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2020/09/20

福岡県粕屋町女性会社員殺人事件その4(一審判決)

***初公判(9月8日)***
起訴状などによると、被告は19年7月6日午後10時26~46分ごろ、殺意を持って、通行中の女性の首を絞めて窒息死させ、近くを流れる須恵川に投げ入れるなどして死体を遺棄。女性の財布など29点(時価総額約2万4000円)を持ち去ったとされるとのこと。
 
1)被告は「殺意を持ってという所以外は、概ね間違いありません」と、起訴内容を大筋で認めました。
 
2)検察側は冒頭陳述で、被告は当時働いていた建設会社から借りた車で女性を物色中に自転車で走行する女性を発見。先回りして待ち伏せし、すれ違いざまに自転車から引きずり下ろしたと指摘。女性の首を絞め、遺体を川に遺棄した後、現場を離れたが「バケツを持参し再び犯行現場に戻り、指紋を洗い流したり遺留品がないかを確認したりした」と非難したとのこと。
 
「発覚を免れるため遺体や自転車を川に投げ入れるなど、結果が重大かつ、危険で悪質・強固な殺意があった」と指摘したとのこと。
 
3)弁護側は「殺意はあったが強固ではなかった。首を絞めたのは気絶させるためだった」と主張したとのこと。深く後悔し反省するなど、量刑で考慮すべき事情を述べたとのこと。
 
***論告求刑公判(9月11日)***
1)検察側は「執拗で残忍な犯行」と指摘し被告に無期懲役を求刑した。
論告で、検察側は「1人でいる女性を狙い、ゲーム感覚で犯行に及んだ。執拗に襲われた被害者の恐怖や苦痛は計り知れない」と主張したとのこと。
 
検察は「自身の保身のため、被害者を物のように扱った」と厳しく批判した。
 
検察側は論告で「首を絞めた後、意識が戻った女性の首を再び絞めており、殺意は強固だった」と指摘したとのこと。
 
さらに、被告が過去に刑務所に服役していたことにも触れ、「出所から2年足らずの事件で、再犯の可能性が高い」として、無期懲役を求刑したとのこと。
 
検察側は論告求刑で、スカート姿で1人ならば誰でもいいと考えて物色し「ゲーム感覚で被害者に狙いを付けた」と非難。被告は、過去に性犯罪事件などを起こし、服役中に性犯罪の再犯防止プログラムを受けたにもかかわらず今回の事件を起こしたと指摘し「更生の機会は何度もあった。再犯の可能性は極めて高い」と述べたとのこと。
 
被告が過去に性犯罪事件を3度起こし、服役中に性犯罪の再犯防止プログラムを受けたのに再犯に及んだことを挙げ、「犯行がエスカレートしており、再犯可能性が極めて高い。被害者の人格や尊厳を踏みにじる残忍な犯行だ」と主張したとのこと。
 
2)公判の冒頭、女性の息子の手紙が代理人弁護士によって読み上げられ「ママが亡くなったことが今でも認められない自分がいます。なぜママを殺したのか。ママを返してほしい。(被告は)一生刑務所から出てきてほしくない」と訴えたとのこと。
 
被告については「ママを殺し、家族をつぶしたことを許せない。一番重い刑にしてほしい。少なくとも一生、刑務所から出てきてほしくない」としたとのこと。
 
3)弁護側は、首を絞めたのは女性を気絶させることが目的で「強固な殺意はなかった」と主張。被告の母親は、償いとして被害者遺族に賠償金を支払う意向を示しているとのこと。
 
弁護側は最終弁論で「強い殺意はなかった。起訴内容を認めて深く反省しており、更生する可能性は十分にある」として、懲役30年が相当と訴えたとのこと。
 
弁護側は「被告は性依存症だが、治療を続けることで再犯は防げる」などとして、懲役30年であるべきと主張したとのこと。
 
4)被害者参加制度を使って出廷した遺族側は「死刑がふさわしい」と意見陳述。被告は最終意見陳述で「被害者や遺族に本当に申し訳ない。人の命を奪ったので、死刑が妥当ではないかと思う」と述べたとのこと。
 
5)女性の夫(47)は閉廷後の記者会見で「つらくて海の底にずっといるような感じで、地獄の日々を過ごしてきた」と胸の内を明かしたとのこと。
 
被害者の夫は「会いたくても会えない。そして、犯人は刑務所にはいるが生きることができる。あまりにも不公平。僕は死刑を望んでますが、仮に出たら間違いなく同じことを繰り返す」と心情をあらわにしたとのこと。
 
***判決公判(9月17日)***
1)福岡地方裁判所は17日、男に無期懲役(求刑無期懲役)の判決を言い渡しました。
「再犯が強く懸念され、終生その罪を償わせるのが相当」とし、求刑通り無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
 
2)裁判長は、逃げる被害者を執ように追いかけ犯行に至ったとして強い殺意があったと認定、経緯や動機に酌量すべき点はなく再犯が強く懸念されるとして、求刑通り無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
 
判決理由で裁判長は、被告は乱暴目的で女性を物色し、現場を通りかかった被害者を狙ったと説明。逃げようとした被害者の首を2度絞めたなどとして「執拗に攻撃し、残忍で危険性が高く、身勝手極まりない犯行」と非難したとのこと。
 
3)裁判長は「被害者に思いを致し、どうすればよいのか真剣に考えてほしい」と説諭したとのこと。
 
4)女性の夫(47)は、判決後の記者会見で「求刑通りになって少し気持ちが落ち着いた。妻の命はもうないが、被告は生きられる。その差はあまりにも大きい。(判決を聞いて)妻のことや、妻の悔しさを考えた」と話したとのこと。
 
