな?
川崎事件ではカッターナイフで43カ所も傷を付けるとか、真冬の川で泳がせるとか、残忍さ、凄惨さが際だっていたのも、その差なのかもしれません。

 

で遺族が刑が軽いとコメントしているのも同様ですね。

 

さらに、事件の原因に育成環境があったと言うのも同じです。
まー育成環境が問題だと、DVや虐待など問題のある家庭の子供は全て保護して、施設で育てる以外に防止する方法がなさそうですね。
親の教育を一からやり直すなんて無理でしょうね。そうして虐待の連鎖と言うか、暴力の連鎖を断ち切る事が最大の予防策のような気がします。

 

それから、川崎事件でも主犯格の少年が「止めて欲しかった」とずいぶん、都合の良い話をしているなーと思った物ですが・・・
今回の事件でも、「最初はうそをついた理由を問いただそうとしただけで暴力を振るおうとは思っていなかった。」と話しているけど、それなら日常的に暴力を振るっていた事をどう説明するのかな?

 

被害者はホントの事を話せば、やはり暴力を振るわれると思って、ホントの事を言えなかったんでしょうね。
そのあたりの心情を察する事ができなかったのは、未熟だからなのかな?
それとも、被害者の事を奴隷のように思っていて、暴力を振るうのが当たり前だと思っていたからじゃないのかな?

 

色々な事件があるけど、犯罪者って、暴力で問題を解決しようとして事件を起こしてしまう人達なんじゃないかな?と感じますね。

 

もう一人の少年の公判日程は決まっていないようですが、主犯よりは軽い判決になるんでしょうね。

 

続報を待ちましょう。

参考リンク
埼玉県東松山市16歳集団暴行死事件
埼玉県東松山市16歳集団暴行死事件その3(17歳少年一審判決)
愛着障害 子ども時代を引きずる人々
反省させると犯罪者になります
少年犯罪の深層・・・家裁調査官の視点から

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