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2020/01/02

神奈川県川崎市宮前区トンネル内女性殺人事件その3(一審判決)

一審判決は懲役28年です。
長文注意です。
 
***初公判(11月19日)***
起訴状などによると、被告は06年9月23日午前0時ごろ、川崎市宮前区のアルバイト女性(当時27)の腹や右胸を刃物で突き刺し、殺害したとされる。
 
1)被告は「腹を刺した時は殺意は持っていなかったが胸は殺意を持って刺した」と述べ、被害者の殺害について「間違いありません」と認めたとのこと。
 
2)冒頭陳述で検察側は「ストレス発散のため、女性の死ぬ間際の苦しむ表情を見たいという理由で襲った」と指摘。女性を物色している時に被害者が通り掛かったと説明し、「残虐極まりない無差別殺人で、計画的で強固な殺意に基づく犯行」と強調したとのこと。
 
別の報道では
検察は冒頭陳述で、被告は好みの女性がおびえたり苦しんだりする表情を見てストレスを発散する特異な嗜好を持ち、犯行当時は包丁を持って女性の物色を繰り返していたと指摘。帰宅中の被害女性が好みだったためターゲットにしたと述べたとのこと。
 
被告は19世紀に英国で起きた猟奇殺人事件「切り裂きジャック」をテレビで知り、同市内を車やバイクでうろついて好みの女性を探していたとしたとのこと。
 
3)弁護側は殺人罪の成立は認めた上で、殺害行為のうち、腹を刺した際には被告の性嗜好障害が影響しており殺意はなかったなどと主張したとのこと。
 
別の報道では
弁護側は被告のパーソナリティー障害が犯行を思いとどまろうとする力を弱めたと主張。被告が警察に自ら犯行を打ち明けたことから量刑を考慮するよう求めたとのこと。
 
「偶然被害者を見かけて犯行に及んでいて計画性はない」
 
「服役中に病気を患い命の大切さを感じ自白に至っている」と主張したとのこと。
 
***第二回公判(11月21日)***
1)被告人質問で、被告は弁護人に犯行に至った動機について問われると「仕事でストレスがたまって、かなりいらいらしていた」「被害者の困惑と苦悶する表情を見たいと思った」と話しました。
 
事件当日は仕事上のストレスがたまっており、「かなりイライラしていた。(被害者を)ただ脅かすだけでは済まないと思った」と述べたとのこと。
 
別の事件で服役中の28年1月に、神奈川県警に犯行をほのめかすはがきを送ったことについては、27年に自身が病気を患ったことが契機だったとし、「自分は命を救われたけど、何もしていない被害者が、なぜ命を落とさなくてはいけなかったのかを考えた」と説明。「尊い命を身勝手に奪ってしまい、本当に申し訳ない」と、謝罪の言葉を口にしたとのこと。
 
検察側や裁判官からの質問に対して
 「最初に腹を刺したときは殺意はなかったが、股間を蹴られてなんだこの野郎と思った」と述べたとのこと。
 
「腹を刺したら死んでしまうことが分かっていないのか」などと聞かれると、「わかっていない。認識がなかったから事件を起こした」と話したとのこと。
 
「美人だなと思いました。 困惑や苦もんの表情が見たかった」偶然見かけた被害者を殺害した動機についてこう述べたとのこと。
 
仕事帰りに立ち寄った実家から自宅までの帰路、偶然見かけた被害者を犯行現場のトンネルに先回りして待ち伏せ、凶器の包丁で殺害するまでの経緯を説明したとのこと。
 
犯行後のことについては、「事件のテレビを見て、ガッツポーズをした」「この事件は俺がやった。俺しかそのことを知らないんだ」と述べたとのこと。
 
被告は事件を起こした背景に仕事や家庭生活のストレスを挙げ、「刺されてゆがんだ女性の表情を見て正直すっきりした」と当時の心境を明かしたとのこと。
 
公判で被告は、事件以前から夜間に女性の胸などを触って逃走する行為を繰り返していたと明らかにした。「性的欲求を満たし、脅かして困惑する表情を見ることでストレスを発散していた」と述べたとのこと。
 
