2025/10/15

埼玉県ふじみ野市立てこもり医師殺人事件その3(控訴審判決まで)

***初公判(23年10月26日)***
1)起訴状などによりますと、ふじみ野市の無職、男性被告(67)は、去年1月27日、母親の在宅医療を担当していた医師のSさん(44)らを自宅に呼び出した。
そして、散弾銃を発砲してSさんを殺害し、一緒にいた40代の理学療法士の男性に大けがをさせたなどとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われている。
 
2)被告は初公判で「殺意は全くありません。大けがをさせようと右足を狙ったが、銃をしっかり構えない中で引き金を引いたため、予想外の所に当たってしまった」などと述べ、殺意を否認したとのこと。
 
3)察は冒頭陳述で「被告は、母親への治療が不十分で不適切と思い込んだ。母親の死に絶望し、自殺の道連れにすることを決意した」と述べ、殺意があったと指摘したとのこと。
 
4)弁護側は「殺意は全くなかった。母の蘇生を断ったS医師に、家族の最後の望みも叶えてくれないという憤りを感じた」と述べた。
そのうえで、「Sさんの右足のひざを狙って撃ったが、銃身が上にずれ胸に弾を命中させてしまった」として、殺意は無く、Sさんについては、傷害致死と銃刀法違反に留まると主張したとのこと。
 
5)証拠調べ
被告の自宅から押収された3枚の遺書が提出され、検察官が「誤診と失態。母はSドクターに殺された」「母が亡くなり何の希望もない。あの世で母と暮らしたい」などと内容を読み上げたとのこと。
 
***第2回公判(23年10月30日)***
1)検察側が、事件当時の様子が記録された計74分間の音声データを再生した。データは、被告が録音した発砲前後の約25分のものと、立てこもり中の電話のやりとりを県警が約46分に編集したものなど。
 
2)発砲前の音声
母親の弔問に訪れた医師Sさん=当時(44)=ら7人に「胸が動いた気がした」と人工呼吸を要求した。「これ、先生が好きなエアガン」と話し、仏具のりんのような音が鳴った後、「蘇生を期待していたけど、あり得ない」と発言。直後に2発の発砲音が響いたとのこと。
「うわあー」「110番」「救急車呼んでください」との叫び声が上がり、「宏さん駄目だって」「やめろ」と制止する声の後、3発目の銃声が鳴ったとのこと。
 
3)立てこもり中の音声
捜査員に対する電話で、被告が「どうせ死ぬなら、今まで許せなかったやつらを道連れにしようとした」「腹に一物ある人たち全部を撃つつもりだったが、目的を達成できなかった」などと伝えていたとのこと。
 
別の報道では
「母のベッドの横で死ぬのが目的。生きていても仕方ない」「警察に捕まるわけにはいかない。死刑で死ねるかもしれないがそれまで留置場で生きているのがつらい」などと話す様子や、「完全にひとりぼっち。どうせ死ぬなら今まで許せなかった人たちを道連れにしようと思った」と話したとのこと。
 
***第?回公判(23年11月15日)***
1)被告人質問
被告は、散弾銃を持ち出した理由について「(前日に亡くなった)母の蘇生措置のお願いを聞いてもらえず、頭に血が上った」と説明した。
 
2)事件当日、医師が経営するクリニック関係者3人を呼び出し、母への焼香を要求したことについては、母のリハビリを断られたり、電話口での対応に問題があったりしたためと主張。「線香を上げてもらい、心の中で謝ってほしかった」と述べたとのこと。
 
3)亡くなった医師らに対しては「申し訳ないと思っている。猛省しています」と話したとのこと。
 
***第?回公判(23年11月16日)***
1)自宅に立てこもった際、自殺するつもりで睡眠薬を飲んだという被告は、警察の取り調べで殺意を認めたことについて「記憶にないです」と答えたとのこと。
 
2)検察側による被告人質問では、事件後当初のさいたま地検の調べに対し「S医師ら4人を銃で撃って殺し、自殺することを決めて遺書を作った」との供述について「覚えていない」と述べたとのこと。
 
***論告求刑公判(23年11月28日)***
1)検察側は論告で「一人でも多く殺害するという強固な意志を継続して持っていた」と指摘。事件前日に死亡した母親の担当医だった医師らに一方的に不満を募らせて逆恨みしたとし、「理不尽かつ自己中心的で酌量の余地はない」とした上で、「無慈悲な犯行で態様は極めて悪質」として無期懲役を求刑したとのこと。
 
2)弁護側は「発砲直前に衝動的に大けがをさせてやろうという気持ちになった」と改めて殺意を否定し、懲役15年が相当と主張したとのこと。
 
3)被告は最終意見陳述で「心から申し訳ないと思っている。猛省しています」などと用意した紙を読み上げたとのこと。
 
4)遺族の意見陳述
Sさんの父親は「反省の態度を見せない被告にに最大限の厳罰を望みます」。また、Sさんの妻も「法の許す限り長く刑務所に入ってもらいたい」と訴えたとのこと。
 
***判決公判(23年12月12日)***
1)さいたま地裁は、殺傷能力の高い銃を使い、至近距離で医師に発砲したとして殺意を認めたとのこと。死刑も視野に入れて量刑を検討したとし、死亡したのが1人であることなどから無期懲役が相当と結論付けたとのこと。
 
2)事件前に「(医師らを)断ずる」とするメモを残していたことや、至近距離から被害者の胸部や腹部に向けて連続で発砲した状況から「強固な殺意があった」と認定したとのこと。
 
3)裁判長は「医師らは被告の意向を踏まえ、最善の措置を模索して対応していた」とした上で、「母の死による喪失感を考慮しても理不尽というほかない。自ら診療した患者の家族に殺された医師の無念さは察するに余りある」と厳しく指摘したとのこと。
 
別の報道では
強固な殺意に基づく冷酷な犯行であり、介護してきた母が死亡した喪失感の大きさなどを考慮しても、「銃器による殺害を決断したことには厳しい非難が向けられる」としたとのこと。
 
4)裁判長は「母を失った悲しみが大きいのは分かるが、銃撃は許されない」と語りかけた。母の最期をみとることができた被告とは対照的に、医師は突然命を奪われたとして「(家族は)どれだけ無念だったか。しっかりと(事件を)受け止めてほしいが、振り返りが足りない」と指摘したとのこと。最後に「愚かな犯行をしっかり見つめてほしい。そこで初めてあなたの償いが始まる」と説諭したとのこと。
 
***補足(時期不明な情報)***
殺傷能力の高いスラッグ弾を使用して至近距離で発砲したことなどから、検察側は強い殺意があったと主張。
 
渡辺被告が罪に問われているのは4件。いずれも4年1月27日、自宅で
A)Sさんを射殺
B)一緒にいた医療関係の男性を銃撃し重傷を負わせた
C)散弾銃を取り上げようとした別の医療関係の男性に催涙スプレーをかけ、けがを負わせた
D)外に脱出した別の医療関係の男性に向かって発砲-となっている。
 
被告側は、A)については「膝を狙って撃ったもので、殺害するつもりはなかった」と主張。B)は銃の操作を誤ったものC)は威嚇目的-としているとのこと。
 
***控訴(23年12月13日)***
今回のさいたま地裁の判決を不服として13日付で東京高裁に控訴したとのこと。
 
***控訴審初公判(25年1月27日)***
控訴審初公判が27日、東京高裁であり、被告側は一審に続き殺意を否認した。審理は即日結審したとのこと。
 
***控訴審判決公判(25年3月11日)***
1)東京高裁は11日、無期懲役とした一審さいたま地裁の裁判員裁判判決を支持し、弁護側の控訴を棄却したとのこと。
 
2)裁判長は判決理由で、殺傷能力が高い銃で至近距離から胸部を狙ったことや、立て続けに発砲していることから、医師や理学療法士の男性らに対する殺意を認定したとのこと。
 
こんなところですね。
死亡が1人なので、重くても無期懲役、軽ければ有期刑と言うあたりですね。
で、この事件で重い方に傾いたのは、やはり被告に都合の良い言い訳、言い換えると身勝手に見える言い訳が被告の印象を悪くしたと言う事だと感じます。
この事件では、なんと犯行時の音声が録音記録されていましたし、更に、遺書のメモまでもが残されていて、十分に殺意が証明されているわけですね。
それに対して、覚えていないとか、足を狙ったとかが、見苦しい言い訳に見えてしまった事でしょうね。
 
