大阪府吹田市交番拳銃強奪事件その4(一審判決)
判決は懲役12年(求刑懲役13年)
***初公判(7月19日)***
1)被告は起訴内容を認めたとのこと。
被告は罪状認否で「多分僕がやったであろうことは分かりますが、正直よく分かりません」と述べたとのこと。
2)弁護側は「事件当時、統合失調症にかかっていて責任能力がなかった可能性がある」として無罪を主張したとのこと。
3)検察側は冒頭陳述で、事前に交番の勤務体制をインターネットで検索したり、着替えながら逃走したりするなど、「合理的で臨機応変な行動を取っていた」と指摘したとのこと。
別の報道では
検察側の冒頭陳述によると、被告は事件の約10分前、同級生の男性になりすまし、空き巣被害に遭ったとする虚偽の内容を110番。別の警察官が現場に急行して交番の態勢が手薄になるように仕向けていた。服を着替えながら逃走を続けていたとのこと。
被告は起訴前に約5カ月間の鑑定留置が認められ、専門家による鑑定では精神疾患があったと診断されたが、検察側は「合理的で臨機応変な行動を取っており、刑事責任を問える状態だった」と述べたとのこと。
別の報道では
事件の数か月前、ゴルフ場で働くようになった。被告にとっては、趣味だったゴルフをいかせる仕事だった。
そして、当時通院していた病院のカルテによると、この頃から被告が「幻覚はもうない。薬なしでやってみたい」と医者に話すようになったという。その結果、服用していた薬の量を徐々に減らすことになったとのこと。
被告の生活にそれまで見られなかった動きがあった。大阪にいる同級生らと久しぶりにSNSで連絡をとったり、出会い系サイトで複数の女性と会ったりしたとのこと。
事件を起こす11日前には1人で沖縄旅行に出かけている。統合失調症は快方に向かっているかのように見えた。
しかし、旅行中に被告は何らかの理由で統合失調症の薬を飲まなかったとのこと。
4)証人尋問:刺された巡査長(28)
拳銃を奪われた際の心境について「頼むから他の人に使わないでくれよと思った」と振り返った。病院で意識が戻った時、拳銃を奪われたことに責任を感じ、辞職を覚悟したという。被告に対しては、「何をしたかったのか。しっかりと自分の口で話してほしい」と訴えたとのこと。
5)事件10分前の通報の内容(どの公判での情報か不明)
被告「事件かわからないですけど泥棒が入った感じです。警察2人ぐらい来て欲しいです」
警察 「家の中を荒らされた?」
被告「はい」
警察 「念のためケータイ番号を教えてくれる?」
被告「…今は持っていないです」
警察 「今持っていないだけ?それとも普段から持っていないの?」
被告「普段から持っていません」
法廷で流れた事件当時の被告の声。実際にはスマートフォンを持っていたが、電話では持っていないと答えた。声は冷静で、受け答えもしっかりしているように聞こえたとのこと。
***第二回公判(7月26日)***
被告人質問
1)被告は統合失調症の悪化で頭の中に現れる幻覚・幻聴の「精霊さん」の指示に逆らえない状態だったと説明。事件時は「警察官を『刺して殺せ』という指示があった」と述べたとのこと。
2)被告は法廷でほとんど目を閉じているが、その理由を弁護人に問われ、「テレビで見たり実際に目にした人すべてが、頭の中に現れて自分や両親を殺そうとしてくるから」と話した。また「現実と夢の区別がつかない」とも語ったとのこと。
3)事件の約10日前に1人で沖縄に旅行に行った際、幻覚の指示で服薬をしなかったところ、「体調が最悪になった」と説明。一方、当時暮らしていた東京から大阪へ向かったことや警察官を襲った理由、犯行後に着替えをしたことなどについては「覚えていない。指示に従った」と繰り返したとのこと。
4)被告はこれまでに統合失調症と診断されていて、26日の被告人質問では、犯行は幻聴の指示だとして「頭の中の知人が『交番に行って警察官を殺せ』と言った」「(頭の中の)友人の警察官と精霊さんが拳銃の外し方を教えてくれた」と説明したとのこと。
「精霊」については「ずっと心の中の秘密だったが、きょう初めてしゃべった」と述べたとのこと。
5)被告は「病気になってから、心の中の黒い影のような精霊さんに指示をされている」「出会った人の全てが幻覚となって現れ自分を殺しに来る」などと話したとのこと。
また、犯行については「知人みんなから、交番にいる警察官を殺すよう指示された」と話したとのこと。
***第三回公判(7月28日)***
証人尋問:被告の精神鑑定を行った2人の精神科医
最終的に、A医師は「責任能力は全くないとは言えない」としたのに対して、B医師は「全て幻聴の影響で責任能力はない」と結論付けたとのこと。
***論告求刑公判(8月2日)***
検察側は懲役13年を求刑した。
