« 山形県東根市女性医師殺害事件その3(一審判決) | トップページ | 世田谷一家殺害事件再考その201(2020年年末情報) »

2020/12/28

北海道札幌市2歳女児虐待死事件その6(女性被告の一審判決)

懲役9年(求刑懲役14年)です。

***初公判(11月2日)***
被告は2019年5月中旬から交際相手の男と共謀して、娘で2歳の女児に十分な食事を与えず衰弱死させたとして、保護責任者遺棄致死の罪に問われている。
 
1)被告は「娘は元気な状態で突然亡くなった」などと無罪を主張したとのこと。
 
『私は娘にご飯を食べさせていた。亡くなる直前まで元気だったのに急に亡くなった。起訴内容は絶対に事実ではない』と主張したとのこと。
 
2)検察は司法解剖の結果から女児は2、3週間ほとんど食事を与えられず、低栄養で衰弱死したと指摘したとのこと。
 
検察側は「長期間、閉じ込め食事を与えず治療も受けさせなかったことは残酷かつ悪質」と指摘したとのこと。
 
3)弁護側は女児は直前まで自力で食事していたが、喉に食べ物を詰まらせて窒息死したと主張したとのこと。
 
弁護側は「命の危険がある低栄養状態ではなかった。衰弱死ではなく窒息死」と主張したとのこと。
 
***第二回公判(11月4日)***
証人尋問(男性被告)
弁護側質問
亡くなる前の密室内の状況を証言した。
女児は直前まで部屋の中を歩いたり、自分で食事をしたりするほど元気だったと話し、保護が必要な状況ではなく、死因は窒息死だったと証言したとのこと。
 
検察側質問
検察:「(事件後)女性被告にこの場にいなかったことにしてほしいと頼みましたか?」
 
男性被告:「頼みましたね」
 
検察:「窒息死なら事件ではなく事故なので頼まなくていいのでは?」
 
男性被告:「警察に話を作られたりするので、巻き込まれたらめんどくさいなと」
 
男性被告:「(女性被告は)出かけるときも何時間とか決めずに、適当に出かけていた。(女児に)決まった時間にご飯をあげる意識は全くなかった」
 
弁護側、検察側どちらの質問か不明な内容なので、以下に記載します。
 
「こっちゃんと呼んだら、洋室から自分で歩いてきて3人で食事した。食事後、こっちゃんバイバイと言ったら、バイバイと手を振って洋室に戻った」などと証言したとのこと。
 
女児の頭が腫れ、病院に電話した際「女性被告は何もしなかったから、自分が電話をした」「家の中で服を着せず、おむつ1枚にしていた」と証言したとのこと。
 
亡くなる3時間前の食事には「"こっちゃん"と呼ぶと歩いてきた。アクアパッツァといももちとスクランブルエッグとドーナツを食べた」と証言したとのこと。
 
女児が搬送される約30分前に、膝をつき前かがみで首を抑え苦しそうにしている様子を男性被告が発見し、水を飲ませるなどの処置をしたことも明らかにし、体調が急変したことも主張したとのこと。
 
***第三回公判(11月5日)***
被告人質問
食事を与えていなかったのでは?
亡くなるまでの2週間の買い物リストを示しながら、女児の好物の「飲むヨーグルト」や「とろろそば」などを買って食事を与えていたと主張した。
 
「亡くなる2日前にちょっとやせたかなと思っていた」「イヤイヤ期だと思っていた。普通の食事を与えても食べてくれないことがあった」
 
女児の身体に残っていたケガについて
「一弥君(男性被告)とのケンカをしたあと、娘にケガがあることに気づいた」
 
被告は自身の入浴中に女児の容体が急変したと話したうえで「入浴中に一弥君が女児を暴行したと思う」と証言した。
また、入浴後の状況について「女児の舌の上に血があった」「洋室に血を水で薄めたような水たまりがあった」と説明した。
検察はスマートフォンに女児がおむつ1枚で生活している写真が残っていたことなどから、被告に育児放棄の傾向があったと指摘したとのこと。
 
女児が亡くなった日の様子については「呼吸がおかしかったので、詰まらせたかと思って口の中を見ました」と、あくまでも女児は急に亡くなったと証言したとのこと。
 
「お風呂は娘と交際相手の男と3人や、娘と2人でほぼ毎日入っていた」などと証言したとのこと。
 
女児が死亡する2日前にやせていると感じたと証言した被告。検察が、「毎日お風呂に入れていたということだが、それ以前に気づかなかったのか」と質問すると「時間に余裕が無くてバーッと(風呂に)入れて寝かせていた」「娘と過ごす時間が減っていて気付くのに遅れた」と答えたとのこと。
 
