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2021/03/18

富山県富山市元自衛官交番襲撃事件5(一審判決)

(いきなりサブタイトルに番号がついていますが、番号がつくのはこれが最初です。これまでのタイトルは報道日付で書いてましたが、記事が4つあるので、今回が5番目です)
長文注意

***初公判(1月14日)***
1)被告は、起訴内容を認めるか問われても何も話さず、黙秘している。

被告は、裁判官の問いかけに一切答えず、罪状認否についても黙秘した。

2)冒頭陳述で、弁護側は、拳銃を奪おうと決意したのは交番所長を殺害した後で、強盗殺人ではなく、殺人と窃盗の罪が成立すると主張しました。そのうえで、警察官を襲ったのは拳銃を奪うためでなく、自分より強い武器を持つ相手と戦うためだったと主張し、重い刑事責任を負うことは大前提としながらも、被告には他人の気持ちを理解することが苦手な自閉症スペクトラム障害の影響があったと訴えたとのこと。

別の報道では
弁護側は「拳銃を奪う意思は警察官殺害後に生じた」と訴えて強盗殺人罪の成立を否定。殺人と窃盗の罪に当たるとした上で、「自分よりも強い武器を持つ相手と戦うための犯行で、拳銃を奪うためではなかった」と訴えた。警備員に対する殺人罪は認めたとのこと。

さらに別の報道では
弁護側によると、被告は小学生の頃から同級生となじめずに孤立していた。校外学習に参加せずに1人で学校に残ったことも。中学から不登校になり、家族に暴力を振るったり、金属バットを持って暴れたりするようになったとのこと。

中学卒業後には、開いたままの自室の窓から雨が入ってぬれたことに立腹し、寝たきりの祖母や父親などを暴行。110番されて警察沙汰になった。「今度警察に言ったら殺すぞ」と言って父親に暴行し、肋骨を骨折させた。その後、家族が一度家を出て被告は1人で暮らした時期もあるとのこと。

ただ、父親の受験指導を受けて自衛隊に入って以降は、家族の誕生日にプレゼントを贈るなど安定していた時期もあった。しかし、2年ほどで除隊し、その後に就職した電気工事会社でもなじめずに退職してから暴力が再開したとのこと。

弁護側は被告について「何ら支援や療育がなく、社会に適応できない時間が続いていた」としたとのこと。

3)検察側は冒頭陳述で、中学の頃からひきこもり、家族への暴力を振るうようになった被告が、自宅に駆けつける警察官に嫌悪感が芽生えたと指摘。事件当日、アルバイト先でトラブルを起こし「警察官との戦闘に勝ち、自分を誇示したい」と考えたことが交番を襲撃した動機だと主張したとのこと。

別の報道では
検察側は被告がアルバイト先でのトラブルから社会への不平不満を高めるなかで自暴自棄となり、社会を守る存在である警察官と戦って勝利することで自分の力を誇示しようとした、と指摘した。そして、拳銃を奪う目的で交番を襲撃したことは明らかで強盗殺人が成り立つと主張し、犯行は無差別に警察官を殺そうとしたもので、強い殺意や高い計画性があり、2人の人命が奪われた結果は重大だと述べたとのこと。

4)起訴状によると、被告は18年6月26日、奥田交番付近で男性警部補(当時46)=殉職により警視=をナイフで刺殺して拳銃を奪い、その後、富山市立奥田小学校の正門付近で男性警備員(当時68)を拳銃で撃って殺害したとされる。

5)証人尋問(当時のアルバイト先の店長で、事件当日に被告から暴行を受けて重傷を負った男性)

別室と映像をつないで行われた。男性は当初、被告のきびきびとした働きぶりに「さすが元自衛官だと思った」という。だが、勤務態度は徐々に悪化し、事件当日、被告が同僚と口論になって男性が仲裁に入ると、頭突きして顔や体を何度も殴り、店を飛び出したとのこと。

***第二回公判(1月18日)***
1)証人尋問(事件当時、交番相談員として勤務していた男性)
凶器を持った男と組み合う男性警視を助けようと「さすまた」を振ったが、相手に押し返され、外に助けを呼びに行ったと話した。

また裏口から男が凶器を持って襲撃したことから、「警察官の拳銃など装備品を狙った強盗だと思った」と事件当時の緊迫した状況を話した。そのうえで被告に対し「自分の過ちを黙秘せずに誠実に話してもらいたい」と訴えたとのこと。

