愛媛県今治市女性ドライバー殺人事件その2(差し戻し審判決)
詳細の前にここまで経緯をまとめると
時系列
2018年
02月13日 遺体を発見。
02月14日 同僚の男性を緊急逮捕。
02月15日 殺人容疑で送検。
10月16日 一審初公判
11月13日 一審判決懲役19年
猥褻目的を認定せず。(強制猥褻致死ではなく、殺人と強制猥褻罪)
11月27日 検察と弁護側双方が控訴
2019年12月
2審判決 致死罪が認定されなかった点を是認できないとして1審判決を破棄し審理を地裁に差し戻した。
差し戻しの理由の中で、高松高裁の裁判長は「殺人罪と強制わいせつ致死罪の成立を前提にするのが相当」と述べたとのこと。
2020年07月
最高裁は高裁判決を不服とする被告側の上告を棄却する決定をし地裁への差し戻しが確定した。
要約すると
高裁と最高裁は事実認定に誤りがあるとして裁判のやり直しを命じていたと言う事ですね。(猥褻目的だったと指摘)
2022年
12月05日 差し戻し審、初公判
被告は起訴事実について「弁護士に一任すると」述べた。
弁護側は殺害については認めたが、当初から猥褻目的は無かったと強制猥褻致死罪については否認した。
また、被告が女性にわいせつな行為をしたとされる点について、弁護側は「服をめくり上げたのは、心音確認と心臓マッサージのためだった」と全面的に争う姿勢を示したとのこと。
冒頭陳述で検察側は、被告がLINE(ライン)で女性にメッセージを送ったり、女性のトラックを無償で修理したりするなど好意を寄せていたと指摘。「一方的な好意から被害者にわいせつ目的で暴行した」と述べたとのこと。
***以下はタイミングが分からない情報です***
(初公判から論告求刑までの間の証言と思われます)
証人尋問:被告の母親
被告の性格
注意をした際に急に興奮することがあり、特に女性のかん高い声や怒った声に反応することが多く、自身も尻を「けられた」ことがあったと証言。10年ほど前には、被告から受けた暴力が原因で病院を受診したことがあったと述べたとのこと。
被害者への弁償について
用意した弁償金は300万円とのこと。
「はした金かもしれないが、遺族に対して精一杯かき集めた」とのこと。
その上で「被害者の家族に申し訳ない、したことを一生償って欲しい」と被告への思いを述べたとのこと。
被告人質問
14歳になると、障害者の自立支援などを行う福祉施設に入所した。共働きの両親は、1日中面倒を見ることができなかったと、その理由を説明したとのこと。
その後の、5年間にわたる障害者福祉施設での生活の中でも、話すことのできる友人はできなかったのこと。この施設からは、脱走して退所したとのこと。
社会人になってからは、職を転々としてきたとのこと。
「怒るとセーブが効かなくなる性格」が災いして、人間関係のトラブルが絶えなかった。友人ができることはなく、女性との交際経験もないとのこと。
「なぜ人を殺してはいけないと思う?」
裁判官の問い掛けに、「法律で決まっているから」と述べた。
意見陳述:被害者の母親
「控訴審に一度も出廷しなかったのはなぜか。理由が分からない、本当に無責任だ」
「今年1月になって、初めて反省文を受け取った」
「事件からの5年間、裁判での「嘘」に苦しんだ。奈落の底にいると感じた」
5年前に行われた最初の裁判で「犯行当時の記憶が無い」と証言していた被告は、差し戻し裁判で一転「記憶が戻った」とした上で「被害女性との仕事上のトラブルに腹を立てたことが犯行に及んだ理由」と述べ、性的な目的については否定していたとのこと。
「被告が示した障害年金で被害弁償について、ふざけるなと思った。人の命を何だと思っているのか。罪を認めて欲しい」
「たった懲役19年というのは受け入れられない。わいせつ目的が無かったというは信じられない」
「死刑以外にはあり得ないと思う」
***ここまで***
2023年
03月03日 論告求刑公判
検察は「わいせつ目的で暴行したことは明らかで、犯行は自己中心的で極めて悪質だ」と指摘し、無期懲役を求刑したとのこと。
検察官は、被害者の遺体を調べた医師の証言を元に「被害者が死んだと思い、運搬する目的で首にタイツを巻いて引っ張った」とする被告の証言は「全く信用できない」と述べたとのこと。
さらに、検出されたDNA型などから、わいせつな行為があったと主張。
「心臓マッサージをした際に、指をなめた」とする被告の証言も否定したとのこと。
