福岡県篠栗町5歳児虐待死事件その9(Aの一審判決2)
Aの一審判決は懲役15年(求刑:懲役15年)です。
***第七回公判(9月7日)***
被告人質問
弁護側「I被告の通帳を預かってお金引き出すようになったいきさつは?」
A被告「Iから『仕事でお金下ろす時間ないから下ろしてきとって、引き落としがあったらいかんけん、朝イチで行って』と言われた」
弁護側「I被告にお金返した?」
A被告「やりました、返しました」
男児が死亡した時の体重は、5歳児の平均のほぼ半分の10.2キロ。
I被告の主張によると、亡くなる間際には、A被告の指示で男児にあわせて2週間以上も食事を与えられなかったとのこと。
弁護側から、亡くなる1カ月ほど前の男児について聞かれたA被告は突然、涙を流したとのこと。
弁護側「男児の体を見て感想は?」
A被告「びっくりしました。初めて体を見て…すごく…(涙を流しながら)小さくなっていて、細かったので…。ショックでした…」
弁護側「その時、I被告と話はした?」
A被告「その時、私は『何しよると?』と言いました。『食事あげてるのになんでこんなんなっとーと』と言いました」
弁護側「I被告は?」
A被告「無言でした」
<I被告の子供達からの伝言>(I被告の元夫の証人尋問の内容について)
弁護側「子供からの伝言、どう思った?」
A被告「子供は『そう言うだろうな』と思った」
弁護側「なぜ?」
A被告「IはIの子供に、私を怖い存在で植え付けていた。子供が『私のことを怖い』と言ってるのは知っていたので、あの文面で違和感はない」
<ボスについて>
検察側「ボスについて見たことは?」
A被告「ないです」
検察側「捜査段階で『ボスに会ったことある』と話してない?取り調べで話した?」
A被告「はい」
検察側「ボスのこと見たことないんじゃないの?この話、なに?」
A被告「人違いでした、後で聞いたら」
検察側「会ってもないのに具体的に話してる、これ嘘ですね」
A被告「嘘…?」
検察側「人違いと分かって訂正してないよね?」
A被告「聞かれてないので言ってない」
<A被告が美容室についかった金額について>
検察側「志免町の美容院、2年間で80万円使った。違う?」
A被告「言われた金額の中には、私がシャンプーを買ったりとかも入っていると」
検察側「それだけお金があった?」
A被告「兄弟からも親からも助けてもらうことが多かったので、いけてました」
別の報道では
弁護側質問
制限していたとされる食事については、「I被告から生活がきついと聞いたため、親切心から食事を提供していた」と説明した。
検察側が質問。
質問は、I被告が携帯に残していた、「ほんと毎日毎日きついよ。男児もたたかれ、殴られ、罵声」というメモについて。
検察「接触しているのは、あなたじゃないの? 違うの?」
A被告「わたし以外に、誰と会っていたかわからないので」
検察「男児をたたいたことについては?」
A被告「違います」
別の報道では
検察側は、A被告が借金を抱えながらも18~20年、美容院へ50回通って約80万円を使っていたほか、大阪市の「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」(USJ)や大分・別府温泉などに10回ほど家族旅行をしていたと説明。これに対し、A被告は「タンス預金をしていた」と述べたとのこと。
<男児の祖母(I被告の母親)の意見陳述>
「どうして男児は死んで、A(被告)はうそをついて生きているのか。男児を返してください。それができないなら、うそはやめてください」と声を詰まらせたとのこと。
別の報道では
「娘にも責任がある。でもA被告が全てを破滅させ、男児まで奪った。男児を返してください」と訴えたとのこと。
***論告求刑公判(9月8日)***
1)証人尋問:A被告の夫
検察側からの証人尋問で、夫は、I家を訪問した際に子供たちの食事量が少なかったことや、男児が死亡する直前に心臓マッサージをしたときの状況などについて語った。
弁護側から、A被告がI被告を支配していたかどうかについて聞かれると「私はあり得ないと思います」と答えた。
別の報道では
A被告の元夫は、男児があばらが見えるほど痩せていたこと、消防に通報して救急搬送されたときの状況などを証言した。また、I被告がA被告に助けを求めてきたことについて、「普通は病院なり身内なりに連絡すると思う。おかしいですよね。普通に考えたら」と述べた。さらに、A被告がI被告を支配していたかどうか、弁護人に問われると、「あり得ないと思っています。(支配などは)考えたこともない。Iが家に来た時も普通の対等な友達にしか見えなかった」と話した。
別の報道では
弁護側:証人として出ること、お子さんに伝えてる?
