2024/08/16

和歌山県白浜町保険金殺人事件その3(二審判決)

控訴審判決は懲役19年とした一審判決を支持し、被告の控訴を棄却した。

***控訴審判決公判(24年3月4日)***
1)裁判長は、「胃の中に砂があったことは認められるが、一審の砂の量の認定には無理がある」とし、砂の量から他殺とした一審の認定は不合理だとした。

しかし、「被告は不倫発覚後、被害者の妻にやり直したいなどと説得していた際も不倫相手と暮らすなど、妻への説得が本心でないことは明らかで、保険金契約、検索履歴などから被害者を溺死に見せかけた保険金目的の殺害計画をうかがっていたことは明らか」と指摘した。

「死亡状況は計画に完全に符合していて、他殺以外の偶然に起きたこととは考えられない」として一審の懲役19年の有罪判決を支持し被告の控訴を棄却したとのこと。

別の報道では
大阪高裁は、「胃の中に砂があったことは認められるが、一審の砂の量の認定には無理がある。(多量の砂から他殺とした)認定は不合理」とした上で、「被告は不倫発覚後、被害者の妻にやり直したいなどと説得していた際も不倫相手と暮らすなど、妻への説得が本心でないことは明らか。

保険金契約、検索履歴などから被害者を溺死に見せかけて殺害しようとしていた計画を伺っていたことも明らか。死亡状況は計画に完全に符合していて、2人きりになった約20分という短時間で殺害計画と無関係に他殺以外の偶然に起きたこととは考えられない」として被告の控訴を棄却し、一審と同じ懲役19年の判決を言い渡したとのこと。

***証人尋問(日時不明)***
2審の大阪高裁では、3人の法医学者による証人尋問が行われ「胃の中の砂の存在」などについて審理されたとのこと。

詳細は不明ですが、その結果が判決に反映されていて
高裁では、1審の「多量の砂」を根拠とする殺害認定について、「砂が廃棄されて存在しない中、目撃した砂の量を認定するのには無理がある」と、量について否定した。

さらに、水難事故の専門家が主張した多量の砂を含む海水を飲み込むメカニズムについても「医学的知見に反し採用し得ない」と退けた。そして、「事故や自殺の可能性も否定できず、胃内にのみ相当量の砂が入ったのは不自然というだけで、殺人事件と判断した1審判決は不合理」と判断した。
(つまり、1審で有罪の決め手となった証拠を否定した。)

ざっくりとこんな感じです。
ASKAなりに要約すると
一審判決の決め手となった胃から出てきた「砂」の量は廃棄されていて認定するのは無理で、胃の中の相当量の砂についても不自然と言うだけで殺人の証拠とはならないと言う判断ですね。
一方で、ネットの検索履歴や多額の保険金契約、妻との離婚を約束した不倫相手と、妻との板挟み状態などの事件の背景から1審同様に「殺意をもって、海中で何らかの方法により被害者の体を押させつけて溺水させた」として被告による殺害を認定したと言うことですね。

この判決に批判もあるようだけど・・・私としては、過去には状況証拠の積み重ねで有罪となった事件もあったわけで、妥当な判決ではないかと思っています。
まー93年の日野OL不倫放火殺人事件でもそうですが、男の優柔不断な対応と言うのは、事件に直結しますね。

参考リンク
和歌山県白浜町保険金殺人事件(一審判決)

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2024/08/10

愛媛県今治市女性ドライバー殺人事件その3(差し戻し控訴審判決)

詳細の前にここまで経緯をまとめると
時系列
2018年
02月13日 遺体を発見。
02月14日 同僚の男性を緊急逮捕。
02月15日 殺人容疑で送検。
10月16日 一審初公判
11月13日 一審判決懲役19年
猥褻目的を認定せず。(強制猥褻致死ではなく、殺人と強制猥褻罪)
11月27日 検察と弁護側双方が控訴
2019年
12月    控訴審で一審判決を破棄して地裁に差し戻し
2020年
07月    上告審で上告を棄却、地裁への差し戻しが確定
2022年
03月10日 地裁差し戻し審判決、無期懲役
03月24日 被告側が控訴

そして今回の差し戻しの2審公判になります。

***差し戻し控訴審初公判(23年11月08日)***
1)弁護士が「わいせつ目的ではなかった可能性がある」などとして、量刑の不当を主張した。

2)検察側は、控訴の棄却を求めました。

***差し戻し控訴審判決公判(24年01月18日)***
1)裁判長は「被告の主張はいずれも理由がなく、松山地裁が強制わいせつ致死罪が成立すると認めたことに誤りはなく、無期懲役が相当である」などとして差し戻し審の判決を支持。被告の控訴を棄却した。

***続報***
24年02月01日 被告はこの判決を不服として最高裁に上告した。

こんなところですね。
上告しましたが、新たな情報がなければ、おそらく結果は変わらないと思われます。
なんというか、犯罪者なら誰でも、自分の罪を軽くしたいというのは、多少あると思うわけです。
ただ、その大小はやはり、事件にどの程度向き合って反省しているのか?というあたりが影響してくると思います。
いろいろと、不合理な言い訳をしても、そこに説得力は無いし、逆に印象を悪くしていると思うんですよね。

仕事とは言え、それに付き合う弁護人もお気の毒だなと思いますね。

上告審の結果を待ちましょう。

参考リンク
愛媛県今治市女性ドライバー殺人事件その2(差し戻し審判決)

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2024/08/09

新潟県新発田市女性強姦致死事件その4(別件二審無期懲役)

補足
2013年09月 燃えた車の中から24歳女性Bさんが遺体で発見
2013年11月 22歳女性Aさんへの強姦致死事件(刑が確定)
2014年01月 20歳女性Cさんが行方不明
2014年04月 Cさんの遺体が川で発見

こちらはCさんの事件の控訴審です。

控訴審判決で東京高裁はそれぞれの控訴を棄却し、1審判決を支持した。

***初公判(24年2月16日)***
1)検察側は一審は死刑を選択せず量刑は著しく不当」と主張した。

2)弁護側は事件性・犯人性を争い、無罪を主張した。

3)弁護側、検察側ともに提出した証拠書類を取り調べるよう求めたが、裁判所はいずれも却下した。

4)検察側は出席した遺族に意見を求めましたが、裁判所はその申し出を認めなかった。

5)裁判は即日結審に。判決は5月以降に言い渡される見込みとのこと。

***判決公判(24年5月17日)***
1)東京高裁はそれぞれの控訴を棄却し、1審判決を支持した。

2)裁判長は「女性が各被害を受けたのとほぼ同じ時間帯に被告人が女性の車のハンドルを触れたことになり、被告人が犯人と認められる」などとして事件性やDNA鑑定について1審の判決に事実誤認はないと指摘。

量刑については「刑事責任は非常に重く、遺族が死刑を望む気持ちは厳粛に受け止めなければならないとした」一方で「計画性があったとは認められない」などとして1審の無期懲役を支持したとのこと。

3)遺族のコメント
「無期懲役の判断が維持されたことは到底納得できない。被告には極刑が相応という気持ちは今も変わっていない」とのコメントを発表したとのこと。

***続報***
1)5月までに被告側は上告した。
2)死刑を求刑していた検察側は期限までに上告しなかった。東京高検は、「上告理由を見いだせなかった」とコメントを出している。

こんなところですね。
この事件が他の事件と一緒に起訴されていたら、量刑は変わっていたかもしれませんね。
今のところ、2013年の22歳Aさんが強姦致死、2014年の20歳Cさんも強姦致死だと推測します。
これで、死亡が二人で罪状に強の字もあるので、死刑が出ても不思議では無いですよね。おまけCさんの事件は完全に否認していて、反省も無いと言う事なので、死刑判決が出てもおかしくは無い事件だと思います。
今回は、二つの事件が別々に裁判になった事で、罪状に強の字がついても、死亡が一人なので、無期懲役と言う判断が、おそらく妥当な量刑になったのだろうと思います。

なので、できるなら、こんなケースでは最初の事件の起訴を遅らせても2件を一つの公判で審理した方が死刑判決は出やすかったんじゃないかな?

