栃木県那須サファリパーク虎に噛まれる事故
1月5日午前8時半ごろ、那須町高久乙の「那須サファリパーク」から「従業員がトラに襲われた」と119番する事故が起きている。
20代の飼育員3人がトラ1頭にかまれるなどし、22歳女性が右手首に大けが、26歳女性と24歳男性もけがをしたとのこと。
サファリパークなどによると、トラの飼育担当だった女性が開園前に展示室の安全を確認するため同室と獣舎をつなぐ通路に入った際、何らかの理由で獣舎から出て通路にいたトラと鉢合わせして襲われた。女性の悲鳴を聞いて通路内に駆けつけた別の女性と男性も相次いで襲われたとのこと。
トラは11歳のベンガルトラの雄「ボルタ」で体長約2メートルで体重約150~160キロ。事故を受け、5日は臨時休園となったとのこと。
那須サファリパークでは1997年と2000年に、飼育員がライオンに襲われる事故が起きていた。
トラを担当する飼育員の女性が展示場の安全確認をするために向かった先が凍結したため、いつもとは違う獣舎側を通って出ようとしたところトラと鉢合わせになったとみられ、またトラが本来いるはずの獣舎にいなかったとみられているとのこと。
那須サファリパークの支配人談:
今冬期なので凍っている部分とかありますから、そのあたりを確認してその後に動物を出すという作業に入るんですが、トラを出す前の段階ですね。安全確認と点検の時に起きた事故です。
普段であればボルタは右から3番目の獣舎の中にいて、飼育員と同じスペースにいることはない。
しかし5日朝、飼育員がキーパー通路と呼ばれる飼育員の作業スペースから一番左の獣舎とアニマル通路と呼ばれる場所を通り展示スペースに出ようとしたところ、獣舎から出ているボルタと遭遇。
その後、キーパー通路の隅で襲われているところを発見され、助けに入った2人も次々と襲われたとのこと。
獣医師がボルタを麻酔銃で眠らせ、襲われた飼育員を救助したとのこと。
前日の閉園後、トラが獣舎に戻ったかどうかを確認せず獣舎を施錠した疑いがあり、トラが通路に出たままになっていた可能性があると説明したとのこと。前日の担当飼育員は「外から通路まで戻ってきた様子は確認したが、獣舎に入ったかは分からない」と話しているとのこと。
飼育マニュアルを守っていなかった疑いがあるとして、県の動物愛護指導センターが同園に再発防止を求める行政指導をしたとのこと。指導は5日付。また今後、県内の動物園に対し、飼育員の安全確保を含めた注意喚起の文書を送るとのこと。
センターは事故発生の5日、動物愛護法に基づき同園を立ち入り検査したとのこと。
獣舎は通常、夕方のトラ収容後に施錠する。だが、「ボルタ」はこの日朝、獣舎外にいた。女性の叫び声に、この男性飼育員が見ると、「キーパー通路」に女性飼育員とトラがいたとのこと。
キーパー通路と一番端の動物のいない獣舎の間の扉も、その獣舎と「アニマル通路」の間の扉も開いていたので、女性飼育員が「アニマル通路」でボルタに遭遇した可能性もあるとのこと。
別の男性飼育員(24)と施設内の「前室」の奥にいた別の女性飼育員(22)が駆けつけ、相次いで襲われた。午前8時55分ごろ、獣医師が麻酔銃をうち救助。葛原支配人が119番通報したとのこと。
獣舎の扉はワイヤ式ロープで開閉し、閉めた後は施錠する。ボルタが収容されていたはずの獣舎の扉は閉じて施錠してあったとのこと。
4日もボルタは園に出ており、閉園の午後4時半すぎには獣舎に戻る予定だった。獣舎には餌の肉を用意していたが、5日、餌の肉はそのまま残っていたとのこと。4日の閉園後、同日担当の飼育員2人は、ボルタが「アニマル通路」まで戻ったことは確認しているが、獣舎に戻ったことを確認したかどうかは不明だとのこと。
栃木県警は7日、業務上過失傷害の疑いで、容疑者不詳のまま園の事務所を家宅捜索するとともに、事故の起きたベンガルトラ舎の現場検証を実施した。トラが柵のある獣舎でなく展示場に向かう通路にいたとみられる理由も含め、安全管理に問題がなかったか同容疑で捜査するとのこと。
園によると、トラが獣舎に入ったことは担当者2人が目視で確認することになっているが、時間などの記録は義務付けていなかったとのこと。
県の立ち入り検査では、獣舎内のエサは手つかずの状態で、トラ用通路にはトラのふんが落ちていた。トラは獣舎のエサも食べられないまま通路で一晩を過ごし、翌朝になって飼育員と出くわしたとみられるとのこと。
当日の気象も被害を拡大させる一因となった。飼育員は本来、屋外の通路から展示スペースの点検に行くことになっているが、通路が凍結していたため、空の獣舎を通って向かおうとした。結果的にトラはその飼育員を襲った後、飼育員用通路にまで入り込むこととなり、助けに駆けつけたほかの2人も襲われる事態になったとのこと。
