東京都目黒区5歳女児虐待死事件その8(父親の判決公判まで)
***論告求刑公判(10月7日)***
1)検察側は「自己に従わない怒りで虐待し、この上なく悪質」と指弾し、懲役18年を求刑したとのこと。
検察側は論告で、女児は母親(女性被告)の連れ子で、被告は16年11月ごろに暴力を振るい始め、一家が香川県から目黒区に転居した18年1月23日ごろから苛烈な食事制限をしたと主張。「39日間で体重の約25%を失った」としたとのこと。
さらに、母親を「説教で共犯者に引き入れ、夫婦で児童相談所の接触も拒否した」と指摘。「2月24~26日には風呂場で10回以上殴打した。27日に『12キロ台はやばい』などと命の危険を感じたのに、病院に連れて行かなかった」とし、「一体子どもを何と思っているのか。女児は逃げることもできず、絶望しかなかった」と厳しく非難したとのこと。
別の報道では
検察側は「苛烈な虐待を主導し、悪質性は比類なく重い」
検察側は「食事制限で飢えの苦しみを与え、被害者をいじめ抜いた。未来を奪われた苦痛と無念を考えるべき」と述べ、病院に連れて行かなかったことを「自己保身だ」としたとのこと。
検察側は論告で「(女児への暴力は)しつけ目的を逸脱している。どれほどの苦痛で死に至ったか、察するに余りある。暴力による恐怖もすさまじかったはずだ」と指摘したとのこと。
被告は暴力の理由を「しつけがうまくいかず怒りが増した」としているが、検察側は「しつけを完全に逸脱し、欲求が満たされない不満で暴行した。論外で正当化できない」と指弾。女児の遺体には170以上の傷があったが、被告は詳細を語っておらず「極めて不合理で真剣に向き合っていない」と述べたとのこと。
2)弁護側は最終弁論で懲役9年が相当と訴えたとのこと。
弁護側は2月下旬の暴行を認めつつ、「親であろうという気持ちが根底にあった」と主張。「被告が命の危険を認識したのは(死亡前日の)3月1日だった」と訴えたとのこと。
別の報道では
弁護側は「死亡するまで完全に放置する最も悪質な部類とは異なる」として懲役9年が相当と述べたとのこと。
「被告の責任は重いが、不保護の期間や態様が最も重い部類だとはいえない」とし「冷静な判断を」と訴えたとのこと。
3)被告は最終意見陳述で、すすり泣きながら「本当に、本当に申し訳ありませんでした」と声を絞り出し、何度も頭を下げたとのこと。
***判決公判(10月15日)***
東京地裁の裁判員裁判は15日、懲役13年(求刑・懲役18年)の判決を言い渡した。
1)裁判長は虐待について「しつけという観点からかけ離れ、感情に任せて行われた理不尽なものだった」と述べたとのこと。
2)裁判長は、「香川県から上京したあと、1カ月あまりで体重が4分の1ほど減っているのは、しつけの観点からかけ離れた理不尽な食事制限。苛烈な虐待をし、女児の心臓が止まるまで医療措置を受けさせなかったのは虐待の発覚を恐れた保身のため」などと指摘したとのこと。
別の報道では
「食事制限や常習的な暴力を受けた上、やせ細り、おう吐し、意識も薄れ重篤な状態になってもなお医療措置を受けさせてもらえないまま死亡するに至った結愛ちゃんの身体的苦痛、苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」として懲役13年を言い渡した。
3)「検察側が主張するような、『同種事案の中で類がないほど重い事案』とは言えない」として、懲役18年の求刑に対して懲役13年の判決を言い渡したとのこと。
4)裁判員として参加した人のコメント
「感情としては、量刑傾向を少し動かしたいとの思い、裁判員制度を通じて少しずつ重くなるように、との気持ちはあった」
「自分が思ったところ(量刑)とのギャップが非常に大きかった」
「最終的な判決には納得しているが、個人的には(懲役)13年を超えた判決でも良かったと思う」
こんなところですね。
懲役13年ですね。やはり私も軽いと言う印象です。
ただ、児童虐待事件や児童虐待事件では無いような、似た事件の判決を見ると、そんな物なのかな?と言うところではあります。
2010年の大阪府門真市少女変死事件
姉と姉の交際相手が妹を虐待の末に死亡させた事件が懲役13年と懲役14年。
http://disktopaska.txt-nifty.com/aska/2010/09/post-bdcc.html
2011年の茨城県龍ヶ崎市女性放置死事件
男と同居する姉を救出しようと同居した妹を虐待の末、敗血症で死亡するまで放置した事件
姉は起訴猶予、男は男性被告を保護責任者遺棄致死罪で懲役8年
http://disktopaska.txt-nifty.com/aska/2011/01/post-b57b.html
