広島廿日市市女子高生殺害事件その4(一審判決)
長文注意
***初公判(3月3日)***
冒頭陳述
1)検察側は冒頭陳述で犯行の動機について「犯行前日に寝坊したことをきっかけに自暴自棄になり、(当時勤めていた)会社の寮を飛び出した。やりたいことをやろうと思い、女性暴行しようと考えた」と指摘したとのこと。
2)起訴状によると、被告は04年10月5日午後3時ごろ、乱暴目的で被害者方の離れにある女子の部屋に侵入し、折り畳みナイフで脅迫。乱暴する前に逃げられたため、胸や腹を多数回刺して殺害し、祖母の女性(88)を刺して殺そうとした疑い。
別の報道では
検察側が冒頭陳述で、性行為の経験がないことから偶然見掛けた廿日市市上平良の廿日市高2年女子=当時(17)=を乱暴しようと企てたとのこと。
3)被告は「間違っていません」と起訴内容を認めたとのこと。
4)弁護側は「被告は適切な判断ができる心理状態ではなかった」などと寛大な判決を求めたとのこと。
別の報道では
弁護側は「計画性のない突発的な犯行で、自身にとって不利なことも明らかにするなど後悔し、反省している」とし情状酌量を主張したとのこと。
別の報道では
家族関係の不和や勤務先への不満から「自暴自棄になっていた」
***第二回公判(3月4日)***
被告人質問
弁護側
1)被告は逮捕されてからの2年間について、「事件のことを思い出したくなくて考えないようにしていたが、この場でちゃんと話そうと思い出そうとしていた」と涙を流しながら語り、遺族に向けては「自分勝手な都合で事件を起こし申し訳ない」と謝罪したとのこと。
2)なぜナイフを持っていたのかという質問に対し、「会社を逃げ出し東京へ行こうとしている途中に野宿をしようと思い、方位磁石とともにホームセンターで買った」と、女性を襲うつもりで携帯していたのではないと主張したとのこと。
3)事件当日については、山口県から広島県に入り、下校中の高校生を見かけ、性的暴行を加えようと思い、物色していたところ、たまたま女子が家に入るところを見かけたとのこと。
敷地に車がなかったから、親や保護者がいないと思ったとのこと。
4)その後、女子の自宅に侵入。折り畳みナイフを取り出し、階段を上がり、女子の部屋をのぞいたとき、ベッドで横になっていた女子と目があったとのこと。
部屋に一歩入って、『動くな』と言いました。ナイフの刃は、女子に向けている状態だったとのこと。
その後、被告が女子にナイフを向けたまま『脱げ』と脅すと、女子は、部屋から走って逃げ、階段から転げ落ちたとのこと。
逃げられる。通報されるという思いから追いかけた。その後、押し合いになり、手にもっていたナイフでおなかを刺したとのこと
刺したとき女子は「え、なんで」という表情をしていた。クソ、クソと言いながら、何回も女子を刺したとのこと。
被告は、その後、感情が高まり、自分がどうなってもいいと考え、「自らの環境などへの不満を女子にぶつけてしまった」と述べたとのこと。
扉を開けると、女子の祖母がいたので、刺して逃げた後、原付に乗って東京方面に向かい、ホームセンターで顔や手について血を洗い、上の服を着替えたとのこと。
3日間ぐらいひどく後悔して、嫌な気持ちになって、寝ずに、何も食べず、ずっと原付を走らせていたとのこと。
2週間後、東京に着いたものの、所持金が底をつき、事件から1か月後には、実家の宇部に戻ったとのこと。
事件を思い出すたびに女子の「えっ」という表情とクソ、クソと何回も刺したことを思い出すので、思い出さないように違うことをしたりしていたとのこと。
弁護側から最後に言いたいことを問われ、
「取り返しのつかないことをしてしまい、自分は死刑がふさわしいと思っています。大変申し訳ありませんでした。」と話したとのこと。
検察側
5)「なぜ女子だったのか」という質問に対しては「女子がたまたまいたから。八つ当たりです」と述べたとのこと。
6)逮捕までの約13年半について「捕まらないことに甘え、自首は考えていなかった」と述べたとのこと。
7)女子を刺した理由を問われ、被告は「1回目は女子が逃げたことへの怒り。2回目以降は自分の置かれた環境への不満をぶつけ『くそ、くそ』と言いながら何回も刺した。八つ当たりです」と説明したとのこと。
裁判官
「女子高校生なら誰でもよかったのか」と尋ねられると、「そうだったと思う」と認めた。事件後は「(殺害時の)女子の『えっなんで』という表情と、くそ、くそと言いながら何度も刺したことを思い出し、考えないようにしていた」と述べたとのこと。
証人尋問
被告の父親
検察側席の遺族に対し「同じ親として大変申し訳ない」と謝罪の言葉を重ねたとのこと。
***第三回公判(3月5日)***
鑑定人尋問
去年5月からおよそ3か月間、被告の精神鑑定をした医師
1)被告について精神病の症状がないことや当時の記憶や話の内容などから「事件当時、社会適応ができ、精神病ではなかった」と述べたとのこと。
一方で、情緒的な発達の乏しさがあったとし、「予測できないことに対して極端な決定をすることがあった」と指摘したとのこと。
別の報道では
