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2021/07/08

神奈川県座間市9名バラバラ事件その16(一審公判5)

審理は、9人の被害者を殺害順に3組に分けて行われる。
(1)2017年8月の3人
(2)同9月の4人
(3)同10月の2人
中間論告や弁論もグループごとに行う。

殺害順
2017年
8月23日Aさん(女性当時21)
8月28日ごろBさん(女性当時15)
8月30日ごろCさん(男性当時20、Aさんの知人)
9月
Dさん(女性当時19)
Eさん(女性当時26)
Fさん(女性当時17)
Gさん(女性当時17)
10月
Hさん(女性当時25)
Iさん(女性当時23)

第二十一回公判から論告求刑公判まで

***第二十一回公判(11月24日)***
総括的な被告人質問

1)被告は、最後の被害者となった東京都八王子市の女性=当時(23)=の遺族らの通報がきっかけで逮捕されたとし、「今も恨んでいる」と述べたとのこと。

2)検察側が被害者9人への思いを尋ねると、5番目の埼玉県春日部市の女性=同(26)=と、6番目の福島市の女子高校生=同(17)=には「申し訳ないことをした」と語ったとのこと。

3)最初の被害者の神奈川県厚木市の女性=同(21)=や八王子市の女性についても「何も殺すことはなかった」「真面目に付き合えば良かった」と言及する一方、他の被害者に対しては「印象が薄い」「特に思うことはない」などと話したとのこと。

4)精神科医は、18年4~9月の間に計約60時間、被告と面談するなどして鑑定結果を出したとし、「精神障害の診断名は付かなかった」と証言。犯行の内容も「(金や乱暴が目的だったなどとする)被告の説明は合理的で、精神障害を想定しなくても説明がつく」と話したとのこと。

別の報道では
検察側の証人として出廷した医師によると、起訴前の半年間にわたり、面接や心理検査を行った。医師は被告の性格について、知的水準が高くて他人の心情を読み取る力がある一方、「家族に価値を持たず、疎外感や攻撃性があった」と指摘したとのこと。

医師は「被告には当時も今も、精神障害が認められない」と証言したとのこと。

更に別の報道では
精神鑑定をした医師の尋問も行われた。医師によれば、「中核となる犯行動機は、楽して生活をしたいということと、楽して性欲を満たしたい、という2つ」とし、「なんらかの精神障害を想定しないと犯行を説明できないというものではない」として、刑事責任能力に影響する所見がないと判断した経緯を説明したとのこと。

5)被告人質問では「誰かに会うとき以外は布団の上で携帯(電話)をいじっていた」「1日8時間、物を運ぶ倉庫内のアルバイトより楽だった」などと述懐。「証拠の処分をしなきゃとか、今やり取りしている人は金になりそうかとかを考えていた」とし、被害者の気持ちを考えることは「なかった」と淡々と述べた。犯行は自身を養ってくれる女性に出会うまで続けるつもりだったとのこと。

また2人目の被害者までは「本当に殺していいか迷った」ものの、以降は「罪の意識が薄くなった」と説明。ただ、逮捕後に捜査員と部屋に残していた頭部の遺体を確認した際、初めて「ちょっとまずいことをしたなと思った。同じ人間という生き物をこんな状態にしてしまった」と気付いたと明かしたとのこと。

別の報道では
検察側の質問の中で、一人目の殺害時、「正直、本当にやってしまっていいんだろうかと直前まで迷っていました」と葛藤があったと明かした上で、犯行期間中は「すごく楽で、自分の快楽をずーっと追い求めたような生活でした」と述べたとのこと。

6)被告の母親の供述調書が読み上げられました。母親の調書によりますと、被告は「虫を殺すこともできないような子ども」で、高校を卒業するまでに3回、家出をしたことがあったということです。この家出について母は、「被告は自殺について(インターネットで)調べていたので、自殺のための家出だったと思う」とした上で、被告が「生きていても仕方がない」と話すこともあったということです。また母親は、「亡くなった9人には謝りきれない」と話したとのこと。

7)被告は、弁護側から被害者に申し訳ないという気持ちはなかったのかと問われると、「はい、なかったです」とはっきりと答えたとのこと。

8)いずれの遺族についても「面識がないので特に思うことはありませんでした」と繰り返し述べ、遺族に謝罪することはなかったとのこと。

9)被告は「遺体と2か月間、一緒にいたが、何を思っていたか」と問われると、「『証拠の処分をしなければ』とか、他にやり取りをしている人でお金を引っ張れる人はいないかと考えていた」と明かしました。さらに、「遺体を解体しているときの心境は」との問いには、「やらなければ捕まってしまうと思い、必死だった」と答えたとのこと

***第二十二回公判(11月25日)***
総括的被告人質問

1)弁護側が「一連の事件を起こして後悔はしていますか」と聞くと、被告は「結果として捕まってしまったので後悔しています」と述べたとのこと。
弁護側の質問にほぼ黙秘を続けたとのこと

