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2023/08/15

埼玉県さいたま市桜区妹甥殺人事件その2(一審判決)

一審判決は無期懲役(求刑:無期懲役)です。

***初公判(22年10月25日)***
1)起訴状によりますと無職の男性被告28歳は2019年12月、さいたま市桜区の自宅で同居する妹(当時24歳)と、妹の長男(当時3歳)の顔や頭を包丁やナイフで切りつけて死亡させたなどとして殺人の罪などに問われている。

2)被告は起訴内容について「相違ありません」と認めたとのこと。

3)冒頭陳述で検察側は、被告が長男の泣き声への不満などから、親子を恨むようになったと指摘したとのこと。
その上で、「強固な殺意に基づく犯行で、精神障害の影響は限定的」と述べたとのこと。

4)弁護側は妄想性障害などによって、責任能力がなかったとして無罪を主張したとのこと。

***論告求刑公判(22年10月31日)***
1)検察側は31日の論告で、被告が親子への恨みから殺害を決意したと指摘し、「計画的で強固な殺意に基づく犯行」と述べ、無期懲役を求刑したとのこと。

2)弁護側は、妄想性障害などで正常な状況認識ができなかったとし、「精神障害の圧倒的影響があった」と無罪を求めたとのこと。

***判決公判(22年11月7日)***
1)裁判員裁判で、さいたま地裁は7日、求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。

2)判長は判決理由
被告の責任能力に関して、「犯行時の被告人は、妄想性障害、自閉症スペクトラム障害であったことは認められる」としたものの、「妹と甥の殺害を決意すると、妹に襲い掛かるタイミングをうかがうなど的確に状況判断し、合理的に行動している」などと指摘。善悪の判断や行動のコントロール能力の欠如や低下は認められないとした。

その上で、「笑い声をあげながら、躊躇する様子もなく、何度も繰り返し執拗に妹と甥を切りつけており、極めて残忍かつ残虐な犯行である」などとして、被告に対し無期懲役を言い渡したとのこと。

別の報道では
裁判長は、被告が患っていた妄想性障害や自閉症スペクトラム障害が犯行に影響を与えていることに否定はできないとしつつ、「他に取り得る選択肢があった中で、自らの自発的な判断により犯行を決意したと認められる」と指摘。被告は犯行時、的確に状況を判断して合理的に行動しており、「精神障害は間接的、限定的に影響を与えたにとどまっている。犯行が精神障害の著しい影響下で決意され、実行されたと認めることはできない」としたとのこと。

その上で、犯行態様は極めて残忍かつ残虐な犯行で、妹とおいが味わった肉体的苦痛や絶望感は計り知れないとし、「3歳と24歳の命が無残に奪われた結果は重大というほかない」と述べたとのこと。

***補足***
どのタイミングの情報か不明な情報です。
被告は、甥が2歳になったころから笑い声や泣き声に不満を抱くようになります。次第に、甥から悪口を言われていると思うようになったとか。妹母子に、強い殺意を抱いていたようです。

こんなところですね。
現場となった集合住宅で、容疑者は自身の母親(57歳)と、兄(28歳)、妹(24歳)、甥(3歳)と暮らしていた。
妹はシングルマザーで経済的に困窮した為に実家を頼ったと言うところなんでしょうね。
容疑者は当時無職だったようですから、まー家に居る事が多かったのかな。
妹母子がどのタイミングから同居したのかが分かりませんが、2歳の頃には同居していたようですね。

保育園は0歳から入園可能なので、家族内で不満があるなら、保育園を使うのも一つの方法かと思います。
ただ、保育時間は限られるから夜間などは当然、家に戻りますよね。

被告は当時25歳で理由は不明ですが無職と言う事なので、普通に独立して別居するのも無理な状況ですね。
妹は仕事をしていたのか不明ですが、例え仕事をしていたとしても、シングルマザーで2歳や3歳の子育てをするのは厳しいでしょうから、頼れるなら実家を頼りたいでしょうね。

被告も妹も互いに家を出ると言う根本的な解決方法が取れない状態で、追い詰められてしまったんでしょうね。

ただ、気になるのは、事件に至るまでに相当な時間があったと思うわけです。同居時期が不明なのですが半年から1年ぐらいの時間はあったのではないかと思うのですが・・・
事件の前に被告と妹の間で口論などのトラブルは無かったのだろうか?という点です。

被告の方は妄想性障害や自閉症スペクトラム障害の症状が以前あったと思うわけで、事件の兆候は無かったのか?

家庭の経済状況が分からないのですが、グループホームを利用する方法も有ると思います。
ただ、利用料が発生したり、障害者手帳が必要だったりと条件があるので、利用できなかったと言う事もあるかもしれませんね。

以前から虐待などの情報があれば、児童相談所がマークしそうですが、親子関係が良好で、虐待の情報もなければ、児童相談所も問題があるとは思えないでしょうね。

こう考えると、外部の人間には、この事件の兆候を知る事はできないと思います。
唯一考えられるのは、被告が通院していて、カウンセリング等を受けて、その中で生活の不満を話している場合かな。
とはいえ、明確に事件を連想するような話をしなければ、医師も通報したりはしないでしょうね。(被告が通院していたと言う情報は有りません)

と考えて、この事件を家族の中で予防や解決するとなると、実現可能な方法には経済力が必要となって、経済力がなければ、回避不能な不幸な事故だったのかな?

条件付きだけど、被告の障害が軽度で就労可能であるなら、独立して別居する事も可能だったと思います。
このあたり、判決では「他に取り得る選択肢があった」とあるので、他の選択肢とは何なのか?が知りたいですね。

亡くなった母子のご冥福をお祈りします。

参考リンク
埼玉県さいたま市桜区妹甥殺人事件

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コメント

23年12月15日報道
2019年にさいたま市の自宅で同居する妹=当時(24)=と、妹の長男=同(3)=を殺害したとして、殺人罪などに問われた無職男性被告(29)の控訴審判決で、東京高裁は15日、懲役20年を言い渡した。裁判員裁判で審理された一審さいたま地裁判決は無期懲役だったが、事件当時に心神耗弱状態だったと認定して刑を減軽したとのこと。

判決理由で裁判長は、執拗かつ残虐な犯行で死亡した2人の苦痛や恐怖は計り知れないとした一方で、被告の妄想による影響を指摘。完全責任能力を認めたさいたま地裁判決は不合理だとして「精神障害が与えた影響は相当大きい」と判断したとのこと。

こんなところですが・・・
控訴審の情報を見逃していたのか?最後の判決部分の報道しか見つかりませんでした。

二人殺害なので、無期懲役と死刑のボーダーライン上です。
一審は完全責任能力を認めて、無期懲役だったわけですが、
控訴審では妄想の影響を認めて懲役20年となりました。

責任能力については裁判所の判断だから、そこは置いとくとしても、懲役20年ってことは、満期で48歳で出所ですよね。
出所後に生活する方法が無いのではないかな?
それなら、無期懲役の方が被告や家族にとってはよかったのではないのかな?と思わなくもないですね。

投稿: ASKA | 2023/12/31 23:58

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