« 東京都立川市曙町派遣女性殺人事件その3(一審判決) | トップページ | 栃木県日光市バラバラ事件その3( I とOの一審判決) »

2024/01/03

東京都羽村市同居家族殺人事件その2(一審判決)

判決は懲役7年(求刑:懲役12年)です。

***初公判(23年01月24日)***
1)無職の女性被告は2021年、都内の自宅で本人に頼まれて47歳の息子を殺害した「嘱託殺人」の罪と、その後、保釈中に身元引受人を担っていた74歳の妹を殺害した2つの罪に問われている。

2)被告は息子の事件については起訴内容を認めた一方、妹の殺害については「殺してと言われたので」と述べ、息子の事件と同様、「嘱託殺人」にあたると主張した。

3)検察側は冒頭陳述で、妹が自殺願望を示したことはなく、「保釈中に身元引受人を殺したほかに類を見ない事件だ」と指摘しました。

別の報道では
検察側は冒頭陳述で、三男には「自殺願望があった」としたものの、「被告が妹から殺してと言われた事実はなかった」と主張した。

***第X回公判(23年01月30日)***
被告人質問で2人を殺害したことについて「とんでもないことをしてしまったと思っています」「申し訳ない気持ちでいっぱいです」などと述べた。

***論告求刑公判(23年02月03日)***
1)、検察側は妹について「自らの命を絶つことを望むほどに切迫した客観的事情は確認できず、被告に殺害を嘱託したというのはあまりにも不自然」と指摘したうえで、「保釈中に身元引受人である妹を殺害した類を見ない犯行だ」として懲役12年を求刑した。

2)弁護側は「妹さんの統合失調症が悪化し、転倒による骨折で身体が不自由になっていたため『苦しいから殺して』と頼まれて殺害した」として、執行猶予付きの判決を求めました。

***判決公判(23年02月13日)***
1)、東京地裁立川支部は、女に懲役7年の実刑判決を言い渡した。

2)東京地裁立川支部は妹が被告に対し「殺して」と発言した点について「殺害を依頼してまで死のうとする切迫したものではなかった」と判断した。

そのうえで、妹については嘱託殺人ではなく、殺人罪が成立するとして、被告に懲役7年の実刑判決を言い渡した。

東京地裁は「安易な判断で短期間に2人を殺害したのは、被告人が命の大切さを軽視していたからと言わざるを得ない」と指摘した。

別の報道では
「『殺して』などの発言をきっかけに、今後、体調が悪化した妹を一人にすることへの憂慮や、妹がつらい思いをしているのであれば殺害したほうが妹のためになると自分なりに考えた結果、犯行に及んだ」

裁判長は「高齢の妹の行く末を案じた心情も理解できる」としつつ、2人を殺害したのは「命の大切さを軽視していたから」で「次男に支援を求めるなどして殺害という選択を避けるべきだった」と戒めたとのと。

///補足///
公判中の証言ですが、どの時点での証言かは不明
被告人質問の情報(要約)おそらく、1月30日の証言
A)三男はひきこもりで通院や近所への買い物以外では外出する事はなく、自宅でゲームなどで過ごしていた。
三男は通販(アマゾン)で服やゲームソフトなどを購入するが、三男の障害年金の6万5000円では足りずに、被告夫婦の年金から(20万から30万ほど)補填する事を繰り返していた。
そんな中、被告の夫が死亡し、年金が減額される。以前から三男の金遣いについて注意していたが、再度注意した。事件の日にアマゾンから荷物が届き、再度注意した時に、三男が自殺未遂を起こし、三男の嘱託殺人へ至る。

B)妹殺害について
妹は以前から統合失調症を持っていたが、保釈後に妹と被告が同居を初めて1ヶ月後には妹の精神状態が不安定になっていた。通院している精神かで不眠を訴えるようになっていた。9月には妹の体調は急激に悪化していた。
妹の病院の送迎などをサポートしていた被告の次男によると