「一弥くんはお金に困っていました。だから外で仕事をしている私に暴力をふるうわけにはいかなかったんだと思います。私のせいで、娘を犠牲にしてしまいました」
 
***第四回公判(11月6日)***
証人尋問
検察側証人(司法解剖した解剖医)
「女児の遺体はろっ骨がうきでるほど痩せ細っていた」と証言した上で、死因は低栄養による衰弱死であると主張した。さらに女児の頭の骨折やアザなどについては、直接的な死因ではないものの死期を1日~2日早めたという見解を示したとのこと。
 
女児が低体温になっていたことから、窒息死のような突然の死なら、亡くなるまでに大きく体温が下がるはずはないと否定。胃に残っていた食べ物については「低栄養で消化器系がかなり弱っているので健康な人とは違う」と反論。血糖値も死後変化するので「信用できない」と主張したとのこと。
 
司法解剖の結果では、女児は、お腹の皮下脂肪が3ミリから5ミリになるほど痩せていて、低栄養により衰弱死したと結論付けているとのこと。
 
女児は体重を維持するための栄養が足りず、全身の臓器が弱っていたと証言。
 
女児が亡くなる5日前の2019年5月30日ごろには、体力が落ちて、歩いたり、大声を出したりすることはできず、数日前には意識障害が生じていたと見ているとしたとのこと。
 
また大腸からは綿ごみや毛のようなものが見つかっていて「飢えて落ちていたものを食べていた可能性がある」と証言した。
 
頭の骨折などのケガは死期を早め、傷も複数あることから、何度も暴行されていると指摘したとのこと。
 
弁護側証人(脳神経外科医)
女児の頭のけがは脳には影響を及ぼしていないため、十分自然治癒する程度のものであったと死への因果関係を否定した。さらに死因についても、太ももの皮下脂肪が14ミリ残っていたことなどを根拠に、低栄養状態にあったのは間違いないが、飢餓状態ではなかったとして衰弱死を否定し、死因は喉に嘔吐物を詰まらせたことによる窒息死であると反論したとのこと。
 
胃に多くの食べ物が残っていることや血糖値が高かったことから、「食べた直後でないと説明がつかない」と証言。
 被告の供述が「100%正しい」と主張し、のどを詰まらせたことなどによる「窒息死」の可能性を指摘したとのこと。
 
***第五回公判(11月9日)***
証人尋問
弁護側証人(消化器内科の医師)
「女児の死因は衰弱死ではなく窒息死」だと証言した。
 
医師は女児の大腸全体に便が残っていたことに着目し「死亡する前日~数日前までは食事をしていた」と指摘したとのこと。
 
また血液検査の結果も低値でありつつも、正常の域だとし衰弱はしていなかったとしたとのこと。
 
6日の裁判では女児を鑑定した医師が、大腸に毛やほこりがあり「飢えて食べた可能性がある」としていましたが、弁護側の医師は「2歳児くらいの子どもは、食事のときに誤って毛髪やペットの毛、ほこりなどを口にすることはある」とした上、「飢えた状態なのであれば、おむつや観葉植物なども食べてしまう」と反論したとのこと。
 
男性被告の「女児が首を押さえ苦しそうな様子をしていた」という供述や、女性被告が通報時、救急隊に「口に食べ物があり、苦しそうにしている」などと話している録音の証拠と、胃の中にいももちが残っていたことから、いももちが胃から逆流し、窒息した可能性があるとしたとのこと。
 
複数回食事していた根拠の一つが、トマト。女児の胃には赤いトマトの皮、大腸には色が抜けたトマトの皮のようなものがあった。
 
弁護側の医師は、消化機能が維持されていたことを示していて、同じときに食べたトマトではないと分析。女性被告の交際相手・男性被告は、亡くなる3日前と当日に女児がアクアパッツァを食べたという証言をしていますが、トマトの状態はこの証言と整合するとのこと。その上で、救急搬送時、女児の口の中には吐いたものがあったことなどから、吐いたものをのどに詰まらせた「窒息死」の可能性を指摘したとのこと。
 
(6日に証言の)司法解剖をした医師は、トマトの皮だけでは複数回食事したとは言えないと反論。消化機能が低下してトマトの皮の一部が胃に残り、一部が大腸へたどり着いた可能性もあると指摘。改めて「衰弱死」と証言したとのこと。
(この部分が9日の証言かは不明)
 
***第六回公判(11月10日)***
被告人質問
5月末から女児が亡くなる前までコンビニで購入した弁当や手作りの料理、ヨーグルトやバナナを与えていたと証言し、育児放棄を否定したとのこと。
 
また、女児の遺体を解剖した鑑定医の「亡くなる約5日前には衰弱していて、数日前には意識障害に生じていた」の指摘には、「亡くなる直前まで様子は変わらなかった。呼びかけると『はーい』と歩いてきた」と反論したとのこと。
 
