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2021/03/05

世田谷一家殺害事件再考その206(20年末特番まとめ5「複数犯説」)

未解決事件SP
世田谷一家殺人事件
20年目のスクープ
~3つの影を持つ男~

***初めに(ASKAのコメント)***
番組内容には主要な5項目があります。
§1.物取り犯説
§2.怨恨説
§3.外国人説
§4.複数犯説(実行犯は反社会性人格障害)
§5.犯人の父親のDNAについて

今回は複数犯説について取り上げます。
取材メモについては、別記事で解説しています。
番組を実際に見てください。この番組はかなり詳細に事件を再現しています。
事件簿の記事ではそれらを全て書き出す事はできません。
実際に番組を視聴して、参考に事件簿の記事を読んだいただいた方が理解が深まると思います。

長文注意です。
********************

事件から3年後、警察に頼まれ5人の精神科医が現場で犯人像の推定を行った。これに参加精神科医の一人が、身元を明かさない事を条件に当時警察に話した事を今回初めてメディアの前で明かしたとのこと。

現場に入った医師は当時まず注目したのは犯行後の行動だった。
医師談:
ある意味で自分の欲求が抑制されていない。いわゆる反社会性であったりサイコパスと言われるようなものに近しいような印象がある。

精神科医による分析①
自らの欲求を抑制できない人物(複数のアイスクリームを食べている状況等から)

精神科医による分析②
サイコパス(反社会性人格障害)に近い

そして医師がもっとも気になったのは、殺害方法の違いだった。

医師談:
男の子(礼君)に関する手口が他の家族に対するものと違う事(礼君だけが絞殺だった)

医師談:
犯人は男の子に「共感と言うかシンパシー」を感じる部分がどこかあったんじゃないか。それに対して、逆にそのお母さんやお姉さんに対しては執拗なまでに損壊をしているので犯人の中の母親であったりとか女きょうだいとかに対する、恨みが手口の違いにあらわれたんじゃないか。

医師談:
動機の面での犯人と(その人物に)託されて、いろんな証拠を残しても別に足がつくわけでもないという実行犯、犯人が2人いてもいいのかなと

一家とは何の接点もない犯人は大量の痕跡を残したのではないか。
だとすると、一家に殺意を持つ指示役が実行犯とは別にいたのではないかと指摘する。

事件が起きた時刻近くに宮澤さん宅前の小道から飛び出してきた男(飛び出しマン)
犯行を見届け逃走した指示役だったとしたら辻褄が合う。(ナレーション)

こんなところですね。
番組のサブタイトルが「~3つの影を持つ男~」となっていて、この3つの顔とは
§1.物取り犯説
§2.怨恨説
§3.外国人説
の事を指します。

その意味では、この複数犯説は変化球的な意味あいなのですが・・・実はASKAの事件簿も初期に複数犯人説を推してました。
とは言え、初期の頃は情報も断片的な物だけを頼りに考えていたので、翌日逃亡説を軸に10時間滞在の説明として複数犯説を導入していたと言うあたりなんですけどね。
(15年前の記事を読むと・・・けっこう、ハズイです。)

複数犯説が支持しにくい理由は「証拠が無い」と言うその1点だけだと思う。
つまりA型男性の実行犯の指紋、血液、DNA以外の不審な指紋、血液、DNAの情報が報道されていないからなんですよね。

私もその点はそうだなと思うのですが・・・・けれど、それは複数犯を否定する材料にはならないと言うことにも気づきました。
現場は宮澤さんの個人宅ではあるのですが、家族以外の人間の出入りが全くない場所では無いはずです。

ご近所さんや、友人知人、セールスマンや、泰子さんの塾関係者などの出入りがあっても不思議では無いんですよ。
ただ、そういった指紋やDNAは当然、誰の物か?と捜査本部は調べるのですが、誰の物かわからない指紋やDNAが一つぐらい出ても不思議ではありません。

そういった持ち主不明の指紋やDNAが発見されても、それが「報道されていないだけ」と言う可能性がありますね。

なので、共犯者の痕跡の報道が無いからと言って、それが決定的な否定材料にはならないわけです。

更に言うと、指紋は手袋をしていたから、DNAは、それが付着する前に「短時間で現場から離れたから痕跡が残らない」と言う説明もできるわけです。
(そもそも、主犯(指示役)は現場に入っていないと言うのも有りです)

さて、番組の都合なのか、「サイコパス」と言う言葉が強調されていますが、重要な説明が抜けています。
1)なぜ、サイコパスと考えられるのか?
2)なぜサイコパスだと、複数犯が考えられるのか?

