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2021/12/04

兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件その2(一審判決)

一審判決は無罪(求刑:無期懲役)です。

***初公判(10月13日)***
1)検察側は冒頭陳述で、被告が16年秋ごろ仕事を辞めて無職になり、祖父母や母と4人暮らしだったと説明したとのこと。
事件の2日前から、「結婚するため神社に来てほしい」「君と私以外は『哲学的ゾンビ』なんだよ」などと知人女性に話しかけられる幻聴が聞こえるようになり、「ゾンビを殺せば女性と結婚できる」と決意して犯行に及んだと指摘したとのこと。

ただ殺害を一時ためらい、逮捕直後に「大変なことをした」と話しており、善悪の判断能力を完全には失っていない「心神耗弱」状態にとどまると主張したとのこと。

別の報道では
冒頭陳述では、被告が逮捕された後「おじいちゃん、おばあちゃんごめんなさい」と泣いて反省していたことも、明らかにされたとのこと。

2)弁護側は被告が幻聴を聞いて「知人女性と結婚できる」と確信しており、「犯行を思いとどまることができなかった」と反論。善悪の判断や行動を制御する能力が完全に失われていたと訴えたとのこと。

3)起訴状などによると、被告は17年7月16日早朝、自宅で祖父、NTさん(当時83歳)と祖母NMさん(同83歳)を金属バットで殴ったり、包丁で刺したりして殺害。止めに入った母親(57)を殴って殺害しようとした。さらに、近くの民家に侵入してTYさん(同79歳)を刺殺。別の小屋にいた近隣女性(69)にも重傷を負わせたとされる。被告は事件後に逃走し、神社近くで現行犯逮捕されたとのこと。

4)被告は起訴内容を認めたが、弁護側は「統合失調症の影響で心神喪失状態にあった」として無罪を主張したとのこと。

5)裁判長は、事件から公判開始まで4年余りを要した経緯を説明。地検の鑑定留置を担当した医師2人のうち1人が海外赴任し、その後、新型コロナウイルス感染拡大で帰国が困難になったため、公判前整理手続きが進まなかったとのこと。

***第2回公判(10月14日)***
証人尋問:被告の母親
事件時の状況を詳細に回想。当日の朝、同被告はあいさつに反応せず、女性用Tシャツを借りたがるなど「少しいつもと違う」と感じたと明かした。

殺害された同被告の祖父母を含め家族関係は「悪くなかった」とし、被告の幻聴などには気付かなかったと証言したとのこと。
起訴後の18年夏に面会した際の同被告の様子を「目の焦点が合わない」「心、ここにあらずという感じ」などと話したとのこと。

母親は、被害者や遺族らに謝罪し、「優しくて真面目だった息子がなぜこんな事件を起こしたのか」と話したとのこと。

***第4回公判(10月18日)***
被告人質問
1)被告は、死亡した祖父、祖母について「長い間、お世話になったのにこんな形で別れることになって悲しい」と供述したとのこと。

2)亡くなった女性(79)とその遺族に対して「何の罪もない人をあやめ、申し訳ない」とも話したとのこと。

3)負傷した母親(57)には「いつも優しくしてくれた母に傷を負わせ、両親を奪って申し訳ない」と話したとのこと。

4)けがをした近くの女性(69)には「すごく怖い思いをされたと思うので、すごく申し訳ないです」と述べたとのこと。

5)親族以外の被害者を優先に、預金を賠償に充てる意思も示した。

6)自身の統合失調症の症状について
現在、投薬治療により幻聴は数日に1回程度だが、事件直前にはほぼ休みなく聞こえ、前日夜には幻聴の声と自分以外は人間ではないと思うようになっていたと話したとのこと。

7)犯行時「まず、寝ている祖母をバットで10回ぐらい殴った。それから台所へ行き、包丁を手にした」などと話したとのこと。
その後、自宅近くの神社に逃げ込んだのは「カウントダウンの声が聞こえたから」と表現するなどしたが、一連の犯行をうながした原因を「すべて幻聴だった」と述べたとのこと。

***第5回公判(10月19日)***
証人尋問(最初の精神鑑定を行った医師)
1)最初の鑑定医は同被告との11回の面会などから統合失調症と診断し、「犯行と元々の性格に直接の関係はなく、症状の中で行われた」と判断したとのこと。

***第6回公判(10月20日)***
証人尋問(2度目と3度目の精神鑑定を行った医師)
1)2度目の鑑定をした医師が検察側証人として証言。
統合失調症は「疑い」で、症状は中等度にとどまり、被告は「思いとどまる判断を行う自由が一定程度あった」と話したとのこと。
鑑定は、同被告側の拒否で1回しか面会できなかったとも明かしたとのこと。

2)弁護側証人として出廷した3人目の精神科医は「最初の鑑定は優れている。2回目の鑑定は不十分」と主張。事件時に同被告が抱いた「周りの人は人間ではない」という内容の妄想は「かなり荒唐無稽」で、本人の性格などからも飛躍があり、統合失調症の影響は「圧倒的」との意見を述べたとのこと。

***論告求刑公判(10月25日)***
1)検察側は論告で、被告が逮捕後、「大変なことをした」と警察官に話していた点などから、「犯行を思いとどまることができた」と指摘したとのこと。責任能力が完全に失われていない心神耗弱にとどまると主張したとのこと。