A被告の夫:知ってます。いつもテレビの報道見て「違う、違う」と言ってて
またA被告の夫は、パチンコ好きのA被告のおかげでプラスの収入が多く、生活が助けられていたとも話したとのこと。
2)検察側は懲役15年を求刑した。
検察側は、「A被告はI被告が子供を守るために指示に従うしかない状況を作り、I被告を強い心理的影響下に置いていた」「I被告と意思を通じて保護責任者遺棄致死の犯罪を遂行したのは明らか」「A被告の弁解は不合理で信用できない」と述べたとのこと。
さらに検察側は「多額の金をだましとるという金銭欲の表れであり、支配欲があった。自己の欲望を満たすための身勝手な犯行で、酌量の余地はなく強く非難」「悪質極まりない。酷い仕打ちとしかいえない」「被害者は理不尽な罰をうけ、暴力を受け、勝手に食べ物を食べるとどろぼうと言われた。その苦しみや悲しみは察するに余りある」として、懲役15年を求刑したとのこと。
その上で、「被告人がいなければ事件は起きなかった。その刑事責任は母親をはるかに上回る」と説明したとのこと。
3)A被告の最後の意見陳述
金をだまし取ったということはありません。生活が苦しいと言われていたので、一生懸命助けていたつもりです。全て母親の責任だと思います。以上です。
***判決公判(9月21日)***
1)判決は懲役15年(求刑:懲役15年)
2)裁判長は、「A被告がI被告に対し夫が浮気をしているなどとウソを重ね、I被告の生活全般を実質的に支配していた」「A被告には責任があったのに、十分な食事を与えず、男児を餓死させた」などと、裁判の最大の争点となっていたA被告による支配を認定しています。
別の報道では
A被告がI被告を「支配」したと認め、「巧妙かつ悪質性の高い手口で(事件を)主導した」と指摘。動機について「強い金銭欲があったことは明らかで、I被告ら家族への悪意が背景にうかがえる。欲望のまま犯行に及び、酌量の余地は全くない」と断罪したとのこと。
判決はI被告の証言について、両被告によるLINE(ライン)のやりとりや第三者の証言など、客観的な証拠と整合し「信用性は相当に高い」と判断。A被告はI被告の証言を全面的に否定していたが、判決は「客観的な証拠に何とかつじつまを合わせて取り繕っているとしか考えられず、到底信用することができない」と退けたとのこと。
その上でI被告の証言に基づき、他のママ友や元夫を巡る裁判があり、仲裁してくれた暴力団関係者の「ボス」に支払いが必要などといううそを、A被告がI被告に吹き込んでいたと指摘。I被告の収入のほぼ全てをだまし取り、「裁判に勝つため」などとしてI家に食事制限やしつけなどさまざまなルールを課したとして「さまざまな虚言を重ねて(I被告の)人間関係を断ち、周囲から孤立させ、強い心理的影響下に置いて生活全般を実質的に支配した」と認めたとのこと。
A被告は保護責任者ではなかったが、判決はA被告がI家に提供する食事の量を減らし、I被告に男児の食事を数日間抜くよう繰り返し指示したとして「男児に十分な食事を与えない状況を作り出した」と判断。男児が重度の低栄養状態に陥ったことを知りながら、I被告への支配や指示を変えず、食料の提供もやめてI被告に男児を保護させなかったとして「I被告との共謀が優に認められる」と断定したとのこと。
最後に「不合理な弁解やI被告に責任を転嫁する供述を繰り返し、自らの責任に全く向き合っていない」とA被告を非難したとのこと。
***控訴(9月30日)***
A被告は判決を不服として、福岡高裁に控訴したとのこと。
こんなところですね。
I被告の裁判でA被告の支配が認定されてましたから、無罪は無いなと予想はしていました。
印象としては、「浅はかな悪知恵」が最悪の結果をもたらした事件だったのかな?と言うことですね。
おそらく、A被告はI被告と関わった当初はこんな事になるとは考えていなかったと思います。
その根拠としては、I被告に証拠隠滅や口止めをしているところですね。最初から計画した物なら証拠など残さないでしょう?
なので、最初は些細な嫉妬や意地悪だったのではないか?と考えています。
I被告の容姿や家庭環境などに嫉妬して、ちょっと意地悪してみようと言うつもりだったのではないかと・・・・
それが、ママ友の悪口を捏造してI被告の友人関係を破綻させる事に成功したあたりから、これは利用できるのではないか?とエスカレートしていたったのではないかな?
