山形県東根市女性医師殺害事件その3(一審判決)
一審判決は懲役18年(求刑懲役20年)です。
***初公判(11月30日)***
1)起訴状によりますと被告(25)は山形大学の学生だった去年5月、東根市のマンションに侵入し、眼科医の女性の頭などをゴルフクラブで殴り殺害したとされています。
2)被告は「殺意はなかった」と述べ、一部を否認したとのこと。
被告は罪状認否で女性殺害の事実は認めたものの、殺意はなく、頭を複数回殴ったことも「わからない」と述べているとのこと。
3)検察側は犯行前に、インターネットで知り合った女性と性的関係を持ちたいと考え、外出したものの会えずに、無施錠の女性宅を探し歩いていたと説明したとのこと。
冒頭陳述で検察側は、動機は性的欲求を満たすためだったと指摘。「被害者がうつぶせに倒れた後も殴り続けた」と述べ、殺意を認定できると主張したとのこと。
検察側は被告が「強姦目的」で侵入し殺害に至ったと主張。被告のスマートフォンに残っていた「家に押し入り強姦する」などという犯行当時の検索履歴を証拠として示したとのこと。さらに精神鑑定の結果から「責任能力」があったのは明らかだと指摘したとのこと。
4)弁護側は「当時、酒と薬を飲んだ影響で、心神耗弱状態だった。傷害致死罪にとどまる」と主張したとのこと。
5)山形地検は被告の精神状態を調べるため約3か月間、鑑定留置し、刑事責任を問えると判断、19年10月4日に起訴した。弁護側も精神鑑定を求めたが、地裁は退けているとのこと。
***第2?回公判(?)***
1)証人尋問:遺体の状況を分析した医師
「女性は頭を中心に30回ほど殴られたのではないか」との見解を示したとのこと。
これについて被告は「部屋に侵入した目的は分からないが、恐怖でゴルフクラブを振り下ろした」と述べ人を殴った認識はあったことは認めたとのこと。
2)被告人質問:報道されず内容不明
どの公判での情報化不明ですが被告人質問の内容。
(検察側)
「殴ったのは男性?女性?」
(被告)
「覚えていません」
(検察側)
「家に入る前に、「押し入り・強姦」と検索しましたね?」
(被告)
「分かりません」
3)どの公判での情報か不明ですが、以下に記載します。
検察は被告は事件前日の5月18日夕方、性的関係を目的にインターネットで知り合った県内の女性に連絡したが断られた。その後、近くの公園でコンビニで購入した酒を飲み、風俗店を探したり、別の女性にも会おうとしたがうまくいかず、午後10時ごろから、現場周辺で無施錠の女性宅を探し始めたとのこと。
翌19日午前5時ごろ、被告は、鍵がかかっていない、女性用の靴がある部屋を発見し、周囲を確認した上で侵入。廊下にあったゴルフクラブを手に取ってリビングに入ったところ、被害者と鉢合わせになったため、ゴルフクラブで頭部を何度も殴打したとのこと。
4)被告は、被害者とは面識がなく、犯行の2日後に初めて、自分が殴打した相手が女性だと知ったと述べたとのこと。
弁護側は、被告は現場が女性宅とは認識しておらず、性的暴行の目的はなかったと主張したとのこと。
5)被告を精神鑑定した医師は「1回目の殴打後、パニックによる解離性反応や時間とともに嫌な記憶は蓋をして消し去りたい『健忘』が起きた可能性がある」と証言したとのこと。また、「抗うつ剤と酒との併飲で意識障害は考えられない」との見解を示し、鑑定時に「(被告は)複数回殴打したと述べていた」と、公判での被告の証言を否定したとのこと。
6)現場周辺の複数の集合住宅を物色し無施錠だった被害者宅に侵入したとされる行動について、検察側が昨年6月19日の取り調べで「(被告は)『あわよくばそこに住む女性と性的関係を持ちたいという気持ちがわずかながらあった』と供述した」と指摘したのに対し、被告は「供述した時にそうした記憶があったわけではない。目の前にいた人(検事)に納得してもらいたくて推測で話した」などと述べたとのこと。
***第3?回公判(12月2日)***
遺族が2日証言台に立ち、死刑を求めたとのこと。
この時の証言かはっきりしませんが、以下に記載します。
被害者の弟で事件の第一発見者は、「姉は本当に大事な人でした。理不尽な方法で殺した犯人を許すことができない。命をもって償ってほしい」と訴えたとのこと。
被害者の姉は「(被告は)本当に反省しているのか、反省しているようには見えない。きちんと事件に向き合ってほしい。死刑になってほしいが、せめて刑務所から外に出てこないでほしい」と強く訴えたとのこと。
***論告求刑公判(12月3日)***
1)検察側は12月3日、山形地裁の裁判員裁判で懲役20年を求刑した。
2)検察側は論告で「動機は身勝手で、同情の余地はなく、犯行は残酷だ」と非難したとのこと。
検察側は、殺傷力のある凶器で頭部を狙って殴打した点から殺意があったと主張したとのこと。
責任能力については精神鑑定などから「被告に精神疾患はなく、完全責任能力が認められる」と述べたとのこと。