亡くなった女性のご冥福をお祈りします。

参考リンク
新潟県新発田市女性強姦致死事件その3(別件一審無期懲役)

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2024/08/07

東京都足立区ツイッター殺人未遂事件(21年の事件です)

2021年11月8日、ツイッターに夫の殺害を依頼する投稿をして実行役に襲わせたとして、警視庁捜査1課は東京都足立区南花畑4、パート従業員、女性容疑者(44)を殺人未遂と住居侵入容疑で逮捕する事件が起きている。容疑者は「事件には関わっていない」と容疑を否認しているとのこと。

逮捕容疑は2021年8月7日午前2時半ごろ、自宅アパートに住所・職業不詳の男性容疑者(22)ら3容疑者を招き入れ、就寝中だった会社員の40代の夫の左胸などを刃物で刺して殺害しようとしたとしているとのこと。夫は全治約1カ月の重傷を負った。3容疑者は同年10月23日に同容疑で逮捕され、「(女性容疑者から)報酬をもらう約束をしていたが、支払われていない」などと供述しているとのこと。

同課などによると、女性容疑者は事件の数週間前に、ツイッターに「夫を殺害してほしい」という趣旨のメッセージを書き込んだとのこと。実行役の3容疑者と面識はなかったが、夫の襲撃を依頼。女性容疑者は、あらかじめ玄関の鍵を開けておくなどの準備をしていたとみられるとのこと。事件当時、女性容疑者は在宅していた。夫は「夫婦関係が悪かった」と話しているとのこと。女性容疑者は借金があったとのこと。

刺された夫は抵抗し、一命を取り留めたものの、全治およそ1カ月の重傷を負ったとのこと。

逮捕前、女性容疑者は、警視庁に「ガタガタと音がして、夫が見に行って、私は娘がいたので、そうしたら男が逃げていった」と説明していたとのこと。

しかしその後、女性容疑者と逮捕された2人の男に、SNS上の接点が浮上したとのこと。
ツイッターに応じたのは、2人の容疑者。

犯行時、残りの1人の容疑者は運転を担当していて、警視庁の調べに対し、「待っておけと言われ、待っていた」と話しているとのこと。

その後の調べによると、実行犯の2人は、風俗のスカウトの仕事仲間で知り合いだったとのこと。
運転担当は、実行犯のうちの1人が誘ったとみられ、仕事の内容を把握していなかったとのこと。

その後、容疑者2人の供述とスマホの解析から、妻である女性容疑者の関与が浮上したとのこと。

実行犯の男ら「女性容疑者にツイッターを通じて殺害を依頼された。報酬のお金をもらえるはずだった」

また、被害男性は、「妻には1,000万円を超える借金がある、妻とは夫婦仲が良くない、子どもの面倒を見ない、などと言われていた」などと話しているとのこと。

警視庁は付近の防犯カメラ映像などから3人を特定し、10月23日に同容疑で逮捕。
事件当時、女性容疑者と長女(9)が室内にいたとのこと。

女性容疑者は、ツイッターに「高額報酬」と書き込み、殺害を依頼したとみられていて、当初、容疑を否認していたが、その後の調べに、「夫が娘の面倒を見ないので、痛い目を見てもらいたいと思った。夫に仕返しをしようと思った」と容疑を認めているとのこと。

実行犯はK受刑者(22)、S被告(23)の2人。K受刑者は今年7月14日、殺人未遂の罪で懲役8年の判決が言い渡されている。

時系列
2021年
07月    女性容疑者がツイッターに夫殺害依頼の投稿をする。
08月07日 事件発生
10月23日 男性3人が逮捕される。
11月08日 女性容疑者が逮捕される。
2022年
07月14日 K男性被告、夫殺害未遂の罪で懲役8年の実刑判決

***女性被告の一審公判(22年10月)***
1)被告人は「私は主人の殺人依頼などしていません」と否認した。

2)検察側主張
去年2月、内緒にしていた1000万円以上の借金を夫に知られてしまった女性被告は、夫から厳しく金銭を管理された。夫の厳しい態度を逆恨みした女性被告はネットで「復讐代行屋」などと検索し、50万円で夫の殺害を依頼した。依頼を受けた20代の男2人のうち1人がサバイバルナイフで夫の左胸などを刺したが、夫の抵抗を受けて殺害は失敗した。

別の報道では
検察側の冒頭陳述などによると、被告は独身時代から遊興費などがかさんで300万円ほどの借金があった。闇金融にも手を出し、結婚後には1千万円超に膨らんでいたとのこと。
家計のやりくりは被告が行っていたため夫に知られることはなかったが、事件の半年前、被告が娘を連れて家出したのがきっかけで発覚。以来、夫が代わって厳しく金銭管理を行うようになった。

仕事をしていた被告の給料はほぼ返済に回され、手元には月1万~2万円が残る程度。このころから、インターネットで「殺人依頼」などと検索するようになったとのこと。

3)弁護側主張
弁護側も、女性被告が借金をしたことは認めた。
借金が夫に知られた後、女性被告のもとに、大量の出前が届いた。闇金からの嫌がらせだったとのこと。女性被告は自殺を考え、「検出されない毒」などと検索したが、自殺は諦めたとのこと。

その後、女性被告は「なんでも屋」という存在を知り、ツイッター上で「復讐代行」というアカウントにダイレクトメッセージを送ったとのこと。
相手は、一定期間が過ぎるとメッセージが自動的に消去されるアプリ「テレグラム」でやりとりするよう指示した。
女性被告は相手に夫の不満などを漏らしたとのこと。
すると2週間ほど後、突然男2人が夫を襲ったとのこと。

弁護側は、「『復讐代行屋』とやり取りはしたが、復讐目的ではなかった。連絡相手が誤解して殺人計画を立てたかもしれない」と主張した。

***証人尋問(K受刑者)***
スカウトの仕事をしていたK受刑者はコロナ禍で金に困り、ツイッターで「#お金に困っています」と投稿すると、あるアカウントから「恨み晴らし代行」の仕事を紹介された。身元不明のそのアカウントが仲介して、去年7月中旬ごろに連絡を取り始めたのが、女性被告だったと証言した。

Q:依頼の内容は?
A:「自分の旦那を殺してほしい」という内容です。

Q:依頼の理由は?
A:自分の娘に対する言葉の暴力がひどい、見ていられないから。

Q:報酬は?
A:、50万円の報酬を提示された

Q:女性被告との連絡頻度は?
A:「ほぼ毎日ぐらいです」

Q:犯行現場(家)の状況を聞いたか?
A:「ベランダ側に面して寝室があると言われました」

***被告人質問***
検察側が証拠として女性被告の携帯電話の履歴を提出した。去年2月から「検出されない毒」「死ぬカビ」「殺人依頼 下請け」「殺し屋 探し方」「復讐代行屋」「抹殺」「裏稼業」「殺し屋」という言葉が並んでいた

なぜこのような言葉を検索したのか。女性被告は、「保険金を家族に残すために自分を殺してもらいたかった」と主張したとのこと。

Q:復讐屋と言う言葉を含むアカウントにダイレクトメッセージを送っているが、何のために送った?
A:「プロフィールに『詐欺被害解決します』と書いていたので」
「闇金(業者)の嫌がらせをどうにかしたかったです」
「闇金(業者)に嫌がらせを受けている。家庭の事情や愚痴を話しました。」
殺人依頼はしていないと主張した。

***論告求刑公判***
1)検察側は「K受刑者は刑が確定して服役中で、女性被告に責任を押し付けるメリットがありません。自分に不利なことも素直に話して有罪判決を受けています。K受刑者の証言は十分に信用できます」と主張した。
そのうえで「計画的な犯行の主犯的立場」だとして女性被告に懲役11年を求刑したとのこと。

2)弁護側は「女性被告は殺人依頼をしたことはありません。K受刑者が誤解して犯行したとみられます。検察が証拠とするK受刑者の供述は信用できません」と主張したとのこと。

3)最終意見陳述?
「私は、殺人依頼などしていません。お金を渡したり受け取ったりしていません。あちこちに個人情報を流したことを後悔しています。反省しています。いろんなことに主人を巻き込んでたくさんごめんねと伝えたいです」と話したとのこと。

***判決公判(22年10月31日)***
1)判決は懲役10年
「主犯格」と認定される。「主犯格として共犯者より重い責任を負うべき」であり、自らの借金によって自由に使えるお金が制限されたことに不満を募らせ、犯行に及んだことについて「あまりに身勝手で短絡的」として、懲役10年の判決を言い渡した。

2)裁判長は、「判決が確定しているというのであるから、K受刑者が女性被告の事件への関与についてあえて虚偽の供述をする動機や利益はない」「K受刑者の供述は十分に信用できる」と述べた。

3)公判で弁護側は、殺害依頼の検索について「自分を殺してもらうためだった」などと主張したが、判決はこうした点を「不自然、不合理」と切り捨て、検索は夫を殺害するためのものだったと認定したとのこと。

検被害者の夫も出廷。「なんでこんなことをしたのか、信じられない」とうつむきがちに話し、離婚の意向を口にしたとのこと。

***補足情報***
どの時点の情報かわからない報道
察側は、被告のスマートフォンには、夫が襲撃された当日の午後に「シングルマザー」「20万円愛人契約」などと、ネットで検索した履歴が残っていたことを指摘。計画性の高さや、良心の呵責が見られない点も追及したとのこと。

被害者の夫も出廷。「なんでこんなことをしたのか、信じられない」と話し、離婚の意向を口にしたとのこと。

***S被告の一審公判(23年2月)***
交流サイト(SNS)を通じて「夫を殺して」と依頼され、実行役になり殺害しようとしたとして、殺人未遂罪に問われた男性被告(23)に対する裁判員裁判の判決で東京地裁は13日、「犯罪の証明がない」として無罪(求刑懲役10年)を言い渡した。

***S被告の二審公判(23年10月31日)***
東京高裁は31日、1審東京地裁の無罪判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。裁判長は共犯者との共謀を否定し「被告が実行行為を担ったとは認められない」と述べた。

***女性被告の控訴審(23年5月)***
6月2日に判決公判の予定なのですが、判決の報道が見つかりません。

こんなところですね。
他の事件の公判でもそうなのですが、言い訳が嘘となると、「反省してないよね」と言う事になるので、有罪になりたくないから、言い訳をするのはわかるけど、それが、荒唐無稽な物となると、かえって罪を重くする事になってしまうので、まー言い訳の内容は良く考えた方が良いでしょうね。

