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2022/11/29

福岡県篠栗町5歳児虐待死事件その10(母親の控訴審と刑確定)

まずは続報です。
1)県の児童相談所の所長らが男の子の祖母と面会し当時の不適切な対応を謝罪していたとのこと。
福岡児童相談所は事件の1か月ほど前に自宅を訪問したものの目視だけで虐待の危険性が低いと判断。
男児の祖母が保護などを要請したものの十分な対応を取りませんでした。
母親らの1審判決では、A被告が行政機関の訪問を妨げていたことも明らかになっています。
祖母の代理人弁護士によりますと、先月末に遺族と面会した児童相談所の所長らは、「職員の経験不足だった。
亡くなった男児に話を聴くべきだった」と対応の不手際について釈明。
「本当に謝罪しても謝罪しきれない」と述べたとのこと。(10/6 報道)

2)1)の面談に対する祖母のコメントを一部抜粋して掲載します。(死亡した男児の氏名は男児と置き換えています)
Iの母です。
本年 9 月 30 日に県庁で、福岡児童相談所の現在の所長、児相の弁護士、相談第一課長、県の児童家庭課児童福祉係長と、その上司という方との面談を行いました。

今回の面談の前に、当時の篠栗町の担当者から直接きちんと説明して欲しいと依頼しましたが、当時の担当者は今、福岡児相の職員ではない、福岡児相として、組織としてお答えするという理由で、当時の担当者は面談にきませんでした。
当時の担当者に聞きたいこと、言いたいことはたくさんありますが、私はいまだに一度も当時の担当者から直接説明も謝罪も受けていません。当時、そして今も、当時の担当者が男児のことをどう考えているのかわからないままです。

今回の面談の時にも言いましたが、令和 2 年 3 月 31 日に児相に行った私が「私の孫、死なないですよね?助かりますよね?」というと、篠栗町の担当者は「大丈夫です」と言いました。後で分かったことですが、この担当者は私が 3 月 12 日に訪ねてから一度も男児を調査したり面談したりしていなかったのに、大丈夫と言ったわけです。
そのことを所長に聞くと、「そこが危機意識の低さ」と、当時の篠栗町の担当者の対応の不適切さを認めました。そして、児相も県も、申し訳なかったと謝罪されました。これは組織としての謝罪だと受け止めています。

また、男児のリスク判定を「C」にしたままだったことは、検証報告書でも言われているように、見直すべきだったそうです。この「C」のリスク判定は、児相の所内会議で決められるそうなので、担当者、所長さん(同じ苗字ですが面談した時とは別の人)たちで決めたのでしょう。児相全体で間違えた責任があると思います。面談のとき、児相の方は、男児の体重を測っていればリスク判定の見直しはあったと思うが、男児に会うことが目的化し、体重を測ることへの意識が薄らいでいたとも言いました。
児相はいつまで経っても現認確認以上の介入をするつもりはなかったんだと思います。

リスク判定を見直すタイミングは、家庭環境が変わる時、今回は男児の幼稚園退園のタイミングと、転居のタイミングになるとも言われました。ですが今回はいずれのタイミングでもリスク判定は見直されていませんでした。児相は、できることをやりませんでした。
リスク判定の見直しを行わなかったことは、「私たちも反省すべき点」と、児相の方が話していました。

この面談の途中、児相から「起こってしまったことはどうしようもない」という発言もありました。
あまりに無責任な言葉に、男児の命は児相にとって数あるケースの一つでしかないのかと、今思っても怒りしかありません。
児相に助けを求めたあの日、私にはどうすることもできず児相なら助けてくれると思いました。あなた達に子ども、孫がいるなら助けて下さい、あの子は小さいから体力がないからと言った私の気持ち、助けられた男児を助けてもらえなかった私のくやしさ、あんなむごい毎日を送らされていた男児の苦しさ、その事実を知った私の気持ちは児相にはわからないでしょう。他人事だから。ただその場しのぎで謝ればいいと思ってあんな言葉が出たのでしょう。

****控訴審初公判(10月14日)***
1)弁護側は控訴趣意書で、I被告がA被告に心理的支配(マインドコントロール)をされていたと主張。残されたI被告の2人の子供など、家族との関係を一日でも早く再構築するためにも減軽すべきだと訴えた。弁護側はマインドコントロールを研究する心理学者らの証人尋問を要求したが、高裁は却下し、被告人質問だけを採用したとのこと。