事件に使用した弾丸も通常の散弾ではなく、殺傷力の高いスラック弾だった事も、言い訳感を強くさせてしまったのではないか?と感じます。
 
このあたりは、人格というか性格によるものかもしれません。
本来なら(と言う言い方も変だけど)これだけの事件を計画した段階で、覚悟を持つと思う訳です。
計画通りなら複数人を殺害する事になり、死刑は当確ですね。
一方で母親を亡くした喪失感や孤独感、将来への不安などで自殺も考えている。
このあたりを考えると、自分の死も覚悟の犯行のはずなのですが・・・事件の途中で、死ぬのが怖くなったのかな?
自殺もせずに、公判では、刑を軽くするための言い訳をしている。
 
もし、罪を認めて心から謝罪していたら、有期刑もあったかもしれないと思います。
 
で、事件の原因は何か?と考えるのですが、猟銃に執着している事が、何か事件の鍵なのかな?と感じますね。
まー普通に生活していれば、猟銃は必要が無い物ですよね。まして経済的に困窮している状態なら、最初に手放しそうな物です。
なので、事件の20年前の段階でいつか銃を使うような事を望んでいたのかもしれませんね。
 
被告の生い立ちの情報ははっきりしないけど、報道された情報だと
20年ほど前まで東京・江戸川区の都営団地で、まだ元気だった実母と2~3歳くらいの子供と同居していた。妻と思しき外国人風の女性も出入りしていたとのこと。
その後、子供はいなくなっていた。
容疑者は10年程前から埼玉県内を転々として、物流会社で働いていた
介護中心の生活で定職に就けず、頼みは母親の年金だけと言っていた。
 
生活保護を1人あたり10万円を切る程度もらっていたようだ。
 
こんな感じだけど、若い時には結婚もしていたのかな?子供がいたようですね。
結局、妻子は居なくなり、母親との2人暮らしになった。
母親の介護の為に定職につけずに、日雇いのような仕事だった。
この頃から経済的に追い詰められていったんでしょうね。
 
この時に福祉に頼る事ができれば、あるいは状況は変わっていたかもしれない。
ざっくり調べると、施設への入居金は10万円程度、月額使用料が14万円程度なのかな?
問題は月額使用料の支払いをすると、被告本人の生活が難しくなるかもしれませんね。
まー被告人自身が定職について仕事をすれば良いわけだけど、60歳を過ぎてから仕事を見つけるのはかなり厳しいだろうね。
 
なので、もっと早い、40代ぐらいの時期に決断して、仕事をできる環境を作っていれば、この事件は防げたかもしれないのかな?
情報だとこの頃は、まだ母親は介護は必要無い状態だったので、仕事をしていたはずだけど、不安定な生活と言う情報もありますね。
介護離職なのか?でも、ある程度収入があるなら、施設を利用する事もできたのでは?と思いますが、ケースバイケースなんでしょうね。
 
とは言え、そんな事を20代、30代の時に予見できるのか?と言うとそうでもないのだろうから、こんな状況に追い込まれてしまう人は、予想以上に多いかもしれない。
「運が悪い」と言う言葉で済ますことはできないし、本人の努力不足と言うのも少し酷のような気もする。
ただ、こういう人達を救済できるような社会でないと、同じような事件はこの後も起きる可能性はありますよね。
この事件で医療関係者が犠牲になったのは、被告人の身近にいて接点が多かったのが単純に理由だと思う。
一歩間違えば、役所の職員などが犠牲になっていてもおかしくないわけです。
 
私たちは思っているよりも、事件は身近にあると言う事を、忘れないように生活しなければなりませんね。
 

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埼玉県ふじみ野市立てこもり医師殺人事件その2(起訴まで)

22年6月5日報道
22年6月2日、さいたま地検は医師を殺害した容疑などで送検された66歳の男の刑事責任能力の有無を調べるおよそ3ヶ月間の鑑定留置を終了した。
今後、起訴するかどうかを検討する。
 
22年6月10日報道
県警は10日、無職、男性容疑者(66)=殺人容疑などで送検=を殺人未遂、傷害などの疑いで再逮捕した。殺人未遂容疑について「殺意はありません」と否認する一方、傷害容疑は認めているとのこと。
 
再逮捕容疑は1月27日午後9時ごろ、同市大井武蔵野の自宅で、医療相談員の男性(33)の顔に催涙スプレーをかけ、角膜症など2週間のけがをさせたとしている。また、直後に自宅の室内から、路上にいた別の医療相談員の男性(43)に散弾銃1発を発砲し、殺害しようとした容疑。
銃弾は当たらず、けがはなかったとのこと。
 
県警によると、容疑者は2021年秋にネットで催涙スプレーを購入。事件当時ズボンのポケットに隠し持っていた。(護身用と説明している)
 
22年6月13日報道
埼玉県警は6月10日、殺人未遂や傷害などの疑いで渡邊容疑者を再逮捕。同月12日にさいたま地検に送検した。
 
22年7月4日報道
さいたま地検は7月1日、容疑者を殺人などの疑いで起訴した。精神鑑定の結果「刑事責任を問える」と判断されたとのこと。
 
時系列
2000年  1丁目の散弾銃の所持が認められる、レミントンM870を購入するが失業により、代金の一部未納
2008年  2丁目の散弾銃の所持が認められる
2012年頃 埼玉県内を転々としはじめる。
2017年頃? 容疑者の母親をS医師のクリニックで訪問介護を行う。
2019年03月頃 容疑者一家が現場住宅に転居してきた。
2020年11月 散弾銃所持許可の更新手続きを行う
2021年秋 ネットで催涙スプレーを購入
2022年
01月24日 容疑者が医師会に電話で相談
01月26日
16:00頃 容疑者の母親が死亡、S医師が死亡確認
01月27日
21:15頃 「バンバンと言う音がした」と近隣住民が110番通報。
21:25頃 市入間署に男性(32)が催涙スプレーのような物を掛けられたと駆け込む
01月28日
08:00頃 捜査員が突入、容疑者を逮捕、S医師は心肺停止の状態で搬送
01月29日 容疑を殺人に変えて送検
02月18日 理学療法士への殺人未遂容疑で再逮捕
03月03日 鑑定留置を開始(3ヶ月の予定)
06月02日 鑑定留置を終了
06月10日 殺人未遂、傷害の容疑で再逮捕
06月12日 地検に送検
07月01日 殺人などの容疑で起訴
 
こんなところですね。
次回は一審の情報になります。
ここまでで気になるのは、銃への執着ですね。お金が無くて、代金の一部が未払いと言う状態にもかかわらず、散弾銃を手放さずに、更新手続きもしている。
銃の所持は規制が厳しく、定期的に銃弾を消費するなど、維持費がかかるはずで、経済的に厳しい容疑者にとって、維持するのは結構大変だったと思うのですが・・・
なぜ手放さなかったのか?銃の暴力性に魅せられた部分でもあったのかな?それとも事件をぼんやりと予感でもしていたのかな?
 
参考リンク

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2025/08/16

埼玉県熊谷市晴見町女性殺人事件その5(控訴審判決)

控訴審判決は控訴棄却です。

23年12月22日報道
***控訴審初公判***
被告人側から新しい事実取調べの要求はなく、この日はものの数分で閉廷したとのこと。

24年2月14日報道
***控訴審判決公判***
裁判長が「主文、本件控訴を棄却する」と言い渡した。
判決では、一審判決で証拠として提出された訪問看護師の証言、被告が事件の後にLINEのアカウントを一度削除した後に復活させ、被害者である女性以外の友達を再度登録していたことなどをもとに控訴棄却の理由を裁判官が述べ、懲役9年の第一審判決を支持したとのこと。

こんなところですが、私も控訴審の情報は見逃していたせいで、かなり情報不足な感じです。
ただ、報道だと、被告人がかなりの不規則発言で「冤罪」を絶叫や怒号、さらに遺族の叫びが重なると言うかなり騒然とした判決公判だったようです。

殺意の立証が難しい為、傷害致死で起訴されたんですよね。
いろいろと事情がありそうなのですが、すっきりしない事件でした。

参考リンク
埼玉県熊谷市晴見町女性殺人事件その4(一審判決)

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兵庫女児刺殺事件その10(容疑者逮捕)