今回、主犯と認定されてますが、もし、公判で罪を認めて反省していたら、2,3割は割り引いてくれたかもしれませんね。
その場合でも懲役7年なので、懲役10年とさほど違いが無いと言うのもあるかもしれませんね。

しかし・・・ちょっと短絡的過ぎるかな?と思いますね。
夫は妻の1千万に及ぶ借金の返済の為に、妻の収入を充てているわけですね。まーこれは普通に考えて正当な手段だと思うわけです。
これが、住宅ローンとか、夫婦で話し合って納得の上でした借金であれば、夫も返済に協力するでしょうが、そうでは無いようですからね。
こういう反応になるのは仕方が無いところだと思います。
むしろ、この話を聞いて、離婚しない夫の方が良い人だと思うぐらいです。
夫にすれば、最悪の場合、自分が返済すると考えていたので離婚しなかったともとれます。(真意は本人に聞かないとわかりませんが)
そこを考える事ができれば、この事件は起こさなかったかもしれないですよね。
離婚していれば、おそらくは子供の親権は夫になり、女性被告は家族を失い、手に残るのは一人では返済できない借金だけですよね。

もしかすると、夫を殺害する事で、生命保険金や犯罪被害者給付金などの収入を返済に充てる予定だったのかもしれませんが・・・

他の事件も同じだと思いますが、追い詰められた時、冷静に考える事ができれば、回避できる事件も多いと思うんですよね。
ここで、周囲に相談できる人がいれば、この家族の未来は変わっていたかもしれません。

唯一被告が許せないのは、事件現場に9歳の娘と一緒にいた事ですね。
もし、犯行が成功すれば、娘は目の前で父親が殺されるところを目撃してしまう事になっていました。
被告としたら、目撃者として用意したのかもしれないけど、人の親としてどうなの?と思う部分です。
この点も含めて、正常な判断力が無かったのかもしれませんけどね。

最後にこの事件を防ごうと考えると、まずは借金をしないと言う事になりますね。
借金自体が悪いと言うよりは、その目的と借金相手ですね。
おそらくは銀行はもちろん、消費者金融なども相手にされなくなって、最後にヤミ金に手を出したのでしょうが、そこへたどり着く前に手を打つべきですね。
最近ではホストクラブで客の女性に借金させて風俗を斡旋するなど悪人がゴロゴロいますが、昔からある手口ですよね。

話が飛びましたけど、「不要な借金をしない」「弱みになるような借金をしない」と言うのが自衛の第一歩でしょうね。

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2024/08/05

神奈川県横浜市大口病院連続殺人事件その9(二審判決刑確定)

横浜市の旧大口病院で2016年、点滴に消毒液を混入して入院患者3人を殺害したなどとして、殺人罪などに問われた元看護師の女性被告(37)の控訴審判決が6月19日、東京高裁であった。
判決は、女性被告を無期懲役とした一審・横浜地裁の裁判員裁判の判決を支持し、検察側、被告側双方の控訴を棄却したとのこと。

検察側は、被告の犯行は「無差別殺人」や「連続殺人」に該当すると主張。過去に3人が死亡した殺人事件で死刑が回避されたケースは、心神耗弱が認定されたものや無理心中で、今回は回避する理由はないとした。
弁護側は、1審を覆せば「裁判員裁判の否定となる」と主張したとのこと。

高裁は、1審と同様に完全責任能力を認め、「死刑の選択は十分に考えられる」と言及。しかし、被告が、死亡した患者の家族からどなられるなどしたことでうつ状態になり、不安軽減のために犯行に至った過程を踏まえ、「被告の努力ではいかんともしがたい事情が影響したとの1審の評価は首肯できる」と述べたとのこと。

その上で、「裁判員裁判で慎重な評議がなされ、真にやむを得ないとの判断に至ったのでなければ、死刑を科すことは許されない」と結論付けたとのこと。

別の報道では
裁判長は判決理由で、検察側の量刑不当などの主張について「本件は、恨みや不満の発散などの動機から他人の生命を奪うこと自体を積極的に望んで行った犯行などとは、やや異なる側面があった」と指摘。「看護師の仕事を離れた場合には再犯のおそれが高いとはいえない」とした上で、「更生可能性が認められる」とした一審判決を支持したとのこと。

遺族のコメント
「判決では犯人の更生可能性や罪と向き合わせるという言葉が何度もありましたが、それは一体誰のためになるのか、何のための更生なのか、遺族の気持ちは考えられていないのではないかと感じました。 仕事や体調に悩みを抱えることは誰にでもあることで、そのことが死刑を回避する理由になるとは考えられません。 今回の判決によって、裁判の場で反省の言葉を述べさえすれば、死刑を免れることができるかのように受け取られてしまうのではないかと感じました」とコメントしたとのこと。

その後
東京高検は7月3日、一審の無期懲役を支持した東京高裁判決に対して、上告を断念すると発表した。被告側も上告しない方針を明らかにし、これにより被告の無期懲役刑が確定するとのこと。

こんなところですね。
事件から10年でやっと刑が確定ですね。
事件の原因には本人の特性が影響していたようですが、自分に向かない仕事を無理して続けるのは止めた方が良いという事なんでしょうね。

ここで問題になるのは、今の仕事が自分に向かないと気づいたとして、ではどうするの?って事でしょうね。
普通に考えれば、自分に向いている異業種への転職や、職種の変更というところだと思いますが・・・

事件当時被告は29歳ぐらいかな。年齢的にはまだ若手と呼ばれるぐらいなのかな?
当時の報道を見ると、看護学校を卒業後に、就職した病院では救急に配属される可能性があったので、15年に転職してますね。
なので、転職する事はそれほど嫌な事ではなかったんでしょう。

だけど、看護学校に入り、努力して看護師になったのだとすれば、それを手放す事はできなかったのかもしれませんね。
私にしても、何年も積み重ねた経験値をゼロにして異業種転職というのは、よほど思い切らないと決断できないと思います。

とはいえ、その執着が場合によっては「うつ病」などを呼び込んでしまう事になるので、仕事を選ぶ最初の段階で、「この仕事は自分に向いているのか?」を良く考えないといけないという事なんですよね。

そうすると、看護学校に入学前の段階、多分、高校生の段階で将来の仕事を良く考えておかないといけないという事なので、高校生になったら本人の適性の情報を本人に渡せるような社会環境が必要なのかもしれません。

とはいえ、夢や希望、憧れなどから仕事を選びたい人もいるでしょうし、その一方で自分に向いた仕事で安定した人生にしたいという人もいるでしょうから、どちらが良いか?は最終的に本人が選ばないといけない事なんでしょうね。

最後に一審の裁判員裁判で死刑判決が出ても、高裁判決で死刑が回避されるし、今度は、一審の裁判員裁判で死刑でないからといって、高裁が死刑を回避するという、一審の裁判員裁判が都合良く使われているような気がしてしまうのは、私だけでしょうか?

亡くなった方のご冥福をお祈りします。

参考リンク
神奈川県横浜市大口病院連続殺人事件その8(一審判決)

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2024/01/04

栃木県日光市バラバラ事件その3( I とOの一審判決)

最初に登場人物
A)同じ容疑で東京都大田区生まれ、住所不定、無職の男 I (75) 懲役1年(求刑:懲役1年6ヶ月)
B)宇都宮市、無職の男 G (55) どうも不起訴と思われる
C)東京都足立区、代表社員の男 N (64) 公判中
D)死体遺棄の疑いで同市、自称アルバイト従業員の男 O (43)懲役2年6ヶ月執行猶予5年(求刑:懲役2年6ヶ月)
 
まずは続報です。
23年08月10日報道
1)8月9日、主犯格とみられる住所不定の無職、I 被告(75)と、宇都宮市の自称アルバイト従業員、O被告(43)の2人が死体損壊などの罪で起訴された。
 
23年08月30日報道
1)宇都宮地方検察庁は8月29日、切断された死体を日光市の山林に遺棄したなどとして、死体遺棄などの罪で東京・足立区の会社役員のN(64)を起訴しました。
 
起訴状などによりますと、被告はほかの男らと共謀し、2020年に切断された死体が収納されたスーツケースなどを日光市内の空き家などに隠してグラインダーで死体の一部を切り取るなどしたとされている。
 
***I と Oの初公判(23年10月11日)***
1) 切断された死体を日光市の山林に遺棄したなどとして死体遺棄などの罪に問われた住所不定・無職のI(75)と宇都宮市の無職のO(44)の初公判が11日、宇都宮地方裁判所で開かれ、2人は起訴内容を認めた。
 
起訴状によると、2人は共謀して2020年の2月から8月中旬ごろ、知人から処分を依頼された死体を空き家に隠し、電動工具で一部を切り取るなどしたとされている。
 
***Nの初公判(23年10月25日)***
1)死体遺棄などの罪に問われている会社役員の男(64)の初公判が25日、宇都宮地方裁判所で開かれ、男は「全く違う」などと無罪を主張した。
 
25日の初公判でN被告は、起訴された内容について「I 被告やO被告とは死体遺棄と死体損壊について話したことはない」などと答え無罪を主張した。
 
2)検察側は冒頭陳述で、N被告は知人のI 被告に「死体はバラバラの状態でミイラ化しているので焼却できる」などと話して、遺体を預けたうえI 被告に報酬として50万円を渡したと指摘した。
 
