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2020/08/29

神奈川県平塚市高浜台新妻殺害事件その2(一審判決)

長文注意
***初公判(7月28日)***
1)殺人と死体遺棄、死体損壊の罪に問われた無職の男(27)の裁判員裁判が28日、横浜地裁で始まった。
被告は起訴内容をおおむね認めて罪の成立を争わないとしたものの、遺体の一部について「(海に)投棄したのではなく紛失した」と述べたとのこと。
 
2)検察側は冒頭陳述で、被告が入籍前に妻に内緒で仕事を辞めて無収入になり、趣味のボードゲームの購入費や生活費のために借金を重ねていたと指摘した。
返済のために妻のクレジットカードを無断で使用し、入籍時の祝儀も使い込んだが、妻に気付かれて非難されたことで「自尊心を傷つけられ夫婦関係が修復できないと考え、殺すしかないと決意した」と経緯を述べたとのこと。
 
証拠調べでは、クレジットカード会社などからの被告の借入額が249万円余りに上ったことを明らかにしたとのこと。
 
別の報道では
「犯行態様は強い殺意に基づくもので悪質だ」と指弾したとのこと。
 
3)弁護側は、事実関係についてほとんど争いがないとしつつも、切断した遺体の一部は「海中に投棄していない」と主張。また、「犯行は計画的ではなく、突発的だった」などとして情状酌量を求めたとのこと。
 
4)起訴状などによると、被告は令和元年6月25日、自宅で、当時26歳だった妻の首を両手やビニールひもで絞めて殺害し、遺体を包丁やのこぎりで切断。その後、遺体をスーツケースに入れ、平塚市内の海に遺棄したとしているとのこと。
 
***第2回公判(7月29日)***
被告人質問
1)被告によると、入籍前に仕事を辞めた被告はそのことを秘すため、出勤を装って外出する生活を送ったとのこと。「みっともない姿を見られたくなかった。嫌われてしまうと思った」。更に生活費を工面するため借金を重ね、妻のクレジットカードにも手を出すようになったとのこと。
 
2)その後再就職したが、事件の1週間前に預金の使い込みが妻に露呈した。被告名義のカードを預けるよう求められ、念書も提出する事態になった。
さらに事件前日には一時期無職だったこと、入籍時の祝儀を使い込んだことも被告が打ち明けたとのこと。
その時、「今まで向けられたことのない厳しい目」で妻は、普段使わない「あんた」と被告を呼び激高したとのこと。
 
深夜まで話し合いが続いた後、同じ寝室に入った夫婦。眠れずにいた被告に気付いたのか、その手を妻は握った。が、「優しくされて喜んでしまう自分が嫌だった」と被告は拒否したとのこと。
 
この時の心境についての補足情報
「すべてを終わらせたい」。借金暮らしと決別しようと考えたが覚悟ができず、そんな状態で妻の手を握る自分が許せなくなった。
 
3)「妻は愛してくれているのに。どうしたら(結婚生活を続ける)覚悟ができるのか」と眠る妻の横で考え続けた末、選んだのは台所に包丁を取りに行く行動だったとのこと。
 
4)殺害後、遺体を切断して平塚市の海に捨てた理由には「(殺害した)現実を認められなかった。遺体をなくせば何もなかったことになると考えた」と語ったとのこと。
妻への思いを問われると、「妻には何の落ち度もない。覚悟ができないと自分が言えば良かった」と述べたとのこと。
 
***その他の公判***
公判は全部で5日間あったと言う事なので、2日分の公判の情報がありません。
 
***判決公判(8月7日)***
1)横浜地裁は男に懲役17年(求刑・懲役23年)の判決を言い渡したとのこと。
 
2)判長は、「何ら落ち度のない被害者を殺害するという身勝手極まりない犯行で、動機や経緯にくむべき点はない」と指摘したとのこと。
 
一方で、「死亡結果発生の危険性を高めるような計画性までは認められず、自首もしている」などとして、被告に懲役17年の判決を言い渡したとのこと。
 
別の報道では
裁判長は、被告に無断で金を使い込まれてもなお、妻は結婚生活を続けていこうとしていたと指摘。それにもかかわらず、「(借金を返していく)覚悟ができず、すべてを終わらせようと思った」との動機で事件を起こした被告について、「身勝手極まりない」と断じたとのこと。
 
