世田谷一家殺害事件再考その205(20年末特番まとめ4「外国人説」)
未解決事件SP
世田谷一家殺人事件
20年目のスクープ
~3つの影を持つ男~
***初めに(ASKAのコメント)***
番組内容には主要な5項目があります。
§1.物取り犯説
§2.怨恨説
§3.外国人説
§4.複数犯説(実行犯は反社会性人格障害)
§5.犯人の父親のDNAについて
今回は外国人説について取り上げます。
取材メモについては、別記事で解説しています。
番組を実際に見てください。この番組はかなり詳細に事件を再現しています。
事件簿の記事ではそれらを全て書き出す事はできません。
実際に番組を視聴して、参考に事件簿の記事を読んだいただいた方が理解が深まると思います。
長文注意です。
********************
成城警察署元署長
土田猛(73歳)
世田谷の事件で検視を担当。
2005年から事件を管轄する成城警察署の署長を務めた人物。
事件の捜査に携わり、遺族とも深く向き合ってきた人物。
時効制度の廃止や遺族の権利を守ることを目的に「宙の会」を結成(2009年)
外国人説
土田氏談:
同じ日本人が恨みが仮にあったとしてもここまで残酷になれるかなと思う。
「想定外の”外国人犯”説」
男はアジアのある国からやってきた若者、貧しいふるさとを出て夢と希望を胸に日本にやってきた。
戦後急速な成長を遂げアジア諸国の経済を牽引してきた日本。
豊かさを象徴する憧れの国でもあった。
しかし男がこの国で味わったのは苦しい暮らしと世間の理不尽、失望と挫折そして孤独。
やり場のない怒りはいつしか日本の社会全体に対するいびつな恨みとなって膨らんでいった。
そんな時、男が目にしたのが宮澤さん一家だった。
両親と小さな子供が二人。その光景は男の目に日本という豊かな国を象徴する典型的な家族に映った。
20世紀の終わり男は幸せの象徴を破壊して日本への復讐を果たし己の過去を清算した。
土田氏は血痕や指紋をはじめ、あらゆる遺留物を現場に残している点から見ても、犯人は身元が割れないと絶対的な自信を持つ人物、つまり外国人の可能性が高いと考えた。
土田氏談:
警察は俺に絶対迫ることができないと、今はさらば日本ということもありうるなと思う。
これまでの捜査でも外国との繋がりを感じさせる物証が複数見つかっている。
犯人は日本では珍しい韓国製の運動靴(スラセンジャー)を履き。
現場に残されたヒップバッグからはアメリカカリフォルニア州の砂も見つかっている。
そして今回犯人が外国人である可能性を科学的に示した文書があることを突き止めた。
2006年警察が極秘に行った世田谷一家殺人事件犯人のDNA鑑定の内部報告書がある。
当時、実際にDNA 鑑定を行った研究者に鑑定内容の詳細を語ってもらえることになった。
東海大学法医学教室客員教授水口清(72歳)
DNA の学会の元学会長。
水口氏談:
「(犯人の)血痕からDNAを抽出して調べました。」
鑑定を依頼されたのは、2005年8月、捜査に行き詰った警察が法医学と人類学の双方の観点からアプローチする水口氏の新たな研究に注目して依頼した。
分析したのはミトコンドリア DNA 。
母親からしか受け継ぐことのできない DNA でこれを調べれば母親の血筋がわかる。
ミトコンドリア DNA は大きく30のグループに分かれている、鑑定の結果犯人の DNA はその中のH系統に属し、さらに当時見つかったばかりの珍しい15番目のグループ H15型であることが判明した。
水口氏が当時集めることのできた全世界10686件のデータを調査した結果
水口氏談:
「見つかったのは、まずアジアの方ではインドで332人中1人、ヨーロッパで2917人中9人、日本人の中から H15型が見つからず」
当時見つかったのはこの10人だけだった。
水口氏談:
(犯人のDNAと)一番近いのはイタリアに一つ、あと検査範囲内ではボスニアにあるものは近いものが見つかっていると結論した、これは日本人に由来するもんじゃない。
水口氏は犯人の母親は日本人の系統には属さず最も可能性が高い起源はヨーロッパ系だと結論付けたとのこと。
同様に父親についても別の鑑定を行い日本、中国、韓国を含むアジア系という結論を導き出した。
水口氏がこの鑑定書を提出したのは2006年4月。
しかし警察は捜査に余談を挟むとして DNA 鑑定については公にしようとはせず非公表となった。
こんなところですね。
今回の要点は2つ
1)土田氏の外国人説
2)犯人のDNA鑑定の結果、母親はヨーロッパ系、父親はアジア系
1)の外国人説だけど、「土田氏の」と言うよりは、事件後の早い時期から言われている事だと思います。
理由は
A)「韓国製スラセンジャー」が日本国内で販売されていない事ですね。