ここからは、私の勝手な推測です。私は専門家では無いので、もし間違っている場合はご指摘をお願いいたします。
まず、サイコパスだとする理由ですが・・・番組の中で紹介されている分析は二つ

精神科医による分析①
自らの欲求を抑制できない人物(複数のアイスクリームを食べている状況等から)

精神科医による分析②
サイコパス(反社会性人格障害)に近い

ここの表現に誤りがあるのではないか?と考えています。
分析①は分析②を判断する為の理由で、自らの要求を抑制できない人物だから、サイコパスではないか?(サイコパスである)と言うことなのではないかと私は解釈しています。

その理由なのですが、
サイコパスの特徴としてはDSM5の診断基準では(DSM5にはサイコパスの定義が無く、反社会性人格障害として定義されている)
以下の7点の中から3点以上が合致するのが条件です。。

A)法律にかなって規範に従うことができない、逮捕に値する行動

B)自己の利益のために人を騙す

C)衝動的で計画性がない

D)喧嘩や暴力を伴う易刺激性

E)自分や他人の安全を考えることができない

F)責任感がない

G)良心の呵責がない

実はDSM5の他にPCL-Rと言うサイコパスの診断基準があります。そちらには
「行動のコントロールができない」と言う項目があります。
これがそのまま、分析①の「自らの欲求を抑制できない人物」と一致しています。
多分、DSM5だとC)の「衝動的」と言う言葉に含まれてしまう部分かもしれません。

で、結果、DSM5の診断基準の中の
犯罪を実行している点でA)
分析①からC)
過剰な攻撃の点でD)
子供二人を殺害している点でG)

これら4つが該当するのではないか。
その結果、精神科医はサイコパスの可能性があると判断したのだろうと考えています。
(実際には15歳以前に素行障害が発症している事が診断条件にあるので、これだけではサイコパスとは診断できない)

次にサイコパスの場合、なぜ複数犯が考えられるのか?
これは逆に言うと「サイコパスにはこの犯行はできない」と言い換える事ができます。

そう考えた場合、サイコパスにこの犯行ができない理由としては
「サイコパスは計画的な犯行ができない。」と言う1点につきるのではないか?と私は考えています。

番組で紹介した「物取り説」「怨恨説」「外国人説」はそれぞれ、計画的な犯行に見えます。

この為、犯行の計画を別の共犯者(指示者)が考えて、その指示に従って犯行を行った実行犯がサイコパスだと言う見立てが、この精神科医の言う
「動機の面での犯人と(その人物に)託されて、いろんな証拠を残しても別に足がつくわけでもないという実行犯、犯人が2人いてもいいのかなと」
と言う言葉になるのかな?と解釈しています。

そうすると、サイコパスによる「物取り説」「怨恨説」「外国人説」も成立する事になります。

ただ、本当にサイコパスが実行犯で、別に指示した主犯がいるとすると・・・別の見方もできます。
サイコパスは基本的に治療ができない(認知療法が有効だと言われているようです)この為、放っておくと、次の事件を起こします。
これは主犯にとって都合が悪いので、主犯が逮捕されない為の次の一手は、この実行犯の口を塞ぐ事になるわけです。
あるいは、外国に逃がした、そもそも実行犯が外国人だったと言う場合もあるかもしれません。

そうすると、日本国内でいくら探しても、見つからないと言う現状を説明できるかもしれませんね。

なので、前回の「外国人説」と並んで、現状を説明する事ができる魅力的な説になります。

で、番組の中で紹介された「飛び出しマン」が主犯(指示役)なのか?と言う点については、ちょっと微妙な気がします。
理由としては
「主犯は自分が逮捕されない為に、殺し屋を雇っているのに、現場近くまで行って目撃されるようなリスクを冒すとは思えない。」

指示するだけなら、携帯電話で連絡する事ができたはずです。
例外があるとしたら、言葉では説明できないような物を探している場合や、主犯自身も姿形を知らない物を探している場合ですね。

そうすると、風呂場で窓越しに主犯に実物を確認させながら、探していた場合で、「目的の物で無いから浴槽に捨てた」浴槽の中がいろんな物で溢れていたのはこの作業の結果として説明できますね。

ただ、長時間、風呂の窓越しに、主犯と実行犯がやりとりすると言うのは実際に無理じゃないかな?