一方、被告が自己愛性パーソナリティー障害と診断されたことを踏まえ、「障害と向き合い、更生する意欲を示している」と量刑理由を述べたとのこと。
 
3)判決によると、被告は昨年6月25日未明、自宅で、妻(当時26歳)の首をひもで絞めるなどして殺害。同27日未明までの間に、遺体を切断するなどしたうえで、スーツケースに入れて平塚市に運び、海に遺棄したとのこと。
 
***証人尋問の情報?***
妻の母親の証言
「あなた(被告)が今までの人生で育みきれなかった心を探して生き直すことが、私たちをも救う道になるのではないか」
 
注:公判中の発言なので、証人尋問の内容だと推測します。
 
***その他の情報***
2人は新潟県にある国立大学の同級生。3年の時から交際し、ともに大学院に進んだ。2017年春、妻は外資系企業に就職。被告は修了できずに中退し、「やりたいことが見つからない」とアルバイトを始めたとのこと。
 
18年の秋、妻の転勤を機に結婚し、川崎に移住。被告はこの際に戸籍を見て、小学5年の頃に母親と別れた父親が再婚していたことを知った。父親からは養育費も受けていなかった。「こうはなりたくないなと思った」とのこと。
 
川崎では生活費に加え、趣味のボードゲームの出費がかさみ、クレジットカードで支払ってはキャッシングで返済するようになったとのこと。
その後、妻の預金や結婚のご祝儀を使い込んだ。
昨年6月に使い込みが発覚した頃には、借金は奨学金を含め570万円に上っていたとのこと。
 
こんなところですね。
この事件の動機が理解しにくいのは、「許してくれた妻を殺害している点」なんだろうと思います。
「二人でやり直そう」と言ってくれた妻を殺害している。
 
証言によれば
「優しくされて喜んでしまう自分が嫌だった」
なんですが・・・これはあくまで、「自分が嫌だった」ので、本来なら怒りは自分へ向かうべき物なんだろうと思います。
それが、「優しくしてくれた妻」を殺害すると言うのは、完全な八つ当たりですよ。
ただ、本当にそんな単純な思考だとは思えないのです。
 
でなぜ、殺害したのか?
私が思うに可能性は二つかと思います。
A)このまま、一生、妻に頭が上がらない生活を嫌った場合。
 ただ、それだけなら、借金は自分で返済すると言う条件で離婚すれば良い話なんだと思います。
それで、少なくとも、妻とは離れる事ができて、情けない姿を見せる事は無いでしょう。
 
B)現在の(趣味の)生活を変えたくなかった場合。
ここで、そもそも論なのですが、趣味のボードゲームで借金を作るってどんな状況なんでしょう?
ボードゲームと言う単語だけだとはっきりしませんが、可能性は3つですよね。
 
1)趣味でボードゲームを制作していた場合。
趣味の仲間内でボードゲームを作成していたのであれば、カードや説明書などは、手製でそれほどコストがかかるとは思えないです。
なので、販売目的でボードゲームを作成して、それが売れなかったと言う場合だと、原価3千円でも100セット作れば、30万円ですから、それを何度も繰り返せば、100万単位の損失(借金)ができてもおかしくは無いと思います。
 
2)趣味でボードゲームをプレイしていた場合。
ここで注目するのは「ボードゲーム」と言う言葉です。ネットゲームなどの「課金」で浪費したわけでは無いんですよね。
普通に考えれば、ボードゲームは「買い切り」型の物だと思うので、そこに多額の費用がかかるとしたら、単価が高額の場合と
購入した数量が多い場合の二つだと思います。
 
その場合も価格を見ると、高額な物でも単価1万円ぐらいなんですよね。
 
それに、「カードゲーム」でも無いので、高額なカードの購入でも無いんですよね。
ただ、ボードゲームの「参加費」と言う可能性はあるかもしれませんね。
 
3)ボードゲームで「賭け」をしていた場合?
賭けで連想するのは麻雀ですが、それなら「麻雀」と表現するでしょうし、一般的に麻雀は「ボードゲーム」には含まれないようです。
ボードゲームは普通に考えて、参加者の中で勝敗が決まるゲームなので、「賭け」の対象にはなると思います。
ただ、その場合は「ボードゲーム」ではなく「ギャンブル」で浪費したと言う表現になりそうな気がします。
 