2)検察側が「判決を待つ今の心境は」と尋ねると、被告は「頭のなかは母親のことでいっぱいで、迷惑を掛けて申し訳ないと思っています」と述べたとのこと。

「正直、一部の被害者の方については本当に後悔を持っているのですが、一部の被害者に関しては深い後悔を持てていない」と述べ、過ごした時間の長さなどから被害者への気持ちに差があると話したとのこと

その上で、殺害を後悔しているとする4人の被害者とその一部の遺族に対して、「私が起こした行動により命を簡単に奪ってしまって本当に申し訳ございませんでした」と述べ、遺族に対し初めて謝罪したとのこと。

さらに、「このままいけば極刑になってしまうと思います」と述べ、死刑が怖いかという問いに「はい」と答えたとのこと。

最後には、「判決が出たら控訴はせず、おとなしく罪を認めて罰を受けるつもりです」と述べたとのこと。

別の報道では
「極刑になると思います」とした上で「おとなしく罪を認めて罰を受けるつもり」と述べた。理由は「私の親族に迷惑をかけないため。できるだけ簡潔に裁判を終わらせたい」と説明したとのこと。

更に別の報道では
謝罪は、最初に殺害されたとされる神奈川県厚木市の女性(当時21歳)ら4人の被害者・遺族に向けてのものだと説明。「一部の被害者には深い後悔は持っていない」とも述べたほか、「捕まったことは後悔しているが、(事件には)感情が湧いてこない」とも話したとのこと。

3)被害者参加制度を利用した遺族5人の陳述
意見陳述をした遺族全員が、死刑判決を望むと訴えたとのこと

A)最初の被害者となった神奈川県厚木市の女性=当時(21)=の母は「とても人間がすることとは思えない」と被告への怒りをあらわにし、兄も「一刻も早くこの世から消えてほしい」と話したとのこと。

B)同県横須賀市の男性=同(20)=の父は「こんな理不尽は断じて許せない」と述べ、母も「大切なわが子の骨をどうして私が拾わなければならないのか」と話したとのこと。

別の報道では
父親は「人の弱みを食い物にし息子の未来を奪った」と述べ、母親は「私がおなかを痛めて産んだ大切な我が子の骨をどうして私が拾わなくてはならないのか」と泣き叫んだとのこと。

C)「娘を返してください」と呼び掛けたのは埼玉県所沢市の女子大学生=同(19)=の母。群馬県邑楽町の女子高校生=同(15)=、さいたま市の女子高校生=同(17)=の両親の陳述書も読み上げられ、「被告には死刑さえも生ぬるい」などと怒りの言葉が並んだとのこと。

4人目の被害者の母親は、遺体と対面した日が娘の二十歳の誕生日だったと話し、「『誕生日おめでとう。ずいぶん捜したんだよ、つらかったね』と顔の周りに花を置きました」「殺害に対する承諾などありえなかったと考えます」と述べたとのこと。

2番目に被害に遭った高校1年の女子生徒=同(15)=の両親は書面で意見を寄せ、検察官が代読した。平成29年11月、遺体の身元が女子生徒と判明した日が16歳の誕生日だったと明らかにし、「娘たちの命は被告の命では償えない」と訴えたとのこと。

D)事件をめぐるメディアの報道や取材に憤りを示す遺族も多く、「娘は名前も顔もさらされた」「犯人が憎い。次に憎いのがマスコミ」との陳述もあったとのこと。

4)裁判官からは事件の原因を聞かれ、「当時のSNS(会員制交流サイト)事情は弱っている人をだまそうとする人が多く、(自身も)次々と犯行ができてしまった」と話したとのこと。

***論告求刑公判(11月26日)***
遺族の意見陳述
1)8人目の被害者の父親が意見陳述を行いました。父親は「二度とかえらぬ娘、子に先立たれた親の心境、この気持ちをいかにすべきか」と力強い声で述べたとのこと。

そして、「おまえを見て苦しみが一層強くなりました」「被告人、XX!私たちは死んでもお前を許さない!このつらく切ない気持ちは一生消えない。娘を帰せー!平穏な日々を返せー!」と話したとのこと。
(XXは被告の姓)

論告求刑
2)検察側は、全ての被害者が首を絞められた際に必死に抵抗し、殺害されることを明確に拒絶していたとして「承諾がなかったことに疑いを差し挟む余地はない」と指摘。起訴内容を認めた被告の供述は一貫性があって信用できるとし、責任能力も問題がないとしたとのこと。

別の報道では
検察側は被害者らが殺害を同意していなかったことを強調。「一人として殺害を受け入れる行動をとらなかった」と説明し、首を絞められ失神するまで必死に抵抗したのは、「殺害を明確に拒絶したことの表れだ」と主張したとのこと。

殺害状況を直接証明するのは「被告人の供述のみ」として、その信用性を検討。9人全員を承諾なく殺害したと述べた被告の法廷供述は、被害者が送った自殺の意思を撤回するメッセージなどの「客観的事実と符合する」と述べた。事件発覚から自白内容が一貫していることからも、「法廷供述は十分に信用できる。承諾がなかったことに疑いを差し挟む余地はない」と結論づけたとのこと。