2)被告が男性警視の殺害に使ったとみられるナイフが交番の裏口近くで見つかったことや、男性警視の負傷か所が顔や腹など40か所に及んでいた事が明らかとなった。

3)検察側の質問に被告は黙秘した。いっぽうで被告は、証拠調べの際に弁護士から資料を示されると、指を差して確認するような仕草をみせたとのこと。

***第三回公判(1月19日)***
奥田小学校での発砲事件での審理

1)証人尋問(撃たれた警備員の同僚)
「事件発生当時、学校の敷地内を歩いている最中、パンパンと2回音が鳴り、振り返ると犯人と目が合った。銃のようなものを構え、こちらに向かってきていて、恐怖で近くのガレージに逃げ込んだ」と、狙撃された当時の様子を証言したとのこと。

また緊急車両のサイレンが聞こえ状況を確認しに行った際、死亡した警備員から「何かあったんでしょうか」と問いかけられたのが最後の言葉だったと振り返ったとのこと。

2)証人尋問(県警で拳銃技術の優れた人を指導する特別訓練員をしていた警察官)
被告が狙撃している様子が映し出されたドライブレコーダーの映像などを確認した。
その上で、被告の銃の扱い方は「基本をしっかり分かったうえで実践している」と述べ、50メートル先にいた警備員を狙撃し、そのうちの1発が20センチの誤差しかなかったことについては「ほぼ正確に目標物をとらえている」と証言したとのこと。

別の報道では
被告は、片膝をついて重心を低くするなど「拳銃の扱い方の基本がわかったうえで実践していた」などと指摘したとのこと。

更に別の報道では
「腕をしっかり伸ばして照準を合わせており、基本ができている」と述べ、「経験上、ほぼ正確に狙えている」と解説したとのこと。

3)証人尋問(事件で鑑識捜査の指揮をとった警察官)
発砲を受けた警備員の立ち位置と弾丸の軌道を推定した実況見分の結果を示し、被告が警備員を拳銃で狙ったとしたうえで近い方の弾丸は警備員からおよそ20センチの所を通ったとしたとのこと。

***第六回公判(1月28日)***
1)証人尋問(被告の母親)
母親が遺族に対し、「息子が重大な事件を起こして申し訳ありません」と謝罪したとのこと。

別の報道では
母親は、弁護側から自閉症スペクトラム障害の影響について問われると「事件当時は知らなかった」と答えた。

一方で被告が中学生の時、発達障害を疑ったことがあり、「その時に障害を認識して適切な対応をとっていれば、こんな事件は起こさなかった。当時の自分を責めたい」と話した。

当時の被告は不登校で、家族に暴力を振るっていて、両親は肋骨を折るなどしたほか、祖母や姉も殴られたとのこと。

しかし母親は「息子である被告の将来を案じて警察はなかなか呼べなかった」と当時を振り返えった。

そして、事件のおよそ3か月前に息子に思いが伝わらず「死にたい」と思ったと、涙ながらに打ち明けたとのこと。

また事件後に面会した際に被告に事件について聞くと「自分の訓練不足」と話し、反省の言葉はなかったと話したとのこと。。

2)証人尋問(被告の父親)
父親は遺族に対して「死亡した警視さん、死亡した警備員と最愛の人を亡くされたことに申し訳ない」と謝罪し、また小学校の関係者にも「多大なストレスを与えてしまい、申し訳ないと思っています」と話した。

死亡した警備員の妻の代理人弁護士が、なぜ裁判の直前まで遺族に謝罪しなかったのか尋ねたのに対し、父親は「被告がこんなふうになったのは自分の責任が大きい。どうしていいか分からなかった」と答えたとのこと。

***第七回公判(1月29日)***
1)被告人質問
被告は、弁護側と検察側から事件のことや生い立ちなどを聞かれても一切口を開くことなく、初公判から引き続き黙秘したとのこと。

2)検察側は取り調べ段階で被告が事件について「重く受け止められない。まるで人ごと」、「今なら相手が誰であろうが殺せる。もうためらうことはない。それが(事件で)得たもの」と話していたことを明らかにしたとのこと。