1)24年11月6日報道
兵庫県加古川市で2007年10月、小学2年の女児(当時7歳)が自宅近くで刺殺された事件で、別の女児を刺殺したとして無期懲役の判決を受けた受刑囚の男(45)が女児の殺害をほのめかしているとのこと。男は加古川事件の約1年前、同県たつの市の路上で小学3年の女児(当時9歳)の胸や腹などを刺した事件にも関与した疑いが強まり、県警は近くこの事件(たつの市の事件)で男を殺人未遂容疑で逮捕する方針とのこと。(7日に逮捕してます)

男は、04年9月に岡山県津山市で小学3年の女児=当時(9)=を刃物で刺して殺害したとして18年5月に逮捕された。23年9月に無期懲役の判決が確定していた。

2)24年11月27日報道
兵庫県加古川市で2007年、小学2年の女児(当時7)を刃物で刺して殺害したとして、兵庫県警は27日、男性容疑者(45)を殺人容疑で逮捕し、発表した。

任意の事情聴取の段階では関与を認めていたといい、県警は供述に信用性があると判断して逮捕に踏み切った。しかし、逮捕後は「黙秘します」と供述しているとのこと。

県警は、たつの市の事件での殺人未遂容疑で今月7日に逮捕。そして勾留期限となった27日、加古川市の事件に対する殺人容疑で逮捕した。たつの市の事件については処分保留としたとのこと。

3)24年11月28日報道
捜査関係者によると、今年5月、別事件で服役していた同容疑者から任意で事情聴取を開始。聴取を重ねる中、同容疑者は(加古川の)女児刺殺事件への関与を認め、「好みの女の子を探していた」という趣旨の供述をしたとのこと。

4)25年3月14日報道
神戸地検は去年12月11日から、勝田容疑者の刑事責任能力の有無を調べるために、精神鑑定のための鑑定留置を実施していましたが、14日に予定通り終了したとのこと。

5)25年3月19日報道
2006年、兵庫県たつの市で当時9歳の女児が刃物で刺され重傷を負った事件と、2007年に兵庫県加古川市で当時7歳の女の子がナイフで刺され死亡した2つの事件について、神戸地検は19日男性容疑者(46)を殺人未遂と殺人の罪でそれぞれ起訴したとのこと。

6)25年5月1日報道
被告は、逮捕前の任意の調べで「凶器は捨てた」という趣旨の供述をしていて、警察は本人の説明をもとに1月から播磨町の海岸で凶器の捜索を続け、先月30日に捜索を終了したとのこと。
捜査関係者によりますと、海中から複数の刃物が見つかったということですが、事件との関連は分かっておらず、事件に使われた凶器かどうかを慎重に調べているとのこと。
被告は、2006年にたつの市で当時9歳の女の子を刃物で刺したとして、殺人未遂の罪にも問われていて、警察は姫路市の海岸で行っていたこの事件の凶器の捜索については2月中旬に終えたとしているとのこと。

こんなところですね。
2006年の事件発生から18年目での逮捕ですね。逮捕されてみれば、誰もが納得するような前科があるので、もう少し早く逮捕されてもおかしくなかったのではないか?と正直思いましたね。
当時も防犯カメラなどでの捜査もされていたのですが、普及度合いが低かったのか、現在なら数ヶ月で逮捕されてしまうかもしれませんね。

逮捕起訴されたとは言え、有罪になるのか?は別問題ですね。
この公判で、検察が被告の犯行であると立証できるのか?そこが問題です。結構ハードルは高そうなんですよね。
A)物的証拠
海中から発見された刃物が凶器だと断定できるのか?
被害者の傷と形状が一致するぐらいの鑑定はできるかもしれないけど、それが凶器と断定できるのか?

他には防犯カメラ映像は本人の物と鑑定できるのか?
DNAか指紋でも現場に残っていれば、決定的な証拠になるんですが・・・どうでしょうね。

B)秘密の暴露があったのか?
任意の取調べでは証言していたようですが、その中に秘密の暴露があったのか?

C)被告に犯行が可能だったのか?
アリバイなどがあれば、立証は難しくなりますよね。

少なくともこの3点ぐらいは押さえられないと、有罪にはならないかもしれませんね。
公判を待ちましょう。

参考リンク
兵庫女児刺殺事件その9(類似する事件)
兵庫近県の動物虐待事件と児童殺傷事件
この記事の中の津山市での女児殺害事件で無期懲役となった人物が今回逮捕された人物です。この津山の事件も調べておくべきでした。
事件簿を初めて3年目だったとは言え未熟だったと反省です。
兵庫県加古川女児刺殺事件その8

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2025/08/15

神奈川県相模原市緑区墓地女性遺体遺棄事件その3(Sの刑が確定)

この事件、その後、紆余曲折を経て刑が確定しています。
1)***控訴審判決公判(20年12月10日)***
東京高裁は10日、懲役17年とした1審・東京地裁の裁判員裁判判決を破棄し、審理を同地裁に差し戻す判決を言い渡した。裁判長は「被告が睡眠薬を大量に飲ませたことによる中毒死の可能性がある」と指摘したとのこと。

裁判長は、歯の変色の分析について、「法医学分野で広く承認された手法ではなく、刑事裁判の証拠としては不十分」と指摘。一方で「被告が被害者に睡眠薬を大量に服用させた可能性は非常に高く、被害者を殺害する目的があったと推認できる」と述べ、改めて審理を尽くすよう求めたとのこと。

2)***差し戻し審(24年2月27日)***
東京地裁の裁判員裁判は27日、求刑通り懲役17年の判決を言い渡した。弁護側は「被害者が自ら大量の睡眠改善薬を摂取し、中毒死した可能性がある」と無罪を主張したが、退けたとのこと。

判決は、被告が被害者の遺体を墓地まで運んで土の中に埋めていたことを挙げ、死亡にも積極的に関与したと強く推認されると指摘したとのこと。

その上で、被告は被害者の死亡した時期に大量の睡眠改善薬を入手し、警視庁から任意で事情を聴かれた後には「殺人罪 逮捕 条件」とパソコンで検索していたと言及。被害者に睡眠改善薬を摂取させて中毒死させたか、飲ませた後に首を圧迫して窒息死させたと認定したとのこと。

別の報道では
東京地裁は「被害者と交際する一方で別の女性とも交際を始め、交際の障害となった被害者の殺害を決意した」と指摘したとのこと。

そのうえで「あらかじめ別の女性に購入させて準備した大量の睡眠薬を摂取させるなどして殺害した身勝手な動機による計画的な犯行」などとして、被告に懲役17年の判決を言い渡したとのこと。

別の報道では
弁護側が「かなり苦い睡眠改善薬を大量に被害者に飲ませることは現実的に困難だ」と主張していた点については、「4~50錠以上の睡眠改善薬であっても比較的少量の水に溶けるため、かなり苦いが体によいものであるなどと偽って睡眠改善薬を溶かした液体を飲ませることは十分に可能だった」と指摘したとのこと。

3)***上告審判決(25年7月14日)***
上告を棄却する決定をした。14日付。懲役17年の判決が確定する。

こんなところですね。
元々が裕福な家に生まれ育ったのに、アルバイト生活、まー生活に困らないので、気ままなアルバイト生活が性に合っていたのかもしれませんが・・・
それで3角関係のもつれから被害者を殺害したと言う、ありがちな事件ですね。
事件の発覚が2015年6月ですから、10年も経過しているんですね。被告は当時29歳なので、現在39歳ぐらいですね。
一審判決が2019年なので6年引いてこれから11年だと社会復帰は50歳頃ですね。

成長過程で経済的には困る事はなかっただろうから、まっとうに努力していれば人並み以上の生活を手に入れる事もできたのでしょうが・・・経済的に恵まれた環境でも、人間としてまっとうに成長できるとは限らないと言う事なんすね。

この事件を防ぐにはと考えた場合、被害者側と被告側で場合分けして考えるんだけど。
A)被害者側の視点
シングルマザーでお金持ちの男に巡りあったと言う点で視野狭窄になっていて、男の本質を見抜く事ができなかったのが、落ち度と言うには酷だけど、もし、アルバイトとか、女性関係の軽さなどを見極められれば、将来を考える相手では無いと言う結論になったかもしれないですよね。だけど、毎日の生活の辛さに、つい現状認識が甘くなってしまったとしても、それは責められないかもしれませんね。