被告の責任能力については(A)周到な計画に基づく一貫した行動(B)死体を損壊・遺棄する徹底した隠蔽工作を根拠に、「全く問題がない」としたとのこと。

量刑判断をめぐっては、SNSを使って自殺志願者を標的に誘い出した手口や殺害方法などをふまえ、「卑劣かつ冷酷。被害者に落ち度は全くない。尊厳を無視した非人間的な犯行だ」と述べたとのこと。

更に別の報道
事件は極めて悪質で、「被告には一片の良心の呵責も、悔悟の情もない」と批判。欲望の充足のみを目的とした犯行だとして「酌量の余地は全くない」と訴えたとのこと。

「まさに万死に値する行為で、極刑以外を選択する余地はない」と指摘し、被告に対して死刑を求刑したとのこと。

が被害者参加制度に基づく「被害者論告」
3)被害者6人の遺族代理人弁護士も論告を行い、量刑に言及しなかった1人を除き、死刑を求めたとのこと。

最終弁論
4)弁護側は、起訴前に実施された被告の精神鑑定は検討が不十分で、再鑑定が必要と主張。「被害者は自らの命が絶たれることを最優先にしていた」とし、殺害に承諾がなかったとする被告の供述も信用できず、刑の軽い承諾殺人罪が成立すると指摘したとのこと。

弁護側は最終弁論で殺害の承諾はあったとした上で、「被告は真実を語るのではなく、全てを早く終わらせる方向で供述している」と述べたとのこと。

弁護側は最終弁論で、「被告に会ったのは死ぬためだったのです」「被告の手を借りて自分の命を絶つ。それを承諾していたのです」と述べ、より罪が軽い承諾殺人が成立すると主張した。また、精神鑑定には問題があり、精神疾患がないのか疑問が残ると主張したとのこと。

5)被告は、裁判長から最後に言いたいことがあるか問われ「何もありません」と述べたとのこと。

こんなところですね。
記事を書いていて気づいたのですが、論告求刑、最終弁論の情報が少ないような気がします。
非常に長い裁判なので、ここまでの流れから、検察側の死刑の求刑、弁護側の最終弁論の内容は予想できるので、比較的あっさりした報道になっているのかな?と言う印象ですね。

死刑判決のこれまでの基準としては3人以上殺害は死刑と言う事になっているので、9人もの人間を己の欲望の為に殺害している今回の事件では、検察側は死刑を求刑する以外の選択肢は無いと思います。

弁護側は罪を認めて死刑になりたい被告の意思に反して、承諾殺人を主張している為に、被告と対立状態になっていて、ちょっと気の毒な印象ですね。
弁護側は被告の利益の為に働いているわけで、一般的に考えれば「罪を軽くする事」が被告人の利益なわけですが、この事件では何が「被告人の利益なのか?」を考えないといけないのかもしれませんね。

被告人に正常な判断力があると言う前提で言うなら、この事件の場合は「罪を認めて」「正当な罰を受ける」と言う事になると思います。
ただ・・・そうすると弁護人がいらないと言う事になってしまうので、その意味では今回の弁護側の方針は間違ってないのかな?と言う気もします。

これまでの公判の内容をみると被告人は既に死刑を覚悟しているのだろうなと言うのは見て取れますね。
その一方で、「死ぬのは怖い」と話している事もあって正直に話している印象です。

事件発覚当初は逃げ切る方法を考えたとも話しているのですが、部屋から遺体が発見されて言い逃れができないと諦めたと言うのも、その通りだなと思います。

ただ・・・承諾殺人を主張する事も可能ではあったので、それをしなかった事と、現在の被告の関心が、自分の家族に迷惑を掛けたくない事、になっているのは罪と向き合っていると言う事なのかな?と考えています。
自分の為の裁判をしていないと言う事だと思うのですが・・・その一方で、被害者に対しての謝罪の気持ちはあまり無いのかな?と言うのもありますね。

逮捕のきっかけになった遺族は恨んでいるなんて事も話しているし、殺害した人間の印象が無いなんて事も話している。
これも結局のところ、思った事をそのまま話しているだけなんでしょうね。
「もう死刑になるからどうでもいい」と言う自暴自棄なのか?とも思いますが、一方で事件の経緯など詳細に話してますし、やはり、「思った事をそのまま話している」って事なんでしょうね。

それから、遺族が「被告の次にマスコミが憎い」と陳述していて、そうだろうなと思います。
性的暴行が伴う事件で被害者の氏名を公表するのはセカンドレイプと言われても仕方が無いのではないか?と思いますね。
以前から問題視されていた、風俗関係の被害者女性の氏名公表と併せて、報道の課題だと思います。

次は判決です。

参考リンク
神奈川県座間市9名バラバラ事件その15(一審公判4)
神奈川県座間市9名バラバラ事件その17(一審判決)

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