***第八回公判(2月1日)***
1)証人尋問(精神鑑定を行った医師)
「幻覚や妄想といった精神症状は認められず、犯行は被告の意思によって実行された」と指摘したとのこと。

別の報道では
鑑定医は、被告が抱える自閉症スペクトラム障害が、犯行動機の形成や、実行への心理的ハードルを下げたことを認めた一方、被告に幻覚や妄想という状態はなく、犯行は、本人の意思に基づいて行われていると指摘したとのこと。

鑑定医が「殺された2人は死ぬ間際にどう思ったでしょうね」と問うと、被告は「すべてが唐突で、かつ容赦ないことなので理不尽なことだけど、そう思う余裕すらなかったと思う」「自分の行動に正当性のかけらもないことは十分わかっているが、自責の念が浮かんでこない」と答えたとのこと。

さらに被告は「警備員を警察官と見間違えたことが自分の判断力不足、能力不足だ」と話す一方、被害者への罪の意識は「分からない」と繰り返したとのこと。

鑑定医は、これらのやり取りから「被告には根本的に罪の意識がなく、共感力や想像力が欠如していることが明らかだ」としたとのこと。

別の報道では
医師は被害者への謝罪の気持ちについて何度も確認しましたが、一貫して「その気持ちは浮かんでこない、あくまでも自分の犯行が成功したかどうかにしか興味がない」と答えているとして、この点に「自閉症スペクトラム」の症状がよく表れていると話したとのこと。

2)被告が鑑定した医師に対して「アルバイト先のトラブルがきっかけとなり、不平不満が募って一気に燃え上がった。とにかく思う存分力を発揮して、その果てに何があるのか分からないが人を殺したかった。これは、八つ当たりのほか何でもない。自分の持ち歩いている武器よりも強いものを持っている警察官を狙った」と話していたことが明らかとなった。

別の報道では
医師は、被告が面接の中で「人生がうまくいかないという厭世観があり、犯行は積もり積もった鬱憤が我慢の限界を超えた八つ当たりだった」とし「自分の持っている武器より強い拳銃を持った警察官と戦って勝ちたいと思った」と話していたと明かしたとのこと。

3)弁護側は、裁判の争点のひとつとなっている強盗殺人罪の成立について「鑑定書には、拳銃を奪うために警察官を襲ったという記載がない」と指摘した。これに対し鑑定医は、「鑑定時にこのことが争点になると思っていなかった」と答えたとのこと。

4)検察側からの問いに対して鑑定医は、被告が面談などで「警察官を倒して拳銃を奪い、奪った拳銃で次の警察官を襲う」という主旨の話をしていることから、警官の殺害と拳銃を奪うことを一連で考えた方が「被告の考えを分かりやすく捉えていると思う」と述べたとのこと。

5)鑑定医は証言の中で、凶悪犯罪と自閉症スペクトラム障害との関連はなく、精神障害が事件の直接の引き金ではないことを強調したとのこと。

6)法廷で一言も話していない被告について、検察側が「これも自閉症スペクトラムの影響なのか」という質問に、医師は「面接では饒舌に話していたので症状とは関係ない。彼も思うところがあるのだと思う」と答えたとのこと。

***第九回公判(2月2日)***
1)証人尋問(犯罪心理学を専門とする大学教授)
事件後の精神鑑定で、自身が自閉スペクトラム症であることを知った被告は「治るのか」とたずね、障害の特性などの説明を受けると「もっと早く受診しておけばよかった」と、少し感情がこもったように話したとのこと。
そして大学教授は、被告の更生の可能性について、「被害者意識などを理解したくても障害特性が邪魔をしている。そこをどのように考えるか。判決後も事件の重大性を考えさせることが重要」と述べたとのこと。

別の報道では
教授は被告の特徴として自らの内面を話すことが困難だとし、被告が法廷で何も話さないことについて、被告は「裁判を受ける」ことに関心が向き「被害者や遺族の心情を考えること」が切り離されていると指摘しました。さらに、公開の場で十分話せるかという不安があるかもしれないし、嫌な記憶から逃れようとして口を閉ざしているのかもしれないと話したとのこと。