B)被告側の視点
正直に言ってしまえば、まっとうに生きていれば、こんな事件を起こすことはなかったのだろうと思います。
経済的に恵まれているせいで、将来の夢とかそういう物に興味が無くなってしまったのかもしれないですね。
人間誰しも、苦しい生活よりも楽な生活の方が良いわけで、結局、自分に負けて堕落してしまったのかな?
その意味では、幼少期から厳しく教育していれば、こんな事件を起こす人間にはならなかったのではないでしょうか?
あるいは、生活に困る事が無かったことで、問題を感じ取る能力が弱かったのかな?
問題が起きてもお金で解決できてしまうので、深く考える訓練がされてなかったと言う事かもしれないですね。

以前から書いてますが、「交際相手は選びましょう」の一言に尽きますね。
そして、人生はちゃんと生きましょう。

亡くなった母子のご冥福をお祈りします。

参考リンク
神奈川県相模原市緑区墓地女性遺体遺棄事件その2(Sの一審判決)

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東大受験生刺傷事件その2(公判情報)

まずは続報
1)警視庁は22年2月5日、3人のうち通行人男性に対する殺人未遂と銃刀法違反(刃物携帯)容疑で少年を再逮捕した。

2)捜査関係者によると、少年は事件前日に学校を無断欠席して名古屋市内の観光地を巡り、市内のコンビニ店のトイレのごみ箱にスマートフォンを捨てていた。夜行バスで15日朝に上京し、東京駅から徒歩と地下鉄で東京メトロ南北線東大前駅を訪れたとのこと。

現場付近を下見した後、また南北線に乗って隣の本駒込駅へ。トイレで私服から学生服に着替えた後、今度は南北線で後楽園駅に移動した。近くの公園で、小瓶をゴムで束ねた手製の火炎瓶のようなものを準備したとみられるとのこと。

その後、南北線で再び東大前駅を訪れ、着火剤を使って駅構内の8~9か所でぼやを起こした後、地上に出て男性を襲撃。さらに受験生の男女2人を刺し、この2人に対する殺人未遂容疑で現行犯逮捕されたとのこと。

2人への殺人未遂容疑は処分保留とされ、今後、再逮捕容疑と合わせて家裁に送致される見通しとのこと。

3)背中を刺された男性(72)は事件直後に近くの交番へ駆け込み、「刺された」と訴え出ていた。その後、容体が急変し緊急手術を受け、現在は回復しているとのこと。(22年2月5日報道)

補足(その後の報道では)
被害者の一人で当時70代だった男性が、事件後に亡くなったとのこと。男性は傷が深く、約3カ月の入院を余儀なくされていた。
事件の傷と死因との法的な因果関係はないというが、被告は法廷で「私の愚行によって心身に傷を負わせてしまった結果、亡くなってしまったと思っている」「『自分は本当に何をしてしまったのか』という自責の念に襲われた」と謝罪と後悔を口にしたとのこと。

4)父親は大学職員で、地方の有力な一家の出身。母親は専業主婦。弟と2人の姉妹がいて、家族、きょうだいの仲はいいとのこと。

5)事件直前には、東京メトロ南北線・東大前駅の構内などでボヤ騒ぎや液体がまかれる不審な事案が相次いでいましたが、警視庁はその後の捜査で男子生徒の犯行だと断定し、男子生徒を威力業務妨害の疑いで追送検したとのこと。

***初公判(23年10月12日)***
検察は冒頭陳述で、「東大の理科三類を目指していたが、成績が落ちてきて自暴自棄になった。多くの受験生を無差別に殺害することで、罪悪感を背負い自殺しようと考えた」と指摘したとのこと。

少年は「被害者の心と体に傷を負わせてしまい大変申し訳ございません」と謝罪し、起訴内容を認めた。

***第X回公判(23年10月17日)***
被告人質問
被告は動機について「罪悪感があれば自責の念にとらわれて死に切れると思い、事件を起こした」と語ったとのこと。

被告によると、事件の2カ月前の令和3年11月中旬以降、進学を目指していた東大理科三類への進学が難しくなったことや、女性に交際を断られるなどしたことから、自殺を考えるようになったとのこと。

当初、包丁での割腹自殺や自作の銃による自殺を試みたが実行できず、理由について「自分の存在にあきらめがついていないからだ」との考えに至ったとのこと。そこで「殺人や放火など人に迷惑をかけることが罪悪感につながる」と犯行を計画。動機について、社会への恨みを晴らすのが目的ではなく「恨みの対象は、むしろ自分だった」と話したとのこと。

東大理三にこだわったのは、高校受験で第1志望校に落ちたことの「汚名返上」だったと説明。検察官から「進学を諦めようとはしなかったのか」と問われると「諦めたら、『負け犬』とクラスメートなどにばかにされると考え、譲れなかった」と答えたとのこと。事件当日は「理三や勉強の象徴の場所で死ねれば」と考え、東大安田講堂前で自殺しようとしたとのこと。

別の報道では
「社会で必要とされない悪人になればいい。自責の念にとらわれて死に切れると思い、事件を起こしました」とのこと。

補足(女性に交際を断られた件について)
同じ塾に通っていて彼に好意をもっていた少女に、電話でいきなり「結婚を前提にお付き合いしてください」「僕の賢い遺伝子と、あなたの美貌の遺伝子が合わさった子をつくりたい」と告白したとのこと。
別の報道では
好意を寄せられながらもそれまでは見向きもしなかった同学年の少女に突如「結婚を前提にお付き合いしてください」と電話したとなっているので少女が少年に好意があったのかは不明

別の報道では
中学3年の時には学年で一桁の順位をキープしていた。
ただこの時期、同級生に交際を申し込むも断られる失恋を経験。

別の報道では
(高校入学後?)同じ頃、好意を持っていた成績1位の女性に告白し、フラれたことも追い打ちをかけた。

更に別の報道では
高2の秋頃?同級生の女性を呼び出し、悩みを打ち明けたが、「志望校のレベルを下げればいいんじゃない。」と一蹴された。
その際、女性への好意を伝えたが、テスト勉強をした方がいいと断られ、その場で1時間近く泣いた。

証人尋問?
午前の法廷に出廷した男の友人が「大学受験が全てではない」、「高い志を持って更生してほしい」と証言すると、男は涙を流して聴いていたとのこと。

証人尋問で被告の父も、被告から届いた手紙に被害男性の死について書かれていたと明かし「かなりショックを受けたことが分かった。自分のしたことの重大さに気づくきっかけになったと思う」と、声を震わせながら語ったとのこと。

精神鑑定を行った弁護側の鑑定人は、「少年が勉強を一生懸命頑張ったのは否定されることではない。1つ頑張った取り組みは持っている。世の中には多様な価値観があり、勉強という物差し以外で他人も自分も評価できると学ぶことが、彼の今後の成長に大事」と証言した。
これを聞いていた少年は、シクシクと泣き出したとのこと。

***論告求刑公判(23年10月27日)***
1)検察側は「東大理三への進学を希望していたが、成績が落ちたことや女性に交際を断られたことから自暴自棄になった」「罪悪感を背負った上で自殺をしようと考えた」として懲役7年以上、12年以下の不定期刑を求刑しました。

2)弁護側は保護処分を求め結審しました。

3)少年は最終陳述で、被害者らに改めて謝罪。犯行当時の心情を「勉強がうまくいかなくなって自分の存在価値を見いだせなくなった」と説明し、「周りの評価を気にしたり、目立つ人に嫉妬したりするダメな性格も変えていかなければならない。事件を一生反省する」と述べたとのこと。

別の報道では
目立つ人や能力ある人への嫉妬、虚栄心や功利、頑固さであったり、人としてダメなクズという性格も変えていかなければならないと思っています。私がこれから生きる上で持つべきものは、動機となった勉強への考え方を変え、一生反省し、二度としないように努めること。学歴や勉強というもので、自分を押し殺したり自分の価値を定めたりせず素直に生きることだと思っていますとのこと。

***判決公判(23年11月17日)***
東京地裁は17日の判決で、「自殺するために他人を巻き込んでいて、人命軽視の姿勢が甚だしい」と指摘し、懲役6年以上10年以下の不定期刑を言い渡しました。

判決は「非常に悪質で相応の計画性を持った犯行だ。自殺という目的で無関係の他人を巻き込み、人命軽視の姿勢が甚だしい」などと非難。社会的に保護処分が許容されるとはいえない、と判断したとのこと。

