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2023/10/16

兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件その3(無罪確定)

一審判決を支持、控訴棄却、検察側上告断念の為、無罪確定です。

***控訴審初公判(23年05月12日)***
証人尋問
1)検察側の証人として出廷した医師は「精神疾患の圧倒的な影響下にはなかった」と証言。被告が捜査段階の取り調べで正常にやりとりし、犯行に対する”ためらい”の気持ちを供述していたことなどから、一定の判断力があったと述べたとのこと。

2)弁護側は、検察側の控訴棄却を求めた。弁護側証人として出廷した医師は、一審判決の精神疾患の評価は適正だと説明したとのこと。

***控訴審第2回公判(23年07月03日)***
1)遺族の意見陳述:殺害された女性の息子
「いつになったらこの悲しみから解放されるのか。行き先が不透明で生きた心地がしません。極刑を望みます」と訴えたとのこと。

別の報道では
法廷で「事件から6年、もうすぐ母親の7回忌を迎える。まさか、これほど(刑事裁判が)長くなるとは思わなかった。なぜ、母親は殺されなければならなかったのか。妄想に支配されていたことが、凶悪犯罪の免罪符になってはいけない。5人殺傷で無罪はむごい。極刑を望む」と述べたとのこと。

2)意見陳述:けがを負った女性被害者
陳述書は代理人弁護士が読み、「(被告の男性が、無罪を言い渡された)その日のうちに釈放され、どこに行ったのか、全く情報が入ってこなかった。自宅に戻ってくることは絶対にないといえるのだろうか、不安と恐怖が襲ってきた。被告には刑務所で静かに反省し、5人死傷という揺るぎない結果に向き合ってもらいたい」と訴えたとのこと。

3)検察側論告
男性の2回目の精神鑑定を担当した鑑定医の説明を踏まえ、「妄想への一定程度の批判力があった」と指摘した。事件前後の言動などから「違法性を認識できるなど、(行為結果を合理的に判断する)事理弁識能力や行動制御能力は限定的にあった」と述べたとのこと。

検察側は「(男性には)限定責任能力がある」とし、無罪判決の破棄を主張したとのこと。

4)弁護側弁論
検察側が訴えの根拠とする鑑定医の判断を「幻覚や妄想が犯行に及ぼした影響を何も検討していない」などとし「証言に信用性がない」と反論。「男性が(妄想などの)病的体験に支配されていたのは明らか。控訴はただちに棄却されるべき」と訴えたとのこと。

弁護側は「心神喪失状態だったとした判決に事実誤認はない」と控訴棄却を求めたとのこと。

***控訴審判決公判(23年09月25日)***
1)大阪高裁は1審判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。

2)判決理由
「犯行へのためらいとも解釈できる、『ほんまか』『信じるで』という発言も、“女性と結婚するための試練の内容が合っているかを確認するための発言”などと解釈することが不合理とは言えない」「妄想が屋根瓦のように積みあがる状態だったとすれば、発言の後に疑念が消え、妄想の内容を確信するに至ったと説明することもできる」「被害者を人ではないと考えていたとすれば、“殺人の禁止”という規範に直面していたと言えず、善悪の判断能力に疑いが生じる」などと指摘したとのこと。

「自分と女性以外が『哲学的ゾンビ』だと確信し、その妄想の圧倒的な影響下で犯行に及んだ疑いを払拭できない」と改めて結論づけ、控訴を棄却したとのこと。

***無罪確定(23年10月10日)***
検察側は最高裁に上告するかについては「判決内容を精査し適切に対応する」としていましたが、期限の10月10日までに、検察側は上告しなかったとのこと。

これにより、男性の無罪判決が確定した。

***鑑定入院命令(23年10月12日)***
神戸地方検察庁は男性について、心神喪失などを理由に実刑とならなかった人を治療に結び付ける「医療観察法」に基づき、精神状態などを調べる鑑定入院を11日に神戸地裁に申し立て、認められたとのこと。

「心神喪失」を理由に無罪が確定した男性について、裁判所は11日、鑑定入院の命令を出したとのこと。

こんなところですね。
裁判所の判断なので、判決には異論は無いのですが、誤解されている方もいるかもしれないので、ちょっとだけ補足すると。
医療観察法では、従来、医師だけの判断で社会復帰させていた面が改善されて、社会復帰(一般の精神保健福祉)には裁判所の判断が必要になります。

厚生労働省のこちらの図が分かりやすいですね。
医療観察法制度の概要について

このような事件は、数年に1度ぐらいは日本でも発生していて、突然、襲われるのでかなり自衛が難しい事件です。
その上、責任能力が無いので補償も難しいです。

唯一の自衛手段は常に周囲に気を配ると言うところでしょうか?
日常から逸脱しているような事に気付いたら、近づかない。距離を取ると言う事しか方法が無いかもしれないですね。

参考リンク
兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件その2(一審判決)

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