そして判決の後に、自らの行為の重大性について考えさせることが必要で、被告が抱く社会から被害を受けているという感情を取り除くことが更生につながると述べたとのこと。

また教授は、被告が「警察官に刃物を持って戦いを挑んで勝つ」という部分的な状況は見通せていたが、その先の展開まで予想できていたかは疑問が残るとしました。そのうえで裁判の争点である強盗殺人罪の成立に関連した弁護側の質問に対し「自分より強い相手と戦うことに集中している」状態で警察官を倒してから拳銃を盗もうとしたこともあり得ると述べたとのこと。

一方、検察側が被告が警察官を襲った理由についてどのように話したか問うと、教授は「警察官から拳銃を奪う」とも話したが、「とにかく警察官に勝つこと戦いを続けること」と繰り返し「戦い続けることは最後に死ぬということですよね」と第三者のように語ったと話しましたとのこと。

そのうえで被告は自閉症スペクトラム障害の特性があることから、動機の判断については、慎重になるべきだとしたとのこと。

更に別の報道では
教授は前提として、「自閉症スペクトラムのような発達障害を抱えた人の犯罪傾向が高いというわけではなく適切な支援を受けられていないことで犯罪のリスクが高まる」としたうえで、被告について、重症ではないものの小さな頃から周囲の人とうまくコミュニケーションがとれず、「理解してくれる人がいない」と感じてかなり強い被害感を抱いていると答えたとのこと。

特に自衛隊をやめてからは将来への不安と幼少期からのつらい経験が重なって追い詰められ、自分が身につけてきた「戦闘力」がどこまで通用するのか自己存在の確認として警察官と闘うことに価値を見出したのではないかと分析したとのこと。

教授によると被告の母親は「被告の自閉症スペクトラムを疑いクリニックを受診したがそうした診断は出なかったため『性格の問題と考えるしかなかった』と話していて、教授は「被告の学生時代は支援を受けられるチャンスはあったと思うが、十分に受けられていなかった。障害に気づかず大人になる人も多くいる」と話したとのこと。

***第十回公判(2月4日)***
1)捜査段階でつくられた被告の供述調書や取り調べ時の音声などが証拠として提出され、法廷内に用意されたスピーカーから裁判前の取り調べにゆっくりと丁寧な口調で応じる島津被告の音声が流された。

以下内容
2018年10月10日。事件でけがをした被告が退院して再逮捕され、交番襲撃の目的について初めて取り調べを受けた時のものです。

警察:「拳銃を強取しようと思ったのは何で?」

被告:「そうですね。興味という、ええっと拳銃が欲しくてそうしたっ…ていう…のが…真実に近いかな」

警察:「近いというのは?拳銃を取りに行った?ということ」

被告:「あ、はい。そういう意味です」

警察:「取って、どうしようと?」

被告:「取って、次の交番行って、次の警察署行って、殺して回ろうと」

警察:「殺して回ろうと?誰のことを?」

被告:「警察官を、警察官を殺して、その人が持ってる銃をとって、で、また、次の警察官、そのまた次、というふうに、殺して回ろうと思っていました」

警察:「拳銃を奪うために交番に行って」

被告:「すいません、その辺、訂正させて」

警察:「ああ、いいよいいよ」

被告:「訂正させてほしいんですけど、最初から、警察官を殺すために交番に行ってその結果として武器を奪ったっていう…」

警察:「どの時点で、その拳銃を奪おうと、最初から?それとも…?」

被告:「(20秒沈黙)あ~」

「自分の人生に失望して自分を受け入れてくれない社会に失望して、最期に果てるときに自分をさげすんできた連中に『俺はお前らより強い』と叫びたい願望があって…」

「人を殺すことで社会とのつながりを絶とうとしたんです。それで選んだのが警察官だった。自分より強い武器を持っている人らに相手してもらって、で、結果は射殺されて死ぬという考えでそれで俺の人生を終わらそうとそういう思いはありました」

「警察官は自分の居場所を見つけられない象徴みたいなそれと、その社会の秩序を守るべき警察官を打倒することで、自分の力を確かめて知らしめるっていう」

2)被告が入院中、逮捕される前に弁護人と面会した時の音声も流された。

その中では警察官が倒れた直後「当然次の警察官がくると思ったので武器を確保しなければと思って拳銃を奪った」と話していて、弁護側はそれをもとに強盗殺人罪ではなく、殺人と窃盗の罪が妥当だと主張しているとのこと。