検察側は冒頭陳述で、男は面識のあった東京都大田区生まれ、住所不定、無職男(75)=同罪で公判中=に、「死体を1体処理すれば50万円を支払うと持ちかけた」などと説明。都内のコンテナで切断遺体の入ったスーツケースやバッグなどを引き渡したとして、共謀が成立すると指摘したとのこと。
 
3)弁護側は、「共謀した事実はない」などと無罪を主張した。
 
***I の論告求刑公判(23年10月25日)***
1)宇都宮地裁で死体遺棄と死体損壊罪に問われた東京都大田区生まれ、住所不定、無職のI (75)の論告求刑公判が開かれた。
 
2)検察側は「態様は悪質で、果たした役割も重要」として懲役1年6月を求刑した。
 
3)弁護側は共犯者を巻き込んだことを反省しているなどとして寛大な判決を求めたとのこと。
 
***I の判決公判(23年11月09日)***
1)宇都宮地方裁判所は9日、懲役1年の判決を言い渡した。
 
2)判決によりますとI 被告は別の被告らと共謀して2020年の2月から8月中旬ごろ、遺体を空き家に隠して一部を切り取り、翌年の21年12月中旬ごろ、遺体の入ったスーツケースを日光市のゴルフ場跡地の山林に投棄したということです。遺体の身元は分かっていませんが40歳から70歳くらいの男性で日本を含む東アジア人の可能性があるということ。
 
3)判決で宇都宮地裁は「犯行は死亡した人の尊厳を踏みにじる悪質な行為で、50万円の報酬欲しさから加担し刑事責任は重い」と指摘した。その一方で「被告が事件について話したことで解明が進んだ」などとして懲役1年6カ月の求刑に対して懲役1年の判決を言い渡したとのこと。
 
***O の判決公判(23年12月01日)***
1)宇都宮地方裁判所は1日、執行猶予付きの判決を言い渡した。
 
2)判決によりますとO被告は、別の被告らと共謀して2021年12月中旬ごろ遺体の入ったスーツケースなどを日光市の山林に投棄したとのこと。
 
3)1日の判決で裁判官は「共犯者から遺体処理の依頼を受け断り切れなかった」などと指摘した。
 
そして、主導的な立場ではなかったものの一連の犯行は悪質だと非難し、懲役2年6カ月の求刑に対し懲役2年6カ月、執行猶予5年の判決を言い渡したとのこと。
 
こんなところですね。
Nが公判中なのですが、次に記事を書けるのがいつになるのかわからないので、一旦ここで記事にしておきます。
とりあえず、遺体の遺棄の実行犯の I (75)とO(43)が起訴内容を認めてそれぞれ判決が出ています。
懲役1年と懲役2年6ヶ月で執行猶予5年ですね。
 
事件の経緯としては、I(75)がN(64)に仕事を紹介してもらおうとして、この遺体遺棄の仕事を持ちかけられた。
I (75)はG(55)と遺体を解体して空き家に隠していたが、最後にO(44)がゴルフ場に遺体を遺棄したという流れですね。
そして、別件でI (75)が逮捕されて、取調中にこちらの遺棄事件について自白したという事なのかな?
 
ちょっと気になったのは求刑です。遺体を損壊したI (75)は求刑が懲役1年6ヶ月で、遺体をゴルフ場に遺棄したO(44)は求刑が懲役2年6ヶ月で損壊よりも遺棄の方が罪が重くなっています。
実際の判決はI(75)が実刑でO(44)が執行猶予がついたのは実際の罪の重さを反映されたのだと思うのですが、求刑が違うのはなぜなんだろうか?と、ちょっと疑問なところかな。
損壊、遺棄の罪はそれぞれ刑法190条で懲役3年以下となっていると思うのですが・・・
 
それから、G(55)が不起訴になったのだとしたら、遺体だと知らずに解体していたという可能性があるかもしれませんね。
 
残るはN(64)の公判ですが、遺棄の実行犯のI (75)と O(44)が起訴内容を認めているので、否認しても難しいかもしれませんね。
 
続報を待ちましょう。
 

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2024/01/03

東京都羽村市同居家族殺人事件その2(一審判決)

判決は懲役7年(求刑:懲役12年)です。

***初公判(23年01月24日)***
1)無職の女性被告は2021年、都内の自宅で本人に頼まれて47歳の息子を殺害した「嘱託殺人」の罪と、その後、保釈中に身元引受人を担っていた74歳の妹を殺害した2つの罪に問われている。

2)被告は息子の事件については起訴内容を認めた一方、妹の殺害については「殺してと言われたので」と述べ、息子の事件と同様、「嘱託殺人」にあたると主張した。

3)検察側は冒頭陳述で、妹が自殺願望を示したことはなく、「保釈中に身元引受人を殺したほかに類を見ない事件だ」と指摘しました。

別の報道では
検察側は冒頭陳述で、三男には「自殺願望があった」としたものの、「被告が妹から殺してと言われた事実はなかった」と主張した。

***第X回公判(23年01月30日)***
被告人質問で2人を殺害したことについて「とんでもないことをしてしまったと思っています」「申し訳ない気持ちでいっぱいです」などと述べた。

***論告求刑公判(23年02月03日)***
1)、検察側は妹について「自らの命を絶つことを望むほどに切迫した客観的事情は確認できず、被告に殺害を嘱託したというのはあまりにも不自然」と指摘したうえで、「保釈中に身元引受人である妹を殺害した類を見ない犯行だ」として懲役12年を求刑した。

2)弁護側は「妹さんの統合失調症が悪化し、転倒による骨折で身体が不自由になっていたため『苦しいから殺して』と頼まれて殺害した」として、執行猶予付きの判決を求めました。

***判決公判(23年02月13日)***
1)、東京地裁立川支部は、女に懲役7年の実刑判決を言い渡した。

2)東京地裁立川支部は妹が被告に対し「殺して」と発言した点について「殺害を依頼してまで死のうとする切迫したものではなかった」と判断した。

そのうえで、妹については嘱託殺人ではなく、殺人罪が成立するとして、被告に懲役7年の実刑判決を言い渡した。

東京地裁は「安易な判断で短期間に2人を殺害したのは、被告人が命の大切さを軽視していたからと言わざるを得ない」と指摘した。

別の報道では
「『殺して』などの発言をきっかけに、今後、体調が悪化した妹を一人にすることへの憂慮や、妹がつらい思いをしているのであれば殺害したほうが妹のためになると自分なりに考えた結果、犯行に及んだ」

裁判長は「高齢の妹の行く末を案じた心情も理解できる」としつつ、2人を殺害したのは「命の大切さを軽視していたから」で「次男に支援を求めるなどして殺害という選択を避けるべきだった」と戒めたとのと。

///補足///
公判中の証言ですが、どの時点での証言かは不明
被告人質問の情報(要約)おそらく、1月30日の証言
A)三男はひきこもりで通院や近所への買い物以外では外出する事はなく、自宅でゲームなどで過ごしていた。
三男は通販(アマゾン)で服やゲームソフトなどを購入するが、三男の障害年金の6万5000円では足りずに、被告夫婦の年金から(20万から30万ほど)補填する事を繰り返していた。
そんな中、被告の夫が死亡し、年金が減額される。以前から三男の金遣いについて注意していたが、再度注意した。事件の日にアマゾンから荷物が届き、再度注意した時に、三男が自殺未遂を起こし、三男の嘱託殺人へ至る。

B)妹殺害について
妹は以前から統合失調症を持っていたが、保釈後に妹と被告が同居を初めて1ヶ月後には妹の精神状態が不安定になっていた。通院している精神かで不眠を訴えるようになっていた。9月には妹の体調は急激に悪化していた。
妹の病院の送迎などをサポートしていた被告の次男によると

「8月下旬から家の中を徘徊するようになった」
「事件の4日前には、話しかけても答えが帰ってこず、目がうつろでしっかり歩けなかった。介護が必要だと思い地域の包括支援センターに連絡をした」

事件の二日前に自宅で転倒した妹は救急搬送されたが、入院せずに自宅に戻った。しかし、一人で歩くことはできなくなっていた。

事件当日に「殺して」と被告に依頼した。

公判以外の情報(近所の住民の談)
C)被告の実家は約40年前に引っ越してきて、高齢の父親と30代の妹(次女)と三女の三人暮らしだった
三女には障害があったとのこと。20年前に父親が死亡し、5年前に三女が死亡して、実家は妹(次女)の一人暮らしになった。

D)被告一家は30年ぐらい前に実家から車で10分ほどの一軒家に住み始めた。
家は4,5年前に建て替えられていた。長男と次男は独立していて、被告と夫、三男の三人で暮らしていた。
夫は大手メーカー勤務で経済的には恵まれていたとのこと。

こんなところですね。
三男は若い頃から糖尿病で大学に進学する事もなかったようです。インスリン治療で生活できのであれば、日常生活には問題なかったと思うのですが、進学や就職は難しかったのかな?
心中もそうですが、家族殺しの事件はこれまでのたくさんあるんですよね。保険金殺人など悪意によるものも中にはあるのですが、責任感から殺害してしまう事件も多いです。
この事件も、被告の責任感が原因かもしれませんね。
自分の死後、三男が一人で生活する事はできないと判断していて、その上で、残った、長男や次男に迷惑をかけたくないと考えたのかもしれません。
そこへ、偶然にも、第二の事件が重なってしまうわけですね。妹も高齢の上に統合失調症で、自分が三男殺害の罪で刑務所に行けば、面倒を見る人がいなくなり、長男、次男に迷惑がかかると思い込んでしまったのかもしれませんね。

この事件を防ぐにはと考えると、
あ)三男についてはもう、就職させて自立させる事がポイントだと思いますね。
三男の病状がわからないので、なんともいえない部分ではあるのですが、体をあまり動かさない事務作業系とか、最悪、在宅でできるような仕事を探すという事でもよかったと思いますが・・・
まー、問題は最初ですよね。新卒で就職ならよかったけど、さすがに30代になって職務経歴ゼロとなると、就職は難しかったかもしれないですが、20代の時はどうだったのだろう?
障害年金が出ていたという事なので、障害者枠での仕事は無かったのだろうか?