2)弁護側は被告が「哲学的ゾンビを倒せば知人女性と結婚できる」と思い込み、殺傷した相手を「ゾンビと認識していた」と主張したとのこと。鑑定した医師の意見を踏まえて「妄想に支配されていた」と述べたとのこと。

別の報道では
弁護側は「人を人ではないものと確信していた」などと主張。「症状の圧倒的な影響を受け、心神喪失は明らか」と述べたとのこと。また、検察側の主張に沿う2度目の被告の精神鑑定は「信用性が低い」としたとのこと。

3)死亡した女性(当時79歳)の長男が意見陳述。「突然母がいなくなり、被告を憎んでいる。罪を軽くされたくない。強く強く死刑を願う」と訴えたとのこと。

別の報道では
求刑に先立ち意見陳述した遺族2人が極刑を求めたとのこと。

4)被告の最終意見陳述では「被害者の方々には非常に申し訳ないことをした」と謝罪したとのこと。

別の報道では
被告は最終意見陳述で「被害者の方に非常に申し訳ないことをした。機会をいただけるなら謝罪したい」と語ったとのこと。

5)「被告は、善悪を判断する能力などが著しく低下した『心神耗弱状態』だったが、自分の行為が悪いことだと認識していた。犯行態様は極めて悪質で、本来なら死刑を求刑すべきだが、犯行時に心神耗弱状態の場合は、法律上、必ず減刑しなければならない」として、無期懲役を求刑したとのこと。。

***時期不明の情報***
法廷での証言によると、被告は少年時代はまじめで成績も良く、中学卒業後は5年制の高等専門学校に進学。大手鉄道会社に就職が決まっていたが、卒業目前に中退し、アルバイトなどをしていた。事件当時は、ゲームや漫画に未来を予言する暗号が隠されていると思い、解読に没頭。精神科の通院歴はなく、家族も変調に気付かなかった。

***判決公判(11月4日)***
1)神戸地裁は4日、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡したとのこと。

2)判決は、被告の精神状態について異なる見解を示した医師2人の精神鑑定結果を検討。
「犯行を思いとどまる能力を持っていた」と検察側の見解に合った医師の鑑定については、医師の面接が被告の拒絶により1回で時間も5分程度と限られたため、「手法が不十分」と信用性を否定したとのこと。

3)「妄想型統合失調症の圧倒的な影響を受けて犯行に及んだ」と弁護側の主張に合った医師の鑑定に対しては、医師と被告の面接が11回に上っており、「鑑定の前提条件に誤りはない」と評価したとのこと。

4)その上で裁判長は、被告が周囲の人をゾンビだと信じ切っていた可能性が高いとし、「妄想の圧倒的影響下で犯行に及んだ疑いを払拭できない」と判断。心神喪失者の行為は罰しないとする刑法の規定に基づき、無罪と結論付けたとのこと。

5)裁判長は被告に対し、「判決の内容をよく聞いてほしいので、主文を後回しにします」と述べ、判決理由を先に朗読した。判決を言い渡した後、被告に「無罪にはなったが取り返しのつかないことをしてしまったことには変わりはない。そのことを忘れずに病気の治療にあたってほしい」と説諭したとのこと。

6)今回の事件で殺害された女性(当時79)の長女と長男は判決後、報道各社に「ただただ絶望している。何の罪もない人が命を奪われたのに、犯人は法律で命を守られたことには到底納得ができない」、重傷を負った近隣女性は「判決を聞いてがくぜんとした。こんなことが許されるのかと落胆している。検察には控訴を検討してもらいたい」とコメントを寄せたとのこと。

***控訴(11月16日)***
神戸地検は16日、無罪とした神戸地裁判決を不服として控訴した。
神戸地検の次席検事は「判決には重大な事実誤認があるため控訴した」とコメントしたとのこと。

こんなところですね。
3名を殺害、2人に重傷を負わせた事件なので、責任能力に問題がなければ、死刑を求刑する事件ですね。しかし、心神耗弱状態の為、減刑して検察は無期懲役を求刑しています。

刑法39条の規定の通りならば、当然の判決だと思わなくも無いのですが・・・
私の印象としては、判断材料が公平では無い気がします。
検察側の精神鑑定を被告が拒否した結果、5分しか面会出来なかったから、信用性が無いはその通りかもしれないけど・・・
拒否しているのは被告人なわけで、これでは、被告人が自分に不利な鑑定を拒否できる。逆に言うと、自分に有利な鑑定だけを受ける事ができる事になっていませんか?と思うわけです。

公平に判断するなら、十分に面談時間が得られるまで、鑑定を継続すれば良かったのではないのかな?
面談を受けるまで公判を延期すれば、死刑にはならないが、公平でない判断をする事もない。その間、勾留を継続すれば、場合によっては一生勾留される事になるかもしれませんね。

こちらの方が公平だと思うのですが・・・。

昔の記事を探す事が出来なかったのですが、私の記憶では「精神鑑定の結果は判決に影響しない」と言って判決を下した裁判長が昔いたような気がします。
なので、裁判長によっては、判断が変わる可能性があると思いますね。しかも、控訴審は裁判員裁判ではなくなりますしね。
控訴審ではどんな判断になるのか?控訴審に注目しましょう。

参考リンク
兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件

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