被告について「人格的な偏りはあるが社会適応できていた」、「精神障害ではない」と指摘。
また、「遅刻し会社を辞めただけで全てのことを失った感覚に陥り、住んでいた町を捨て自暴自棄になるといった極端な決定を下す特性がある」と説明したとのこと。
別の報道では
「被告は自分に興味がなく情緒的な発達が乏しかった」「寝坊をきっかけにふるさとを捨てるという極端な行動をとるなど人格的に偏りはあるが精神障害ではない」と話したとのこと。
***論告求刑公判(3月10日)***
被害者参加制度による意見陳述(被害者父)
1)「娘の命を奪い、母親の命も奪おうとした被告に対して死刑を望みます。自分の命で償ってほしい」と述べたとのこと。
別の報道では
「娘の命は奪われたのに被告は生きているという悪夢には遭いたくない」「被告は、自分の命で罪を償ってほしい」と訴えたとのこと。
2)被告は最終意見陳述で証言台に立ち、被害者家族の方を向いて「自分勝手な思いで事件を起こし、大切なご家族の命を奪い傷つけた。これまでご家族の皆さんを苦しめ悲しませてきて申し訳ございません」と頭を下げたとのこと。
3)検察側は論告で、被告は帰宅中の北口さんを見かけ、わいせつ目的で襲おうとしたが、逃げられたことに激高して殺害したと指摘。「被害者に落ち度はない。被告の動機は身勝手で、再犯も懸念される」などとした。
検察側は「強い殺意に基づく残虐で非道な犯行」として無期懲役を求刑したとのこと。
別の報道では
検察側は論告で、北口さんは必死に逃げようとしたが、何度も刺されたと指摘。「恐怖や苦痛、無念さは察するに余りあるという、月並みの言葉では言い表せない」と批判したとのこと。
別の報道では
「自暴自棄になったという身勝手極まりなく、理不尽極まりない犯行」「逮捕されるまでの13年間、遺族に苦しい思いをさせた結果は重大である」と指摘した一方で、「被告は事実を認め、後悔している」などとして、無期懲役を求刑したとのこと。
4)弁護側は最終弁論で、被告は当時勤務していた金属加工会社で長時間労働を強いられていたとし、「大きなストレスで極端な意思決定をする特性があった。殺害は突発的な行動だった」と刑を軽くするよう求めたとのこと。
別の報道では
「計画性は乏しく、被告は反省や後悔の意思を示している」「若い時の犯行で再犯性が低い」などとして、刑を軽くするよう求めたとのこと。
別の報道では
弁護側は「検察も求刑しておらず死刑にはすべきでない」と述べ、「若くて家族も見放しておらず更生の余地がある」として有期刑が相当としたとのこと。
5)遺族側の弁護士も意見として「ただの『1人死亡した事件』とは異なる。最高刑を回避する理由はない」として死刑を求めたとのこと。
***判決公判(3月18日)***
1)一審判決 無期懲役
2)裁判長は「一人の生命を奪い、一人に生命の危険が迫る重傷を負わせた結果はあまりに重大」と指摘。
(祖母は1か月の重傷を負い一時重体となった。)
被告の発達の偏りの影響や計画的な殺害ではなかった点を認めつつも「強い非難に値する。事実の重大性を厳粛に受け止めさせ、贖罪の日々を送らせるのが相当」と述べ、有期刑を求めた弁護側の訴えを退けたとのこと。
裁判長は女子は自宅でくつろいでいるところを突然襲われており、「肉体的苦痛や恐怖感は想像を絶する」と述べた。
弁護側の主張通り計画性はなかったとしたが、「わいせつ目的が遂げられなかった怒りという動機は身勝手極まりなく、強い非難に値する」としたとのこと。
裁判長は「将来ある人生を奪われた女子の悔しさや、家族の悲しみは筆舌に尽くしがたく、祖母の命も危険にさらされた」と指摘。「長期間、犯人が特定されず、家族は恐怖にさいなまれ、地域社会への影響も大きかった」と述べたとのこと。
「有期刑が相当といえるほど軽い事案ではない」としたとのこと。
裁判長は「強姦が成功しなかったことや自己の境遇に対する怒りから八つ当たりで殺害行為に及んだことは身勝手極まりない」と指摘。
「女子は何の落ち度もないのに将来ある人生を終えねばならなかった悔しさや悲しみは表現するすべもない」として無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
3)判決などによると、被告は04年10月5日午後3時ごろ、乱暴目的で離れの女子の部屋に侵入し、折り畳みナイフで脅迫。腹や胸を多数回刺して殺害し、物音を聞いて駆け付けた祖母(88)を刺して殺そうとした。
***無期懲役確定(4月2日)***
被告(37)と検察側の双方が4月1日の控訴期限までに控訴せず、4月2日に判決が確定した。
こんなところですね。
強姦目的で襲撃して、死亡が一人、重症が一人と言うあたりで、無期懲役と死刑のボーダーライン上だったと思いますが・・・
死亡が二人か、強姦が成功して、罪状に強の字が付けば、死刑が出てもおかしくない事件でした。
精神鑑定の結果、事件当時の責任能力に問題は無かったわけですが・・・
仕事に遅刻をしたからと言って、それで人生が終わったような感覚になるほど、事件当時は何かに追い詰められていたのかな?
