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2022/07/13

埼玉県さいたま市犯罪心理学者妻殺人事件その2(一審判決)

判決は懲役7年(求刑・懲役10年)です。
***初公判(5月13日)***
起訴状などによると、被告は20年3月16日夕、さいたま市浦和区の埼玉県庁前の路上で妻の胸などを包丁で数回刺し、失血死させたとしている。

1)「僕が妻を殺したことは間違いない」と述べ起訴内容を認めた。
2)弁護側は心神喪失状態だったとして無罪を主張した。

検察側は冒頭陳述で「正常な判断をしていた部分も残されていた」として心神耗弱にとどまると訴えた。また、妻=当時(53)=との離婚について被告が弁護士に相談していたと指摘し、自らの財産を妻に横取りされると思い込むようになって殺害を決意したと述べたとのこと。

検察側冒頭陳述によれば、被告はもともと法務省の職員として働いており、同省で法務技官として働いていた妻と知り合って結婚に至った。ふたりには3人の娘がいる。被告はのち退職し、研究の道へ。事件当時は臨床心理学や犯罪心理学を専門とする准教授だった。ところが夫婦は次第に「生活態度や子育てへの姿勢などからお互いに不満を抱き、関係が悪化」したとのこと。

2019年10月、不調を感じるようになった被告が精神科を訪れたところ「うつ状態」と診断され、薬を処方された。症状は好転せず「遅くとも2020年1月ごろには精神的不安やストレスにより『妻と次女が自分を追い込み、財産を奪おうとしている』と思い込むようになっていた」とのこと。

4)被告は大学院修了後に法務省職員となり、少年鑑別所や刑務所で勤務した。文教大では犯罪心理学などを研究し、犯罪被害者支援に関する授業もしていた。大学は事件後の20年4月に懲戒解雇したとのこと。

***第?回公判(5月17日)***
証人尋問(被告の次女)

***第?回公判(5月24日)***
被告人質問

***第5回公判(5月26日)***
証人尋問(精神鑑定医)
医師は、事件発生から23日後の2020年4月8日から、同16日、30日、5月13日、30日、6月24日、7月8日と7度に亘って被告人との面談を繰り返し、更には同年5月26日から6月8日まで、自らが勤務する埼玉県済生会鴻巣病院に被告を入院させて診断した。

医師は確定出来ないとしながらも、心理検査の際、臨床心理士の資格を持つ正がわざと誤答を選択した疑いがあると話したとのこと。
医師は、自らの所見を以下のように述べたとのこと。

犯行時、被告は妄想性障害に罹患していたと診断した。が、被告人は子供を刺すことに抵抗があった。また、刑務所内で生活出来る等、一般的な理解がまったく出来なかった訳ではない。妄想性障害が酷いと、それに支配されて生活が送れなくなる。被告の妄想性障害は軽度から中程度であり、彼が語る「非現実的世界」は、妄想に没頭していることを示している。こういった表現が出来るということは、「現実的世界」があるということでもあるとのこと。

もし、事件当日にバス停で顔見知りの人に「あっ、Xさん」と声を掛けられていたら、犯行は起きなかったと思う。世間話をしようと思ったら、出来ただろう。

また、被告は鬱病となった自分を大学の幹部たちが辞めさせようとしていた、と証言したが、妻を殺害することと、大学を追い出されそうになることは、まったく別だ。大学への妄想が大きいとは思えない。今回の事件は、妻、次女への妄想が起因していると考えられるとのこと。

***論告求刑公判(5月30日)***

***判決公判(6月22日)***
1)裁判長は懲役7年(求刑・懲役10年)を言い渡した。

さいたま地裁は「3人の娘を育てながら懸命に仕事をしていたのに突如、路上で絶命しており、その無念さは察するに余りある」と述べたとのこと。

一方、妻らが自分を自殺に追い込もうとしたなどと「妄想を抱えるなかで、怒りの感情が生じて視野狭窄に陥った」と指摘したとのこと。

2)判決理由
犯行時、被告は「妄想性障害の強い影響を受けながらも自らの規範的思考による抑制力が一定程度残された状態で自己の判断による犯行」とし、心神耗弱の状態と判断したとのこと。

一方で、被告人は妄想に由来する恐怖症が怒りに変わり犯行に及んだと説明。「妄想性障害などが犯行に与えた影響は相当大きい」と述べたとのこと。また、確実に殺そうという意図で危険なものとしつつ、「精神障害の影響を受けた殺人事案の中で、殊更に悪質な態様とは言えない」としたとのこと。