I被告は被告人質問で、控訴した理由を「一番は子供たちに一日でも早く会いたいという気持ちだった。ギリギリまで迷ったが、少しでも早く(家族に)会える可能性があるなら、と思って控訴した」と振り返った。有罪判決自体には「男児を母親として守ってあげられなかった責任だと思っている」と述べたとのこと。

2)検察側は控訴棄却を求め、即日結審したとのこと。

***判決公判(11月9日)***
1)福岡高等裁判所は9日、1審判決を支持し、控訴を棄却したとのこと。

2)福岡高等裁判所の松田俊哉裁判長は、「A被告からの心理的支配の影響があったとしても、被害者の生存に必要な程度の保護はできたはず。量刑が重すぎて不当であるとは言えない」として控訴を棄却したとのこと。

***刑確定(11月25日)***
検察と弁護側の双方が、期限の24日までに上告しなかったため、懲役5年の判決が確定したとのこと。

こんなところですね。
母親の控訴審としては、順当なところかと思います。
罪は認めるけど、子供に会いたいから刑を軽くして欲しいと言うのは、心情的には理解できるし、同情もできるけど、法律的には無理な話に見えますね。

他に興味深いのは、児相が祖母に面談して謝罪した事についての、祖母のコメントですね。
この事件では、祖母が男児の危機を児相に相談しているわけです。死の危険を伝えているにもかかわらず、担当者は男児に対して、何の確認もしていなかった。そして、その場しのぎの返事をしていた。その結果、男児は死亡してしまったと言う事ですね。

祖母にしてみれば「だから言ったじゃ無いか、あの時、確認してくれていれば」と言う気持ちになるのは当然ですね。

感情は抜きにしても、今回の不適切な対応についての検証は必要ですね。
検証は既にされていて報告書が福岡県から公表されています。これはこの餓死事件以外の2件の虐待事件を含めた検証報告書です。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/press-release/20210806jido.html

一部を抜粋すると
3事例共通の課題
(1) 児童相談所や市町は、継続的に子どもや家族を支援し関わりながら、子どもの死亡という事態を防ぐことができなかった。

(2) 児童相談所や市町は、幼稚園の退園、離婚、転居、学校への欠席が続くなど家庭状況が大きく変わる出来事の発生といった状況の変化を踏まえた適切な支援ができていなかった。

(3) 児童相談所や市町は、子どもに対する身体的、心理的虐待が発生していないかの確認に注力し、子どもと面談し直接話を聞くことや、関係機関から子どもがどんな話をしているかの情報収集を行っていない。虐待リスクを把握するための家族全体のアセスメントができていない。

(4) 児童相談所や市町は、保護者との関係形成に苦労し、会うこと自体が目的化。このため家族の課題や困難をどうすれば軽減・解消できるかといった踏み込んだ支援ができていなかった。

(5) 何れのケースにおいても要保護児童対策地域協議会(以下「要対協」という。)で主担当機関が市町となっていた。このため、児童相談所は、子どもを虐待から守る専門機関であるにも拘わらず、市町任せとなり自ら主体的に虐待のリスク判断を行っていなかった。

気になるのはこの3)の子供と面談して直接話を聞くことが出来なかった。関係機関からの情報収集が出来ていなかった。
最後の5)の主担当機関が市町となっていたので、児童相談所は虐待リスク判断を行っていなかった。のあたりですね。

で、再発防止の提言がこちら
3 再発防止に向けた提言
(1)児童相談所と市町村の児童虐待に対する危機意識の向上
〇 市町村の要対協は、体重減少や乳幼児健診未受診など、発育状況が把握できないケースについて体重の確認を必須とする「緊急度アセスメントシート」及び「子どもの安全確認チェックリスト」の活用を徹底すること 。

○ 児童相談所は、要対協で協議された「全ての児童虐待ケース(疑われるものを含む)」について、受理会議の開催により主体的にリスク判断を行うこと。また、それに基づき市町村を指導するとともに、リスクが高い場合は児童相談所が子どもの安全を確保すること。