い)妹については結構難しいかもしれませんね。
健常者ならば、経済的な問題はあるけど、なんらかの施設を頼る事は可能だったかもしれない。
統合失調症の高齢者で受け入れてくれる病院があるのか?という問題があるかもしれません。
そして、いつも話題になる入院費の経済的な問題がついてきます。
なので、正攻法で考えると、福祉に詳しい専門家に相談するのが正解だったのかな?

ただ、少し視点を変えると、妹の病状が悪化したのは被告と同居を始めた時からのようにも見えるので、もし、同居しなかったら、妹はこれまで通りの生活ができたのかもしれないんですよね。
常識的に考えると、高齢の妹を一人暮らしさせるより、自分も高齢だが一緒に暮らした方が互いに助け合えると考えるのが普通だから、同居の選択は間違ってなかったとは思います。
ただ、同居開始1ヶ月程度で病状が悪化しているので、このあたり、医師に相談するなどしてもよかったかもしれないですよね。

いずれにせよ簡単に答えが出せない問題です。
まずは、一人で悩まずに誰かに相談するのが一番よい方法かもしれませんね。

参考リンク
東京都羽村市同居家族殺人事件その1(9月25日までの報道)

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2024/01/01

東京都立川市曙町派遣女性殺人事件その3(一審判決)

まずは続報です。
21年11月12日報道
東京家裁立川支部は11月11日の審判で、少年について刑事処分が相当だとして検察官に送致する決定をした。
 
 「一定の計画性及び非常に強固な殺意に基づく極めて執拗(しつよう)かつ残忍な犯行」「少年の性格や環境などをみても、刑事処分以外の措置を相当と認める事情は見いだせない」と指摘した。
 
21年11月19日報道
東京地検立川支部は11月19日、元少年を殺人などの罪で起訴した。
 
***初公判(23年11月07日)***
1)元少年の弁護側は、心神喪失で刑事責任能力がなかったとして無罪を主張した。
弁護側は「被告の自閉症スペクトラム障害が、犯行に圧倒的に影響している。責任能力はなく無罪だ」と強調。訴訟能力についても争う考えを示したとのこと。
 
2)検察側は冒頭陳述で「好意を抱いていた女性を殺害した上で、自殺しようと考えた」と指摘。被告の自閉症スペクトラム障害の影響は限定的で、完全責任能力があったと指摘した。
 
3)元少年は起訴内容について認否を答えず、不規則な発言を繰り返したため、検察側の冒頭陳述の途中で裁判長に退廷を命じられたとのこと。
 
4)起訴状によると、21年6月1日、当時19歳だった元少年は立川市曙町のホテル室内で、女性の腹などを包丁で多数回刺して殺害し、廊下で風俗店従業員の男性の腹を刺すなどして全治3カ月の傷害を負わせたとされる。
 
5)証人尋問(事件で重傷を負った風俗店店員の男性)
首を刺された際に防御した右手の甲にもけがを負い、今も指が動かないと説明し、「厳しい処罰をしてほしい」と述べたとのこと。
 
6)承認尋問(現場急行した刑事)
現場のホテルに到着すると、5階の廊下には血が飛び散っており、506号室の前には男性が倒れているのを発見した。呼びかけに応じないほど意識が混濁していた。506号室のドアには血のついた包丁が刺さっていた。ドアを解錠し中に入ると、ベッドと壁の隙間に上半身裸で全身多数の刺し傷があり、仰向けで倒れている女性を発見しました。意識はなかったとのこと。
 
6)被告の発言の内容(一部抜粋)
罪状認否では
「ウルトラのゼロ……ウルトラの……って人にすごい似てるんですけど、バイオハザード、なんか、ハリウッド、なんか……トランスフォーマーの関係で……今ちょっと悩んでて、みんな死んでる世界で南海トラフ地震に……それがいずれ目覚めて……仮面ライダーキバの……」
 
断続的にこの手の発言が続き、検察側の冒頭陳述の途中で裁判長から退廷が命じられた。
 
最終意見陳述での発言
「私はオーディン…心神喪失状態…南海トラフ…3.11の被害者の~…東日本大震災、とんでもない…間違いなく、被害者が…アベンジャーズ、見てください」
裁判長に途中で発言を制止された。
 
判決文の読み上げ中にも同様の不規則発言を繰り返し、裁判長に制止されている。
 
7)事件までの経緯(検察側冒頭陳述)
被告は中学を卒業後、普通科高校に進学したが、高校2年のときに自主退学。その後通信制の高校を卒業した。事件当時は無職で、両親や姉と暮らしていたとのこと。
 
検察側冒頭陳述によれば、被告は就職しても短期間で退職してしまうことから、「人生うまくいかない」と思い、過去に風俗でサービスを受けた被害者女性に対して好意を持っていたため、被害者女性を殺害して自殺しようと思い立ったとのこと。
 
事件前日(2021年05月31日)
風俗店に予約の電話で被害者女性を指名し、翌6月1日の15時からの予約を取った。
 
当日(2021年06月01日)
当日には風俗店事務所を訪れ、リクエストシートに希望のサービスを記入し、支払いを済ませた。
 
その後、ネットオークションで購入していた包丁と、被害者女性を盗撮するためのiPodを持参し、ホテルに入室する。
 
その後、部屋に来た被害者女性との行為の最中、被害者女性が被告による盗撮に気づき、店舗に電話でこれを報告すると、被告は包丁で被害者女性の腹部を多数回刺した。
 
その後、電話を受けた店舗の従業員がホテルの部屋まで出向き、ドアをノックすると、被告が部屋のドアを開け「プレイ中ですよ」と言い、ドアを閉めようとしたというが、従業員がドアの隙間に足を入れ、これを阻止した。すると被告はその従業員の腹部を包丁で刺し、後退りする従業員の首元や手も傷つけた。
 
被告は現場から逃亡
 
その後、被害者女性は搬送された病院で死亡し、入院した従業員も全治3か月の怪我を負った。
 
///ASKAの補足///
実はこれまでの報道では、被害者女性と被告は面識が無いとされていました。
ところが、実は、過去に接点があったということですね。
ちなみに、被告が過去に被害者女性と接点を持ったのは16歳の時のようで、このあたりは家裁の審判での証言にあるようです。
他には予約時のやりとりにもこのあたりの情報がありますね。
 
翌日(23年06月02日)
羽村市を原付バイクで走行中、捜査員に発見され逮捕された。iPodとロープを所持していたとのこと。
 
8)被告の病状(弁護側冒頭陳述)
被告は小学校の頃から担任教師に「クラスメイトとトラブルを起こす。課題についていくことができない」と指摘を受けていたが、両親はこれを放置してきたとのこと。
 
高校生のころにはトラブルが目立つようになり、複数の子に夢精の話をして周囲を戸惑わせたという。コンビニでバイトを始めたが、「スタッフとコミュニケーションが成立せず、短期間でやめる」こともあったのだそうだ。ところが両親がこれらを感知しても、サポートすることはなかったとのこと。
 
「父は『被告は子供っぽいだけ。時間が経てばなんとかなる』と言い、母はある宗教に熱心で活動が忙しく、被告と関わりを持つことがなかった。そのために(被告の)障害が見落とされ、サポートを受けられず、苦手なことを学ぶ機会が奪われてきた」とのこと。
 
事件直前のゴールデンウィーク、2月から勤め始めた会社をすぐに辞めていたことが父に発覚し、「働かざる者食うべからず」などと、激しい叱責を受ける。被告は父の言葉を間に受け、「自分は食う価値がない、生きる価値がない」と思うようになったとのこと。そして最終的に、「人生はタイムリープでやり直せる、との確信を得ていき、事件に至った」と弁護人は主張したとのこと。
 
***論告求刑公判(23年11月30日)***
1)遺族の意見陳述(被害者女性の父親)
 
「大切な娘の命を返してください!家族の幸せを返してください!」
「被告の両親にも言いたいことがあります!」
「両親にも事件について重大な責任があると確信しています。事件から2年半の間、謝罪の言葉はおろか手紙すらありません。ご苦労があったようだが、それと謝罪とは別問題です。残酷極まりない犯罪を犯した我が子を、他人事と思わず、逃げずに向き合い、最善を尽くして、最大限責任を果たして欲しい。被告だけでなく両親にも真剣に向き合って欲しい。そうでないと報われない」
 
