長文注意です。
***初公判(12月11日)***
1)被告は「間違いありません」と起訴内容を認めた。
2)起訴状によると、被告は6月1日午後3時15分ごろ、自宅で長男(当時44歳)の首などを包丁で多数回突き刺し、失血死させたとされる。
3)冒頭陳述で検察側は、被告が事件7日前の今年5月25日、一人暮らしで仕事をしていなかった長男(当時44)の要望を受け入れ、妻と3人で暮らすようになったと説明。翌26日、長男に対し、住んでいた家のごみ処理について注意したところ、暴力を受けたことから、殺害を決意。「他に方法がない。長男も散骨してください」などと書いた手紙を妻に渡し、犯行に及んだと指摘したとのこと。
手紙の内容
「これしか他に方法はないと思います。死に場所を探します。見つかったら散骨してください。長男も散骨してください」
別の報道では
冒頭陳述で検察側は、「長男は発達障害と診断され、特に母親と折り合いが悪く、暴力を振るった。大学進学と同時に別居し、その後、仕事をせずにゲームをして暮らすようになった」「事件直前に再び両親と一緒に暮らすようになったが、被告が住んでいた別宅のごみの処分について話したところ、長男が腹を立て、暴力を振るった。これによって、被告は長男を恐れるようになり、『殺人罪・執行猶予』などとインターネットで検索するようになった」と明らかにしたとのこと。
4)弁護側は、長男は中学時代にいじめに遭い、家庭内で暴力をふるうようになったと説明。同居翌日の暴行は激しいもので、被告はけがを負い、夫妻は長男を避けるために2階で暮らすようになった。事件当日の午後、被告が1階に下りると、長男は隣の小学校の運動会の音にいらだっている様子で「殺すぞ」と言ってきたと説明。被告はとっさに台所の包丁を持ち出し、犯行直後に110番通報をして自首したと主張したとのこと。
別の報道では
弁護側は、「長男は事件当日、隣の小学校で運動会をしていたことにいらだっていた。長男が被告に『殺すぞ』と言ってきたので、とっさにやむなく刺して殺した」と主張したとのこと。
更に別の報道
弁護側は「被告は、長年にわたって発達障害の長男を必死に支えてきた。殺されると思い、やむを得ず刺してしまった」と主張したとのこと。
5)被告の妻が証人出廷し、事件前の長男の言動におびえ、「本当に殺されると思った」と述べたとのこと。
証言によると、東京・目白で1人暮らしをしていた長男は事件の1週間前に実家に戻り、その日は家族3人で穏やかに過ごした。
しかし翌日、妻と2人になった時、長男は「お父さんはいいよね、何でも思い通りになって。それに比べて自分の人生は何なんだ」と机に突っ伏して泣いたとのこと。
別の報道では
「お父さんは東大出て人生、自由になって良いね。自分の44年の人生は何だったんだ」と言って、床に伏せて泣いたと証言。
長男が1人暮らし中は生活費や食費を賄っていたと説明。ごみの処理も被告がしていたといい、「長男に一生懸命やってくれた。刑を軽くしてください」と訴えたとのこと。
長男からの暴力について、肋骨にヒビが入ったり、顔に青あざ、鉛筆の芯を思い切り手に突き刺したりもありました。
兄(長男)の関係(原因)で、縁談があっても全部消えた。(娘は)それで絶望して自殺したとのこと。
***第二回公判(12月12日)***
証人尋問
1)発達障害だった息子の主治医が出廷し、「被告は、息子の面倒を大変よく見ていた。今ほど障害に対する社会的支援がない中、大変だったと思う」と述べたうえで、「主治医のわたしに相談してほしかった。対応を検討することができた」と答えたとのこと。
別の報道では
弁護側の質問に対して、主治医は、長男を自閉症の一種であるアスペルガー症候群と診断していたと証言し、「長男は思い通りにならないとパニックを起こし、暴力をふるう症状があった」と述べた。
また、「長男がなかなか通院しなかったので、お父さんが代わり通院して薬を取りに来ていた。お父さんからの情報で長男の状況を判断していた」と証言。
さらに「経済的支援を行い、通院も1回も欠かさなかった。ツイッターを通して長男の情報を知り、知らせてくれていた。ほかの家族と比べても大変よく面倒をみていて、大変敬意を持って支援のあり方を見守っていた」と述べ、被告の支援には頭が下がる思いだったと証言したとのこと。
被告の妻が鬱病で、長女が事件前に自殺していたことを明かし、「(被告は)1対3の介護のような状況だったので燃え尽きないようにと思っていた」と述べたとのこと。