○ 県では、児童相談所と役割分担する「乳幼児健診未受診者に対する受診勧奨のためのルール」を定めているが、これを「子どもに会えない状態が続く場合」にも適用すること。

(2)児童相談所のアセスメント力の強化
〇 県の児童相談所においては、令和2年度から、初回の虐待通告に対し一時保護等の介入的対応を専任で行う「初動対応係」を設置している。一方、継続支援ケースで、新たに虐待情報が入った場合は、「相談支援係」がアセスメントを行っている。
今後、保護者等への継続支援中であっても、通告等により新たな情報を入手した場合は、「初動対応係」が当該家庭をアセスメントし、受理会議の開催により虐待リスクの判断を行い、躊躇なく児童の安全確保に取り組むこと。

〇 県は、「初動対応係」を家庭に対するアセスメントを行う専門チームと位置づけるとともに、その対応力を強化するため、必要な研修を実施すること。

(3)児童相談所・市町村職員の資質の向上、体制整備
〇 県は、検証事例を踏まえた課題を抱える家族への接し方、支援に係る研修や虐待の兆候に気付きにくい具体的なケースを想定した演習(ロールプレイ)等を実施し、児童福祉司等の資質向上に取り組むこと。

〇 児童相談所が虐待のリスク判断や保護者のメンタルヘルス等の支援検討にあたって、医師にいつでも相談できる体制を整備し、精神医学などの見地から意見を取り入れ、児童相談所全体のアセスメント力の強化に取り組むこと。

〇 県は、市町村が整備することとされた「子ども家庭総合支援拠点」が早急に整備されるよう様
々な機会を通じ市町村に働きかけること。

(4)要対協の機能強化
〇 市町村は、児童相談所を構成員とする要対協の実務者会議を定期的に開催すること。実務者会議の開催に当たっては、主たる支援機関、管理する目標の推移、支援策に加え、当初の支援策が滞った場合の次善の支援策が明示された資料により、進行管理を行うこと。
県は、モデルとなる
県は、モデルとなる「「進行管理進行管理表」表」を市町村に示し活用の徹底を図ること。を市町村に示し活用の徹底を図ること。

○ 県は、県は、要対協の調整担当者要対協の調整担当者等等に対し、幼稚園のに対し、幼稚園の退園、離婚、転居、学校への欠席が続く退園、離婚、転居、学校への欠席が続くなど養など養育状況が変化した場合育状況が変化した場合は、は、虐待虐待リスクが高まることをリスクが高まることを研修等を通じて周知研修等を通じて周知徹底徹底することすること。

○ 学校、幼稚園、保育所学校、幼稚園、保育所等は、要対協で支援を行っている児童の欠席が続く場合等は、要対協で支援を行っている児童の欠席が続く場合は、児童相談所及び市町村の虐待担当部局に速やかに通告等を行うこと。

こんなところですね。
課題も提言についてもその通りだと思うのですが・・・
ちょっと、気になったのは、これらの内容は現場の人は既に気付いていたのではないだろうか?と言う事です。
つまり、やらなきゃいけない事なのは知っていたし、理解していたけど、実際には出来なかったと言う事が無いのか?と言う事です。

どこの組織もあまり変わらないと思いますが、限られた予算、限られた人員で期限までに仕事をしなければならないと言う前提条件がありますよね。
そこへ、許容量以上の仕事を入れられても「出来ない」って事になる場合があります。
それでも、やらなきゃいけない場合、担当者や中間管理職のレベルで、仕事の重要度を見て間引きと言うか手抜きをしたり、調整してつじつまを合わせると言うのも、やはりどこの組織でもあると思うんですよね。

もしそうなら、組織的には別の手当が必要なのではないか?とかね。あるいは、現場の意見が上に上げにくい風土などがないのか?なんて事も気になるわけです。他にはテクノロジーを使って効率的な情報の共有とか判断とかと言うのも有りだと思います。

私は全くの門外漢で児相の事も市町村などのこの手の職場の話は分かりません。
ただ、少子化対策も重要だと思いますが、せっかく生まれた命を亡くさない事にも予算を割いても良いと思うんですよね。

亡くなった子供達のご冥福をお祈りします。

参考リンク
福岡県篠栗町5歳児虐待死事件その9(Aの一審判決2)

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