***第三回公判(11月28日)***
1)証人尋問(被害者の父親)
被害者の父親は「家の近くで事件が起きたのに娘を助けられなくて悔しくて悔しくて残念で仕方ない」と涙ながらに話しました。 また被告に対し「見ず知らずの人になぜこんなに残虐なことをするのかと怒り心頭。 娘と同じ目にあわせてやりたい気持ちで極刑を望みます」と述べたとのこと。
 
2)証人尋問(精神鑑定を担当した医師)
「犯行時及び現在、特定の精神障害や性的しこうでは説明できない、他の特定のパーソナリティ障害と他の性しこう障害を有している」と鑑定結果を報告しました。 これらの障害によって、「好みの女性の苦しむ様子を見たい」という性的欲動を抑えられなかったと分析したとのこと。
 
被告が「顔を見て胸を触るか刺すか決めようと思った」と話していたことから「わいせつ行為との対比での選択で、快楽殺人の特徴を一部備えている」との考察を示したとのこと。
 
 一方で障害の程度については「行動としては重度だが仕事に熱心に取り組む面もあり社会生活への支障は軽い」としているとのこと。
 
 別の報道では
医師は、今年7、8月に実施した精神鑑定の結果を報告し、被告は仕事熱心でまじめな一方、罪悪感を覚える能力や欲求不満への耐性が低い点などから人格障害と診断したと説明。痴漢行為を繰り返していたことなどを基に認定した性嗜好障害を踏まえ「(殺傷行為は)わいせつ行為との対比の中で選択されたもので、性欲が関連していると考えるのが自然だ」と話したとのこと。
 
「女性が苦悶する表情が見たかった」との犯行動機は、快楽殺人の特徴を一部備えているとも指摘。今回の殺人事件の半年後に起こした殺人未遂事件に関しては、「快楽殺人が発露し、純化していったという議論も十分可能だ」と語ったとのこと。
 
3)被告人質問
被告は鑑定内容におおむね同意するとした上で、「罪を償おうと事件を告白したが、逆に遺族を傷つけることになってしまった。告白したことは取り消せないので、全てを答えて責任を果たしたい」と反省の気持ちを改めて示したとのこと。
 
***論告求刑公判(12月2日)***
1)検察側は「夜間に好みの女性を待ち伏せして、捕まらないよう合理的に犯行に及んでいる。 背中を貫通するまで腹に包丁を突き刺し、最初から強固な殺意で計画的」と主張。さらに「女性の苦しむ顔を見たいという犯行の経緯は理不尽極まりなく重く処罰されるべき」などと指摘し、被告に無期懲役を求刑したとのこと。
 
検察側は論告で、急所である腹を刺したことから最初から殺意はあったと主張。夜間に人通りが少ない場所で事件を起こしたことなどから、犯行は計画的だとしたとのこと。
 
論告で検察側は「ストレス解消のため、『好みの女性の苦しむ顔が見たい』という身勝手な理由から起こした犯行」と厳しく指弾。「被告人に有利な事情を考慮しても極めて悪質で、再犯の危険性も大きい」と求刑の理由を説明したとのこと。
 
別の報道では
論告で検察側は「ストレス解消のため、『好みの女性の苦しむ顔が見たい』という身勝手な理由から起こした犯行」と厳しく指弾。「被告人に有利な事情を考慮しても極めて悪質で、再犯の危険性も大きい」と求刑の理由を説明したとのこと。
 
2)最終弁論で弁護側は公判で起訴内容を大筋で認めたが、被告のパーソナリティー障害が犯行を思いとどまろうとする力を弱めたと指摘し、自ら犯行を打ち明けたことなどから量刑を考慮するよう求めている。
 
別の報道では
弁護側は、犯行は計画的なものでなく、最初に腹部を刺したときは「苦しむ表情が見たいと思っただけで、殺意はなかった」と反論。殺人罪の成立は否定しないものの、性嗜好障害やパーソナリティー障害が、犯行に影響を与えた可能性も考慮すべきとしたとのこと。
 