検察官:「女児が痩せているのをもっと早く気づけたとは思いませんか?」
 
被告:「私なりに仕事も育児も家事も精いっぱいやっていました。今となっては、もっと見てあげればよかったなと思います」
 
裁判官:「窒息死だったとしても、ちゃんと栄養を与えていたら(嘔吐物を)吐き出す力があって、こうはならなかったとは思いませんか?」
被告:「いまとなっては、もっと食事を気をつければよかったと思います」
 
女児の死を避けるためにはどうすればよかったのかを裁判官に問われると。
 
被告:「男性被告と付き合ったことが間違いでした。私が男性被告を信じ切っていました。忙しく時間がなくても、寝る間を惜しんで娘との時間を作ってあげればよかったなと思います」
 
***論告求刑公判(11月11日)***
検察は、11日、懲役14年を求刑した。
検察は「子どもの命よりも男との遊びや関係の維持を優先した罪は重い」として、池田被告に懲役14年を求刑した。
 
検察側は「およそ20日間にわたり女児を家に閉じ込め食事も与えず、男性被告からの暴行を認識しながら治療を受けさせなかったことは残酷というほかない。
我が子を死に追いやりながら犯行を否認し反省があるとは言えない」として懲役14年を求刑したとのこと。
 
以下はいつの時点の証言か不明です。
「私は娘の母親です。育児や生活面で母親として足りないところはたくさんあったと思っています。このような結果を招いたのは事実です。責任を感じています。いまさらとわかっていますが、後悔してもしきれません。このことは一生背負っていかなきゃいけないと思っています」
 
***判決公判(11月20日)***
地裁は「食事を与えるという最も基本的な責務を果たさず、生存の確保をないがしろにして誠に悪質」として、懲役9年(求刑懲役14年)を言い渡したとのこと。
 
判決によると、被告は交際相手の男性被告(26)=保護責任者遺棄致死罪などで懲役13年の実刑判決、控訴=とともに、昨年5月15日ごろから女児に必要な食事を与えず、男性被告の暴行によるけがの治療を受けさせないで放置し、低栄養状態に陥らせて同6月5日に衰弱死させたとのこと。
 
判決は、遺体を解剖した医師の見解に基づき、同5月31日ごろには衰弱が進み、生存のため保護が必要な状態にあったと認定。暴行によるけがが衰弱の程度を強めたとし、死亡の数時間前には高度の意識障害も生じていたと推認したとのこと。
 
また、体重約8・2キロだった女児が同4月下旬から約6週間でその約18%が失われるほど低栄養状態だったと認め、「明らかに特異だ」と指摘した。女児の身の回りの世話をしていた被告が体重の減少やけがに気がつかないのは不自然だとして、被告の供述は信用できないと断じたとのこと。
 
さらに、女児を1人で部屋に残して男性被告と長時間外出していたと指摘し、「機会があったのに育児支援を受けようとせず、男性被告との遊興や関係維持を優先させ、あまりに無責任だ」と非難したとのこと。
 
一方で、裁判長は
「自らの過ちを真摯に振り返る姿勢がうかがわれない点は相応に非難されるべきであるが当時若年である被告人の未熟さや想像力の乏しさが影響している」と述べたとのこと。
 
***控訴(11月20日)***
被告(22)が、懲役9年(求刑懲役14年)とした20日の札幌地裁判決を不服として札幌高裁に控訴した。20日付。
 
こんなところですね。
男性被告が有罪になっていますので、検察側の主張が認められるのかな?と言う予想はありました。
ただ、医学的見解が180度違うところが、ちょっと微妙だなと感じるところではありますね。
死亡直前の様子についても、男性被告と証言が一致してます。
まー、事件後にその場にいない事にしてくれなんて事を話しているので、口裏を合わせたと言う可能性もあるけど・・・
 
低栄養状態だった事は弁護側証人の医師も認めているところではあるんですけどね。
女児の死因が「低栄養」による「衰弱死」であった事を証明するには決定打が足りない気もします。
 
なので、控訴審で逆転する可能性もあるのかな?と言う気もしますが・・・
死因はともかく、同居する男性の虐待行為を見逃していた事、育児をないがしろにして、自分の遊びを優先した事は無かった事にはできませんね。
 

|

« 山形県東根市女性医師殺害事件その3(一審判決) | トップページ | 世田谷一家殺害事件再考その201(2020年年末情報) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 山形県東根市女性医師殺害事件その3(一審判決) | トップページ | 世田谷一家殺害事件再考その201(2020年年末情報) »