警視庁のPDFによると
靴(スラセンジャー)、韓国製
日本サイズ27.5cm(韓国サイズ「280」)
平成10年10月から平成12年11月の間、韓国内で4,530足製造され、日本では4,000円前後で販売されたが、同サイズは日本で販売されていない
B)ヒップバッグの表面に外国製と見られる洗剤の成分がが検出された。(2005年報道)
これは硬水によく溶ける洗剤で、日本国内だとほぼ軟水と言う事で外国製と考えられていると言う事でしょうね。
C)ヒップバッグの中から発見された「砂」がカリフォルニア州の砂の可能性が高い。(2006年報道)
(三浦半島の砂はエアテックのポケットの砂ですね)
D)DNA鑑定の結果、母親はヨーロッパ系(2006年報道)
最近出てきた報道としては
E)例のハンカチの滑り止めの使い方が、中国で使われていた(2018年報道)
で、この番組の後半の目玉
F)フィリピンでもこのハンカチの使い方がされていた。
こんなところですね。
DNA鑑定については2006年報道の段階で
「過去に例がない捜査」(捜査幹部)で、かなりさかのぼった祖先が混血だった可能性も排除できない難点もあり、捜査幹部は「純粋な日本人の犯行の可能性も捨てず幅広く捜査する」としている。
と言う事です。
さて、外国人説が魅力的な点としては、現状を説明するのに都合が良い点があること。
国外逃亡していれば、現在にいたるまで警察が逮捕できない理由が説明できる事ですね。
(国内で指紋を採りまくっても、国外の犯人の指紋は見つける事ができないと言う事ですね。)
私としては「日本人がこんな残酷な犯行をできるはずがない」と言う事を裏付ける情報は無いと言う事を注意する必要があると考えています。
「日本人がこんな残酷な犯行をできるはずがない」と言うのは無意識の「正常性バイアス」が働いている可能性があります。
とは言え、DNA鑑定の結果、母親が欧州系と言うのは、この説の最大の根拠と言えますね。
概ね疑問の無い説ですが、1点だけ疑問があるとしたら「スリッパのDNA」(2011年報道)をどう説明するか?と言う事なんですよね。
この疑問は流しの窃盗犯説でも同じなんですが、土田氏の説でいくと、スリッパに犯人のDNAが付くタイミングが無いと思うんですよね。
顔見知りでないと、事件前に犯人が訪問する機会は無いと思います。
なので、流しの場合は、犯行時にスリッパを使い、その後にスリッパ置きに戻したと言う説明ぐらいしかできないと思います。
次回につづく
参考リンク
世田谷一家殺害事件再考その202(20年末特番まとめ1「取材メモ」)
世田谷一家殺害事件再考その203(20年末特番まとめ2「物取り犯説」)
世田谷一家殺害事件再考その204(20年末特番まとめ3「怨恨説」)
外国人関連情報
世田谷一家殺害事件再考その181 (警視庁HPハンカチ情報)
世田谷一家殺害事件再考その103(スリッパのDNA)
世田谷一家殺人事件再考その50(犯人の血液についてのDNA鑑定)
世田谷一家殺人事件再考その17(ヒップバックの洗剤)
世田谷一家殺人事件再考7(事件簿の初期の外国人説)
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コメント
外国人説は物取りでも怨恨でも複数犯でも成り立つ条件ですよね。そもそも南欧系のミトコンドリアDNAパターンが血液から判明している訳ですから犯人に外国人、もしくは主に南欧の母系を継ぐ人間がいるのは間違いないのでしょうね。
外国人説で大事なのは犯人と宮沢さん一家の誰とどういう関係だったのか、もしくは関係性のない犯行だったのか、どう解釈するかが事件を読み解くカギになりそうです。
投稿: 裏銭 | 2021/02/21 15:17
包丁を購入し防犯カメラに写ってた男性は、なにかしら外国人の特徴があったのだろうか。
投稿: | 2021/02/23 01:23
この事件の特異いえる点は、その遺留品の多さかと思います(指紋や血液も含め)。特にDNAが母型南欧由来という点と包丁のすべり止めハンカチは気になります。DNAのみだと単にハーフ?クォーター?を想像しますが、このハンカチの特殊な包み方がフィリピンの一部地域にあると聞き、妙に符合しました。フィリピンがかつて300年に渡るスペイン植民地、その後50年間以上アメリカ植民地~アメリカ軍基地であったことからかなりの割合で南欧系の混血が存在しているということです。そしてある時期日本に多くの女性が仕事を求め来日、また、バブル期には多くの日本男性が遊び目的で渡航したのも事実です。実際、母親フィリピン人、父親日本人のハーフが多く存在する筈です。タレントやスポーツ選手の多くにもこのハーフが多く、言われなければ日本人としか思えない顔でもあります。母親がそのハンカチの包み方をする地域の出身で子供を連れて里帰りした際に知り得た可能性はあるかも知れませんね。