検察側は「被害者が倒れたあともゴルフクラブで殴打し続けたことは執拗で残酷であり、被害者を放置して立ち去るなど自分の身を守ることを優先し、人命を軽視した犯行」「捜査段階で認めている事実を公判で撤回するような態度をとっていることから罪と向き合おうとせず、更生などあり得ない」とし、被告に懲役20年を求刑したとのこと。
検察側は論告で、抗うつ剤と飲酒に意識障害を起こす因果関係は認められず、被告は性的行為を求めて無施錠の女性宅を物色するなど、合理的に行動していたと指摘。頭部を複数回殴っており、「殺意はあり、完全責任能力があった」と主張したとのこと。
3)弁護側は「提出された証拠からは殺意があったと言えない」と述べ、傷害致死罪の適用にとどまると主張して結審したとのこと。
弁護側は「被害者が突然現れ、偶発的に殴り、未必の故意もなかった」などと反論し、酒とうつ病治療薬による意識障害があり、責任能力は限定的と訴えたとのこと。
弁護側は最終弁論で、被告が事件当夜、飲酒しながら9時間も歩くなど不合理な行動をしており、「意識障害があったとしか思えない」と主張したとのこと。
居間で女性と鉢合わせしてパニックとなって殴ったが、複数回殴ったことは覚えておらず、心神耗弱状態で殺意はなかったと主張したこと。
捜査段階で認めている内容を公判で撤回していることについては、「現在の記憶に従って証言しているだけで、裁判の中で自身に不利益な記憶も証言している。罪と向かう気持ちがある」などと述べ、更生の機会を求めたとのこと。
4)被告は最終意見陳述で「何度おわびしても足りない。一生罪と向き合う」と話したとのこと。
「亡くなられた被害者の人が、人を助ける仕事に情熱を持ってたくさんの人に信頼されて本当に家族思いだったことが分かった。本当に申し訳なかった」と述べたとのこと。
その後、証言席を離れ、遺族に向かい、「本当に申し訳ありませんでした」と深々と頭を下げたとのこと。
***判決公判(12月11日)***
1)山形地裁は11日、懲役18年の判決を言い渡した。
「ゴルフクラブで何度も殴るという執拗で残忍な犯行で、被害者に落ち度はなく、突如命を奪われるという、恐怖・痛み・無念さは計り知れない」と厳しく指摘したとのこと。
2)被告の責任能力と殺意を認め、「殺害行為は執拗で残虐、酌量の余地はない」とした。
裁判長は、「被害者の態勢の変化に対応し、頭部を複数回殴打している」「その行為の危険性を認識していた」として殺意を認定。その上で、「殺害行為は執拗で残虐、女性と性的な関係を持ちたいと考えて侵入し、殺害に及んだ犯行は、酌量の余地は全くない」などとして、懲役18年を言い渡したとのこと。
***控訴(12月15日)***
被告の元大学生は12月15日、1審の懲役18年の実刑判決を不服として控訴したとのこと。
こんなところですね。
被告については、ある意味で人間らしいと言うべきなのかな?
自分の罪を軽くしたいと言うのは誰にでもある感情だとは思うのですが、それは反省と言う事とは対立する場合が多いんでしょうね。
だから、「反省していない」とか「事件と向き合っていない」と言う事になってしまう。
しかも、それがあからさまだと、さらに印象が悪いですよね。
事件直後の取り調べの内容については、そんな事もあるかな?と思わなくもないけど、事件から数か月が過ぎた精神鑑定での話しも否定するのはちょっと無理な印象ですよね。
逮捕後には素直に話していたのでしょうが、公判が近づき、量刑を考えると少しでも罪を軽くと考えた結果なのかもしれません。
さて、最後にこの事件の教訓ですが、もはや日本で「性善説は通用しない」とか、あるいは「犯罪者は常に我々のスキを狙っている」と言う事でしょうか。
在宅中に自宅玄関のドアを施錠していなかったと言う、誰にでもありそうな「スキ」を犯罪者は見逃さないと言う事なんですよね。
今回は偶然、被害者が被害にあってしまったわけですけど、事件当日、東根市の周辺の家で、無施錠の家があれば、誰が被害にあっても不思議ではなかったと言う事ですからね。
日本はこれまで、治安が比較的良い国でした。
しかし、通り魔事件や、この手の暴行目的での侵入事件は毎週のように起きている。
その現実に目を向ける必要があります。
日本は工業技術力では世界でもトップクラスなのだから、テクノロジーで防犯する方法を考えたいですよね。
とりあえず、簡単なところで、防犯カメラがあれば、少しは抑止力になるかもしれませんね。
亡くなった女性のご冥福をお祈りします。
控訴審を待ちましょう。
参考リンク
山形県東根市女性医師殺害事件その2(7月1日までの報道)
山形県東根市女性医師殺害事件その4(控訴審の途中まで)
参考リンク
山形県東根市女性医師殺害事件その2(7月1日までの報道)
山形県東根市女性医師殺害事件その4(控訴審の途中まで)
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