もう一つの可能性としては、知人の玄関侵入説の場合、訪問した人物は実行犯一人とは限らない可能性があります。
つまり、玄関から実行犯と主犯が二人が侵入し、実行犯の犯行開始に合わせて、主犯は風呂窓から逃亡した、それが「飛び出しマン」だったとしたら説明できるかもしれません。

しかし、この場合も主犯が現場に入るリスクを冒している点は同じですが・・・主犯が最初にみきおさんの物(奪取したい物)を確認して、その場で実行犯に指示したと言う事なら有りかもしれませんね。(さっき見た「アレ」を全員を殺害してから持ってこいと言う感じですね)

ただし、風呂窓逃亡説の最大の問題の「繊維痕が無い事」は説明できないんですよね。
強いて考えれば「主犯は実行犯よりも小柄で細身、服も薄着で繊維痕を残さない。靴は履く前に泥を落として足跡は残さなかった、指紋は手袋で残さない」と言う説明ができますね。この場合は番組の怨恨説と同様に主犯も靴を隠し持ってリビングに入っている事になります。

と言う感じでこの複数犯説も、深掘りすると再現ビデオができそうなぐらい濃い内容になります。
まー番組の放送時間の関係で省略されてしまったのかもしれませんね。
できれば、この複数犯について、件の精神科医の先生に詳細な説明をしていただく番組を作ってほしいですね。

最後にもし、実行犯がサイコパスであるなら、手がかりは周辺の少年の非行記録にあるかもしれません。
サイコパスは15歳以前に素行障害を起こしているので、以前に何か事件を起こしている可能性があります。

次回に続く

参考リンク
世田谷一家殺害事件再考その202(20年末特番まとめ1「取材メモ」)
世田谷一家殺害事件再考その203(20年末特番まとめ2「物取り犯説」)
世田谷一家殺害事件再考その204(20年末特番まとめ3「怨恨説」)
世田谷一家殺害事件再考その205(20年末特番まとめ4「外国人説」)

事件簿の仮説としては
複数犯人説
異常者説

参考書籍としては
サイコパス
人格障害かもしれない

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コメント

私も実は複数犯じゃないかなと思ってます。というのも状況証拠や犯人の不可解な犯行をより合理的に説明するのに「複数犯説」は都合がいいんですよね。解釈を拡げることが出来るある意味禁じ手的な仮説になると思いますね。

私が複数犯説に傾いたのはみきおさんの状況でした。みきおさんは階段で襲われ頭部に刺し傷の他に多くの傷があったそうですが太ももの傷はは下から上へ切られていたとあります。

犯人に襲われたみきおさんが子供や奥さんを守ろうと2階へ向かい後ろから犯人が切りつけたという考察もありますが、公開された犯行現場の階段は狭く大人がすれ違うのは難しいのではないかなと思い、それなら複数犯でみきおさんを階段内で挟み上下で挟み撃ちしたほうがより自然だろうと思ったんですね。

あと犯人が2人だとして、主犯と実行犯の侵入経路が一緒とは限らないと思いますね。主犯は玄関、実行犯は主犯の助けを借りて風呂窓から侵入とか。手助けがあれば繊維痕が無い理由になるかもしれません。犯行後、主犯は玄関から出てその後実行犯が残って再び風呂窓から逃走かな?そうなると実行犯が残ったのは主犯のアリバイ作りとかかな?それなら特に理由なく滞在してPCをいじった理由にもなるかも?

投稿: 裏銭 | 2021/03/06 15:06

同感です、助けを借りたら繊維痕無しもあり得そう。

二階の風呂場侵入説の最大の問題は繊維痕ではなく、被害者が二階ではなく一階から二階に向かって逃げれないように襲撃されてること、二階からの侵入でこの状況を説明するのは非常に難しい、ほぼ即死であったとされてる。

それに、風呂場侵入説も侵入痕がない、上りは相当な衝撃が加わる。証拠がない風呂場侵入説が長い間議論されてるのに、共犯説を証拠や根拠無しとして否定するのはおかしいと思う。

投稿: mn | 2021/03/07 12:50

指令役とか見張り役とかがいて単独犯ではない、という可能性はまあなくはないかなと思うけど
実行犯が2人以上いたとするのは現場のハチャメチャな痕跡からして難しいかなと個人的には思うなあ…
組織的な犯行で実行役にそういったサイコパス気質の人間を雇ったとするなら、そんなサイコパスが2人いるのも可能性的に難しいだろうし、実行側だってそのサイコパスが犯行後に始末する予定だとして、どんな形で情報が漏洩するかわからないという点で、不安要素が高過ぎる。
まともな人間+サイコパスが共犯で行ったとするなら僕の立場だったら痕跡残すような事をするなってたしなめると思うんだよな…(現場の食品を飲み食いしたり、トイレ使ったりとか)

投稿: | 2021/03/16 20:06

一定の計画性と狂気に満ちた殺害方法、そして犯行後の行動は複数犯にも思えるのですが、私は多重人格的な性質をもつ者の犯行ではないかと思います。

投稿: 亀さん | 2021/03/17 00:23

齊藤寅氏が昨年出版された「銘肌鏤骨」は、未だお読みになっていないのですか?斎藤氏は、当時13歳だった中国籍のベトナム人が事件に関係しているとしています。

投稿: 森 | 2021/03/19 18:17

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