5)裁判員を務めた女性2人も判決後に記者会見した。40代の女性は「被告にはまず、自分の罪にしっかり向き合って、一生かけて償ってほしい」と求めたとのこと。
 
30代の女性は「今まで事件を人ごととして受け止めていたが、誰もが被害者になりうると感じた。同じような事件が再び起こらないよう社会で考えることがとても大事」と述べたとのこと。
 
こんなところですね。
これまでの報道では曖昧になっていたので、私も強の字は一つと考えていたのですが・・・今回の報道では
「2019年7月、粕屋町で女性が乱暴され、殺害された事件で、福岡地裁は被告の男に対し求刑通りの無期懲役を言い渡しました。」
 
と言う事で「強」の字が罪状に二つありそうですが・・・
ただ、死亡一人で強の字が二つ、ついているのに、検察側は死刑ではなく、無期懲役を求刑していると言う事になります。
そこを考えると、やはり強の字は一つなのか?とも思えますね。
 
いずれにせよ、まったく身勝手な理由で、己の欲望のままに犯行を行い罪のない女性を殺害している。その上、過去にも3度同様の性犯罪を行い、再発防止プログラムを受けているのに、犯行を防ぐ事ができませんでした。
 
こうなると、再発防止プログラムには効果が無い場合があると判断しても良いと思います。
その意味では、性犯罪の累犯者には薬物的な去勢などもっと実行力のある再発防止処置が必要だと思いますね。
 
裁判員で参加された女性は「今まで事件を人ごととして受け止めていたが、誰もが被害者になりうると感じた。」と事件後の記者会見で話していますが、まったくその通りです。
 
残念ながら、日本の社会は「性善説」で考えられる社会では無いと言うのが現実ですね。
 
亡くなった女性のご冥福をお祈りいたします。

参考リンク
福岡県粕屋町女性会社員殺人事件その3(8月22日までの報道)

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コメント

個人的に思うのは、加害者の人間性の問題が一番の原因であるのは間違いないのだけれど、刑務所の「更生プログラム」がほぼ意味を成していないのも問題だと思うんですよね…色々な理由で個人的に知っているのですが、この手の依存性犯罪(性犯罪・薬物・盗癖など)の場合、更正プログラムを組まれるわけなのですが、入所してからずっと行われるわけではなく、出所前の段階になってはじめて専門の人間でもない職員がメインとなって数週間程度形だけのものを行われるだけです。ハッキリってどれだけの有効性があるのか甚だ疑問なんですよね。もっとそこに専門の職業医師を配置するなど、時間と金を割かないと真の更生は難しいし、ただ閉じ込めて労役を与えて日々を過ごさせるだけではなく、医療的な面でも依存性のある犯罪はきちんと「治療」するまで出さないっていうのも大事なのではないかなあと思ったりします。多くの国民はそんな事に関心がないだろうし、犯罪者の更生なんかに多額の税金を回すなんてとんでもないって意識がある場合が多いけど、それが再犯とか治安の悪化とかに関わってくる以上、そこに相応の人と金と感心を回す意義は大きいと思うのですが実情はそうではないってのが「更生プログラム」の弱さだと感じています

投稿: 名無し | 2020/09/21 02:30

名無しさん、おはようございます。

情報ありがとうございます。
そうですね、私も刑務所のある地元の断酒会がボランティアで定期的に刑務所内で講演を行っているという話は聞いています。でも、定期的といっても数か月に1度だと効果に疑問はありますね。

他に性依存の場合、出所後の治療が難しいというのもあるかもしれません。

代表的な依存症のアルコールと薬物については、断酒会やダルクなどが全国的に展開してますが、性依存については、この手の組織は聞いた事がありません。(私が知らないだけかもしれませんが)

なので専門医のところで治療する以外に治療方法がないかもしれませんね。

防犯の意味では、お金がないから治療できないという事が無いように、治療費については国が支援するなどしても良いかもしれませんね。
それでも治療を拒否するなら、強硬な対応もやむなしというところでしょうか。

税金を投入できるか?が難しいところですが、被害が起きてからでは、被害をお金で取り戻せないわけで、それは必要な出費なのかなと思いますけど・・・社会的に支持されるかは難しいかもしれませんね。

政治家は「自己責任」と言う言葉が好きですからね。

投稿: ASKA | 2020/09/21 09:35

依存症は治らないと言うのが定説で特に性癖も。プログラムは限られた期間で終わるのでその後の費用も含めたシステムの在り方が必要ではないでしょうか。要は誰が責任を持って観るか(観続ける)ですよね。ASKAさんが別の事件でも言われた「司法の課題」ですよね。更に言えばこの国の課題でしょうか。

投稿: 亀さん | 2020/09/22 12:51

被告(37)は、求刑通り無期懲役とした1審・福岡地裁の裁判員裁判判決を不服として控訴したとのこと。9月28日付。

投稿: ASKA | 2020/10/12 12:21

控訴審

***初公判(1月29日)***
弁護側は量刑不当を主張し、証人尋問と被告人質問を求めましたが裁判所は却下し、即日結審した。

***判決公判(2月24日)***
福岡高裁は1審の無期懲役の判決を支持し、被告側の控訴を退けた。

裁判長は「自己中心的で極めて攻撃的な凶悪犯罪」として、1審の無期懲役の判決を支持し、控訴を棄却したとのこと。

こんなところですが、当然と言えば当然の結果ですね。
上告すると思いますが、結果は変わらないのではないかな。

投稿: ASKA | 2021/03/06 11:21

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