2)検察側は懲役25年を求刑した。
3)弁護側は「心神喪失状態だった」と無罪を主張した。
 
***判決公判(23年12月14日)***
1)東京地裁立川支部は14日、懲役23年(求刑懲役25年)の判決を言い渡した。
 
2)判決理由で裁判長は、犯行時や直後の言動などから、元少年には完全責任能力があったと指摘。犯行は、生きづらさから自殺願望を抱き、女性を巻き込もうとしたものだとして「非常に残忍で悪質。動機も身勝手」と述べたとのこと。
 
別の報道では
裁判長は「ASDである被告人が、両親を含む周囲から適切な支援を受けられないまま育ち、障害の特性が社会不適応を招いて生きづらさを感じさせていたという点には同情の余地はあり、被告人を非難することはできない」とした。しかし、「ASDの特性が殺人及び殺人未遂の各犯行に直結したとは認められない」として、正当化はされず、身勝手なものとしたとのこと。
 
***補足情報***
どの公判での証言か不明な情報です。
1)証人尋問(被告人が予約をした時のやりとり)
 
男性従業員「11時半ごろ、被告の男から、6月1日にAさんを指名する予約の電話を受けた」
 
男性従業員「男は『6月1日、Aさんを指名したい』と言いました。『午後3時から空いています』と返事をすると、『午後3時から80分コースで』と、男からコースを指定してきました。その後、以前、(被害者女性と)遊んだことがあるのかを聞きました。もし2回目の指名なら、店のシステム上、『本指名』となりますから」
 
男性従業員「(被告は)『あります』と言っていました。そのため、『当日は、1時間前に確認の電話をください』と言いました。男は『わかりました』と答えていました」とのこと
 
2)証人尋問(精神鑑定をした医師)
不規則発言について
質問には概ね適切に対応しており、その時点では殺人等の罪に問われている状況を理解している、としたとのこと。
 
精神鑑定をした医師(上記の医師と同一かは不明)によると、「被告人はASDのほかにも、拘禁反応に罹患している」としながらも、統合失調症の発症は否定した。また弁護人の接見に応じないことなどは、拘禁反応による拒絶だった、とした。そのためこの点についても、弁護人の主張を退けた。(弁護人は。また、同手続きの記述に出頭を拒んだり、弁護人や実父による接見も拒否するなど、統合失調症を発症した疑いがあり、公判手続きを停止すべきと主張していた)
 
///ASKAの感想///
公判中の意味不明な不規則発言は、てっきり詐病かとおもったのですが、拘禁反応だったんですね。
 
こんなところですね。
ただ一度の接客で無理心中の相手に選ばれてしまうというのは、なんとも理不尽でお気の毒な話です。
被告人は高校時代にはすでに、病状について両親にも気づかれていたようですが、放置されて治療を受けることは無かったようです。
自分の病状というか特性について理解することなく、生きづらさから、自暴自棄となって拡大自殺を選択してしまうわけですよね。
 
この事件を防ぐにはと考えた場合、いつものことですが、被害者側で事件を予見することはできないと思います。
一度目の接客でトラブルがあったわけでもなく、その後もストーカー行為などがあったわけでも無いので、事件を予見することはできないですよね。
 
なので、防止するには被告側での対応しかないと思うわけです。
でこの事件の原因は何か?と考えると
A)被告自身の自閉症スペクトラム障害(直接事件の原因かというとそうでもないのが難しいところ)
B)両親が被告の症状に対して無関心で治療受けさせなかったこと。
C)被告が助けを求める場所や人がなかったか、あっても、それを頼る事ができなかったこと。
 
A)については生まれ持ったものなので、回避することは無理ですね。
問題はB)だと思います。
被告自身は学力というか知能には問題がなさそうです。なので、自分の特性を理解して治療を受けていれば、致命的に追い詰められるようなことにはならなかったのではないか?
と思うんですよね。
 
日本では精神疾患などについての偏見が強くて、世間体を気にして通院などを避けていたのかもしれませんが、現代ではうつ病は、一生に一度は罹患すると言われているぐらいで、「心の風邪」といわれているぐらいだし、気軽に受診してよいと思います。
 
C)については、有名なのが「命の電話」ですよね。他にもいろいろとあると思います。
ただ、この事件では、この手の福祉に被告はたどり着いていないんですよね。
 
被告は小学時代から、トラブルを起こしていて、結局、信頼できる人間関係を家族以外と作ることができなかったんでしょうね。
その結果、世の中には「命の電話」のようなものある事は知っていたが、家族以外を頼る事はできなかったのかもしれませんね。
 
これも結局、治療を受けていなかった結果なのかもしれません。
 
事件が起きてしまったら、犯人を罰する事はできても、被害を無かった事にはできません。
防げる事件なら防ぎたいですね。
 
理不尽に命を奪われた女性のご冥福をお祈りします。
 

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2023/10/16

兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件その3(無罪確定)

一審判決を支持、控訴棄却、検察側上告断念の為、無罪確定です。

***控訴審初公判(23年05月12日)***
証人尋問
1)検察側の証人として出廷した医師は「精神疾患の圧倒的な影響下にはなかった」と証言。被告が捜査段階の取り調べで正常にやりとりし、犯行に対する”ためらい”の気持ちを供述していたことなどから、一定の判断力があったと述べたとのこと。

2)弁護側は、検察側の控訴棄却を求めた。弁護側証人として出廷した医師は、一審判決の精神疾患の評価は適正だと説明したとのこと。

***控訴審第2回公判(23年07月03日)***
1)遺族の意見陳述:殺害された女性の息子
「いつになったらこの悲しみから解放されるのか。行き先が不透明で生きた心地がしません。極刑を望みます」と訴えたとのこと。

別の報道では
法廷で「事件から6年、もうすぐ母親の7回忌を迎える。まさか、これほど(刑事裁判が)長くなるとは思わなかった。なぜ、母親は殺されなければならなかったのか。妄想に支配されていたことが、凶悪犯罪の免罪符になってはいけない。5人殺傷で無罪はむごい。極刑を望む」と述べたとのこと。

2)意見陳述:けがを負った女性被害者
陳述書は代理人弁護士が読み、「(被告の男性が、無罪を言い渡された)その日のうちに釈放され、どこに行ったのか、全く情報が入ってこなかった。自宅に戻ってくることは絶対にないといえるのだろうか、不安と恐怖が襲ってきた。被告には刑務所で静かに反省し、5人死傷という揺るぎない結果に向き合ってもらいたい」と訴えたとのこと。

3)検察側論告
男性の2回目の精神鑑定を担当した鑑定医の説明を踏まえ、「妄想への一定程度の批判力があった」と指摘した。事件前後の言動などから「違法性を認識できるなど、(行為結果を合理的に判断する)事理弁識能力や行動制御能力は限定的にあった」と述べたとのこと。

検察側は「(男性には)限定責任能力がある」とし、無罪判決の破棄を主張したとのこと。

4)弁護側弁論
検察側が訴えの根拠とする鑑定医の判断を「幻覚や妄想が犯行に及ぼした影響を何も検討していない」などとし「証言に信用性がない」と反論。「男性が(妄想などの)病的体験に支配されていたのは明らか。控訴はただちに棄却されるべき」と訴えたとのこと。

弁護側は「心神喪失状態だったとした判決に事実誤認はない」と控訴棄却を求めたとのこと。

***控訴審判決公判(23年09月25日)***
1)大阪高裁は1審判決を支持し、検察側の控訴を棄却した。

2)判決理由
「犯行へのためらいとも解釈できる、『ほんまか』『信じるで』という発言も、“女性と結婚するための試練の内容が合っているかを確認するための発言”などと解釈することが不合理とは言えない」「妄想が屋根瓦のように積みあがる状態だったとすれば、発言の後に疑念が消え、妄想の内容を確信するに至ったと説明することもできる」「被害者を人ではないと考えていたとすれば、“殺人の禁止”という規範に直面していたと言えず、善悪の判断能力に疑いが生じる」などと指摘したとのこと。

「自分と女性以外が『哲学的ゾンビ』だと確信し、その妄想の圧倒的な影響下で犯行に及んだ疑いを払拭できない」と改めて結論づけ、控訴を棄却したとのこと。

***無罪確定(23年10月10日)***
検察側は最高裁に上告するかについては「判決内容を精査し適切に対応する」としていましたが、期限の10月10日までに、検察側は上告しなかったとのこと。

これにより、男性の無罪判決が確定した。

***鑑定入院命令(23年10月12日)***
神戸地方検察庁は男性について、心神喪失などを理由に実刑とならなかった人を治療に結び付ける「医療観察法」に基づき、精神状態などを調べる鑑定入院を11日に神戸地裁に申し立て、認められたとのこと。

「心神喪失」を理由に無罪が確定した男性について、裁判所は11日、鑑定入院の命令を出したとのこと。

こんなところですね。
裁判所の判断なので、判決には異論は無いのですが、誤解されている方もいるかもしれないので、ちょっとだけ補足すると。
医療観察法では、従来、医師だけの判断で社会復帰させていた面が改善されて、社会復帰(一般の精神保健福祉)には裁判所の判断が必要になります。