「8月下旬から家の中を徘徊するようになった」
「事件の4日前には、話しかけても答えが帰ってこず、目がうつろでしっかり歩けなかった。介護が必要だと思い地域の包括支援センターに連絡をした」

事件の二日前に自宅で転倒した妹は救急搬送されたが、入院せずに自宅に戻った。しかし、一人で歩くことはできなくなっていた。

事件当日に「殺して」と被告に依頼した。

公判以外の情報(近所の住民の談)
C)被告の実家は約40年前に引っ越してきて、高齢の父親と30代の妹(次女)と三女の三人暮らしだった
三女には障害があったとのこと。20年前に父親が死亡し、5年前に三女が死亡して、実家は妹(次女)の一人暮らしになった。

D)被告一家は30年ぐらい前に実家から車で10分ほどの一軒家に住み始めた。
家は4,5年前に建て替えられていた。長男と次男は独立していて、被告と夫、三男の三人で暮らしていた。
夫は大手メーカー勤務で経済的には恵まれていたとのこと。

こんなところですね。
三男は若い頃から糖尿病で大学に進学する事もなかったようです。インスリン治療で生活できのであれば、日常生活には問題なかったと思うのですが、進学や就職は難しかったのかな?
心中もそうですが、家族殺しの事件はこれまでのたくさんあるんですよね。保険金殺人など悪意によるものも中にはあるのですが、責任感から殺害してしまう事件も多いです。
この事件も、被告の責任感が原因かもしれませんね。
自分の死後、三男が一人で生活する事はできないと判断していて、その上で、残った、長男や次男に迷惑をかけたくないと考えたのかもしれません。
そこへ、偶然にも、第二の事件が重なってしまうわけですね。妹も高齢の上に統合失調症で、自分が三男殺害の罪で刑務所に行けば、面倒を見る人がいなくなり、長男、次男に迷惑がかかると思い込んでしまったのかもしれませんね。

この事件を防ぐにはと考えると、
あ)三男についてはもう、就職させて自立させる事がポイントだと思いますね。
三男の病状がわからないので、なんともいえない部分ではあるのですが、体をあまり動かさない事務作業系とか、最悪、在宅でできるような仕事を探すという事でもよかったと思いますが・・・
まー、問題は最初ですよね。新卒で就職ならよかったけど、さすがに30代になって職務経歴ゼロとなると、就職は難しかったかもしれないですが、20代の時はどうだったのだろう?
障害年金が出ていたという事なので、障害者枠での仕事は無かったのだろうか?

い)妹については結構難しいかもしれませんね。
健常者ならば、経済的な問題はあるけど、なんらかの施設を頼る事は可能だったかもしれない。
統合失調症の高齢者で受け入れてくれる病院があるのか?という問題があるかもしれません。
そして、いつも話題になる入院費の経済的な問題がついてきます。
なので、正攻法で考えると、福祉に詳しい専門家に相談するのが正解だったのかな?

ただ、少し視点を変えると、妹の病状が悪化したのは被告と同居を始めた時からのようにも見えるので、もし、同居しなかったら、妹はこれまで通りの生活ができたのかもしれないんですよね。
常識的に考えると、高齢の妹を一人暮らしさせるより、自分も高齢だが一緒に暮らした方が互いに助け合えると考えるのが普通だから、同居の選択は間違ってなかったとは思います。
ただ、同居開始1ヶ月程度で病状が悪化しているので、このあたり、医師に相談するなどしてもよかったかもしれないですよね。

いずれにせよ簡単に答えが出せない問題です。
まずは、一人で悩まずに誰かに相談するのが一番よい方法かもしれませんね。

参考リンク
東京都羽村市同居家族殺人事件その1(9月25日までの報道)

|

« 東京都立川市曙町派遣女性殺人事件その3(一審判決) | トップページ | 栃木県日光市バラバラ事件その3( I とOの一審判決) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 東京都立川市曙町派遣女性殺人事件その3(一審判決) | トップページ | 栃木県日光市バラバラ事件その3( I とOの一審判決) »