また、「被害者とのやり取りからイライラを募らせて暴行に及んだ」とする動機についても「好意を抱いていた被害者に対して、死亡させる危険性のある暴行に及ぶというのは飛躍であり不自然で信用できない」と指摘したとのこと。
「当初からわいせつ目的があり、被害者の抵抗を排除するために、両手で首を絞め付ける暴行を加えた」と主張したとのこと。
タイツで首を絞め付けたのは、面識のある被害者へのわいせつな行為を隠すための「口封じ」だったとして、被告には殺人と強制わいせつ致死が成立すると締めくくった。その上で、被告に無期懲役を求刑したとのこと。
これに対して弁護側は殺人罪については認めたうえで、「暴行は衝動的なもので、わいせつ目的ではなかった」などと刑を軽くするよう求めたとのこと。
別の報道では
殺人についての争いは無いとした上で、「わいせつの意図は無かった」と述べ、強制わいせつ致死の成立については否定した。
その上で、記憶を取り戻したと証言する被告が「思い出したことを反省している」ことや、「軽度の知的障害を抱え、自閉症傾向があり、感情の制御が難しい」といった事情、さらには被告が障害基礎年金から弁償金を支払おうとしていることなど、酌むべき事情を挙げ「懲役15から16年程度の判決が相応」と述べたとのこと。
最終意見陳述
被告は、紙を手に証言台に立ち、その内容を読み上げたとのこと。
「ひどい暴行をしてしまった、大変申し訳ないことをした」
「楽しい日々をできなくした、大変申し訳ない」
「弁償や服役など、罪を償いたい」
「しかし返って来ることはない、申し訳ない」
「逆の立場なら絶対に許せない」
「真剣に向き合って罪を償う」
「短気な性格と向き合って直していきたい」
03月10日 判決公判
裁判長は、起訴内容を全面的に認め、被告に求刑通り無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
判決の中で裁判長は、一連の犯行について「強い殺意に基づいた、被害者の尊厳を踏みにじる極めて悪質で残忍な行為」「ドライブレコーダーの消去など罪証隠滅行為は卑劣」と非難したとのこと。
判決理由
「被害者は30歳という若さで突如生涯を閉じることを余儀なくされた」
「新居を構え、ゆくゆくは子どもを授かり夫とともに温かい家庭を築くことを思い描いていたのに、被告の手によってその未来を奪われた」
「わいせつな行為により尊厳は大きく踏みにじられた」
「被告には自閉傾向を含む軽度知的障害があり、一般的に衝動を抑制しにくい側面があった」と認定した上で、運転手として働くなど通常の社会生活を送っていたことや、犯行時には証拠隠滅行為を取っていたことなどを挙げ「障害が犯行に与えた影響は限定的で、被告のために大きく考慮することができない」と指摘。
その上で、「被害者に落ち度があるような弁解を繰り返し、自らの犯した罪に真摯に向き合うことができているとは言い難い」「謝罪の言葉は表面的」「事件から5年近くが経過してようやく書き上げた謝罪文に弁解を記載するなど、遺族らの感情を逆なでした」と言及。
反省は不十分と言わざるを得ないと結論付けたとのこと。
別の報道では
裁判長は「(女性の)尊厳を踏みにじった極めて悪質で残忍な犯行」と述べたとのこと。
被告側は、わいせつ目的や行為はなく、殺人罪のみが成立すると反論し懲役15、16年程度が相当と主張。判決は、女性の体に被告の唾液が付着していたことなどを挙げ、わいせつ目的や行為があったと認定し、強制わいせつ致死罪は成立すると判断したとのこと。
23年3月24日、被告はこの判決を不服とし、控訴期限の24日に高松高裁へ控訴したとのこと。
こんなところですね。
前回の記事のコメントで一審判決について記載しているのですが、精神障害と知的障害の言葉が混同されていたようです。
今回、改めてそのあたりの情報を見ると。
一審で弁護側は殺意を否定した上で、「被告には軽度の知的障害があり、犯行当時の精神年齢は9歳程度だった」「ストレスなどで行動をコントロールできず、犯行当時の記憶も失っていた」「精神障害の影響で心身喪失状態だった」として、無罪を主張したとのことですね。
この文章が混同する原因なのかな?結局、知的障害と精神障害の両方あったと言う主張なのかな?
さらに情報としては
被告には自閉症傾向など、軽度の障害がある。
14歳になると、障害者の自立支援などを行う福祉施設に入所したとのこと。
その後の、5年間にわたる障害者福祉施設での生活の中でも、話すことのできる友人はできなかったとのこと。この施設からは、脱走して退所したとのこと。
結局、争点は「猥褻目的」かどうか?
