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2023/08/23

大阪府吹田市交番拳銃強奪事件その5(控訴審判決)

控訴審判決は無罪です。

***初公判(22年07月27日)***(23/08/23 追記、見直したら情報ありました)
1)弁護側は「責任能力について事実誤認があり、量刑も不当だ」として、1審判決の破棄を求めたとのこと。

2)検察側が控訴棄却を主張したとのこと。

3)被告は出廷しなかった。

***判決公判(23年03月20日)***

1)大阪高裁は20日、懲役12年とした1審・大阪地裁判決を破棄し、無罪を言い渡した。

2)控訴審で弁護側は、1審判決が採用した「限定的に責任能力はあった」とする被告の精神鑑定書について「誤診している」と主張。別の精神科医の意見書を提出し、被告の犯行当時の精神状態は刑事責任を問えない心神喪失か、鑑定書の診断よりも深刻な心神耗弱だったと訴えていたとのこと。

3)大阪高裁は「1審判決は統合失調症の影響を大きく受けた犯行であると認めながら、どの程度影響したのかについて何ら判断を示していない」とした上で、「拳銃を奪うなどの行動自体が統合失調症の影響が増す中で行われたもので、犯行前後を総合的に鑑定すれば心神喪失の状態にあった」として、1審判決を破棄し、被告の男性に無罪を言い渡したとのこと。

別の報道では
高裁判決は事件前後の行動や動機の説明内容を踏まえ、「計画や行動すべてに病気が影響していた」とする起訴後の精神鑑定結果や鑑定を実施した精神科医の証言を重視。「銃を奪おうとした動機は幻覚や妄想による極めて唐突で奇異なものだ」と指摘したとのこと。

そのうえで裁判長は「重い統合失調症の影響で物事の善悪を判断できない状態だった」と判断し、心神喪失者の行為は刑事責任を問わないとする刑法の規定に基づき、無罪と結論付けたとのこと。

4)起訴前後に実施された2度の精神鑑定は、疾患の影響を巡って異なる結論が出ていたとのこと。
精神鑑定の結果はいずれも疾患の影響を認めた点で共通していたが、責任能力の有無を巡り精神科医の見解が真っ向から対立していたとのこと。

5)被告は事前に交番の勤務態勢をスマートフォンで検索し、事件後に服や所持品を捨てる一方、逃走中に履歴書を購入する不自然な行動を見せたことも確認されている。(どの時点の情報か不明)

6)大阪高裁判決は裁判員裁判だった1審判決の評価について、「意見の相違点のみを切り出して分断的に判断している」と言及。裁判員の良識や感覚を反映した評議の「妨げになった」と異例の批判を展開したとのこと。

高裁判決はまず、裁判員裁判で求められる刑事責任能力の判断手法について「精神医学の専門性が尊重されるべき部分と法律判断の部分との区別を踏まえて評議し、明確に裁判員と裁判官の間で共有されることが不可欠だ」と判示したとのこと。

そのうえで、地裁の審理は「意見の分岐点や違いの理由、根拠を明らかにし、これを共通認識として評議、判断を行うべきだった」と指摘。「1審判決は精神医学の専門的知見が及ぶ範囲を見誤り、経験則などに反する不合理な結論を導いた」と非難したとのこと。

***無罪確定(23年04月03日)***
大阪高検は3日、最高裁への上告を断念することを明らかにした。高裁は男性は重い精神疾患で心神喪失状態だったとして、刑事責任能力はなかったと判断していた。同日の上告期限が過ぎた段階で、男性の無罪が確定するとのこと。

別の報道では
大阪高等検察庁は、「判決内容は十分理解したが、適法な上告理由までは見いだし難いため、上告は断念した」と明らかにしたとのこと。

こんなところですね。
控訴審の経過が報道されなかったのか?私が見逃したのか?が分かりませんが、判決の情報しか見つけられませんでした。
結局、一審でも問題となった二つの(責任能力について)180度違う精神鑑定の結果で別の方を採用したと言う事ですね。

今、一審公判の情報を見直してみても、それほどの違和感は無いと思います。
事件前後のおよそ合理的、論理的と思われる行動から限定的に責任能力があると言う判断も、極端に間違っていると言う印象は無いんですよね。

控訴審で高裁が一審の判断を批判しているのですが「精神医学の専門性が尊重されるべき部分と法律判断の部分との区別を踏まえて評議し、明確に裁判員と裁判官の間で共有されることが不可欠だ」と言われても・・・
これは裁判官が最初に説明するべき部分で、一般人にこんなことが分かる訳がないと思います。
正直なところ、精神鑑定の結果から責任能力を判断する裁判では、裁判員裁判はできないという事なんじゃないのかな?

もしくは、鑑定結果が割れるような場合は、3回とか5回とか鑑定を実施して、裁判員が判断しやすくするべきなんじゃないですか?
終わってから批判されても、一審に参加した裁判員さんの労力が無駄だったと言っているだけじゃないですか?

今回は裁判員制度自体の問題というよりは、運用の問題とは思いますが、こんな事が頻発するなら、裁判員裁判は不要と言う事になると思います。

さて、事件の話に戻ると、男性は無罪になったわけですが、心神喪失者等医療観察法によって治療と観察が行われると思うですが・・・・
手順だと、裁判所が心神喪失等を理由に無罪判決を出した後に、「検察官による申し立て」が地方裁判所にだされて、鑑定入院からプロセスが始まると思うのですが、このあたりはさすがに報道されないんでしょうね。

次の問題は「再犯を防げるか?」ですね。心神喪失者等医療観察法の効果に期待しましょう。

参考リンク
大阪府吹田市交番拳銃強奪事件その4(一審判決)
39条と心神喪失者等医療観察法

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