3)裁判長から「最後に言いたいことは」と問われ被告は告白したのが遅かった点は、ご遺族に新たな傷をつけたことが今回よくわかりました。」「心から反省し、深く後悔しております。どんな判決になっても、被害者の命が返ってこないということについて、一生考え続けることを誓います」と、謝罪の言葉を口にしたとのこと。
 
4)遺族の意見陳述(父母)
父親「将来のある娘の命を奪った犯人を、私は絶対に許すことはできません」と述べ、母親(74)も「今も娘のことを思わない日はありません。ふとした瞬間に娘の顔が頭に浮かび、苦しみの連続です」と悔しさをにじませたとのこと。
 
***判決公判(12月13日)***
1)裁判長は「甚だ身勝手で、理不尽な殺人事件だ」として懲役28年(求刑無期懲役)の判決を言い渡した。
 
2)判決理由で裁判長は、自らのストレス解消という目的で犯行に及んだことを「強固な殺意に基づく卑劣、残虐な犯行で、人命軽視の態度ははなはだしい」と厳しく非難。「被害者の苦痛や恐怖は計り知れず、突如人生を断たれた無念さは察するに余りある」とした。
 
その一方で、被告が別の事件で服役中に犯行を「告白」する内容のはがきを神奈川県警に送ったことを、「更正に向けた一歩を踏み出したと評価できる」としたとのこと。
 
量刑については、被告が別事件で服役していた16年に重い処罰が見込まれる今回の未解決事件を告白した点を踏まえて、「無期懲役はやや重きに過ぎる」と結論づけたとのこと。
 
3)裁判官が最後に「反省を深めて、新しいあなたに生まれ変わってほしい」と声を掛けると、被告は「はい」と小さくうなずいたとのこと。
 
こんなところですね。
死亡が一人なので、重くても無期懲役と言うところなんでしょうね。
そして、告白して事件を解決した事を考慮して懲役28年と言うあたりなんでしょう。
でも、身勝手な理由で愛娘を殺された遺族には納得できない判決だと思います。
 
この事件での新たな発見は、快楽殺人だったけど、2度目の犯行は1年後だったと言う事なんですよね。
私はこれまで、快楽殺人は比較的短期間に殺人を繰り返していると思ってました。
ただ、この事件が最初の殺人事件で、この時まだ快楽殺人犯としては完成されていなかったとすれば、2度目の事件までに時間がかかったと言う説明はアリなのかもしれませんね。
 
それにしても、身勝手な殺意を持った人間が、世の中にはいると言う事を忘れてはいけませんね。
 
亡くなった女性のご冥福をお祈りします。
参考リンク
神奈川県川崎市宮前区トンネル内女性殺人事件その2(続報)
川崎通り魔事件

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コメント

殺人罪に問われた男性被告(40)の控訴審判決で、東京高裁は10月16日、懲役28年とした一審横浜地裁の裁判員裁判判決を支持し、弁護側の控訴を棄却したとのこと。

控訴審で弁護側は自首の成立を主張し、刑を軽くするよう求めたが、裁判長は、被告が自供する以前に、捜査機関によって被告の犯行とほぼ絞り込まれていたと指摘。「自首には当たらない」として退けたとのこと。

こんなところですね。
うーん、ちょっと意外だったのですが、一審判決が求刑無期懲役に対して、懲役28年なんですよね。
この減刑分は自首した分だと思ってましたが、今回の判決で自首としては評価されていないと言う事がわかりました。

すると、一審の懲役28年は無期懲役から慣例の割引分を引いた量刑と言う事なんですね。

と言う事は、無期懲役の2割引きは懲役28年と言う事なのかな?
すると、懲役年数に換算すると無期懲役は懲役34年相当と言う事になるけど・・・ちょっと軽くないかな?

投稿: ASKA | 2020/11/02 18:11

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