一審判決では
「同僚の当時30歳の女性に対し殺意をもって首を両手で締めつけ意識を失わせた上わいせつな行為をし、窒息により死亡させた」
までは認定されてますね。
しかし、
「犯行当初からわいせつ目的があったかについては合理的な疑いが生じる」として強制わいせつ致死罪は成立せず強制わいせつ罪にとどまると言う判断を最終的にしています。
ところが、控訴審ではこの部分が
「殺人罪と強制わいせつ致死罪の成立を前提にするのが相当」となって否定され、上告も棄却されて、今回の一審差し戻しと言う事になりました。
私としては、一審で「猥褻目的が動機でない」と判断されたのが素朴な疑問ですね。
首を絞めて瀕死の状態->猥褻行為 と言う犯行の流れを考えれば、最初から猥褻目的と考える方が自然ではないのかな?
でも、一審では
「ストレスや女性への不満が蓄積して犯行に及んだものであり、両手で首を絞めた時からわいせつ目的があったとは認められない」
と判断されているところを見ると、首を絞めたのは「ストレスや女性への不満」が原因で衝動的に行った。
瀕死の状態の被害者に対しての猥褻行為をした理由は一審では報道されてないようですね。
でも、「最初から猥褻目的では無い」と言う事だから、首を絞めて瀕死の状態の被害者を見て、性的衝動が湧き上がってしまった。
と言うあたりが言い訳だったのかな?(ASKAの推測です)
でも、この言い訳はちょっと受け入れられないと思うんですよね。
殺意を持って首を絞めていて、おそらく瀕死の状態で、このまま放置すれば、確実に死亡するだろうと言う現場にいて、殺人犯になる直前の状態だと9歳レベルの知能でも理解できると思うんですよ。
その状態では証拠隠滅や逃亡といった逮捕されない為の行動をするのが犯人としては一般的だと思うわけです。
そう考えると、そうせずに、猥褻行為をした被告の行動が、猥褻目的では無いと判断された理由は・・・・
「知的障害があるから、逮捕される事を恐れなかった」と言う判断だったのかな?
しかし、裁判長は「精神障害の影響は限定的」とも言っています。
この事件で一審で被告は「犯行時の記憶は無い」と主張してましたが、差し戻し審では「思い出した」と言っているのが印象が悪いですよね。
事件の1年後に忘れていた事を5年経過してから思い出すと言うのが、違和感があります。
差し戻し審で裁判長も「被害者に落ち度があるような弁解を繰り返し、自らの犯した罪に真摯に向き合うことができているとは言い難い」「謝罪の言葉は表面的」「事件から5年近くが経過してようやく書き上げた謝罪文に弁解を記載するなど、遺族らの感情を逆なでした」と言及していて、私としては、「自分に都合の良い言い訳をするな」と言う事、悪く言えば「嘘を言うな」と言う事なんだろうと思うんですよね。
全体を通してみると、一審では被告に有利な判断がかなり多かった印象です。しかし、控訴審やその後の差し戻し審では、被告に厳しい判断が多いですね。
このあたり、一審の裁判員裁判でどんな審議がされたのか?ちょっと興味がありますね。
裁判記録でも読まないと、分からないかな。
私としては、1人死亡で罪状に殺人と「強」の字が一つ付いてますから、最高で無期懲役と考えると、最高刑となったわけで、妥当な判決だと思います。
ただ、もし、被告が素直に罪状を認めて反省の弁を述べていたら、「無期懲役」となったのだろうか?
求刑が無期懲役なので、少しでも減刑される要素があれば「無期懲役」には成らなかったかもしれませんね。
なので、この最高刑(無期懲役)は被告自身のこの事件に対する姿勢が呼び寄せた結果で、因果応報と言う事なのかなと思っています。
私は運命は信じてないのですが、こんな事を見ると、「運命と言うのはあるのかもしれない」と時々感じますね。
とは言え、被告側は控訴してますから、控訴審に注目しましょう。
参考リンク
愛媛県今治市女性ドライバー殺人事件
愛媛県今治市女性ドライバー殺人事件その3(差し戻し控訴審判決)
| 固定リンク
コメント
タイツ(ストッキング)で絞めたなら 被害者はスカートを穿いてたのかな? 運送業の現場仕事で? 深夜荷物の積み替えで?
事務員ではなさそうだし、深夜ふたりきりスカート姿で作業してたなら欲情する気持ちもわからなくもないが…普通は作業着やジーパンでしょ?
いずれにせよタイツを脱がしてたなら最後まで事に及んだ可能性は高いな
投稿: 鬼滅のメ子 | 2024/01/20 03:04