被告人質問
2)弁護側から長男の家庭内暴力について聞かれると、「髪の毛をわしづかみされて窓際のサイドテーブルにたたきつけられた。ずっと『殺してやる、殺してやる』と叫び続けていた」「体に震えがくるほどの恐怖感を覚えた」と話した。
殺害時の状況については、「『殺すぞ』と言われ、とっさに包丁を取りに行った。ずっと『息子に殺される』という気持ちに支配されていた。5分か10分くらい刺し続けた」と述べ、「かわいそうな人生を送った。取り返しのつかないことをしてしまい、後悔している」と涙を流して語ったとのこと。
別の報道では
弁護人に「事件前に息子を殺そうと思ったことは」と問われると、「絶対思いませんでした」と語気を荒らげた。「先天的な病気を持った息子に寄り添って生きてきたつもりだったが、つらい人生を送らせてしまった。取り返しのつかない状態になり、冥福を祈るしかない」と涙を流したとのこと。
3)検察側から、行政や学校に相談しなかった理由を聞かれると、「学校に相談しようと思ったが、息子に止められた」「結局、相談しても最後は自分でみることになり、さらにそれによって親子関係が悪化すると思った」と話したとのこと。
4)退職時のエピソード
被告は、長男が大学を中退すると就職先探しに奔走したとのこと。
時期が就職氷河期で。本人はアニメ系がいいといくつか受けましたが、ダメでした。
最終的に義理の兄が勤める病院に就職させたとのこと
残念ながら勤務状況が悪いと感じました。ブログで上司の悪口を書いていました。迷惑をかけると心を痛めていました。お礼を言って引き取りますと言わざるを得なかったとのこと。
しかし、長男は退職に納得がいかず・・・
医師から連絡がありました。「長男が『明日、社会的事件を起こす。上司を包丁で刺す』と言っている」と。おさめなきゃと思ってアパートまで駆けつけました。時間をかけて説得したとのこと。
説得後に長男がカバンから包丁を取り出して、台所に置きました。事件を起こさなくて良かったと思ったとのこと。
***論告求刑公判(12月13日)***
1)検察は懲役8年を求刑した。
検察側は論告で、自首が成立していることなどを考慮しつつ、「手加減せず攻撃しており、態様は悪質」と述べたとのこと。
別の報道では
論告で検察側は、被告は長男(当時44)と同居を再開した5月に暴力をふるわれて殺害を考え、妻に「死に場所を探します。長男も散骨してください」などと書いた手紙を渡したりパソコンで「殺人罪 執行猶予」と調べたりしたと指摘。ほぼ無傷だった被告に対し、遺体には36カ所以上の傷があり「不意を突いた一方的な犯行で悪質だ」と主張したとのこと。
長男を支えようとした努力は否定しないとしつつ、オンラインゲームで知り合った知人に「いま幸せです」などと書いていた長男の人生を奪う権利は誰にもないとも言及。暴力をふるわれても専門家や警察に相談しておらず、酌量の余地は乏しいと述べたとのこと。
別の報道では
検察側は「抵抗されてもなお、刺し続けていて強い殺意があったことは明らか」「(長男)被告のことを晴れがましく語るなど尊敬していた。その被告に殺害された被害者の気持ちは察するに余りある」とのこと。
2)弁護側は「被告は障害を抱える被害者と長年にわたる大変な努力をして良好な関係を築いてきた」「殺されると感じた被告がとっさに刺した不幸な事件。経緯や動機に酌量の余地が大きい」と述べ、執行猶予付きの判決を求めたとのこと。
3)最終陳述で被告は「毎日反省と悔悟の日々。息子があの世で穏やかに過ごせるように祈ることが私の務め」と述べたが、公判を通じ最後まで長男への謝罪の言葉はなかったとのこと。
***判決公判(12月16日)***
1)懲役6年(求刑・懲役8年)の判決を言い渡した。
2)東京地裁は、被告の「殺されると直感し、恐怖のため包丁を取り、もみ合いになる中で何度も刺した」などとした供述について、「信用性が乏しく一方的に攻撃を加えたと認められる」としたとのこと。
そのうえで、「被告は主治医や警察に相談することが可能だったのにこれをせず、同居してわずか1週間で殺害を決意し実行しており、短絡的な面があると言わざるを得ない」と指摘。ただ、「被害者と安定した関係を築く努力をしてきた中で、暴行で恐怖を感じ、対応に不安を感じる状況になったことが背景にあることは否定できず、この点は、非難の程度を考えるに当たり、相当、しん酌すべきだ」。「同種の事案の中では、実刑の重い部類に属するものとは言えない」として、被告に懲役6年の実刑判決を言い渡したとのこと。