厚生労働省のこちらの図が分かりやすいですね。
医療観察法制度の概要について

このような事件は、数年に1度ぐらいは日本でも発生していて、突然、襲われるのでかなり自衛が難しい事件です。
その上、責任能力が無いので補償も難しいです。

唯一の自衛手段は常に周囲に気を配ると言うところでしょうか?
日常から逸脱しているような事に気付いたら、近づかない。距離を取ると言う事しか方法が無いかもしれないですね。

参考リンク
兵庫県神戸市北区有野町5人殺傷事件その2(一審判決)

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2023/09/30

京王線殺人未遂放火事件その2(一審判決確定)

一審判決は懲役23年(求刑・懲役25年)その後、控訴しなかった為、刑は確定。

まずは続報です。

***再逮捕(21年11月22日報道)***
東京都調布市を走行していた京王線特急の乗客刺傷事件で、警視庁調布署捜査本部は、乗客の男性(72)に対する殺人未遂容疑で逮捕した住所不定、無職、男性容疑者(25)を、別の乗客らに対する殺人未遂と現住建造物等放火容疑で22日に再逮捕したとのこと。

捜査関係者によると、容疑者は10月31日午後8時ごろ、調布駅を出発した京王線特急内で、都内の会社員の女性(60)ら近くにいた乗客15人に対し、約3リットルのライターオイルをまき、ライターを投げ込んで火をつけ、殺害しようとした疑いが持たれている。床の一部が燃えたものの、乗客らは別の車両に逃げ込み、全員無事だった。車両内に防犯カメラはなく、ツイッターの投稿画像から被害人数を特定したとのこと。

当初はハロウィーンでにぎわう渋谷での大量殺人を計画していたが、8月に発生した小田急線刺傷事件を契機に、電車内での犯行に方針を切り替えたとのこと。

捜査本部はライター用オイルの燃焼実験も実施し、1リットル程度でも車両自体が燃えることを確認。5号車にいた客を含め計45人の乗客に事情を聴くなどして、詳細な状況を明らかにしたとのこと。

「死刑になるための有効かつ効率的な手段として多くの人を惨殺する計画を実行した」と供述している。

容疑者は調べに「効率的に多くの人を惨殺する計画を実行したが、誰も死なず、非常に残念な気持ちで落ち込んでいる」などと身勝手な供述を繰り返しているとのこと。

容疑者は直前まで都内のホテルに宿泊していた。捜査関係者によると、「ホテルの浴室でペットボトルに入れた水をまき、練習した」と供述しているとのこと。電車に持ち込んだリュックサックには、ほかにもオイルの入ったペットボトルがあった。使わなかった理由を「火柱が上がり、煙がすごかった。自分はここでは死なないので引き返した」と話しているとのこと。

東京地検立川支部は、乗客男性(72)の胸をナイフで刺した殺人未遂容疑を処分保留とした。今後、再逮捕容疑と合わせて刑事処分を決めるとみられるとのこと。

***鑑定留置開始(21年12月06日報道)***
捜査関係者によりますと、6日から容疑者の犯行時の精神状態について刑事責任能力の有無を調べる鑑定留置の手続きが始まった。鑑定留置の期間は3か月ほどとみられるとのこと。

***初公判(23年06月26日)***
1)罪状認否で被告は3号車で男性を刺した殺人未遂罪などについては認めたとのこと。
5号車での行為に殺人未遂罪が成立するかどうかについては「わかりません」と話したとのこと。

2)冒頭陳述(検察、弁護側の情報の要約)
被告は高校卒業後の平成27年4月、介護施設に就職。
介護施設での仕事は長続きせず、アルバイトを転々とした後、コールセンターで働くように。契約社員となり、令和2年3月には、中学時代からの交際相手と同棲生活を始めたとのこと。
だが、同年11月、交際相手から別れを告げられた。この日はくしくも被告の誕生日だった。翌3年5月にはコールセンターでの顧客対応のトラブルで自宅待機を命じられたほか、同年6月には、元交際相手が結婚したことを知ったとのこと。

これらの経緯で、「自分には存在価値がない。死にたい」と考えるようになったとのこと。同じ月には勤務先から部署異動を命じられており、検察側は、「大量殺人をして死刑になりたい」との考えを抱くようになったと指摘したとのこと。

同月、勤務先に退職を申し出た被告は、その翌日にはハロウィン当日に事件を決行するため、インターネットでナイフを1本購入。各地のホテルを転々としていた。
そして3年8月、小田急線の車内で男が刺傷事件を起こしたとの報道を知る。

同様の事件を起こそうと考えた被告は、ライターやオイル、殺虫剤スプレーなどを次々に購入。別の容器にオイルを入れ替えるなどし、準備を進めた。

検察側は証拠調べで、被告のスマートフォンに残されていた、犯行計画に関するメモも読み上げた。「逮捕されて死刑になる」「殺害予定人数10人以上」「所要時間は2時間」。

被告が憧れていたという「ジョーカー」にふんするために購入したスーツやコート、革靴などの合計金額は、24万円に上ったとのこと。

(冒頭陳述にはもっと沢山の情報が出ていますが多すぎて書けません。興味のある方は別途、公判の報道を参照願います。)

犯行動機について
検察側は被告が「元交際相手が結婚したことを知り、死にたいと考えた」「死刑になるために無差別大量殺人を計画した」などと指摘した。

弁護側は
「被告は中学3年の頃から付き合っていた交際相手と婚約をして同棲していたが、誕生日に別れを告げられた」
「その後、女性が別の男性と結婚したことを知った。仕事のトラブルもあり、『死にたい』と考えるようになった」
自分のこれまでの人生に意味があったのか、考えるようになり。死にたいと考えた。
過去2回自殺に失敗しているため、確実に死ぬため、死刑になろうと考えたと主張した。

3)証人尋問:事件当日に被害者救助のため現場へ駆け付けた男性消防士
3号車に人の姿が見えた。被告にナイフで刺されたとされる被害者の70代男性だった。衣服は血で染まっていたとのこと。
男性が優先席に横たわっていて、警察官が2人で心臓マッサージをしていた。
別の隊員が警察官と心臓マッサージを代わり、消防士は被害者の男性の脈拍や意識を確認した。意識も、呼吸も、脈拍も、いずれも確認できなかったとのこと。

心肺停止の状態と判断した。(意識、呼吸、脈拍のいずれもなかった)
消防士は、別の隊員に心臓マッサージの継続を指示。近くにいる隊員にAED(自動体外式除細動器)を持ってこさせ、男性に装着したが、AEDからは「電気ショックの必要性はない」とするメッセージが流れたとのこと。

男性の心臓が、全く動いていなかったから、メッセージが流れたと判断した。

消防士は、少しでも楽にしようと、男性のベルトを緩めた。すると、男性がズボンを直そうとする動きをした。声をかけると、頷くような仕草も。救急車に収容するころには、隊員と会話ができるようになっていたとのこと。

***第2回公判(23年06月27日)***
証人尋問:胸を刺されて重傷を負い、一時は心肺停止状態となった70代の男性

男性は事件のあった電車に乗車した記憶はあるものの、刺されたことは「覚えていない」と説明。
「(被告)がにらみつけてきたことだけは覚えています」と話した。

搬送先の病院で看護師から「助かってよかった」と声をかけられ、「すごい手術をしたのだと思った」と述べたとのこと。事件後は、つえなしでの歩行や文字を書くことが困難になったとのこと。

別の報道では
今も手足に不自由が残るとのこと。長く続けた警備員の仕事も辞めたとのこと。「(右手が)よく震えます」「ご飯の時に箸を持つことができない」「自分の名前の最初の文字も書けないです」と述べたとのこと。

検察側から被告に対する感情を問われると「なんで、そんなことをしたのかと思う」と話し、「謝罪も全然ない。謝ることもできない人間は、それなりの罰を受けるべきだ」と語ったとのこと。

別の報道では
男性は「なんでそんなことをするのか。責任を取れないんだったら、やるなと言いたい」と述べたとのこと。

更に別の報道では
「謝りもできない人間はそれなりの罪を負ってください。罪を負っている人に失礼です」(発言ママ)

***第3回公判(23年06月28日***
証人尋問:事件の際にライターオイルをかけられた乗客(4人)
「液体が額にかかり、石油のにおいがした。京都アニメーションの事件と同じだと思い、怖かった」と証言したとのこと。。

また、証言した別の女性は「首筋に液体をかけられ、犯人がライターを持っていて、焼き殺されるかもしれないと思った」と述べたとのこと。

別の報道では
別の乗客は、頭の上からライター用オイルをかけられ、点火したライターを向けられたと証言。この乗客は事件後、心療内科に通院することになり、昨年7月から今月まで休職を余儀なくされたという。「人に迷惑をかけないよう、(被告には)外に出てきてほしくない」と訴えたとのこと。

***第8回公判(23年07月18日)***
1)被告人質問
被告は「男性にスプレーをふきかけたら、振り払うような形で自分の腕とぶつかり、反撃されたと思いナイフを突き出した」と当時の状況を説明したとのこと。

その上で、「連結部分に10人ぐらい人がいた。なぜ逃げないのか分からず観察していたが、放火することにした」と述べたとのこと。

被告は、犯行直前の心境について、「殺人という行為に緊張していた。乗客を先頭に追い込むつもりで後ろの車両に乗った」と述べ、「殺人への興味はもともとなく、あくまで目的は自分が死ぬことで、死刑になるための手段をとった」と話したとのこと。