で、お金を搾取する為に巨額の負債を捏造したわけですね。名目は離婚の為の浮気調査や裁判費用と言う事にしたんでしょう。
この時の金額が3500万円と言う事で、本来ならI被告が「そんなに高いの?」と疑問を持つところですが、既に相談する友人も夫もいない状況になっていたので、盲目的に信じてしまったんでしょうね。
さらに、この捏造した離婚裁判でもお金の搾取に成功してしまったので、ここで完全にA被告の良心が麻痺してしまったんでしょうね。
A被告が最後に平常心に戻れるポイントはこの時点だったと思います。
結果的にI被告が離婚した事で、離婚裁判をする事なく、嘘が発覚しないまま、裁判費用(浮気調査費用)だけを搾取する事に現実との整合性が出来てしまった。
つまり、嘘が嘘で無くなったわけです。(将来的に嘘が発覚するかもしれないけど、その時はうまく言いくるめる程度と考えていたでしょうね)
なので、ここで搾取をやめれば、男児が死亡する事もなく、元の生活に戻る事ができたと思います。
ところが、最初の金額が大きすぎて、負債の返済が終わらない状態になっているのが、A被告の金銭欲を増長させてしまったのでしょうか?
ここで、離婚も成立したので、これ以上の費用は発生しないと言って、元の生活に戻ればよかったのでしょうが、一度味わった贅沢な暮らしは手放す事ができなかったんでしょうね。
思い通りになるI被告の様子を見て、支配欲も満たされて、完全に犯罪意識は消えてしまったんでしょう。
最後に男児が倒れた時、「死ぬんやない」とLINEを送ったあたり、完全に「人ごと」ですからね。
おそらく、自分は赤の他人だから、男児が死亡しても責任は親であるI被告にあると言う認識だったんでしょう。
ところが、実際に男児が死亡して、冷静に考えれば刑事事件になると直感したあたりから、保身の為に動き始めたと言うあたりでしょうか。
なので、全面否認したけど、その理由がとってつけたような理屈になってしまったんでしょうね。
この事件を防ぐ方法は大きく二つだと思います。
1)I被告側の被害者側としては、「信じる前に疑え」と言う事ですね。
私の個人的な印象ですが、日本と言う国は古来より「和を以て貴しとなす」と言う事を重要視していて、それが教育の基本にもなっていると思うんですよね。
それは、悪い事じゃないと思う。だけど、それが遠因で「性善説」が社会の基本になっている。なので、「疑うことなく信じてしまう」人が多いのではないか?と感じています。
I被告の一審判決の記事では「自立する事」と書いていますが、自分自身で判断する事を子供の教育の中でも重視して欲しいですね。
2)A被告側からの視点だと、幼少期からの人格形成がポイントかと思います。
公判の内容からみて、どうも「嘘」や「人を騙す事」に罪悪感が薄いのではないか?と思います。
こなたりは、大人になって急に変わったと言う事ではなく、幼少期から長い時間を掛けて、そのような人格になってしまったのではないか?と思うんですよね。
あるいは、過酷な生活の中で、自己防衛的にそのような人格になってしまった可能性もあるのですが、このあたりは情報が無いのでなんとも言えないですね。
3)あと、もう一つ可能性があるとしたら、A被告のお金の動きですね。
A被告の夫は証人尋問で「妻がパチンコで儲けてくる」と言う趣旨の証言をしてます。
なので、夫には「パチンコで勝った」と言ってお金を持ち帰っていたのだろうと思うのですが・・・夫はA被告と一緒にパチンコには行かなかったのかな?
もし、頻繁に一緒にパチンコをしていたら、A被告がそんなに勝っているの?と疑問を持つ事ができたかもしれませんね。
実際に、A被告がパチンコが上手い可能性もあるのですが、一般論で言えば、「客の儲けは店の損失」なわけで、毎回勝つと言うのは無理だろうと思っています。
(私はパチンコはやらないので、ホントのところはわかりませんが)
夫がA被告のお金に疑問を持てば、何か犯罪行為があるのか?と疑ったかもしれません。そうなれば、そこで犯行を止めたかもしれないですよね。
4)更にもう一つ可能性があるとしたら、児童相談所や役所、警察がどこまで家庭に踏み込めるのか?と言うあたりでしょうね。
このあたりは、専門家に議論していただきたいところですね。
些細な嘘が膨らんで一つの命を奪い、二つの家庭を不幸のどん底に突き落とす事になりました。
亡くなった男児のご冥福をお祈りします。
参考リンク
福岡県篠栗町5歳児虐待死事件その8(Aの一審判決1)
福岡県篠栗町5歳児虐待死事件その10(母親の控訴審と刑確定)
加害者家族
| 固定リンク
コメント