***論告求刑公判(2月8日)***
1)検察側は論告で「犯行は警察官に対するテロ行為に匹敵し、社会秩序への挑戦だった」と指摘。「無差別殺人で、類を見ないほど卑劣で凶悪非道な犯罪。極めて理不尽で酌量の余地は全くない」と非難して、死刑を求刑したとのこと。

検察側は論告で「拳銃を奪うために交番を襲撃した」として強盗殺人罪の適用を主張。「犯行は警察官に対するテロ行為に匹敵し、社会秩序への挑戦だった」と指摘した。被告は初公判から一貫して黙秘を続けているが、捜査段階では拳銃の強奪目的があったことを認めていたことを強調したとのこと。

別の報道では
検察側は、被告の社会不適応の一因に自閉症スペクトラム障害(ASD)があった点を認めたうえで、「人への暴力を選んだのは被告の意思」として犯行への影響は間接的・限定的だと主張。周囲がASDに気付かず、社会的支援を受けられなかった点なども、「刑を軽くする方向に考える余地はない」としたとのこと。

2)弁護側は最終弁論で、警察官への強盗殺人罪の成立を否定、殺人と窃盗罪に当たると主張したとのこと。

弁護側は「拳銃を奪う意思は警察官の殺害後に生じたもので、強奪の意思は取り調べ時の誘導で認めた」として殺人と窃盗の罪にとどまると主張。警備員への殺人罪は認めたが、「無期懲役が相当」としたとのこと。

3)遺族の意見陳述
警視の妻は「命をもって謝罪してもらいたい。絶対に許すことはできない」と述べ、息子は「謝ることに時間がかかるならすぐにでも死んでほしい」と死刑を求めたとのこと。

警備員の妻は「課すべき刑は死刑だと思うが、できるだけ長く生きてもらいたい。その間、私たち家族の同じ苦しみや悲しみ、後悔をし続けて生涯を終えてほしい」と話し、その間、被告は妻と目を合わせ話を聞いていたとのこと。

別の報道では
「(障害の)治療を受け、苦しみや命の尊さを理解できるようになってもらわないと」。事件の理不尽さ、夫の無念を思うと「科すべき刑は死刑しかない」。そう語りつつ、こう締めくくった。「あなたにはできるだけ長く生きてもらいたい。遺族以上に悩み、苦しみ、後悔して、生涯を終えてもらいたい」

***判決公判(3月5日)***
裁判長は「残忍かつ冷酷な犯行」として無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。

1)強盗殺人罪の成否について、判決は犯行前に拳銃を奪おうと考えたとする検察の主張に対し、被告の供述から「合理的な疑いが残る」として成立を否定。殺人と拳銃に対する窃盗罪にとどまるとした。

2)ASDの影響については、判決は極めて強固な殺意に基づく犯行として完全責任能力を認定し、アルバイト先で注意されたことを機に警察官と戦って殺そうとした動機を、「『八つ当たり』以外の何物でもなく身勝手で酌量すべき点は全くない」と指摘した。

一方、周囲から孤立し、いじめを受けた被告の過去などに言及し「社会で居場所を定めることができない自身への失望や嫌悪感から自暴自棄になった」と述べ、「犯行に至る経緯などで本人の努力でいかんともしがたいASDの影響が様々な面で表れ、犯行以前に診断の機会を逸した」として「一定程度酌むべき事情がある」と量刑の理由を説明したとのこと。

別の報道では
犯行時に責任能力が低下していたとはいえないとした一方、自閉症スペクトラム障害が動機形成に影響を与えたことを認め「計画性が高いとはいえない」と結論付けたとのこと。

そして量刑については、犯罪責任を「極めて重大」とした一方、障害の影響やほかの死刑判決事件との比較から「死刑を選択することがやむを得ないとまではいえない」としたとのこと。

3)遺族のコメント
死亡した警備員の娘:
「自分自身にも悔しいし、判決自体も悔しい。そもそもこういう気持ちで来る予定ではなかった」

死亡した警備員の妻:
「被害者感情がここまで組み入れられないのかと悔しい思いも、かなり車の中では語っていたが、聞いていて切ない」

こんなところですね。
公判で黙秘している事について、精神科医や犯罪心理学教授の証言などを聞くと、どうも、障害の影響と言う見方ができるのかなと言う事がわかりました。
しかし、中学の時に受診したけど、そのとき「自閉症スペクトラム」の診断が出ていないんですよね。
それで、母親は「性格」と結論していると・・・かなりひどい家庭内暴力なので、セカンドオピニオンは受けられなかったかな?(被告を説得して受診させる事ができなかったのかな?)