1)検察側は、犯行前に虚偽の110番をしたり犯行後に衣類を見つかりにくい場所に隠したりした行動を挙げ、「幻聴の指示では説明できない臨機応変で合理的な行動をしていた」と指摘。統合失調症の著しい影響があったものの、「残された正しい判断能力のもとで犯行を行った」として、限定的な責任能力はあったとしたとのこと。
その上で、警察官から拳銃を奪うという特殊性や、丸1日間の逃走で過去最大級の緊急配備態勢が敷かれた危険な犯行から、通常であれば「求刑は懲役25年を超える部類」としつつ、限定的な責任能力を考慮し、懲役13年を求刑したとのこと。
2)弁護側は「幻聴や妄想に由来する指示に基づいた行動で、自らの意思で犯行を思いとどまれなかった可能性がある」と反論したとのこと。
別の報道では
弁護側は「犯行は幻覚や幻聴によるもので、合理的な行動をとっていたとしても、本人の意思ではない」として無罪を求めたとのこと。
***判決公判(8月10日)***
判決は懲役12年(求刑懲役13年)です。
裁判長は「拳銃強奪を目的とした危険な犯行だった」として、懲役12年(求刑懲役13年)を言い渡したとのこと。
1)裁判長は被告の事件前後の行動内容について、事前に交番の勤務態勢をスマートフォンで検索し、事件後は逃走しながら服や所持品を捨てるなどしていたと指摘。「臨機応変で合理的な行動をとっている」と述べ、一定程度の計画性を認定したとのこと。
2)被告の動機や行動に統合失調症の悪化が大きく影響していたことは認めたが、「一連の行動は目的に沿っていて、自分の行動を制御する能力を全く欠いていたわけではない」と限定的な責任能力があったと判断したとのこと。
別の報道では
判決理由で裁判長は、拳銃強奪の動機や目的には不可解さがあり、病気の影響なしに説明できない点があると指摘。一方、虚偽の110番や逃走中の衣類投棄などの行動から、臨機応変さや判断能力は有していたと認め、「善悪を判断する能力がまったく欠けていたとはいえない」と結論づけた。その上で、地域社会に重大な脅威や不安を与えたと非難したとのこと。
3)一時は意識不明の重体になった警察官の現状に触れ、「後遺症に苦しみ、職務内容も大きく制約されており結果は重大だ」と述べたとのこと。
こんなところですね。
統合失調症の影響をどう考えるのか?と言うのがこの事件のポイントですね。
精神鑑定をした精神科医二人の見解も180度違う見解がでていますが、今回は責任能力有りと言う判断になりました。
専門家でさえ意見の分かれる部分なので、素人の私が口を挟む部分ではないと思いつつ、あえて思うところを書くと・・・
A)統合失調症の発作時の記憶が無いと言うのは良くある話のようで、逆に記憶がある方が珍しいと言う印象です。
B)全て幻聴の指示による物と証言しているけど、発作中の記憶が無いなら、指示によると言う記憶はどの時点の物なのか?
C)それから、発作中に論理的な行動ができるのか?と言うのも疑問なところですね。
他には、この事件を防ぐ方法ですが、これも難しいですね。
事件の数ヶ月前には幻聴がなくなったから、薬はいらないと医師に話してますよね。
以前の友人知人に連絡したり、旅行に出たりもしている。
症状が改善しているようにも見えるけど・・・この部分についても、精神鑑定をした医師の見解が分かれていますね。
医師A
「長年続いた統合失調症が突然改善したと考えにくい。見かけ上症状が良くなっていただけ で、実際は悪化していた。幻聴による指示でそれらの行動をしていた可能性が高い」
医師B
「症状が収まり、色々なものに興味が湧くようになる。病気のせいでできないことがたくさんあるので、良くなった途端行動するようになる。30代男性として当然の欲求」
医師Aの見解なら、病状が悪化しているので、要注意ですよね。旅行なども止めたでしょう。
しかし、医師Bの見解なら、病状は回復しているので、心配する必要が無いと言う事になる。
どちらが正しいのかは誰にもわからないわけです。
ただ、旅行中に服薬を中止して、体調が最悪になった(悪化した)と言う事なので、この時点では少なくとも、薬の効果はあったと言う事ですよね。
この時点で、本人が体調の変化に気づいて医師に相談していれば、この事件は防げたかもしれませんね。
しかし、結局は本人任せになってしまうので、決定的な対策にはならないんですよね。
加害者側での対策ができないなら、被害者側で対策すると考えるわけですが、これも難しい、誰がいつ襲ってくるかわからない。
今回は交番の警官が狙われたけど、対象が一般人になる可能性もあるわけですからね。
結局は誰でも、突然、誰かに襲われる可能性があると考えて、常に、警戒心を持って生活するしかないと言う事になりそうです。
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