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2019/11/06

東京都目黒区5歳女児虐待死事件その5(母親の判決まで)

***論告求刑公判(9月9日)***
1)検察側は懲役11年を求刑した。
論告で男性被告(34)の暴力を容認したほか、食事を与えず、関係機関の支援も排除して外部が助けられない環境をつくったと指摘。男性被告に支配されていたとまでは言えず「被害者の命と男性被告との関係をてんびんにかけ、男性被告を選択しただけ」と非難したとのこと。

別の報道では
検察側は「命を守るという親として最低限度の責任を果たさなかった」と強く非難したとのこと。

女児は目黒区に転居した2018年1月23日以降、父親の男性被告(34)=同罪などで起訴=から過度な食事制限や暴力を受けたと指摘。体には170カ所以上の傷やあざがあり、死亡までの39日間で体重は約4キロ減ったとしたとのこと。

女児がノートに「パパママ もうおねがいゆるして」など書き残した文章を引用し、「女児は逃げることも助けを求めることもできなかった。両親に未来を奪われた無念は計り知れない」と述べたとのこと。

2)弁護側は懲役5年が相当と訴えた。
弁護側は「女性被告への(男性被告の)虐待にも目を向けてほしい」と強調。女児は女性被告が大好きだったとした上で、女性被告の女児の死亡への関与は少なく、過大に非難されるべきではないと訴えたとのこと。

3)被告は最終意見陳述で「女児を愛していたのに心も体もぼろぼろにして死なせてしまったことへの罰はしっかりと受けたい」と述べたとのこと。

***判決公判(9月17日)***
東京地裁は、母親に懲役8年の実刑判決を言い渡した。

「大好きだった実母である被告人からも苛烈な食事制限を受け、医療措置を受けさせてもらえないまま死亡するに至っており、被害児童の感じたであろう苦しみ、悲しみ、絶望感は察するに余りある」と指摘したとのこと。

認定項目と思われる部分(日本語が難しいです)
1)女性被告が女児に対して苛烈な食事制限などを行い、必要な保護を与えなかった点について、判決では「看過できない男性被告からの心理的影響があったと認められる」

なので、量刑上適切に考慮すべき

2)女性被告の女児に対しての便宜を図るなどの消極的な抵抗について

女性被告は男性被告の言動で受け入れられないことがあった場合に、自らの意思に基づいて行動することができていたといえる。従って、男性被告からの心理的DVにより逆らいにくい面はあったにせよ、最終的には、自らの意思に基づき指示を受け入れた上で、これに従っていたと評価するのが相当である」

3)弁護人が主張するように、被告人が男性被告により心理的に強固に支配されていたとまでは言えない」

4)男性被告からの報復を恐れて女児が死亡するまで治療させなかった事については

(報復が)被害児童の重篤な状態を知ってもなお医療措置を受けさせようという動機を形成することが困難であったといえるほどに切迫したものであったとは認められない」

5)全体として
「男性被告の意向に正面から反しない範囲ではあるが、被害児童の苦痛を和らげようとする努力は行っており、不保護の場合でも、添い寝をしながら看病をしており、全く放置したわけではないことからすれば、検察官が主張するような極めて強い非難が妥当する事案とまではいえない」とのこと。

「そして、このような犯情に加え、被告人は、わが子を死に至らしめたことを深く悔やみ反省していること、男性被告とは離婚し、被害児童の弟の親権者となっており、今後その子を扶養すべき責任を負っている」と話したとのこと。

6)最後に裁判官の説諭
「女児は戻ってきません。裁判が終わってもしっかりと考えて、人生をやりなおしてください」と話したとのこと。

こんなところですね。
DVを受けた母親が虐待に加担しながら、死亡させてしまった事に対して、どのような判断がされるのか?
と言うのが注目された裁判だと思います。

この手の事件はこの事件が初めてでは無いし、どちらかと言えば、ありがちな話なんですよね。
それは、事件となってしまったケースに多いと言う事で、事件と成らなかった事件では、母親が子供を救出したと言う事でもあるんでしょうね。

なので、DVの影響で虐待に加担してしまう母親は一定の割合でいると言う事なんだろうと思います。

で、問題はこれらの母親に対して「何ができるのか?」なんですよね。
この事件でも、児相が介入してますから、全く虐待が露見していなかったわけでは無いんですよ。

だけど、母親が男性被告に協力する事で隠蔽工作が成功しているように見えます。
もし、この時に児相に本当の事を話していれば、そこで事件は終わったはずなんですよね。

結局、母親は児相が助けてくれないと判断して、この状況に適応しようとしたんでしょうね。
男性被告のDVを男性被告に従う事で回避して、女児に対しては男性被告に分からないように助けると言う、板挟み状態を選択したんでしょう。
その判断がこの事件の悲劇を生んでしまったのだと思います。

そこを考えると、子供だけでなく、母親に対してもケアをする事が必要で、母子を同時に保護するような仕組みが必要なんだろうと思います。

もう少し時間を遡ると、結婚の段階で何かできないのか?と言う事のあるのですが・・・
ちょっと、そこは難しいかもしれないですね。
結婚する前にこの事件を予測できたのか?と言うと、無理だったろうと思います。

目に見えて性格に問題があるとか、社会性に問題があると言う情報も無かったようですし。
生活苦から脱出を夢見る若いシングルマザーには、バラ色の結婚生活が来ると信じていたんじゃないのかな。

私は男性被告はこの結婚を「望んでいなかった」と考えています。
妊娠した事の責任を取ると言う事に固執してしまったのかもしれません。
(人に無責任男と噂されるのを嫌った、ただの見栄っ張りなのかもしれません)

もし、そうであれば、結婚生活が遠からず破綻する事は予想できたかもしれません。

しかし、それを見抜く事が出来た人物が女性被告の周囲にいたのか?と言うのが問題ですね。
結果、居なかったのか?居ても、最終的に女性被告に結婚を思いとどまらせる事はできなかったと言う事なんでしょうね。

結局のところ、「結婚は慎重によく考えて決断して欲しい」と言う事以外に無いのかもしれませんね。
でも、男にしろ女にしろ、結婚を夢見て舞い上がっている人間に「あの人は良くないよ、結婚は考え直した方が良い」なんて言葉を言ったところで、果たして耳に入るのか?と言うのもありますよね。

とはいえ、そんな事を言っていると結婚なんてできないかもしれません。
結婚した3組に1組は離婚していると言う現実がそれを物語っているのかもしれませんね。

それでも敢えて言います。
「結婚は慎重によく考えて決断して欲しい」特に若い女性はね。

参考リンク
東京都目黒区5歳女児虐待死事件その4(母親の第4回公判まで)
東京都目黒区5歳女児虐待死事件その6(父親の初公判)

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