施設によると、動物が獣舎を出入りする際は、2人で点検するようマニュアルに定めているとのこと。4日に担当した別の飼育員2人は、トラが獣舎に入ったかどうかや、施錠の状況を「はっきり覚えていない」などと話しているといい、管理体制がずさんだった可能性が出ているとのこと。
マニュアルでは、2人で獣舎の中に入ったことを目視で確認することになっていたが、確認が不十分となった可能性がある。トラが獣舎に入るのを嫌がるなど異常事態があった時は日誌に記録するが、そのような記録もなかったとのこと。
事故当日の5日朝は、女性飼育員がトラ舎内の獣舎を抜けて展示スペースへ向かおうとして、トラ用通路でトラに遭遇した。捜査関係者によると、園関係者は県警の聴取に対し「展示スペースへトラ舎を抜けて向かうこともよくあった」などと話しているとのこと。
トラ舎を抜けずに展示スペースへ出入りするための外部からの扉は壊れて使えない状態だったことも判明。県警はこうした複数の要因が重なって事故につながったとみて、業務上過失傷害容疑で捜査しているとのこと。
「日本動物園水族館協会」は17日、加盟する全139施設に動物が獣舎にいるかどうかの目視確認など基本動作を徹底するよう通知した。
同協会は、飼育員が獣舎の中にトラが入っているかどうかを確認しなかったことが原因とする調査報告書をまとめたとのこと。
時系列(一部ASKAの推測があります)
01月04日
閉園後 虎を展示スペースから獣舎に戻すが、虎用通路まで戻った事を確認したが、獣舎に入った事は確認せず。
その後 虎を虎用通路に残したまま、獣舎の扉を施錠、虎は一晩、虎用通路に残された。
01月05日
開園前 展示スペースの安全を確認する為に展示スペースに向かうが、外部から展示スペースに入る扉は故障していた為、従業員通路から空き獣舎を通って展示スペースへ向かう(空き獣舎の扉、従業員通路の扉が開かれたと思われる)
その後 虎用通路に残された、虎と飼育員が遭遇、虎に襲われる。(従業員通路で虎と遭遇した可能性もある)
直後 襲われた女性飼育員が空き獣舎を通り従業員通路に出たと思われる。それを追って、虎も従業員通路に出たと思われる。
直後 女性飼育員の悲鳴を聞いて駆けつけた男女の飼育員が従業員通路で虎に襲われる。(2名の飼育員は自立で脱出したが1名が残された)
直後 麻酔銃で虎を眠らせて、女性飼育員を救助
直後 ドクターヘリと救急車で飼育員3名を救急搬送
こんな感じですね、
幾つかの問題がありますね。
A)前日の閉園時の虎を獣舎に戻した時の確認の漏れ(これが無ければこの事故は起きていない)
B)外部から展示スペースへ入るドアの故障(マニュアルを遵守する前提なら、これが無ければこの事故は起きていない)
この二つが同時に発生した為に最初の事故が発生しているわけですね。
で、悲鳴を聞いて駆けつけた二人の飼育員も襲われて2度目の事故が発生します。
詳しい事がわからないし、悲鳴を聞いて動転していた可能性もあるので、微妙なのですが、この2度目の事故は防げたかも?と感じています。
最初の悲鳴を聞いた時に、何らかの重大事故(人身事故)が発生している事は想定できたと思うわけです。
その中で最悪のケースとしては、獣舎から虎が出ている事が想定できるので、従業員通路に入る時に内部を確認する事が出来たらこの2度目の事故は防げたのかな?と思うわけです。このあたりは、非常時の訓練をどのようにやっていたのか気になりますね。
ここまで見てくると、この事故はまさに労働災害で有名な「ハインリッヒの法則」そのままだな・・・と言う印象です。
重大事故、軽微な事故、そしてヒヤリハットの割合が1:29:300になると言うアレです。
獣舎に戻った事の確認が漏れていても事故にはならないし、展示スペースのドアが壊れていても事故にはならないけど、そういった、ミスが積み重なるといつか重大事故になると言う事をあらためて考えさせられました。
(ハインリッヒの法則は一人の労働者に対しての物なので厳密には違いますが、職場全体にも当てはまりますね。たしか柳田さんがバードの法則とか言っていたような・・・ごめんなさい、思い出せません、柳田邦男さんの本に書かれていたような気がします)
とは言え、繰り返されるありふれた日常の中で作業の危険性を認識するのは難しいと思います。
なので、毎週、ヒヤリハットを出してKYTやるんだよねって事ですよね。
今、気付きましたが、セキュリティインシデントも同じですね。差出人を確認しないまま、うっかりメールを開くとか、ついやってしまいそうですが、そこは、普段から注意する習慣が必要なんでしょうね。
私も那須サファリパークは遊びに行った事があるので、再発防止対策と安全管理を徹底をして再開して欲しいと思います。
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