また、背景には学歴や偏差値で優劣を評価する偏った価値観や、柔軟性に乏しい思考など、資質上の問題があると指摘。「少年の年齢も踏まえると、保護処分での処遇期間では十分な改善や矯正が難しい」と判断したとのこと。

裁判長は最後、裁判員全員から伝えたいことがあると述べ、元高校生に対し、「人の命の大切さを忘れないでください。他人の命もあなたの命も大切にして、人生の希望を見つけて社会復帰してほしいと思います」と語ったとのこと。

「あなたの問題点について正面から改善する努力をして下さい」と諭されると男は小さい声で「はい」と答えたとのこと。

事件の経緯をかいつまむと
少年は中2の時に医師を目指して勉強を始める。成績は学年で1桁台で県外の進学高の受験を勧められる。
しかし、県外高は全て不合格となり県内の進学高に進学、この時、一緒に県外高を受験した仲間は全て合格しており、本人だけが県内の進学高に進学した。

この時、名誉挽回を近い東大理3の合格を決意する。
さらにそれを、高校のクラス全員に宣言した。

高校2年の時には睡眠時間2時間で起きている時間の全てを勉強に注ぎ込んだ。
ところが、周囲も受験勉強に集中するようになると、学年順位は落ちていった。

高校2年の冬には自殺や家出を考えるようになった。
そして、1月15日、事件を起こした。

動機は「人を殺せば罪悪感で自殺できると思った」

こんなところですね。
前回の記事に書かれた経緯とも一致しているようです。
その後の情報が無いので、一審判決を受け入れたんでしょうね。

前回の記事でも感じてましたが、少年は思い込みが強いタイプなんですね。
しかも、自らを追い込むような生き方をしている。クラス全員の前で進路を宣言するとか、よほど自分に自信があったのか?多分、逆で自分を追い込まないと合格できないと思っていたんでしょうね。

私にもそんな青春の記憶があります。

さて、この事件を防ぐにはと言う点で行くと、高校進学後の勉強方法に問題があると思います。
睡眠時間2時間と言うのは効率が悪いでしょ?
勉強する事自体には耐性があるので、効率の良い勉強方法であれば、成績上位は維持できたのではないのかな?

この睡眠時間2時間と言う勉強方法を周囲はどう見ていたのだろうか?
多分、彼よりも成績上位の人間に睡眠時間2時間と言う人間はいなかったんじゃないかな?
どうも、クラス全員に使っている参考書を聞いて回るぐらい周囲に目を向けていたようなので、睡眠時間についても、聞いているんじゃないかと思うんですよね。

そこで「それぐらい睡眠時間を取っても大丈夫なんだ」と考えるのか?それとも「彼よりも睡眠時間を減らしてその分勉強している自分の方がすごいはず」と考えるのか?
と言う事なんでしょうが、結局、彼は後者のタイプなんでしょうね。

まさにボタンの掛け違いと言うか、何か一つの事をきっかけに全てが悪い方向へ連鎖しているように見えます。

その一方で少年は生徒会役員に立候補。落選したが、生徒会メンバーとして残り、校内新聞の編集作業などに熱心に取り組んでいたとのこと。
勉強だけに集中しているようで、そうでも無いのがちょっと分からないですね。もしかして恋愛の部分とも関係しているのかな?

しかし、その失恋の結果も自分を追い込む方向へ向かわせてしまうのが本人の特性なんでしょうね。
もしかすると、性格的な偏りなどもあるのかもしれません。

事件から3年半が立ちましたが、将来の進路は決まったのかな?

そういえば、事件で刺された受験生の2名はどうなったのでしょうね?
追試など大学側の救済処置などあったのだろうか?
と調べてみらたら

共通テストでは、体調不良などで受験できなかった生徒を対象に1月29日、30日に追試験が予定されており、事件の被害者についても対象となるが、それまでに容態が回復しなかった場合について、2次試験など個別試験だけで合否判定する措置が適用できないか検討されている。また、事件の影響による精神的動揺でこの会場でのテストを受けられなかった4人の追試験を認める措置を同月26日に発表したとのこと。

刺された2名は追試を無事に受けられたのかな?

参考リンク
東大受験生刺傷事件(希望が絶望に変わるとき)

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兵庫県神戸市高2男子殺害事件その11(控訴審判決)

控訴審は控訴棄却(一審判決を支持)

控訴審判決公判が25年6月20日、大阪高裁で開かれた。裁判長は1審判決を支持し、被告側の控訴を棄却したとのこと。
弁護側は当時の少年法の緩和規定に従えば刑は懲役15年が上限だと主張したが、裁判長は規定が適用されないと判断したとのこと。

少年法は「無期刑に相当する場合は有期刑を言い渡す」との緩和規定があり、事件当時の少年法は無期刑相当の場合の「有期刑」の上限を15年と定めていた。しかし、事件後に成人した被告が有期刑に相当する場合については特段の定めはない。

弁護側は、刑法に基づき有期刑の上限が20年となれば、無期刑ではなく有期刑が求刑されると、事件の重大性と量刑に「逆転現象」が生じると主張。
有期刑相当の場合も上限を15年と考えるべきだと主張したとのこと。

裁判長は判決理由で、今回のように有期刑を科すべき事件では、少年法に関係なく、犯情に見合った刑期を定めれば足りる、と指摘。弁護側の主張のように法令解釈をすることは「困難で、かつ相当でもない」としたとのこと。

さらに完全責任能力を認めた上で「あまりにも理不尽な動機による残忍な犯行」と指摘した。犯行時に少年だったことなどを考慮しても「懲役18年が不当に重いとはいえない」と結論付けたとのこと。

25年6月30日付けで弁護側は上告している。

そして一審判決で被告へ言い渡された9300万円の損害賠償金について23年11月7日付けでこの決定について異議を申し立てていたとのこと。
「金額が高すぎる」という趣旨の主張をしているとのこと。
通常の民事訴訟で争われる見通しとなったとのこと。

こんなところですね。
ちなみに、弁護側の主張している逆転現象については平成26年の改正少年法で有期刑の上限が20年に引き上げられる形で解消したと言う事ですね。

なんでしょうね、もし事件直後の未成年の内に逮捕されていれば、懲役15年が上限となって、もしかすると、懲役12年ぐらいの判決になっていたかもしれませんね。
たらればだけど、それだったら、もう社会に復帰していたんですよね。それが今から16年(一審が2023年なので2年引きました)で社会復帰は40代後半ですから、厳しい人生になるでしょうね。
逃げ続けた結果、懲役18年になってしまったと言うのは被告にとっては皮肉な結果なんでしょう。
罪のない16歳男子を理不尽に殺害して逃げ続けた結果なので自業自得と言う事なのでしょうが、因果を感じますね。

まー上告しているようですが、この逆転現象の部分に法律上の問題がなければ棄却されるでしょう。今回の判決は妥当な判断と専門家には言われているようですから、多分棄却されるんじゃないかな?
被告は事件当時17歳、現在32歳、事件発生が2010年、それから15年が経過したけど、事件とは向き合えてないんでしょうね。

参考リンク
兵庫県神戸市高2男子殺害事件その10(一審判決)

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2025/02/05

新潟県新潟市母子殺人事件その3(一審判決)

一審判決は無期懲役(求刑無期懲役)です。
 
***判決公判(24年11月22日)***
1)新潟地裁は求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
 
2)裁判長は職場の同僚だった女性との不倫関係から被告が妻子を疎ましく思ったと認定し、「被害者らには何らの落ち度もない。経緯や動機にくむべき点は皆無だ」と強く非難したとのこと。
 
3)判決によると、21年11月7日午前、自宅で妻(当時29歳)と長女(同1歳)の首をロープで絞め窒息死させた。また同3月に妻に睡眠薬を入れた飲料水を提供し、飲んだ可能性があるのを知りながら、妻子が車で出かけるのを制止せず交通事故を起こさせて殺害しようとしたほか、同9月には妻を殺害しようと勤務先の病院から薬剤を盗んだとのこと。
 
4)裁判長は「2名の尊い生命が奪われた結果は誠に重大」と指摘。3月と9月の事件で殺意は無かったとする被告側の無罪主張については「死亡する可能性も認識していたと推認できる」「塩化カリウム(薬剤)を無断で持ち出した時点で殺害しようと考えていたと認めるのが相当」と退け、殺人未遂と殺人予備の罪も認定したとのこと。
 
