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2023/08/18

京都市下京区女性殺害事件その4(一審判決)

一審判決は懲役18年(求刑:懲役20年)

***初公判(23年7月10日)***
1)起訴状などによりますと、東京都葛飾区の無職・男性被告(23)は、2020年10月に京都市下京区の一室で女性(当時24)の胸などを刺して殺害したなどの罪に問われている。

別の報道では
東京都葛飾区の無職・男性被告(23)は3年前、京都市下京区の市営住宅で女性(当時24)の胸などを刃物で複数回刺して殺害したほか、女性のゲーム機などを盗んだ罪に問われている。

2)被告は「私が女性を死なせてしまったことは事実です。それは、女性が折り畳みナイフを持って襲い掛かってきたことによって起きてしまったことです」などと起訴内容を否認した。

3)弁護側は「被告人が女性をナイフで殺したことは争わない。しかし、正当防衛が成立する」と主張したとのこと。

4)検察側は冒頭陳述で「女性を複数回刺し、人が死ぬ危険性が高いと認識していたとはいえ、殺意があると言える。被害者が折りたたみナイフを振り回した事実もないため、正当防衛も成立しない」と指摘した。

***論告求刑公判(23年7月20日)***
1)検察側は「一方的かつ執拗にめった刺しにして犯行は残忍で極まりなく、殺意も強固。反省の様子もなく正当防衛だったと被害者に責任転嫁している」などとして、懲役20年を求刑した。

別の報道では
検察は、「少なくとも19回刺すなど執拗で残忍な犯行で、被害者に責任を転嫁する態度に終始している」とし、懲役20年を求刑した。

***判決公判(23年8月8日)***
1)京都地裁は「被告が供述する(被害者が)襲いかかる経緯は不自然で信用できず、正当防衛も過剰防衛も成立しない」、「19か所も滅多刺しにした相当に執拗で悪質な犯行で、汲むべき事情は見出し難い」などとして、懲役18年の実刑判決を言い渡したとのこと。

別の報道では
裁判長は「被害者には抵抗した際につく防御創と呼ばれる傷が少ない。被害者が襲っかかってきた中で刺したという被告の供述は信頼できない」などと弁護側の主張を退けた。
そのうえで「被害者が動かなくなるまでめった刺しにした犯行は強固な殺意があった」として懲役18年を言い渡したとのこと。

こんなところですが・・・殺人事件だというのに報道が少ないのがちょっと驚きですね。
ちょっと事件を振り返ると
時系列
2021年
10月05日 アルバイトの最後の出勤
10月09日
夜    死亡推定時刻
10月10日 アルバイトを無断欠勤
10月11日 アルバイトを無断欠勤
14:00頃 遺体発見
11月21日 容疑者逮捕
11月22日 送検
12月11日 殺人罪で起訴

京都市下京区の市営住宅で女性(当時24)が死亡しているのが発見される。
経緯としてはアルバイトを無断欠勤した事でアルバイト先から親族へ連絡があって遺体が発見された。
約1ヶ月後に東京都葛飾区の無職・男性被告(当時20)が殺人の容疑で逮捕される。

捜査本部によると、2人は会員制交流サイト(SNS)でやり取りをしており、犯行前には被害者宅付近の防犯カメラに2人で歩く様子が写っていた。

逮捕当時容疑者は「名前を知らない女性と京都で会ったことはあるが、殺してはいない」と容疑を否認していた。

捜査関係者によると、2人はネット交流サービス(SNS)でやり取りしていた。被告が京都を訪れたのは事件数日前のため、2人は初対面だった可能性もあるとのこと。

こんな感じですね。
公判の報道が少ないので、殺害の動機などがまったく不明です。
結局、被告側は動機を正当防衛としているわけですが、裁判長が指摘しているように不自然でしかないですよね。
ただし、殺害自体は認めているので、否定できないような物証などがあったのかな?
このあたりの逮捕時の報道も無かったと思います。私が見逃しているのかもしれませんが・・・

二人が会った経緯や理由も不明です。
SNSで知り合ったらしいと言う事は分かるけど・・・東京から京都まで、新幹線を使えば日帰りも可能だけど、無職の身で、ただ逢うだけで、わざわざ東京から京都まで出向くのかな?と言うのはちょっと疑問なところですね。(しかも、初対面かもしれない)

そう言えば、埼玉県熊谷市晴見町女性殺人事件もSNSで知り合って逢うのが3回目で女性の自宅に上がって事件になってしまったんですよね。

SNSやスマホの普及を考えれば、事件の中にSNSが登場するのは必然と言えば必然でしょうね。
ただ、出会い系とかそういったネットを使った交流が事件に発展してしまう事は20年前から起きています。
昔は目新しくて、話題になってましたが、現在では当たり前すぎて話題にもなりませんね。

とは言え、SNSが事件の切っ掛けになっている事は否定できないのではないかと思います。
だからSNSが悪いと言うわけじゃ無いんです。
SNSの使い方を身につけましょうと言う事ですね。
あるいは距離の縮めかたを学ぶと言う事なのか?
とは言え、そんな事を言う事自体が野暮なのかな?

何を言ったところで逢いたい二人が逢おうと思えば、逢ってしまうわけですよね。

結局のところ、逢っても良い相手なのか?を見極める目を持って欲しいと言う事になるのかな。
とは言え、SNS上のやりとりだけで相手の人間性を見極めると言うのも難しい話なんですよね。
ネットだとネット人格と呼ばれる本人とはまったくの別人になったりする人もいるわけですから。

結局のところ「慎重にね」としか言えないのかな。
男女互いに美人局とか性犯罪のリスクがあるわけなので、慎重にとしか言えないかな。

話を公判に戻すと、被告側が「正当防衛」を主張しているわけですが、まーこれは無理な話と思います。
刑法第36条1項の規定から、正当防衛が成立する要件は
1)急迫不正の侵害があること
2)防衛の意思があること
3)防衛の必要性があること
4)防衛行為に相当性があること

1)2)はともかく、3)4)が問題で襲ってきた相手を返り討ちにしてしまったと言うのはダメなんですよね。

このあたりの事は当然、弁護人も理解していたと思うのですが、被告人の意志を尊重したと言う事なのか?あるいは、被告人と意志疎通ができず、とりあえず公判を成立させる為にしかたなく立てた弁護方針なのか?ちょっと弁護人の方が気の毒な気もします。

過去に確か、拉致監禁された16歳少女が、拉致した男性38歳を殺害して逃亡した事件で正当防衛が成立した事があったけど、状況が違いますからね。

結局は、殺害の事実を争わないで、無罪を主張するとしたら、責任能力を争うぐらいしか方法が無い。しかし、逮捕当時に精神鑑定の話もでないぐらいだから、これが無理だと断念して、苦肉の策として正当防衛を持ち出したのかな?

タラレバだけど、自首して素直に罪を認めたら、懲役10年ぐらいになったかもしれないと思うんですよね。
逮捕歴が無いと言う前提で、反省していればですが。自首してなくても懲役15年ぐらいになったかもしれませんね。

結局、無理筋な正当防衛の主張で逆に「反省してない」と言う事になり、かえって刑を重くしてしまったのではないか?と思います。まー因果応報と言えばそれまでですが。

亡くなった女性のご冥福をお祈りします。

参考リンク
京都市下京区女性殺害事件その3(12/11までの報道と容疑者逮捕)

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