3)実刑判決となったが、被告が法廷を出る際に、検察官が「体にお気をつけください」と声をかける場面もあったとのこと。
***保釈(12月20日)***
東京高裁は20日、保釈を認める決定を出した。地裁は弁護人の保釈請求を退けていたが、高裁がこの地裁決定を取り消したとのこと。
保釈保証金は500万円で、即日納付された。殺人罪で実刑判決を受けた被告の保釈が高裁で認められるのは異例とのこと。
こんなところですね。
官僚として頂点に立った被告ですが、その一方で家庭は地獄ですね。
奇しくも、新幹線のぞみでの殺傷事件で無期懲役となった被告と同じ病名「アスペルガー症候群」と言う言葉出てきました。
病名自体に注目するつもりは無くて、その両親の対応が対照的と言う意味で取り上げました。
新幹線事件の被告は、5歳でアスペの疑いアリと指摘されるも、両親は治療せず、14歳で自ら通院しようとしても、お金を渡さなかったとか・・・結局、親子関係は破綻して、施設で別居、その後は、祖父母に養子縁組させてます。
事件後は実父が生物学上の父親と名乗るような状態でした。
そちらに比べると、こちらの被告は長男に対してかなり良く、面倒を見ていたと思いますね。通院しない長男に代わって、薬を取りに行き、SNSの内容から状態を主治医に連絡したり、一人暮らしの間も、生活費はもちろん、ごみの片づけができない長男の部屋を毎月掃除に行っている。
さらに、就職先も見つけて、就職もせ、問題を起こしたので、退職させ、事件を起こさせないように説得もする。
これだけでも、十分に長男の病気のケアをしているのが分かりますよね。
一方で、事件前に長男の暴力を、警察や主治医に相談しなかった事が非難されているわけですが・・・ここまでくると、被告にしても、「疲れていた」んじゃないかな?
その上で、行き場を失った長男を同居させたのに、激しい暴力を受けて、生命の危険さえ感じてしまう。
これほどまでに、尽くしているのに・・・なぜ、こうなってしまうのか?
と言うある種の絶望感はあったと思うんですよね。
被告の言葉にもありましたが、そんな状態で、警察や主治医に相談したとしても、より苛烈な報復がまっている事は容易に想像できますよ。
いじめられっ子が、いじめを告発できない理由と同じだと思います。
外からみれば、不自然かもしれないけど、中の人間にしてみれば、それぐらい追い詰められている、そんな状況だったのではないかと想像しています。
こう書いてしまうと、被告人を擁護しているように見えてしまうかもしれませんが・・・
実際、二人の子供のうち、長男が原因で娘が自殺、妻がうつ病、そしてその長男を自ら殺害してしまわなければならなかった被告には同情してしまいますね。
この事件を防ぐにはと考えても、事件を起こした以外に被告が何か間違った対応をしているように見えません。
この事件を防ぐには、問題の長男が普通の生活ができるようにしなくてはならないのだけど・・・その方法が思いつかないですよね?
医学的には方法があると思いますが・・・本人が治療に消極的と言う状況なので、被告のように薬を運ぶ事ができるぐらいで、その薬を飲むのか?は本人次第ですよね?
あとは、思い切って、田舎で農業や酪農などして、極力人と接触しないような生活をすると言うのも方法かもしれないけど、そんな生活を長男自身が望むとは思えないですよね。
中学でいじめを受けて、それが原因で家庭内暴力になっているようですから、この時に、何もかも捨てて、田舎の中学校にでも家族で移住して転校するなどすれば、あるいは、この暴力性を減退させる事ができたかもしれませんが・・・・
官僚としてバリバリやっている時に、そんな事はできないでしょうね。
いくら考えても、解決策が見つからない・・・
と言う事は逆に言えば、もっとこの問題にたいして取り組み易い社会にするべきだと言う事なんですね。
私が答えを見つけられないだけで、答えを持っている人は世の中にはいるはずですよね?
ならば、誰が持っているのか、誰にアドバイスを受ければよいのか?
それをもっと広く、世の中に知らしめる事が大切と言う事なんでしょうね。
でも、それは誰がやるのだろう?と言う素朴な疑問はありますね。
やっぱり、家庭って大切なんですよねと、再確認する事件でした。
参考リンク
東京都練馬区元事務次官息子殺害事件その2(6月21日までの報道)
最近のコメント