投稿: 亀さん | 2021/02/26 01:18
海外に関わる仕事をされてたならプルーフリーディングとかを海外の方に依頼してたとしてもおかしくないと思う。海外の出版社に掲載や出版してもらう際は必ずネーティブにプルーフリーディングをお願いするのが通常、たとえ海外に10年以上住もうが英語がかなりできたとしても、ニュアンスまでは厳しいからネーティブじゃない著者に対しては必須です、少なくとも名のある出版社なら求めてくる。そしてそのような事を他人には言わないでしょう、掲載が決定するまでは。(これは却下されたら恥ずかしいから・・・)。ついでに言うと日本語ができるネーティブや日本人とのハーフはプルーフリーディングを頼む相手としては最適でしょう。
ただ、犯人の年齢的に厳しいが・・・しかし犯人の親ならありえる、その子供の来訪を断れないでしょう、そしてそこまでは追跡できなくとも。
最近の報道でもこの犯人からはかなりの猟奇性が、女性や幼い娘に対しての執拗な行動が目立ちます。
「襲われたロフト上部の壁に、犯人が凶器の柳刃包丁を振りかざした際にできた傷が残っていた・・・柳刃包丁(刃渡り21センチ)は先端が折れた状態で使われており、ベッドの上部付近に突き刺さった痕跡があった。ロフトの床には、犯行中さらに折れたとみられる刃の中間部分が落ちていた。」
「(独自)ロフトの壁に包丁の傷 女児と女性を執拗に襲ったか 世田谷一家殺害事件20年」東京新聞 (2020年12月29日) https://www.tokyo-np.co.jp/article/77186
投稿: mn | 2021/03/07 19:52
外国人説、と言っても血統的なもので
生活拠点は日本とか、ただの来日外国人とか
いろいろ考えられるので難しいです。
現場最寄り駅の小田急線はキャンプ座間、厚木基地、のりかえてすぐに相模原補給廠(こちらは京王線でも)に行けます。犯人由来のアメリカの砂漠の砂からは現場の地理的要件が想起されてしまいます。
そして徒歩圏の外国人も多い施設。
宮沢さん一家が事件の2年前に三浦半島の海岸のホテルで宿泊、そして三浦半島の砂が犯人からも・・・というのも引っかかります。
遺留の上着のポケットには各種の葉や鳥の餌とかが。
ある程度の期間は日本国内に滞在していたか
居住していたということなのかな?
例えば鳥の餌、基地内のスーパーで売っている物と日本国内流通品で差異があるのか?
葉はどの地域で多く見られる種なのか
そこまで捜査はしているのでしょうか?
投稿: 69 | 2021/03/08 08:26
外国人への偏見を助長することを懸念してか「犯人は日本人」と強調していた特番があったけど、根拠(ミトコンドリアDNA)に基づく推測よりも政治的イデオロギーを優先させる馬鹿が捜査関係者の中にいないことを願う。
投稿: ソバユスキー | 2021/03/12 07:38
まあ、日本人だの外国人だの、どちらにしろ断定するようなのはよくないわな
他の人も書いてるけど遠い先祖の血縁者の話かもしれないので、今は外見も日本人かもしれないし
遺留品に外国を匂わす物があったとしても、仕事や旅行で渡航歴のある人間なのかもしれないし、それらの品を海外から輸入したとか、取り寄せた(親族が海外に住んでいるとか過去に生活基盤が海外にあったとか)という可能性もあるし
ASKAさんのいうように「凶暴な犯罪だから日本人ではない外国人だ」という決めつけも安直過ぎる気がする
日本人にも凶悪犯罪起こすサイコパスはいくらでもいるからね
投稿: | 2021/03/13 13:59
海外の人が犯人だと断定するような本が出版された影響が非常に強いのかな・・・はっきりと言いきってるし、実際に多くの人が信じてる。自分も海外で住み初めてから、初めてあのブランドのスニーカーを買って履きはじめたぐらいだから珍しいというのはわかる、日本人の足にあってる。
議論はすでにされてないと思う、最新のDNAモニタージュで顔がはっきり見えてるだろうから、最近の動きを見れば推測はできるとは思う、少なくともルーツは、国は多様すぎて不可能、それは日本でさえも。
それより最新の技術でDNAから犯人の年齢を調べたら何歳になるか非常に気になる、初めは15-20代、次は15-22歳と若くなってる。自分は15か16歳の可能性もありえるのではないかと思ってる、ノートの裏の絆創膏や浴室の行動、そして夜間訪問の可能性やスリッパから、指紋をいくら集めてもヒットしなかったのも。
投稿: mn | 2021/03/13 22:15