塩化カリウムについての別の報道
被告人が塩化カリウムを持ち出す前に、塩化カリウムの致死量やその注射に関わること、高カリウム血症で心停止となった場合に解剖でその原因が判明するかなどにつき、約1カ月間にわたり複数回検索していたことからすれば、被告は塩化カリウムの危険性及び投与方法のみならず、これを殺害に用いた場合における犯行発覚リスクに関心を抱いていたものということができる。それらの検索と近接した時期に塩化カリウムを持ち出し、自宅に保管していたことからすれば、被告人が妻への殺害をする目的で塩化カリウムを持ち出したことが強く推認される。したがって、被告が塩化カリウムを無断で持ち出した時点で、被告人は妻を殺害しようと考えていたものと認めるのが相当であり、“殺意が認められる”とのこと。
 
5)被告が18年5月に結婚したのに、19年10月ごろには同僚と不倫関係にあったとし、「勾留中、被害者遺族に対する謝罪文を作成する傍らで不倫相手に恋文を送っていた」などと指摘。「妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くし難い。長女の死も痛ましいというほかない」と強調し、「被告に有利な事情を最大限考慮しても有期懲役刑を選択すべきとは到底言えない」と非難したとのこと。
 
別の報道では
2人の尊い生命が奪われたという結果は誠に重大である。妻は婚姻後、間もなくして被告人による不倫や預金の使い込みがありながらも、代わらず夫婦であり続けようとし、長女の誕生後はひたむきに育児に励みつつ、新居で被告人と共に新生活を始めた矢先、被告人に裏切られ、最期は長女の目の前で命を奪われた。愛する我が子を育てることも、その成長を見届けることもできないまま命を奪われた無念さは察するに余りある。長女は、1歳になったばかりで周囲から愛され、本来父親である被告人に庇護されるべき立場にあったのに、その被告人から突然殺害されたものである。妻の悔しさ、無念さ、悲しさ、絶望は筆舌に尽くし難いものといえるし、長女の死も痛ましいというほかないと断罪したとのこと。
 
被害者らには何の落ち度もない。経緯や動機に汲むべき点は皆無である。また、看護師である被告人がその知識・技術および立場を悪用し、各犯行に及んだことも強い非難に値する。本件に関しては、有期刑を選択すべきとは到底言えないとしたとのこと。
 
6)絞殺についての報道
被告は妻に対して、背後から近づいて突如首にロープをかけ、もがく妻の抵抗を排して2、3分締め上げ、ぐったりとして鼻から血が出ていたにもかかわらず、手が震えているように見えたため、再度首を締め上げて、完全に動かなくなったことを確認した。
 
続けて、長女の首にロープをかけて絞め始め、眼前で苦しそうに泣く姿にも構わず2、3分間力を緩めず締め続けた結果、泣くこともできなくなってぐったりとしたにもかかわらず、鼻提灯が膨らんでいるのを見て、再度首を締め上げて、完全に動かなくなるまで続けていた。
 
いずれも一度締め上げているにもかかわらず、わずかでも生きている可能性を認識するや再度締め上げて息の根を止めたのであり、強固な殺意に基づく極めて悪質なものと言わなければならないとのこと。
 
7)偽装工作の報道
絞殺するために事前にロープを購入したり、窒息死に至る時間や血痕のぬぐい方を事前に検索するなど犯行は計画的である上、殺害後は稚拙ながらも妻による無理心中に見せかけるため、妻の携帯電話機を用いて遺書を作成したり、ロープを現場に垂らしておくなどの偽装工作も行っていたとのこと。
 
こんなところですね。
事件簿の活動自粛期間中の公判だったため、公判の情報の大半を見逃していました。
判決を聞くだけで、殺害された母子がかわいそうで仕方が無いですね。
よくここまで身勝手になれるのか、とあきれてしまう。
結婚した翌年には不倫を開始しているぐらいなら、どうして、結婚したのか?と聞いてみたいところですね。
殺害された奥さんも不倫やお金の使い込みに気づきながら、結婚生活をつづけようとしていたのは、生まれた子供の事を考えての事なのかもしれませんね。
 
しかし、やはり、結婚するべき相手ではなかったとしか思えないですね。
まー結婚の前後で男性の女性に対する態度が変化する事は珍しい事はでないかもしれません。
 
分岐点は夫の不倫を知った時なんでしょうね。
もしかすると、妻は不倫を知った上で、知らないふりをしていたのかもしれませんが、やはり、きっちりどうするのか?を詰問するべきだったと思います。
もしかすると、その上で、被告が「別れるから」とその場しのぎの嘘を言っていたかもしれないので、なんとも言えないところではありますが・・・
 
事が露見しても不倫を続けるようなら、決断するしかないのかな?
しかし、女性の側としたら、1歳の子供を抱えて、女性が一人で生活していくのは大変な事だと言う事は容易に想像できますから、決断できなかったのかもしれないですが・・・
結局、そのままの状態を続けても、母子ともに幸せになれるとは思えないので、実家や友人の力を借りてでも、決断するべきなんだろうと思います。
まーあえてその状態を続けて、時期を見て決断と言うのも方法かもしれません。
どちらが良いか?はケースバイケースなんでしょうね。
 
亡くなった母子のご冥福をお祈りします。

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京都府京都市山科区両親殺人事件その2(起訴から一審判決まで)

判決は懲役26年(求刑懲役30年)です。
 
***起訴(22年4月1日)***
京都地検は1日、殺人と道路運送車両法違反の罪で、夫婦の長男でこの民家に住む無職男性容疑者(37)を起訴した。
 
起訴状によると、昨年10月31日午後4時ごろ、自宅で父親(66)と母親(61)=ともに山科区=の頭をおので殴ったり、折りたたみナイフで首と胸を多数回突き刺したりして死亡させた。また、同日午後8時10分ごろ、三重県内の道路で、車検が切れた軽乗用車を運転したとしているとのこと。
 
京都地検は刑事責任能力を調べるため、約4カ月間の鑑定留置を行っていた。
 
***初公判(23年10月2日)***
1)被告は起訴内容を認めているかどうか問われると「黙秘します」と述べ、弁護側は正当防衛が成立するなどとして無罪を主張した。
 
2)検察側は「両親に就職を妨害された、または今後も妨害されると思い、激怒して両親を殺害した」と指摘した。
 
***論告求刑公判(23年11月6日)***
1)論告で検察側は、犯行の計画性や逃走などの行動は自然で合理的であり、精神疾患の影響はなかったと指摘。「ちゅうちょなく、冷酷で残虐な犯行」と非難し、懲役30年を求刑した。
 
2)弁護側は、精神疾患を理由に被告の就職の内定辞退を両親が会社に申し出た当時の経緯を踏まえ、「生きる権利を守るため、やむを得なかった」と主張。殺害は正当防衛に当たるとし、精神疾患の影響で刑事責任能力もなかったと訴えたとのこと。
 
***判決公判(23年11月27日)***
1)裁判長は被告に完全責任能力があったと認定し、懲役26年(求刑懲役30年)を言い渡した。
 
2)裁判長は判決理由で、被告が凶器を準備するなど合理的な行動を取っており、犯行後に逃走していることから違法性を理解していたとして完全責任能力を認定したとのこと。両親が被告の意向に反して、就職が決まった会社に精神疾患を告げたことで内定が取り消され、怒りを覚えたと指摘し、「犯行は執拗かつ残忍で、強固な殺意に基づき悪質」と非難したとのこと。
 
こんな事件ですね。
第一報で両親に就職を反対された事が動機と言う事でそのあたりの事情を知りたかったのですが、あまり詳しい情報は出てきませんでした。
精神疾患がらみの事件の為か、報道もかなり少ないですね。
裁判の様子もよく分かりませんが、要約すると
 
被告が就職内定した会社に被告の意に反して、両親が精神疾患の事を告げたせいで、内定が取り消された事を恨んで、両親を殺害した事件というのが概要かな。
謎なのが、弁護側が正当防衛が成立すると無罪を主張した根拠は、「生きる権利を守る為、やむを得なかった」と言う事のようですね。
正当防衛の定義は
「急迫不正の侵害に対して、自己又は他人の権利を防衛するため、やむを得ずにした行為は、罰しない。」
この急迫性がこの事件には無いと思うんですよね。
 