製造ライン担当で、休むと製造ラインが止まるなんて環境だと、休み難いでしょうが・・・それでも、普通はそれをカバーできるような上位職が居て、突発的な欠勤でも対応できるようになっていると思うんですよね。
なので、正直に寝坊しましたと電話をすれば、普通は済む話しだと思うんですよ。
寝坊が言いにくいなら、そのまま、風邪などで病欠(仮病だけど)すると電話すれば済む話しだと思うんですよね。
あるいは、通常なら通勤途中での事故などを心配して、会社側から電話連絡するでしょう?
それで、寝坊なら、すぐに来いとか、具合が悪いなら休めとかと言うやり取りがあっても良い話なんですよね。
本人は当時携帯電話を持っていて、携帯電話を川に捨てたのは、寝坊の翌々日ぐらいのはずです。
なので、寝坊で無断欠勤の当日か翌日に誰かが電話していれば、この事件は防げたのではないのかな?
その意味では防げた事件なのではないか?と言う印象はありますね。
そして、事件から13年ですか、同僚の足を蹴って傷害事件を起こした時に、指紋とDNAが採取されて、事件が発覚。
この13年が遺族を苦しめたのは間違いないのですが、私はこの13年の時間が被告が事件と向き合う為に必要な時間だったのかな?と感じています。
自分の境遇や社会を恨んで自暴自棄となって起こした事件なわけで、もし、事件直後に逮捕されたとしても、誰かのせいにして、責任転嫁で事件から逃げてしまっただろうと思うわけです。
この13年間の時間を通して、仕事をして、人に信頼され、人間性などを向上したからこそ、今、事件に向き合える状態になったんでしょうね。判決にも不満を持たずに控訴していません。
まー被告自身は自業自得なので、被告よりも遺族を優先すべきで、事件後、早い段階で逮捕するべきだったとは思います。
ただ、その場合、結局、事件に向き合わずに、刑期だけが終わって、被告が社会復帰する事になる可能性が高いので、更生を考えると、この13年と言う時間は良い方向に働くのかもしれないと思います。
しかし、逮捕できたのは偶然なんですよね。
もし、被告が障害事件を起こさなかったら、この事件は未解決のままになっていたかもしれません。
まー流しの事件で、被害者との関係が無いから、被害者をいくら調べても犯人にはたどり着けないし、他県から家出して偶然、通りかかった場所での事件で、普段そこにいるはずの無い人間による犯行と言うのも、捜査を難しくした原因かもしれませんね。
とは言え、現在、同じ事件が起きたとしたら、犯行時刻が判明しているので、付近の防犯カメラやNシステム、ドラレコの映像などで、その場所に居た人間と言うのは高い確率で割り出せそうですね。その意味ではドラレコの普及は犯罪捜査に対してプラスに働いていると思います。もう、GPS(ナビ)とセットで標準装備にして欲しいですね。
最後に亡くなった女子のご冥福をお祈りします。
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コメント
亡くなった被害者はある日突然未来を断たれたんです。こんな信じ難い大馬鹿者が通りすがらなければ今頃は幸せになっていたでしょう。長年野放しでのうのうと生活したなど、許されざることだ。さらなるドラレコの普及となるべく長時間の記録、保管が必要です。女性や子供は自動的に外出時の動画を転送するシステムも安全の為には必要です。
投稿: AKICHI | 2020/05/10 23:00
私は感情的にむごい事件だからといって過去の判例による相場を無視して死刑死刑と何でも言うのは好きじゃないのですが、本当に身勝手な理由で被害者には何の落ち度もない状態で1人死亡、1人重傷、10数年逃亡+他の傷害事件とこれだけ揃って無期懲役っていうのはさすがに法の限界を感じますね…これならどんな身勝手な理由であれ、その後逃げ続けたとしても殺害した人数が1人であれば死刑には絶対ならないって言ってるようなもんだもんなあ…
投稿: ヤムチャ | 2020/05/16 13:51