被告がボードゲームにどのようにお金を使っていたのかご存じの方がいたら教えてください。
 
どんな理由か分からないが、「ボードゲーム」を辞めたくなかった。
つまりはギャンブル依存症とかゲーム依存症のような状態だったとすれば、無意識に「ボードゲームをプレイするのに障害になる妻」を排除したと言う説明はアリだと思います。
 
他に関連しそうなのは「自己愛性パーソナリティー障害」です。被告はそう診断されているようですね。
「自己愛性パーソナリティー障害」の特徴としては
自分の能力を過大評価し,自分の業績を誇張する。
他者による批判ならびに恥辱感および敗北感を味わわせる失敗に敏感であり,これらを気にしている。怒りまたは軽蔑をもって反応したり,悪意をもって反撃したりすることがある。
 
と言う事のようですが・・・ただ、そうならば、預金やご祝儀の使い込みを素直に告白したりしないのではないか?と言うのが疑問です。起業する為とか嘘の理由を話しそうな気がしますね。
 
ただ、ボードゲームにのめりこんだ理由は「他者から賞賛される為に勝ち続けたかった」と言うのは考えられるかもしれません。
その為に、ひたすらゲームを続けていたと言うのであれば、少額の参加費でもトータルで高額な費用になったと言う可能性はあるかもしれませんね。このあたりはあくまで推測です。
 
ただ、裁判では被告が自己愛性パーソナリティー障害と診断されたことを踏まえ、「障害と向き合い、更生する意欲を示している」と量刑理由を述べたと言う事なので、この障害が犯行に影響したとは言及してないようです。
 
いずれにせよ、結婚相手は慎重に選びたいですね。
 
亡くなった女性のご冥福をお祈りします。
 

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コメント

許してくれた妻への殺意について妄想してみました。
自らがダメな人間であると自分を責めている時に優しくされ許されると、安堵する反面で「こんなダメな自分をどうして許し、優しくしてくれるんだ」と戸惑います。
その理由が愛情や期待だと思い至れば「この愛情や期待にダメな自分が応えていけるのだろうか」と思い巡らせます。普通の人であれば再就職もしているし借金を返していく目処もあるので「応えていかなければ」と決意するところでしょう。
ところが、被告はこう考えたのではないでしょうか。
「一度失敗してあれだけ軽蔑した目で見られ罵倒された。今は優しく許してくれたが、応えられなければ失望され見放されてしまう。それは耐えられない。しかしダメ人間の自分がそうならないように過ごしていくのは困難極まりない。」
結果、これ以上失望されないように妻を殺害したと。
おそらくですが、妻への殺意とならなければ自殺でもしていたかもしれません。

他人からの愛情を信じ切れなかったのかな、という印象です。
妻は「やっと喧嘩らしい喧嘩ができたし、格好つけてばっかりだった夫にも意外と人間らしい欠点があるとわかったし、夫婦としてこれから歩んでいくんだな」などと思っていたのかもしれませんね。

投稿: つれづれ | 2020/08/30 23:00

つれづれさん、こんばんは

なるほど、「次に失望させたら、見放されてしまう」ダメな自分では、きっとそうなる。それならば・・・と「手に入らないなら壊してしまえ」と言う心境と似ているかもしれませんね。

自己愛性パーソナリティ障害と診断されていたなら、カウンセリングを受けるなどのケアはされていなかったのかな?
メンタルが安定していれば、こんな結果にはならなかったかもしれませんね。

投稿: ASKA | 2020/09/03 18:12

しかし、杉並の保育士殺害もそうだけど
こんな身勝手な理由で人を殺しても
被害者が1人であれば15~20年程度で済む
(模範囚であればそれ以下で出てきてしまう)っていう
永山基準はいい加減何とかして欲しいですね…

投稿: 名無し | 2020/09/15 09:26

名無しさん、こんにちは

司法としては死刑判決は極力出したくないと言う事なのかもしれませんね。
あとは、永山基準がなくなると、個別の事件での判断にばらつきが大きなるとか、司法の公平性など別の問題が出てくるのか・・・

ただ、庶民の処罰感情を反映する為の裁判員制度は機能していないかもしれないとは思いますね。

投稿: ASKA | 2020/09/20 12:59

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