なので、正当防衛を主張するのはかなり無理があると思うのですが、弁護人がなぜ正当防衛を主張したのか?が知りたいですね。
 
事件の動機としては、ある程度理解できる物はあると思います。
就職しようと思って、内定をもらった会社に、持病の話をされて、内定が取り消されたのであれば、被告が怒るのも無理は無いかもしれないと思う。
まず、ここで疑問なのは、両親が精神疾患の話をしたと言うのは事実なのだろうか?
報道が少ないので、この部分にも疑問がある。つまり、被告がそう思い込んでいただけの事実誤認と言う、まさに逆恨みと言う可能性はないのかな?
とはいえ、裁判長が判決理由で述べているので、この部分は事実なんだろうね。
 
そうすると、なぜ、両親は息子の精神疾患を会社に話したのか?が次の疑問ですね。
一般的に言えば、親が子供の幸福を望まない事は無いので、逆に言えば、両親はそれを話す事が息子にとって、あるいは自分達にとって有益であると考えたと言う事なんでしょうね。
だから、被告自身は仕事をする事を望んでいたが、両親はそれを望んでいなかったと言う事なんでしょうね。
その理由がわかりませんが・・・憶測になってしまいますが、就職する事でトラブルが発生することが予想できたと言うことなのかな。
 
だとしたら、そのあたりを親子で話し合うなり、対立する事を避けるなら、主治医を通して仕事は難しいと言う話をしてもらうなり、他には会社には別の理由で内定取り消しにした事にしてもらうとか方法があったと思うのですが、なぜこんな発覚すれば、軋轢を生むような方法を選択したのか?は少し疑問です。
とは言え、繰り返しますが、家庭の事情が分からないので、ここに至るまでには相当な苦労があって、こうなってしまったのかもしれないので、まーなんとも言えないですね。
 
亡くなったご両親のご冥福をお祈りします。

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2025/02/03

愛媛県新居浜市一家3人殺人事件その2(一審判決から上告まで)

一審判決は無期懲役です。
 
***初公判(23年12月6日)***
1)起訴状などによりますと、住所不定で無職の男性被告(56)は2021年10月、新居浜市垣生の住宅でITさん(当時80)と妻のII(当時80)さん、元同僚で三男のIKさん(当時51)の胸などをナイフで突き刺し、殺害したとのこと。
 
2)被告は起訴内容を認めた上で、弁護人が心神喪失による無罪を主張した。
 
3)検察側の冒頭陳述で「被告は組織から電磁波攻撃を受けたと思い込み、一方的に犯行に及んだ」ただ「自らの行動は理解できた」と指摘した。
善悪の判断が全くつかなかったわけでは無い心神耗弱状態だったとして、罪に問えると主張した。
 
検察は、被告は被害者のIKさんがインターネットの掲示板に被告の個人情報を書き込んだり、電磁波攻撃をしたりしていると思い込むなど、犯行に至る経緯を明らかにしたとのこと。
 
別の報道では
検察側は、犯行当時、被告は、妄想型の統合失調症を患い、インターネットの書き込みなどをきっかけに被害妄想を抱き、一方的に怒りを募らせ犯行を決意したと主張した。
 
一方で、事件の直前には被告が「罪を犯せば自分の家族に悪影響を与えるのではないか」と考えていたとして、犯行当時は善悪の判断能力が著しく低下する「心神耗弱」だったと主張し、刑事責任を問えるとした。
 
4)弁護側は、被告は犯行当時、善悪を判断する能力がない“心神喪失”の状態であったとして無罪を主張した。
 
別の報道では
弁護側は、被告はインターネットを検索する中で、組織や被害者による電波攻撃を受けていたという妄想を募らせ、 復讐を決意したとし、犯罪歴のない人が3人の命を奪う行動に出た理由として考慮してほしいと訴えたとのこと。
 
5)証拠調べの中で、検察側は、事件発生の4年ほど前から被告が監視や盗撮、盗聴など妄想による被害を周囲に対して訴えるようになり、その後「誰かに悪口を言われている」などと、知人らに電話を掛けるようになったと指摘したとのこと。
 
「電磁波が思い切り飛んでくる、頭が痛い。仕事に行けず100万円くらい損している」「要求はなんだ、お前しかおらんやろが」など、被告が知人に詰め寄る通話内容の録音を証拠として提出したとのこと。
 
6)証人尋問(事件当日、最初に現場に駆け付けた警察官が証人)
軒先で腹から血を流し倒れこむITさんを発見し、無線で県警本部と連絡を取り合っている間に、通報したIIさんが刺されたことなど当時の様子を証言したとのこと。
 
別の報道では
3人の殺害から逮捕に至るたった2分間の出来事。警察に通報したIIさんが自宅の外でパトカーを手招きし玄関に戻ったタイミングで、被告が「1人だけ生き残っても仕方ない」「一緒にあの世に行かせてやろう」と考え殺害したことが示されたとのこと。
 
また死亡した3人の身体にはそれぞれ10カ所以上の刺し傷や切り傷があり、全員の致命傷になった刺し傷は10センチ以上の深さ。なかには骨を切断したものもあったとのこと。
 
7)証人尋問(被告とIKさんを知る人物)
被告が「新居浜で人を殺して肉を唐揚げにして食ったという話を聞いたことがあるか」などと証人に質問する場面もあったとのこと。
 
***第2回公判(23年12月7日)***
1)被告人質問
無罪を主張する弁護人の質問で被告は「責任能力を認められ死刑になっても悔いはない」と発言。このほかネットの掲示板に自分以外知り得ない直前の行動と同じ内容をかき込まれたほか、ほこりを焼きパンが焦げたような臭いがするほど強い電磁波攻撃を受けたなどと主張したとのこと。
 
また電磁波攻撃は「孫を抱いているときにものすごくしてきた。鬼畜かと思った」と泣きながら答えたとのこと。
 
弁護士の「犯行の動機は何ですか?」という問いに対し、被告は「自分を狙う『組織』の一員だったIKさんに復讐を果たすとともに、事件を起こすことで、『組織』の存在を明るみに出したかった」などと話したとのこと。
 
このあと被告が、自分の孫に思いを馳せて涙ぐむ場面も見られましたが、終始落ち着いた様子で、自らが電磁波攻撃によって受けたと語る被害の詳細や、事件前の被害者との直接のやりとりなどが語ったとのこと。
 
検察の質問に対しは、「犯行が自分の家族の人生に悪影響を及ぼすことは理解していた」としながら、「電磁波攻撃などが全く解決しないため、犯行に及び手加減は全くしなかった」と話した。また1人も3人も「人生が終わることは一緒」とし、3人を殺害したとのこと。
 
その上で犯行時、すでに2人を刺し殺していた被告が家にいた残る母親に対し、「1人で生き残っていても仕方がないし(1人殺しても3人殺しても)人生が終わっていることでは一緒だ」などと思ったと話したとのこと。
 
弁護側の質問に対し、当日家を訪ねたところいないと思っていたIKさんがいたため「今しかない。きょうしかない」と殺害を決意し、自分を攻撃する『組織』の人間だとするIKさんを「絶対にこいつだけは生かしてはおけん」と思い、特に強い殺意を持って犯行に及んだと証言した。
 
また、IKさんの殺害を妨害されると思い、両親も刺したなどと、当時の心境について語ったとのこと。
一方、弁護士の質問に対して,IIさんの殺害に関しては「よく考えていなかった」と話すなど発言が二転三転したとのこと。
 
***第3回公判(23年12月8日)***
1)証人尋問(精神鑑定をした医師)
9回あわせて約21時間に渡り面接などをしていて、「妄想型の統合失調症は2017年頃から発病し、犯行動機の形成過程に強く影響を与えた」と証言した。
 
証人尋問で検察は、被告が自らの子供への悪影響を考えるなど善悪の判断ができる状態で、犯行後に警察が手錠をかけやすいよう自ら手を前に差し出すなど、自分の行動をコントロールできていると主張したとのこと。
 
一方で発症後は、身体がビリビリする感覚や幻覚のため仕事を休むようになっていたものの、統合失調症の患者に見られる性格の変化は見られないとしているとのこと。
 
また弁護側は、偶然IKさんを発見し殺害して自殺しようと考えていたにも関わらず、犯行後にIKさんが関わったする「組織」を公にしたいと自殺に及んでいないとし、両立しない行動を質問。鑑定した医師は妄想型の統合失調症の影響を否定したとのこと。
 