こんなところですね。
詳しい報道が少なかったようです。
犯罪心理学者がなぜ事件を起こしたのか?と思ってましたが、「うつ」だったようですね。
それで、妄想状態だったんですね。

評判としては、まじめな先生だったようですが、まじめ過ぎたのかもしれませんね。
もう少し、いい加減で、手を抜くことができたら、この事件は起きなかったのかもしれないと思います。

心理学者とは言え、犯罪心理学ではちょっと専門が違うのか?自分自身の精神状態まではケアできなかったのかな?
しかし、ちゃんと精神科も受診しているので、初期のケアは出来ていると思います。

それでも、症状が悪化していると言う事なので、最後は「仕事を休む(休職する)」と言うのが「うつ」の時の定番の対処のような気がするのですが・・・休めない理由があったのだろうか?

報道だと2019年10月から通院を開始して、薬も処方されているようですね。
2019年11月には自殺念慮もでて、かなり悪化しているようですね。
で事件が2020年3月16日ですね。
事件後の3月17日の大学の会見でも、「休職」と言う話はでてなくて、事件前の3月11日に出勤していると出てますね。

妻の方も公務員で上級職のようですから、それほど経済的に困る事は無かったように思うのですが・・・子供の教育費が必要だったのか?

被害者支援や加害者支援などにも力を入れているようなので、仕事に対する情熱が強かったのかな?

ただ、夫婦の不仲が直接の原因のようなので、家庭内のストレスが原因なら、むしろ仕事はストレス解消となっていたのかな?
そうですね、休職して家に居ても、ストレス解消にならないので、それなら仕事を続けていた方が良かったのか?

家庭内の問題を解決する為に別居して独身生活と言うのも、有りだとは思うのですが、「うつ」の人間を一人にしておくのも、心配ですよね。

こういう場合はどうしたら良いのだろうか?
入院治療をすれば、問題の家族とも離れて、仕事も忘れて治療に専念できるのかな?
ここは専門家のご意見を伺いたいですね。

本来は癒やされる場所である家庭がストレスになってしまったと言うのは気の毒ではありますね。
まーでも、結婚して子供もいれば誰でも多少のストレスはあるものかもしれませんね。

亡くなった女性のご冥福をお祈りします。
そして残された娘さん達もがんばって欲しいと思います。

参考リンク
埼玉県さいたま市犯罪心理学者妻殺人事件

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コメント

心理学や精神科のような領域では、相手に寄り添いつつもどこか自分や相手を客観視できる視点を持つ必要があるそうです。
親身になりすぎると、共依存関係に陥ってしまったり、プライベートまで入り込まれてしまったり、自分自身も精神的な不調をきたしたり、といったことになるので。

被告は犯罪被害者・加害者への理解を深め支援を熱心におこなう真面目な方とのことですが、上記のような線を引くことが難しい人なのかもしれません。
支援にのめりこんでしまうと、家庭の様々な問題に直面しても「あの事件のあの家庭の問題より些細な事だ」と突っ返し、休日も仕事優先、なんて光景は容易に想像できます。
また、現場での支援をおこなっていると、お上(国の中枢)のお達しや仕組みに疑問や不満を抱くことが多々あることでしょう。
これは妄想ですが、かつては自分も働いていた場所であるのでそう簡単に変えられないと頭ではわかっていても、その中枢で働く被害者へそういった不満をぶつけたくなったり、ぶつけても正論で返されて苛立ったりしたこともあったのかもしれません。

投稿: つれづれ | 2022/07/16 01:06

つれづれさん、こんばんは

なるほど、この被告は被害者支援だけでなく、加害者支援の活動もしていて、被害者側からは加害者に対して「加害者支援」の「支援」と言う言葉は使って欲しくないと言う声などもあったようです。

つれづれさんのご指摘の通り、被告の立場的に「法律」と「現実」の板挟みや、色々な物の「板挟み」になってしまう事も多そうですね。

だとすると、日常の生活の中で既に相当なストレスを持っていて、それが、たまたま、家庭の問題をきっかけに爆発してしまって「うつ」になってしまったのかもしれませんね。

まー実際のところは分かりませんが、常に全力で走り続けていては、いつか疲れてしまいますからね。時には全て忘れて自分の人生を楽しむ時間が人には必要なんでしょうね。

投稿: ASKA | 2022/07/16 19:28

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