それで、結局、放置されてしまい、その結果、周囲から孤立してしまって、本人も「生きづらさ」を感じていたんですね。
ASDとは自閉スペクトラム症の事ですね。

この事件も、竹下通り暴走事件と同じで、早い段階で治療していれば、この事件は防げたのだろうか?
「動機の形成に影響を与えた」と言うけど、実際の被告の精神鑑定時の供述などは「八つ当たり」と言うか、ある種の爆発ですよね。
なので、治療で「生きづらさ」が解消されていれば、このあたりで「八つ当たり」をする必要がなくなるわけで、事件直前のアルバイト先のトラブルも起きなかったかもしれませんよね。

竹下通り暴走事件はわからないけど、こちらの事件は治療で防げた可能性が高いのではないか?と考えています。

とは言え、そんな事は被害者には関係無いんですよね。
「障害だから許します」なんて事にはならないので、遺族としては受け入れられない判決だと思います。

量刑としては、身勝手な理由で二人を殺害してる点で死刑もあり得るところです。
強盗目的なら、死刑は当確だったかもしれません。
ただ、強盗目的でない場合が排除できず、障害の影響を考慮して無期懲役と言う事なんでしょうね。

いずれにせよ、「子育ては難しい」と言う事なんですね。
(親子で向き合って障害を早い段階で見つける必要があるんでしょうね)

亡くなったお二人のご冥福をお祈りします。

参考リンク
富山県富山市元自衛官交番襲撃事件(7月4日以降の報道)
富山県富山市元自衛官交番襲撃事件6(控訴審判決)

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コメント

こんばんは。
記事上の鑑定医、警察、弁護人との会話を見ると目の前の人物が望む答えを被告は理解し迎合している部分があるように読めます。
ごく短期的な空気を読む能力はあり、そのため家庭内暴力で受診した際は思春期という年齢特有の状態も重なり自閉症スペクトラムとの診断に至らなかったのだと思います。(大人よりも子ども、特に思春期は個人差・家庭環境などの背景の違いが大きすぎて小児精神を専門としている精神科医も判断に苦慮することもあるとのことです)

社会生活では汲み取ってくれない相手への苛立ちとともに、うまくやれない自分にも苛立ち、「生きづらさ」を感じていたのでしょうね。
根本的な治療を受けられていれば誰にとっても一番良かったのですが。対症療法として自己肯定感を得る手段とストレス解消法で複数の非暴力的な手段を得る、暴力の目的を自衛のみと塗り替えていればまた異なる結末もあったかもしれません。
暴力により相手より自分が強い=自分のほうが偉くて相手は自分の言うことを聞く=自己肯定感とストレス解消が得られる、という構図になっているので。家庭内暴力は自分を理解してほしい甘えが発端でしょうが、八つ当たり相手に自分より強い警察を選ぶのは出世欲や支配欲が色濃いかと思います。

投稿: つれづれ | 2021/03/27 20:21

つれづれさん、こんにちは
いつもコメントありがとうございます。

思春期はメンタル面でも色々と難しい面があるんですね。

なるほど、出世欲や支配欲ですね。
人に尊敬されたいとか、人の上に立ちたいとか、そういった出世欲は大なり小なり誰もが持っている感情かと思います。

障害による「生きづらさ」の積み重ねと、人生の挫折の裏返しとして、「本当は自分はもっとできるんだぞ」とか「自分はもっと強いはずだ」って言う気持ちが支配欲につながってしまったのかもしれませんね。

投稿: ASKA | 2021/03/30 16:41

奥田交番襲撃事件の裁判員裁判で、無期懲役の判決を受けた被告が判決を不服として3月16日、名古屋高等裁判所金沢支部に控訴しました。

富山地方裁判所によりますと16日、被告本人から控訴の申し立てがあったとのこと。

投稿: ASKA | 2021/03/31 08:19

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