被告が弁護人に「お前もうかわれや」などと、声を荒げる場面も見られたとのこと。
 
また被告人質問で被告に鑑定した医師の対応を問うと、「電磁波攻撃などの被害を受けているにも関わらず統合失調症と決めつけられる」と主張。殺害した3人や遺族への謝罪については「死刑覚悟でやってきている」とし拒否したとのこと。
 
別の報道では
事件当日の被告は、犯行現場まで凶器が目立たないように隠して向かっているほか、恨みを抱いていない警察官に対しては、求めに応じ素直に包丁を置くなど、被害妄想の影響はあるものの周囲の状況を判断し行動しているなどと、鑑定結果を説明したとのこと。
 
これに対し、被告人質問で弁護士から医師の証言内容について聞かれた被告は「ほとんどデタラメで全くの誤診である」などと、診断結果を強く否定したとのこと。
 
***論告求刑公判(23年12月12日)***
1)論告
検察側は論告で、被告は自分の行為の意味は理解していたが、妄想型統合失調症の影響が強く、事件時は心神耗弱状態だったと指摘。強固な殺意に基づく凄惨な犯行で、3人が死亡するなど結果も重大だが、心神耗弱の場合は刑の減軽が必要だとしたとのこと。
 
検察側は無期懲役を求刑した。
 
別の報道では
検察側は論告で、被告には被害者らから電磁波攻撃などの嫌がらせを受けていたという妄想があったが、「差し迫ったものではなかった」と指摘。心神耗弱だったものの、責任能力は完全には失われていなかったとしたとのこと。
 
また、被告は犯行時、ナイフを周りから見えにくいように持ち歩くなど、状況に応じた行動ができたと主張したとのこと。
 
さらに別の報道では
検察側は被告は「自分の行為の意味を理解し選択する能力が完全には失われていなかった」と主張。そのうえで被害者にはそれぞれ10カ所以上の刺し傷があり、深さ10センチを超える傷もあるなど「強固な殺意に基づく凄惨な犯行」で「何の落ち度もない3人の命が一瞬にして奪われた被害結果は極めて甚大」などとして無期懲役を求刑したとのこと。
 
2)弁護側は、被告が当時、自分の行動を制御することができない心神喪失状態だったとし、刑事責任は問えないと主張したとのこと。
 
3)最終陳述
最終陳述で被告は、「統合失調症の診断は誤りで、正常者の発言として裁いてもらいたい」などと述べたとのこと。
 
***判決公判(23年12月18日)***
1)松山地裁は18日、殺人などの罪で精神疾患がある男に対し、検察の求刑通り無期懲役の判決を言い渡した。
 
2)裁判長は「ITさんを刺す前などに子どもの人生への影響を考えて殺害をためらうなど、自らの行為の意味を理解し行為を選択する能力は完全に失っていなかった」とし、被告の刑事責任能力を認め、検察の求刑通り無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
 
別の報道では
裁判長は「ITさんを刺す前などに子どもの人生への影響を考えて殺害をためらうなど、自らの行為の意味を理解し行為を選択する能力は完全に失っていなかった」とし、被告の刑事責任能力を認めた。
 
このうえで殺害された3人の身体はいずれも10箇所以上の刺し傷があり、致命傷の傷は10センチ前後に及び凄惨な犯行と指摘。「何の落ち度もない3人の命が一瞬にして奪われた結果は極めて重大。被告の意思決定は厳しく非難されるべき」などと、検察の求刑通り無期懲役の判決を言い渡したとのこと。
 
さらに別の報道では
裁判長は、被告が妄想型統合失調症による被害妄想の影響を受け、犯行に至ったとした。一方、人生への影響を考え殺人をためらうなど、自らの行為の意味を理解し、選択する能力を完全には失っていなかったと判断。「何の落ち度もない3人の生命が奪われた結果は重大」と述べ、心神耗弱による法律上の減軽を認めるとしても無期懲役が相当としたとのこと。
 
***控訴(23年12月21日)***
被告が判決を不服として高松高裁に控訴した。
 
***控訴審初公判(24年6月18日)***
1)弁護側は一審松山地裁の無期懲役判決には事実誤認があり、被告が妄想型統合失調症の影響で心神喪失だったとして、改めて無罪を主張。
 
2)検察側は控訴棄却を求め、即日結審したとのこと。
 
***控訴棄却(24年8月22日)***
1)高松高裁は22日、無期懲役の1審判決を支持し、被告の控訴を棄却した。
 
***上告(24年9月4日)***
1)高松高等裁判所によりますと、被告側はこの判決を不服として、9月4日に最高裁判所に上告したとのこと。
 
こんなところですね。
えーと、理不尽な理由で3人を殺害しているので、本来は死刑のところ、統合失調症による心神耗弱を認めて、無期懲役と言う事で、妥当な判決だと思います。
ただ、それとは別にこの手の事件は難しいというか、被告と検察側の意見がまったく相容れない状態になってしまうのが、なんとも言えない気持ちにさせます。
 
と言うのも、統合失調症では、幻覚や幻聴が「現実」として起きている事なんですよね。
だから、この事件でも被告は自身が受けた「電磁波攻撃」が現実なので、「妄想」と言われても受け入れる事ができないんですよね。
なので、この状態になってしまうと、まったくの平行線なわけです。
 
状況から考えると、被告人は統合失調症を発症してから、通院などの治療を受けてない状態で、事件を起こしていると思うわけです。
(精神鑑定の結果をデタラメと言ってますからね)
裁判長も言っているわけですが、統合失調症にならなかったら、この事件は起きなかった。
しかし、私としては統合失調症になったとしても、適切な治療をしていれば、この事件は起きなかったのではないか?と考えています。
 
だから、この事件を防ぐには、発症した人を適切に医療に導くことが重要なのだと思います。
被告には家族も居たので、世間から隔絶して生きていたわけでも無いのに、誰か医療に導く事ができなかったのか?と言うのが残念でなりません。
鑑定では2017年に発症していると言う事なので、事件が2021年ですから、事件の4年前ですよね。この4年間に異変に気づく人がいたと思うのですが・・・・
まー病院に連れて行くのが最初のハードルなのは間違いないので、気づいた人が何度かチャレンジしたけど、本人が病気じゃ無いと強く拒絶してしまったのかもしれませんね。
 
そして、警察沙汰になるほどの問題も起こしてないので、措置入院もできなかったんでしょうね。
で、最悪の事態になってしまったと言う事なんでしょうね。
 
仕事をしてなかったとしても、市町村の定期検診は受けていたと思うのだけど、問診で「電磁波攻撃」の話はしてないのかな?
もししていたなら、その話を福祉に繋げるような仕組みがあれば、別の角度から専門家のアプローチも出来たかもしれませんね。
でも、被害者から警察へは電磁波攻撃の相談があったので、警察から被告の家族への連絡などもあったと思いますが・・・・
 
いずれにせよ、「放置状態」にならないようにする仕組みが必要かもしれませんね。
 
おそらく、上告の結果も同じだと思いますが、続報を待ちましょう。

***2025年2月3日補足と訂正***
書いた直後ですが、訂正します。前回の記事に情報がありました。
警察から保健所への情報共有はあったとの事です。でも措置入院には至らなかったんですね。

県警は容疑者が、事実とは認められない被害を訴えていることから精神障害の可能性もあるとみて、保健所への相談を勧めた。西条保健所にも「(容疑者に)対応することがあれば支援をお願いしたい」と伝えたという。

県健康増進課は10月15日、西条保健所が2020年9月までに新居浜署から5回、容疑者(53)=殺人容疑で再逮捕=に関する福祉的支援のための情報提供を受けていたと明らかにしたとのこと。

同課は「法律に基づく通報ではなく一般的な情報提供だった」とし、精神保健福祉法による調査や診察、措置入院などの対応は困難だったとの認識を示しているとのこと。

同課によると、19年11月から20年9月にかけ5回、署から保健所に容疑者に関し「電波攻撃を受けているなどと発言し、精神症状が疑われる人がいる。本人や家族に保健所への相談を勧めたい」などと連絡があったとのこと。所内で情報共有し対応する準備を整えたが、容疑者側から相談はなかったとのこと。

市地域福祉課も、容疑者や家族からの相談は把握していないとしているとのこと。

 ***訂正ここまで***

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