また、死にたいと考えた理由について、およそ9年間交際した女性が別れて半年で結婚したと知り、「自分の存在価値が分からなくなり、生きていく価値がないと思った」と述べたとのこと。

別の報道では
「会社でのミス、彼女との出来事で自殺願望を抱きましたが、自分で死ぬことはできないだろうなと。他人に殺してもらう方法として死刑にいき付きました」

「元々、殺したいという気持ちはない」とし、「死刑になることが最終目的になっていた」と話したとのこと。

ジョーカーについて
検察官から、被害者のことを考えなかったのかと問われ、「そういうものを考えないためのジョーカーだった」と説明。「(ジョーカーは)人の命、殺人行為を軽く見ている。自分もそのぐらいにならないとできないだろうと思った」と述べた。

別の報道では
「人の命を軽くみている。殺人について何とも思っていないようなキャラクターに見えた。それくらいの感覚を持たないと殺人をおかすことはできない」と述べたとのこと。

場所について
「1人でも多く殺すうえで、人込みが思い浮かんだ。それが渋谷のハロウィーンだった」
しかし、およそ2か月前に小田急線で起きた無差別刺傷事件の影響を受け、走行中の電車内を狙う犯行に切り替えたとのこと。

2)証人尋問:被告の更生を支援しているNPO法人の女性担当者
Q:被告の問題点は?
A:障害とまではいかないですが、属性に問題があり、一緒にいてくれる人がいれば(事件を起こさなかったのではないか)と思いました。

Q:被告の印象(弁護側)
A:すごく真面目な方という印象でした。表情も暗くなく、穏やかな顔をしていて、普通の青年という印象でした。

Q:被告の印象的なエピソードは?(検察側)
A:「事件に対して申し訳なく思っている」という話が最初にありました。また、(事件前に婚約を解消したとされる)彼女への殺意はなく、迷惑をかけたいという気持ちもなかったと聞いたと。

***第X回公判(23年07月20日)***
証人尋問:被告の精神鑑定を担当した医師
医師は、起訴前に合計6回にわたり面接。被告の母親にも電話で聴取したほか、被告や元交際相手の供述調書などを基に鑑定を行ったとのこと。

医師は、被告には「追い詰められた状況を死によって回避しようと考える傾向がある」と指摘。事件の数カ月前に元交際相手が結婚したことを知り、勤務先でのトラブルから部署異動を言い渡されるという2つのショックが重なり、死刑になるために犯行に及んだとしたとのこと。

被告は自身について「自分には自慢できること、人前に立てる能力がない」と説明。元交際相手は調書の中で被告の性格を「見えっ張り」「人から良く思われたい」と評価していたとのこと。

また、被告は幼いころから仮面ライダーなどヒーローになりきる遊びをしており、心理検査でも「ヒーロー願望」を示す結果が出たとのこと。

犯行時、米人気コミック「バットマン」の悪役「ジョーカー」に仮装していたが、医師は「大きな事件を起こすため、悪役になりきった」と分析したとのこと。

***論告求刑公判(23年07月21日)***
1)検察側は「死刑になるために大量殺人を企てた。人命を軽視した極めて身勝手な経緯・動機は強い非難に値する」として、懲役25年を求刑した。

2)検察側は論告で、同年8月に小田急線で発生した刺傷事件を参考にした計画的な犯行だと指摘。元交際相手の結婚を知ったことなどから自殺を決意し、「以前自殺に失敗したために死刑になろうと無関係の乗客を巻き込む犯行に及んだことは、極めて身勝手で短絡的だ」と述べたとのこと。

3)最終意見陳述
「昨日までの被告人質問で話したため、改めてこの場でお話しすることはありません」と話したとのこと。

***判決公判(23年07月31日)***
1)被告を懲役23年(求刑・懲役25年)とする実刑判決を言い渡した。

2)動機について「自暴自棄になって自殺を決意し、2人以上殺害して死刑になろうと考えた」と認めた。逃げ場がない電車内で点火されれば、多数の死傷者が出る可能性があったとし、「凶悪で卑劣というほかない」と非難したとのこと。

公判で検察側は、被告が放火によって付近にいたとされる12人を殺害しようとしたと主張していたが、判決は、死亡する具体的な危険性がある場所にいたかどうかが不明だとして、うち2人については殺人未遂罪の成立を否定したとのこと。

3)判決の最後は
「相当長期にわたる矯正教育期間を経た後、社会内で更生することに期待する余地も残されている」

4)裁判長は最後に、「苦しくても生きて、被害者らにきちんと対応し、償うことを忘れないでください」と諭すと、被告は「はい」と述べたとのこと。

別の報道では
「被害者との関係がこれで終わったわけではない」「苦しくても生きて、償いをすることを忘れないでください」

別の報道では
最後に被告に対し「長い服役になる。この間に事件、被害者、社会復帰したことを考えて」といい「苦しくても生きてね。償うことを忘れないで下さい」と語りかけた。被告は「はい」と小さく返事をしたとのこと。

***刑が確定(23年08月17日)***
東京地裁立川支部は17日までに、懲役23年の判決を確定した。7月31日の判決に対し、検察側と弁護側の双方が8月14日までの期限に控訴しなかった。

こんなところですね。
身勝手な理由で間接自殺を狙った八つ当たり的な犯行と言うことななのかな?
被害者側から見れば、同情できる部分も無いし到底ゆるされない犯行でしょうね。

ただ、犯行に至る経緯や被告の生い立ち、性格などは今後の事件を防ぐと言う点で参考になる部分はありそうです。
1)直接の原因は、中学から交際して婚約後に同性していた女性との別れと、その女性が別の男性と結婚した事による絶望感と喪失感。それに加えて、職場でのトラブル。
2)そして、被告自身は過去に2度の自殺未遂があったがどれも不発で、自殺はできないと思っていた。
3)その結果、自殺ができないので、大量殺人を実行して、死刑になる間接自殺を計画する。
4)人混みでの大量殺人を考えた時、渋谷のハロウィーンを考えたが、事件の3ヶ月前に起きた、小田急線の事件を参考に電車内での犯行に切り替えた。
5)車内で犯行の邪魔になりそうな人物Aさんを最初に刺した後は、逃げ惑う乗客に対して、ライターオイルを掛けて、車両に放火したが、ナイフで襲う事はしなかった。
6)被告は自己評価は低いが承認欲求や自己顕示欲は強かった。そして真面目な性格。

このぐらいかな。
1)については、個々の問題はよくある失恋や婚約破棄と言う話と、職場でのトラブルが同じタイミングで起きたと言う事でしょうね。
皆さんも経験があると思いますが、仕事のトラブルや家庭のトラブルなど、トラブルが2つ以上重なると、かなりしんどいですよね。
その点はある程度同情できる部分ではあるのですが、通常はなんとか、同僚や友人に相談したり、グチったりして、ストレスをコントロールできる部分だと思います。
なので、普通にグチれる友人がいたら、この部分は事件の原因にならなかったかもしれませんね。
その意味では、リアルでの友人関係が作れないなら、ネットで友人を作ると言うのも、ある意味で有効だと思います。ただ、諸刃の剣かもしれませんが。

2)過去の2度の自殺未遂もそれなりの原因があったのでしょうが・・・この時に、もう少しケアできていたら。ネガティブな方向への転落を防ぐ事ができたのではないだろうか?

3)1)と2)が合体して最終的にこの判断になっているので、ここまで来ると、ちょっと防止する方法は無さそうですね。

4)大量殺人が目的なので大量の人混みがターゲットになるのは合理的な判断だと思います。
人が集まる場所は犯罪のターゲットになる場所と言う事は地味に覚えておいた方が良いですね。

5)ここはちょっと微妙なところです。
本当に大量殺人を起こすなら、確実な方法をとるはずなので、放火の部分が弱いですよね。なので、もしかすると本人は、大きな騒ぎを起こすだけで、実は満足してしまっていたのかもしれないな?と感じています。
本当に死刑になるなら、数字が必要ですよね。

6)性格の問題なので、特になにかあるわけでは無いでしょうが、自己評価が気になるのは、他の誰かと自分を比べてしまうような場合だと思うんですよね。
なので、なんて言うか、生活が満たされていたら、そんな事は気にならないと思うのですが、結局は落ち込んでネガティブな感情の時に、隠れていた物が出てきてしまうのかもしれませんね。
自己顕示欲や承認欲求は誰でも、ある程度持っていると思います。特に若年者なら普通の事じゃないかと思いますね。
真面目なのも悪くはないし、むしろ仕事や勉強の点では評価される部分なんですが、逆に融通が利かないとか、物事に固執して柔軟な思考ができないと言う方向になってしまったのかな?

私としては1)のストレスのケア、2)の過去の自殺未遂のケアと6)の性格の改善と言うか改良でこの事件は防げたのではないかな?と考えています。
1)と6)で友人は重要になりますよね。なので、一緒に遊べる友人や一緒に飲みに行ける同僚などは大切にした方が良さそうですね。

参考リンク
京王線殺人未遂放火事件その1(逮捕送検まで)

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