児童放置死事件で印象の強い
2010年の大阪西区姉弟育児放棄虐待死事件
真夏の7月、エアコンもつけずに部屋に3歳(姉)と2歳(弟)の子供を放置して、死亡させた事件
放置した母親は懲役30年(死亡が二人なので一人あたり15年と言うところでしょうか)
http://disktopaska.txt-nifty.com/aska/2010/07/post-e48b.html
児童虐待死だと
2009年の大阪西淀川区女児遺体遺棄事件
母親の連れ子の9歳女児を虐待の末、4月4日の夜から、ベランダに放置して死亡させ、遺体を遺棄した事件
父親は保護責任者遺棄致死と死体遺棄で懲役12年
http://disktopaska.txt-nifty.com/aska/2009/04/post-1df9.html
結局は殺人罪ではないからなんでしょうけど・・・骨と皮になった子供や、意識が無いような状態の子供を見て、無事に済むと思う方がどうかしていると思うわけで、どうなってもかまわないと言う未必の故意で、殺人罪とした方が良いのではないか?と思うんですよね。
罪状から量刑の上限が決まるわけで、もっと重くするなら、罪状を殺人罪にするしかないと思います。
で、事件の原因なんですが、ホントに責任感が強いところから、この事件が起きているのか?と言うとちょっと微妙ですね。
週刊誌の報道などによると、結婚して早い時期に、説教など心理的DVによって妻を摂食障害に追い込んでいます。
更に、結婚したのは妊娠が発覚した後なんですよね。
望んだ結婚なら、結婚早々に説教とかDVとか無いでしょ?
このあたりを考えると、本当に男性被告はこの結婚を望んでいたのか?と疑問符が付きますね。
望んだ結婚で、自分の理想の家族を作る為だったとしても、妻に手料理も作らせずに家族で食事もしないとか、それが理想の家庭、家族とは思えないんですよ。
被告が公判で語った理由は本当にそうなのか?と言う疑問は最後まで解消されませんでしたね。
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コメント
続報です。
父親は一審判決を受けいれて、刑が確定しています。
(2019年10月)
母親の控訴棄却(2020年9月8日)
保護責任者遺棄致死罪に問われた母親の女性被告(28)の控訴審判決が9月8日、東京高裁で開かれた。裁判長は「女児の衰弱を認識しながら、生存に必要な措置を講じなかった」として、懲役8年とした1審東京地裁の裁判員裁判判決を支持、弁護側の控訴を棄却したとのこと。
弁護側は、食事制限を主導したのは元夫の男性受刑者(35)と主張。
被告は男性受刑者による心理的ドメスティックバイオレンス(DV)の影響で適切な措置を取れなかったなどとして、刑を軽くするよう求めていたとのこと。
裁判長は、女児の死亡する3日前ごろから男性受刑者が被告の言葉を聞き入れ、女児への態度を変えていたことなどから、この期間に「医療措置を受けさせることは可能だった」と指摘。「心理的支配の影響を考慮するにしても限界がある」などとして、弁護側の主張を退けたとのこと。
被告は勾留中の手記をDV体験の著書として出版し、DVや児童虐待の防止活動をしている団体に計150万円を寄付したとのこと。
別の報道では
東京高裁は「元夫のDVによる影響は被告の行動を支配し、逆らうことを全く許さないような強固なものではなかった」などとして、控訴を棄却したとのこと。
弁護人は判決後、「上告はしない」と話しているとのこと。
こんなところですね。
見逃していましたが、父親の方は一審判決を受け入れていたんですね。
その意味では事件と向き合っているのかな。
さて、母親は一審判決を重すぎるとして、控訴していたわけです。
重すぎる理由は、夫によるDVの影響を過少評価していると言う事ですね。
DVの影響をどう考えるのか?と言うのは難しい部分だと思います。
私としては、判決理由の「女児の死亡する3日前ごろから男性受刑者が被告の言葉を聞き入れ、女児への態度を変えていた」と言う事で、DVの影響はそんな短期間で変わるような物なのか?と言うのが疑問ではありますね。
このあたりは1審でも審議された部分なわけで、その評価を変えなかったと言う事なんでしょうね。
亡くなった女児のご冥福をお祈りします。
投稿: ASKA | 2020/09/08 19:38
母親の女性被告(28)を懲役8年とした一、二審判決が11日、確定した。被告と検察側の双方が上訴権を放棄したとのこと。
控訴が棄却された事で、上訴はあきらめたのかな?
いずれにせよ、これで、父親、母親ともに刑が確定しました。
あとは事件と向き合ってもらえればと思います。
投稿: ASKA | 2020/09/11 18:18